君にはちょっと早いものだよ
あらすじ
京慈さんの部屋を目指すために、紗瑠さんに案内をしてもらったぞ。
その後も適当に談話しながら歩いていた。
階段を降り、1階についたと思えば、また廊下。
そろそろ疲れてきたぞ・・・
すると、紗瑠さんはひとつのドアの前で立ち止まる。
紗瑠「ここが、京慈様のお部屋です。話は通しております。」
志樹「紗瑠さん、色々ありがとう。」
紗瑠さんは礼をして去っていく。
さて。
俺はドアを叩き、
志樹「京慈さん、入りますよ。」
と、返答を待つ。しかし、なにも返ってこない。
紗瑠さんが話を通してくれているから、入るか。
ドアノブを回し、部屋に入る。
そこに待っていたのは藍子さんだった。
藍子「いらっしゃい、志樹君。」
志樹「あ、どうも、藍子さん。」
藍子「京慈は奥にいるから、案内しようと思ってね。」
志樹「じゃあ、お願いします。」
今日は案内されてばっかりだな。
この部屋には2階があり、そこにある部屋で京慈さんが待っているらしい。
本来の部屋には存在しないはずの乗り物がある。
それは、近づくとゴウンと動き出した。
俺はそのセンサーのついた乗り物に乗る。
志樹「普通部屋にはエスカレーターなんて無いと思うんすけど・・・」
藍子「驚いたでしょう?」
そりゃもうびっくりだ。
2階に上がると、そこに京慈さんが立っていた。
京慈「やあ、志樹君。眠れなかったかね?」
志樹「いや、そういう訳じゃ無いっす。ただ、少し聞きたくて。」
椅子に誘導され、座る。
京慈「何かね?」
志樹「京慈さん達の出会いを。」
実のところ、気になっていたのだ。
眼の色が変わってしまった原因が掴めるかも知れない。
藍子さんが温かいお茶を持ってきてくれる。
志樹「あ、ありがとうございます。」
テーブルに3人分の飲み物が並ぶ。
京慈「では、我々のアツアツな話を聞かせてやろう。」
うお、思ったよりやる気だ。
すると、藍子さんが急に立ち上がり、
藍子「きゃあ、恥ずかしい!」
と言って、何故か喜んでいた。
京慈「あれはまだ幼かった頃・・・私はある森に迷いこんでしまった。どうにかして帰ろうと模索していたが、その時の私では自力で抜け出せなかった。そんな時に見つけたのが藍子だ。私はその髪に一目惚れしてしまってね。森から抜け出すことも忘れて声を掛けたんだ。」
藍子さんが嬉しそうな声をあげる。
京慈「それ以来、私と藍子は毎日のように森で遊んでいた。森の地図が頭に入るぐらいにね。」
京慈さんがコーヒーを飲む。
京慈「しかし、ある日から急に藍子が来なくなってしまったんだ。最初は風邪でも引いたのかと思っていたが、一週間にもなると焦ってね。いつ来ても良いようにと私は森で野宿していたんだ。」
志樹「もしかして、そのある日って言うのが・・・」
しきたりの日か。
京慈「いや、例のしきたりの10日前だったんだ。」
思いっきり外した。
藍子「実は私もしきたりから逃げていたのよ。10日前からね。」
京慈「次の日に藍子が来たんだけれど、泣いていたんだ。そこで訳を聞いたのだ。」
藍子「その時にはもう2日しか無かったのよ。本当に焦ったわ。」
話の息がぴったりだ。さすが夫婦。
京慈「私がその時20歳だったから、結婚ができたんだ。」
藍子「1日で用意できたのよ。京慈のお父様とお母様のお陰よ。」
京慈「結果、藍子が18歳になる前に結婚したわけだ。」
なるほど、だからしきたりが認められなかったのか。
藍子「でも、式はこの敷地内で執り行ったのよ。」
京慈「そう言う訳だ。楽しんでもらえたかね。」
志樹「はい、とっても。」
やっぱり、しきたりの条件は18歳の誕生日を迎えた後でないと駄目なのか。
京慈「じゃあ、他にもいい話を語ってやろう。」
藍子「いえ~い!ドンドン!」
藍子さんが無邪気にはしゃいでいる。
思ったより楽しんでいたのだろう。
京慈「藍子・・・まさか、新しいウィスキー、空けたな。」
藍子「京慈のもありますよ~ゴクッ。」
きつそうなお酒をコップに注いで、おいしそうに飲んでいる。
京慈「すまんな、藍子は酒が好きでな。勿論君にはオレンジジュースだ。あと2年だな。」
と言いながら、京慈さんも渡されたものを飲んでいる。
京慈「では、友紀が産まれたときの話をしてやろう!」
藍子「いえ~い!ドンドン!パフパフ!」
俺は酔っ払い二人の話を、手に持っているオレンジジュースが無くなるまでは聞いていた。
どうも緋吹 楓です。
読んでいただきありがとうございました。
京慈は生まれつき銀髪だったので、あまり周りに馴染めていませんでした。
同じような境遇の藍子を見つけ、世界が晴れたのでしょうね。
藍子は普段はおしとやかですが、スイッチが入るとテンションがあがっていきます。
ちなみに二人とも、大の酒好きです。
次回もよろしくおねがいします。