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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

140文字小説

どうして僕がいじめられなくなったのか ~元いじめられっ子の述懐~

作者: 宮毘羅


このまま生きていていいんだろうか?どこからともなく聞こえてくることがある。その問いが聞こえてくると、答えを出す前に、どうしても精神状態が負におちいる。なぜなら、自分が出す答えがわかっているからだ。「生きていてはいけない」という答えがでると。

質問は「いまのままで」といっているのにも関わらず、でてくる答えは「生きるべきか死ぬべきか」という問題。質問に対して答えがきちんと対応していない。こどもの頃いじめられっ子だったときの精神がいまだ残っているからなんだろう。「お前なんか死んでしまえ」と言われ続けていたときの精神が

 子供の頃、俺はいじめられっ子だった。暴力を受ける事はなかったが精神的に攻められた。物を隠されるなんてのは日常茶飯事。クラス対抗の大会とかで負けるといくら俺が活躍しようと「お前がいるから負けた」と全責任を負わされた。あげくの果てに言われた「お前が生きてるのがいけない」と

 抵抗したこともある。だが抵抗すると別の奴が決まって担任報告する「野瀬が△△(相手の事)をいじめてる」と。それもクラス皆で口裏を併せて。こうなると教師の中では「野瀬はいじめっ子」というレッテルが貼られてしまっている。親でさえそれをまともに信じた。俺がなんと言っても無駄だった

 誰も俺の言葉に耳を貸さなかった。親ですら俺の話は聞こうとしなかった。クラスメートからは「死ねばいいのに」と言われ、親からは「生まなければ良かった」と言われた。俺は負の精神に陥るのにそう時間はかからなかった。もう誰も信じられなかった。家族でさえ俺の味方ではないと思い続けた

 いつも俺は孤独だった。誰も信用せず、誰からも信用されなかった。あの事があるまでは、誰も俺に近寄ろうともしなくなった。あの事があったために、なぜ俺がこんな仕打ちをうけるようになったのか判った。あの事それは小学5年の秋、学芸会の配役が決まってから起きた事件だ。


 それまではあまりいい役をやってこなかった、俺が重要な役をやることになった。主役ではなかったが、それでもやりたいと思った奴は多く、くじで抽選になった。そのときの担任はその年に赴任したばかりの教師だったためそれまでとはやり方が違ってたからだ。

 それまでは、学芸会の劇の配役で、俺がやりたいと思った役で他に希望者がいると、周りの多数決で配役を決めていた。そして俺がやりたいと思った役では必ず他にやりたいと名乗り出る奴がいた。そしてその役はそいつがやることになるのが常だった。つまり、俺はやりたいと思ってもやることはなかったんだ。


  新しい担任は配役がかぶった場合は平等にくじでの抽選で決めることにした。運良く俺はくじにあたり、その役をやることに決まったんだ。にもかかわらず、周りは納得せず、俺に役をおりろといってきた。それも一度ならず何度も。俺に対する嫌がらせはますますエスカレートしていった。

 学芸会まであと2週間とせまったある日のことだ。クラスで盗難未遂さわぎが起きた。俺に役をとられた松村が、その腹いせに俺に筆箱をとられたと言うためにわざと俺の机に自分の筆箱を入れようとしていたんだ。たまたま、それを見た教師がいて、大した問題にならずにすんだが、理由を聞いて俺は爆発した。


 その日、松村は体調が良くないからと体育をやすんだ。独りで教室で見学するという。不審に思った担任が教室にいくと、丁度俺の机の引き出しに自分の筆箱を入れようとしてるところだった。担任が問い詰めると、しぶしぶながらも訳を話し始めた。それはおよそ信じられない話だった

 松村は泣きながら担任に話したらしい。俺に役をとられたためいじめられそうになっていると。俺がやる事になった役に立候補したのも、その役がやりたいからではなく、いじめのリーダー格の奴からの命令で俺に希望通りにさせない為だったと。今度の事もそのリーダー格の奴からの命令だったという。


 リーダー格の奴の命令は、俺に窃盗の濡れ衣を着せ、役を辞退させろという事だった。担任はそのリーダー格の奴の名前を聞いた。松村にしてみれば言えばさらにいじめられると思ったのだろう。なかなか話そうとしなかったが、遂にその名前を言った「飯島君です。」と。俺もその話を後から聞いたのだが、それは俺自身信じられない名前だった。


 飯島といえば優等生で通っており、性格も温厚で、いじめとは程遠いイメージだった。確かに体格もよく腕力もあるため殴られるとかなりダメージを負うだろうが。担任も最初それも飯島に罪を擦り付けようとしてるのだと思ったそうだ。だが調べているうちにそれが事実だと確信したらしい


 いじめのリーダーが飯島だったと担任から聞いて俺自身信じられなかった。というのも飯島とは幼稚園のころからの幼馴染で親同士中が良い。いわば家族ぐるみの付き合いだったからだ。だが、俺に対する嫌がらせをする動悸が俺に対する妬みだったと聞いたとき、俺にはピンとくるものがあった。


 飯島が俺を妬んでいるときいたとき、幼き日の思い出が蘇ってきた。それはお互いまだ幼稚園に通ってたころの事だ。その日も家族ぐるみででかけていたのだが、そのタクシーのなかで運転手がなぞなぞの問題をだした。そのなぞなぞに対して飯島は答えられなかったのに俺は全部正解したのだ。

俺が全問正解しただけならまだよかったのかも知れない。しかし、その運転手はやたらと俺を褒めたため、飯島にしてみれば恥をかかされたと感じたのだろう。それまでは、あらゆる面で飯島は俺には絶対勝てると思い込んでた。体格の違いもあり、運動では飯島には勝てなかったのも事実だからだ


 そして、小学校に上がったばかりのころ、飯島の父親に釣りに連れて行ってもらったことがあり、そのときに通った道を俺は覚えていて、そのことを飯島の父親がやたらと褒めた。それもまた彼のの自尊心を傷つけたのに違いない。その2つで俺は自分でも知らないうちに彼より優位にたっていたのだから。


 今にして思えば俺に対するクラスのみんなのいじめはその釣りに行った後くらいから始まった。それを思い出すことで、いじめの中心にいるのが飯島だったことに俺も合点がいった。それと同時に自分の筆箱を俺の机に入れようとしていた松村が非常に哀れになってきた。松村もまた飯島の被害者だったからだ。


  俺は飯島に対する怒りでいっぱいだった。それでも喧嘩が嫌いな俺は我慢した。だがあるとき、松村が飯島から殴られているのを見て俺は遂に怒りを爆発させた。自分でもわけのわからない言葉を吐きながら飯島に突進し奴を床の上に転ばしたんだ。俺に気づいていなかった奴はは簡単に転んだ。


 飯島を転ばした後、俺は常軌を逸した行動にでたらしい。らしいというのは飯島に突進して転ばしたところまでしか記憶がなく、事態が収まった後で、見ていたクラスメイトから聴いて俺が何をしたのか知ったからだ。どうもキレると記憶が飛んでしまうらしい。中学時代にも似ような事があった。中学の時に何をしたかについては、また別の機会に書くとして、このときの事に話を戻すと。いくらキレていたといっても、所詮子供の喧嘩だ。普通なら相手を転ばした時点で相手も起き上がり反撃するか、こちらが馬乗りになって殴るくらいだろう。しかし俺は本当にとんでもなく恐ろしいことをしたらしい。


 俺がしたことは、転ばした後、近くにあった金属バットを握りしめ。飯島の頭の近くにそのバットを振り下ろしたんだそうだ。幸い飯島にあたらず、怪我も転ばしたときに背中をうったために背中に軽くあざができた程度ですんだ。俺自身その事を聞いてゾっとした位だから周りの人間も驚いただろう。


 あの事件以降、俺に対するいじめはなくなったが、かといって友達ができたわけではなかった。皆俺を恐れるようになってしまったからだ。いじめがなくなったのも単に俺がキレると何をしでかすかわからないからであり、仲良くなりたいからではなかった。ただ表面上のコミュニケーションはあったが。


  ただ、キレたことでよかったのは、俺が今まで我慢していたことが皆に伝わり、飯島のいうことを間にうけて俺をいじめてたことを反省してくれたことだ。クラス対抗のスポーツ大会でも俺が活躍すればほめてくれ、失敗すれば、怒られる。そんな当たり前の事がやっと味わえるようになった。


 飯島にしてみれば、面白くなかったのかもしれないが、それ以上に俺をキレさせたら今度こそ殺されるとでも思ったのか、逆に俺のご機嫌をとるようになっていた。俺自身そんな××を見たくなかったし、周りも心配してたので。俺の方から和解の手を差し伸べたときは××もほっとした様子で和解に応じた。


 それ以降は平和な日々が続き、中学時代にはまた切れてとんでもないことをしたものの、普通の人生を送ってきたが。現在になってもそのいじめられて「お前なんか死んでしまえ」といわれてたことが頭にこびりついている。そのため「生きていてはいけない」なんて答えが頭によぎるのかもしれない


<了>








『お願い』

 この話は僕の体験を元に書いてます。

 今でこそお互い冗談でそのことを話したりしてますけど、当時は実際のところつらかったです。

 現在いじめは精神的なものが多くなったため自殺するいじめられっ子も増えました。僕自身死にたくなった経験もあります。結局死ぬ勇気もなくそのままでいたがために怒りが爆発してあんなことになってしまいましたが。


 いじめられっ子だって人間です、人並みに「怒り」という感情もあります。ただそれをうまく表現できないでいるだけなんです。

 これを呼んで下さっている皆様にお願いします。「いじめ」を黙認なんてしないでください。もしあなたの友人が「いじめ」にあっているのなら勇気を出して助けてあげてください。


 元いじめられっ子であった僕からのこころからのお願いです




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