プロローグ
今日はついてない…いや、いつもか…
不良A「あ!亨也君〜見っけ♪」
「うわっ!」
―ガツンッ
「…っ…いったぁ…」
下校途中に突然腕を掴まれ壁に叩きつけられた。突然の事でなんの受け身もとれなかった俺は、思いきり背中をぶつけ、痛さのあまりその場に座りこんでしまった。
「ごめんね〜痛かったぁ?」
声のする方へ顔を上げれば、目の前にニヤニヤと嫌な笑顔で俺を見てくる男が三人、いかにも不良ですといった格好だ。こいつらは学年で結構な問題児グループ。
そして俺はそいつ等に目を付けられた可哀相な男の子。事あるごとに絡まれてる。まぁ自分が弱いのがいけないんだけど…。
A「あのね〜これから俺ら遊び行くんだけど〜亨也君に頼みがあるだぁ」
B「きいてくれるよね?」
そんな事言わなくたって俺が頷くのなんてわかってる癖に。
「な、なに?」
平和主義で喧嘩も強くない俺はいつも言うことをきいてしまう。
C「悪いんだけど〜五万くらい貸してくれない?」
ほんとに悪いと思ってないような口調で有り得ない額を言ってきた。勿論俺は…
「ご、五万!?ごめん…持ってないです」
ビクビクしながら悪くもないのに謝る。格好悪い。
A「はぁ?五万もねぇのかよ」
まだ高校生なのに五万も持ち歩いてるわけねぇだろ。
C「ぢゃあ財布出して〜」
「え…さ、財布ですか」
B「そーだよ、早く出せよ」
どーしよ。今日は欲しいCDがあったから今月のこづかい全部入ってるんだよな。流石に渡したくないし…。
A「おい!早く出せよ!」
B「殴られてぇのかぁ」
C「ないなんて言わねぇよなぁ」
「な、ない!ないです!!」
―ドンッ
A「あっ!くそ!」
B「ふざけんじゃねぇぞ、待て!」
C「あーあ、逃げちゃった…」
俺は勇気をだして断った。そしてAとBの間から上手く抜け出て靴も履き変えずに上履きのまま走って学校を飛び出した。
「はぁはぁ…此処までくれば大丈夫かなぁ」
B「おい!いたぞ!こっちだ」
「うわぁ!まだ追ってくる〜」
こいつ等しつこいんだった。このまま逃げ切れるかなぁ。
A「くそ!あいつ足早すぎだろ」
C「はぁ…疲れた、めんどくせぇから他の奴から金盗ろうぜ」
B「そーだな」
□■□■□■
「あれ?追ってきてない?」
後ろを振り向くとさっきまで追って来ていた三人がいなくなっていた。
「やった。俺やるじゃん♪」
自慢じゃないが俺は小さいときから逃げ足だけは速かった。今度からは走って逃げようかな。
「死守したお金でCD買って帰ろう〜と♪」
このまますぐ帰ればよかったのだが、逃げ切れた喜びと欲しかったCDを買えることに浮かれて、俺は後々自分に大変な事がおこるとは思ってもみなかった。
□■□■□■
―ウィーン
「ありがとうございましたー」
「えへへ♪やっと買えたぁ、家帰ってゆっくり聞こう」
自分の欲しかったCDを買い、店を出て隣のゲームセンターの前を通ろうとしたとき…
―ウィーン…ガヤガヤ
A「次カラオケいこーぜ!」
B「その前に飯食おー腹減った」
C「カラオケ屋じゃたけぇしな」
偶然にもさっき命懸けで逃げ切ったはずの三人と遭遇してしまった。取り敢えず見つからないうちに逃げようとしたが…
A「あ!おい、亨也がいたぞ!」
B「あいつ…金ないとか言ってCD買ってやがる!なめやがって!」
C「ちょっとムカつく。殴る?」
A「ちょーどいいや。やろうぜ!」
なにが調度いいのか…ほんとについてない…いつも以上に。
A「亨也君〜ちょっと俺達のサンドバックになってよ−」
「え、遠慮しますぅ〜」
B「あ!また逃げやがった!」
逃げ切んなきゃ!今度こそ殴られる。
俺は後ろの三人に気を取られていて気付かなかったんだ。
「ちょっと君!まだ赤信号「きゃあ!!」
―キキィ…
「え…」
―バァン
A「おい…マジかよ」
B「い、いこうぜ」
C「やべぇ−」
今日は人生で一番ついてない日だったんだ。まさか自分が……。殴られてたほうがマシだったなぁ…
そんなことを考えているあいだにも血は止まらず、制服のYシャツを赤く染めていく。身体が寒くなってきた。
「おい、大丈夫か?!誰か救急車を!!救急車を呼んでくれ!」
あーなんか頑張ってくれてる。
俺なんかの為に…
最期まで格好悪い−……
見ず知らずのおじさんがなんか言っていたけど、俺はそこで意識を手放した。