いつまでも変わらないもの
あらすじ
昼ごはんを頼むのに一苦労。
頼めたのは謎のランチセットC。
ランチセットCの食器を厨房まで運んだ後、マスター特製のコーヒーを味わっていた。
志樹「うん、やっぱり安心するなぁ。」
他にはないいつもの味だ。
友紀「このコーヒー豆は何を使ってるんですか?」
マスター「ああ、キリマンジャロベースでブレンドしてんだ。」
キリマンジャロ?あの山が何だって?
友紀「私の家はブルーマウンテンを使ってるんです。お母さんの好みなんです。」
へえ、藍子さんは青い山が好きなのか。
マスター「ブルーマウンテンならいいやつが入ったから、家で淹れてみてくれ。」
友紀「わぁ、ありがとうございます。ところで、志樹は何が好きなんですか?」
おお、俺に振られた。
無知と思われるのも恥ずかしいから、有名な山の名前を言っておく。
志樹「俺は富士山が一番好きだな。あと十勝山脈とか。」
友紀「え?」
志樹「え?」
マスター「豆の話だぞ。」
なんだ、豆の話をしていたのか。
志樹「なら、落花生かな。いや、大豆だな。」
友紀「違いますよ。」
志樹「え?」
マスター「コーヒー豆の話だ。」
コーヒー豆?今までの会話のどこにコーヒー豆の成分があったんだ。
マスター「そういや、志樹はコーヒー豆の事、全然憶えてなかったな。」
悔しいから、メニューに載っている目に入った名前を言う。
志樹「さ、さすがにアッサムぐらい知ってるさ!」
マスター「それはうちで出してる紅茶の品種だ。」
・・・笑われてしまった。
ヤケクソ気味に固形の砂糖をスプーンで崩す。
普段はブラックで飲んでいるから新鮮だ。
甘すぎるコーヒーに四苦八苦していると、マスターに話しかけられる。
マスター「そういや、ちょっとの間に変わっちまったな。」
志樹「え?なんか悪いことしたか?」
覚えが無いだけかもしれないが。
マスター「まさかカラコンをするとは思わなかったぞ。しかも左右違う色とは・・・」
志樹「これはカラコンじゃねぇよ!」
そう、これは呪いだ。
友紀「そうです、これは愛と幸運の眼なんですよ。」
表向きにはそうなってはいるし、そうでもあるといえる。
マスター「なんじゃそりゃ。訳が分からんぞ。」
志樹「分からんでいい。」
こんなもの、分かるはずがない。
マスターは何やらずっとモヤモヤしているようだった。
荷物をまとめて席を立つ。
志樹「じゃあ、俺達帰るわ。」
マスター「そうか。」
そっけない物言いに聞こえるが、寂しさも感じる。
友紀「えっと、御代は・・・」
マスター「この店に遊びに来てくれたことが御代みたいなもんさ。」
いつも通りキザに答えている。
店のドアに手をかける。
志樹「何時でもメールしてくれ、返すかはおいといて。」
マスター「分かった。」
また来る。そう伝えて俺達は店から出た。
どうも緋吹 楓です。
読んでいただきありがとうございました。
世界は何時でも変わり続けている。
それでも、いつまでも変わらないものって美しいですよね。
次回もよろしくおねがいします。