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4月18日

一人暮らし、始めました。

一人の男の一人飯 4月18日


この春から大学生となり、18年を過ごした実家と地元の兵庫から宮崎に引っ越し、一人暮らしを始めてから2週間が経った。

1人暮らしにも少し慣れ、新しい友達や先輩もできた。自炊もそれなりにできるようになったと思う。


これは、そんな大学生の何気ない日常の夜の一コマを綴った日記である。



「ただーいまー」


三階建てのアパートの三階の部屋に住む私は今日の大学での講義を終え、帰宅した。自室のカギを開けて癖となっている言葉を口にする。当然、「おかえり」と言ってくれる人は一人もいない。二週間もこの状態が続けばだいぶ慣れて来るもので私は気にせずに内側からカギをかけチェーンもかけてから靴を脱ぐ。背中に背負ったリュックを床に置いてベッドにダイブ。実家ではずっと布団で寝ていたので未だに新鮮味のある反発をベッドに乗っかった上半身で受ける。「んーーー」と変な声を出しつつベッドの上でほふく前進し全身をベッドにおさめる。

「あーしんど」

 特にだるさもないのに口から出た言葉に苦笑する。しんどいと言いつつ今日の授業は一コマしかないのだ。この程度で疲れるほど私は老いてはいない……はずだ。いや、老け顔なのは自覚しているが少なくとも精神と身体は若さあふれる青年のはずだ。たとえ高校時代に年上の女子大生に「二十代後半くらいだと思ってました」と言われようとも!


 何かレポートといった課題もないのでアパートの隣にある保育園から聞こえる子供たちの声をBGMにベッドの上でごろごろ、だらだら。たまにスマホをいじったりしつつ。時間が流れていく。いつの間にかスマホの時計が示す時間は18時半を過ぎていた。

「そろそろ飯、作ろか」

ベッドから起き上がり、エプロンを付けてから冷蔵庫の中身をチェック。

「オムライスでもしよか。」

私はニンジンとピーマンとウィンナーを冷蔵庫から出すとキッチンのIHの上に置く。タマネギがないのは少し残念だが今すぐ買いに行こうとはならずそのまま調理を開始する。まな板と包丁を軽く水で洗い、すぐにでも野菜を切れるようにしておく。

「野菜切ってる間に米あっためとこ」

 炊飯器のコンセントを刺し、『保温』を押す。コメは昨日の晩に炊いたものが残っている。9分と温め終わるまでの時間が表示されたのを確認した後、野菜を切る作業にはいる。

 ラスト一本のニンジンを半分に切り、片方の切った断面をラップでカバーして冷蔵庫に戻す。皮は剥かずにそのままちょと厚めの輪切りにしていく。全部を切り終わった後にそれらを半分に、さらにそれを半分に切ってサイコロ状に近づけるように切っていく。最初に縦に半分に切っておいた方が楽だったたんじゃないかなと若干後悔しながら。

 ニンジンを切り終わったらまな板の端に寄せておいてピーマンに手を付ける。使うのは一個で十分。袋から一個だけ取り出して残りは冷蔵庫に、ピーマンは最初に半分に切ってからキッチン用の蓋がついているタイプのごみ箱にタネとヘタを手で落としていく。丸々全部のタネをとれたことを確認すると縦に切っていく。これも少し太めに。全部縦に切り終わると今度は切ったピーマンをまとめて横に向けてから縦に切った厚さと大体おんなじくらいに切っていく。

 ピーマンを切り終えたらニンジンと同じようにまな板の端にのけ、最後の一本となったウィンナーを袋から出す。袋はピーマンのタネと同じごみ箱にポイだ。ウィンナーは斜めに切って一本丸々使い切る。

 炊飯器の様子を見ると2分の文字が。それを確認した私はIHの上を乾いたタオルで拭き、フライパンをその上に置いて電源ボタンを押す。ピッという音が鳴ったのを確認してから加熱ボタンを押す。ヴーンという音と共にフライパンの上にかざした手に熱が伝わってくる。フライパンがあったまったのを確認してからサラダ油を熱したフライパンにたらす。手首を動かして油をフライパンの表面に伸ばす。そしてまな板の上の野菜をフライパンに投下。ジューといういい音と共に蒸発した水分が湯気となって上に上がる。

「おおー」

 何度聞いてもこの音は腹に来る。胃袋のあたりがキュッとなったのを感じた。

 私はフライ返しで野菜を転がし、全体に火が通るようにする。熱されることでニンジンの甘い香りが鼻を直撃する。そこに残りのウィンナーも投下。結構強めの火力で炒めているおかげかすぐに熱せられたウィンナーの香りが追撃をかける。

「ぐあー、この音と匂いのコンボは卑怯だわー」

具材にある程度火が通ったところでピリリと炊飯器から温め終わったことを知らせる電子メロディが鳴った。

「お、いいタイミング」

 IHの火力を弱めてからタオルを手にして炊飯器に直行。蓋を開けると湯気と白米の香りがもわっと飛び出す。私はタオル越しに炊飯釜を取り外しフライパンの上で逆さに向ける。ドンと重い音を立ててフライパンに落ちたのを確認すると内側に残っているコメをしゃもじでとりフライパンに落とす。全部きれいに落ちたら炊飯釜を急いで戻してフライ返しで落とした白米と具材を混ぜ合わせる

「よっと、あ、こぼれた」

 が、へたくそなもので混ぜるたびに具材がフライパンの外に飛び出す。もちろんそれをそのままにするわけがなく、すぐに拾ってフライパンに戻す。たぶんこの時に拾わなければフライパンの中身が1割くらい減っていたかもしれない。

 いくらか混ざってきたところで冷蔵庫からオムライスに欠かせないアレを取り出す。そう、ケチャップだ。ケチャップを全体に回しかけてから馴染ませるように混ぜる。そしてこの時にも具材はこぼした。そして戻した。

 2回ほどかけては混ぜを繰り返してから味見する。

「ん、こんなもんかな」

 火を止めてから私は食器棚からお椀と大きめのお皿を取り出し、完成したケチャップライスを皿の上に移す。

このアパートに火元はIH一つしかない。つまりよくある同時進行で調理をすることができないのだ。

お椀に一杯分の水を汲み、電気ケトルの中に入れてスイッチオン。お湯を沸かしているうちにケチャップと同じくらいオムライスになくてはならない存在の準備に取り掛かる。完成したケチャップライスに覆いかぶさる黄色いアイツ。玉子だ。

玉子は実家から引っ越しの時に一緒に持ってきた。50個ほど。

ボウルに玉子を2個入れてとく。そして忘れてはいけない、牛乳をそのといた玉子の中に入れる。昔、オムライスを作るときに牛乳を入れずケチャップライスに切っていない錦糸卵が乗っかっているようなものを作るという失敗をしてしまったことがある。この時に母から玉子に牛乳を入れるとふわっと仕上がることを教えてもらったのだ。

「あ、牛乳多すぎた。まあ、大丈夫か」

 が、ちょっと失敗してしまうのが私クオリティ。

フライパンに油を少し落とし

「あ、入れすぎた」

少し多めに落とし、今度はフライ返しで広げる。ちなみにフライ返しでやる意味は特にない。しいていうならこっちのほうがよく広がるんじゃね? と思ったからだ。フライ返しについていたケチャップが油に溶けて黄色いはずのサラダ油が赤く染まる。

箸の先についた玉子をフライパンに落とすとジュウと音を立てて固まる。

「よし、玉子投下」

 そして勢いよくボウルの牛乳で明らかに量が増えたとき玉子をすべてフライパンに投下した。

「ふっふっふ、私の玉子焼き能力の本気を見せる時だ。」

 残念ながらテレビとかでよく見かけるケチャップライスをすっぽりと包み込むタイプのはできない。作れないわけではないが皿に乗せるときに失敗して破いてしまうのだ。そこで私は半熟オムレツを乗っけることにした。

ジュウオーとこれまたいい音を立てる玉子をフライ返しで軽く混ぜていく。すると強火で加熱しているためか混ぜた先から固まっていく。下の固まった玉子を中心に寄せていき、できた隙間にまだ火の通っていない玉子が流れ込む。これを真ん中から外側に向かって時計回りに行っていく。そうすることでふわふわ、トロトロの半熟オムレツが完成するのだ。強火でやるので素早くするのがコツ。ゆっくりやると焼き目の入った玉子とトロトロの半熟玉子の共存という微妙なものができてしまう。

「きゅぴーん」

 うまくいった。満足できる仕上がりの半熟オムレツが完成し、にんまりしているときゅぴーんひらめいた。そしてすぐに実行に移した。

 火を止めてから冷蔵庫からパンに乗せて一緒に焼くあのスライスチーズをとりだし、アツアツの半熟オムレツの上に置く。

「これは絶対うまい」

 確信を口にして意気揚々とケチャップライスの上に自信作の半熟オムレツを乗せる。

「あ、っと」

 乗せる時にベチャッと音がした。皿から落ちたのかと思って全部乗せてから確認したが幸いなことにケチャップライスが乗っている皿の上に落ちた音らしい。ケチャップライスではなく、皿の上に落ちたからこの音が出たようだ。

「よし」

最後にお椀にインスタントのコンソメスープの粉末を入れ既に沸いていた電気ケトルのお湯をすべて入れる。大きめのスプーンで混ぜてしっかりと溶かせば今日の夕食の完成だ。

 エプロンを脱いでいつもの席に着く。そして両手を胸の前で合わせて

「いただきます」

 オムライスにはケチャップとマヨネーズをかけて食べた。ニンジンの甘みやウィンナーの肉の旨み、そしてふわふわの半熟オムレツといい具合に溶けたチーズがしっかりとマッチしてておいしかった。我ながら上出来。


 

 その後完食した私は洗い物をしようと流しに食器を持っていくとシンクに落ちた一切れの焼き目のついたウィンナーを発見したという。


はじめまして。ブレイアと申します。

『一人の男の一人飯』いかがだったでしょうか。こんな感じでできるだけ毎日投稿できたらいいなと思います。ネタには事欠かないので。

それでは、次回もどうぞ、よしなに。


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