第3話【講義】
とうとう明の秘められた力に迫る!!!!
と、久々の投稿です。遅くなってすみません、、
どうぞ、まずは読んでみてください。
真っ白な廊下の左右にたくさんの扉がある。
「科学的でしょう?電気代もバカになんないし、ほんと、頭固いんだから」
隣を歩くピンクのミディアムロングヘアーの可憐な少女が、快活そうな瞳で悪戯っぽく言った。
「俺の世界ではこれが当たり前だったけどな」
ついでに、こんな高度な科学文明は、CIAなら或いはって感じだったよ。
「ふーん、不便ね」
「これで不便とは贅沢な奴だ」
「魔法でやれば一発なのにって思うだけよ。頭かったいんだから」
そう言うと、ぷりぷりと足早に真っ白な廊下の奥へと進んでしまった。
「最高司令官執務室…?」
色々とクネクネして、ようやく辿り着いた明らかに異質な扉の上にはホログラムでそう映されていた。
「そ。といっても、片方の、だけどね」
「片方?」
「まあそれはおいおいわかるわ」
「…?まあ、それはさておきさ」
ひとつ深呼吸。
「初っ端からボスと対面とか聞いてないんだが?」
「言った記憶もないけど?」
クリリンと活発そうな瞳を回しておどけて見せるカンナ。
ピンクのミディアムロングヘアを振って、ついでに育ちの良い2つの膨らみも、緩いローブと共に揺らして、天真爛漫そのものな笑顔で言った。
「新参者が上級魔に口答えすんな♡」
今度は大きく息を吐く番だ。
「カンナさんて、そんなキャラでしたか?」
「敬語に戻したわね?良い心がけだわ。そして答えはNOよ。まあ、これはキャラってヤツかしらね」
「キャラ…?」
「そう。IAFでの顔よ。魔法使の弱点を消すための…ね。いずれわかるわ」
急にシリアスな顔でそう告げるとーいや、最後のウインクでかなり雰囲気を削がれたがー最高司令官執務室の重厚な白い扉を力強く三回叩いた。
正面は全面ガラス張り。半円形の部屋の弧の部分が全て透明なガラス張りになっていて、妖しく光る夜の街並みが一望出来た。
正面にある黒の光沢あるデスクの奥に、こちらに背を向けて座っているのが、【最高司令官殿】になるのだろう。
金の肩当と右腕に五芒星をモチーフにしたIAFのマークが入った高級感ある白のローブを着ている。
黒革の椅子に座ったまま暫し夜景を眺めている彼の後ろ姿は、明らかに、屈強な戦士であることを物語っていた。
「ようこそ、IAFへ明くん」
そう言ってこちらに向く【最高司令官殿】。
浅黒い肌に短い黒髪。切れ長の双眸はナイフのような光を放っていた。
「IAF魔法使部隊最高司令官伊崎=イースト=アドレスだ」
「初めまして」
「フッ。…君は何故、ここへ来た」
「地球から転移魔法とやらで来ましたが、ここへ来たのは偶然です。彼女に紹介されました」
「ほう。君は?」
胸元に手を当てて膝間付いてカンナが恭しく答える。
「銀河間連合軍治安掃討部隊第1師団。第3銀河管轄区特別警備部隊2等宙尉間宮カンナです」
「そうか。御苦労だった」
そう労うと、また、真っ直ぐと俺を見た。
「君には素質がある」
「凡人ですよ」
「良いや?私たちに無い力を持つ種族だ」
「仰る意味がわかりませんが」
「地球に存在する極微量な魔法顕現現象は、幽霊だ。わかるかね?」
「幽霊、ね。僕らの世界では非科学的でオカルト扱いですが」
「しかし、存在している。幽霊とは、いい幽霊もいるのだが、負の存在だ。死の顕現と言ってもいい」
そこで言葉を着るとアドレス最高司令官は立ち上がった。
「この世界の魔法顕現現象度はレベルⅤ。精霊の生息と七大聖花の栽培が可能なこの地は、光の魔法力しか存在しない。光の魔法力は治癒力に優れ加工しやすく便利だが、こと攻撃魔法への転用という面で非常に難易度が上がる。何故だと思う。光の魔法力は幸福を糧とするからだ。人を殺す魔法に幸福を宿すのは難しい。しかし、闇の魔法力に触れ続けた地球人の力なら、瞬間火力の高い闇魔法が使える。君はそのためにここへ来たのだ」
「魔法陣を描いたのも、カンナについて行ったのも、全ては俺の意志だ。運命めかして言わないでください」
「それはすまない。しかし、君もあちらの世界へ戻るにせよ、こちらで暮らすにせよ、職と知識は必要ではないかね?」
確かにその通りだ。いやらしいところをついてきやがる。
黙ったままの俺を見て、そうだろう?というように肩をすくめると彼は続けた。
「IAFに来た前。君は青年前だから、IAFの少年課に回そう。そこで学びながら軍属すれば良い」
「私も、少年課に通いながらなんだよ!」
隣でカンナも小声で伝えてくる。
「IAFは人手不足でね、活動目的や細かな戦闘訓練も含めて、高等学校で教え込み、見込みのあるものは部隊に組み込んでいる」
そこで一息つくとこう言った。
「君にはIAF特殊魔法作戦部隊への入隊を命じる。また、現時刻をもって、君に3等宙将の位を与える。IAF将官規則に基づき3等宙尉以上の者を副官として配属する。間宮カンナ2等宙尉をつけよう。異存はないな?」
特殊魔法作戦部隊がどんな部隊なのかはわからないが、カンナのキラキラした顔を見る限り大出世なのだろう。
この世界のことを知らないと元の世界には戻れないし、断った時点でIAFと敵対…なんてことになったら厄介だ。
その上でこの命令形の確認は、全て丸呑みにして、俺が頷くように仕向けたのか。ちくしょう、悔しいがそれが最善手だ。
「拝命します」
見よう見まねの敬礼で従属を表す。
「励め」
【最高司令官殿】の言葉に頷き部屋を出る。
「明です、か。最初からこちらのペースにならないよう対等の立場を望んだか」
誰もいなくなった最高司令官執務室で屈強な男が頭を掻きながらボヤく。
「特殊魔法作戦部隊はやり過ぎたかな。…いや、闇魔法使いなら或いは…」
そう呟くと男は右手を机に翳し、複雑な魔法を詠唱した。
「大出世だよ!!!!エリート街道まっしぐらだよ!!!!」
白い廊下を歩きながら大興奮のカンナが大きく身振りをしながら言う。
おい、キャラはどーした、キャラは。
「特殊魔法作戦部隊て凄いんだよ」
そう言いながら角を曲がってすぐの部屋に入る。
「ここで君にレクチャーするように言われてるの。とりあえず、特殊魔法作戦部隊についてね」
そう言うと、比較的明解な魔法陣を作り出し、ホログラムを描いた。
「へえ、こんなことも魔法で出来るのか」
「うん。光魔法の最も得意とする分野ね」
ホログラムには、黒い揃いのローブをきた隊員が写っている。ローブの袖には赤いラインが何本か入っている。
「この漆黒のローブが特殊魔法作戦部隊の制服よ。黒に裏地が赤。これ、憧れなんだから」
目をキラキラさせて、最後にそう付け足すと、説明を始めた。
「良い?IAFは大きく2つの勢力があるわ」
「魔法と…科学か」
「そう、魔法を司る魔法兵と科学を操る科学兵に大きく分類されるわ。この2つは、まあ、仲悪くて部隊も最高司令官も別々に構成されてる。同じIAFでも別組織のような感じよ。良く言えば、スムーズな事件対応と細かな部隊移動が出来るってことね」
「仲悪いのか?街とか見ると上手く使い分けてるみたいだけど」
「科学人が、この世界の最初の住人なのよ。同時間軸平行別世界として、科学人と魔法人の世界は存在していたわ。そして、科学が発展すればするほど、魔法が発展すればするほど、2つの世界ははなれていく筈だった」
ホログラムが2つのパイプが密接に並んでいたのに徐々に離れていく様を写していた。
「科学は事象を改変するのに、事象をぶつけて変えていくの。氷を溶かすのに火を使うでしょう?物質を作るのに、2つの違う物質を混ぜ合わせるでしょう?そう言うこと。対して魔法は、事象を改変するのに、事象そのものに魔力を干渉させるわ。シャープペンシルの芯の構造を弄って、科学で言う所の分子の位置を強制的に変えたり外したりしてダイヤモンドにするの。もちろん、外した分子は炭素として還元しないと自然の摂理に反するから魔法失敗で事象は改変されないからなんでもありってわけじゃないんだけどね。でも、アプローチが全く違うから交わることはない、はずだった」
「進めば進むほど違う未来へ進むはずだった2つの道か。たった1度のズレでも、進めば大きく離れるから」
「うん。けど、科学史西暦3024年にベン・トルートン博士が同時系列平行世界…今で言う同時間軸平行別世界の存在を提唱してね。研究を始めたの。魔法史西暦3147年には大賢者・鳩島桃李が同じくパラレルワールドへの遠遠距離非視界短時間移動魔法の応用理論っていうものを発表したわ。そして、科学より発見が100年は遅れていたにも関わらず3411年、大規模6重立体魔法陣による優視界内短時間移動魔法の非断続永久結合の無意識展開による遠遠距離非視界短時間移動魔法の成功と共に、科学世界へ進入したわ」
「すまん、専門用語が多すぎてわからなかった。つまり、なんだ?」
「はあ?こんなのもわかんないの?!…まあいいわ。簡単に言えば、科学より後に相手の世界を見つけた魔法が、科学を追い抜いて難しい魔法を発明して、相手の世界に進入したってこと」
「なるほどな。最初からそう言ってくれないか」
「説明してあげてるだけ感謝しなさいよ!」
ガウッと噛み付くカンナは、それでいて笑顔だ。
よほど昇進が、嬉しいらしい。
「ふむ。エリートに逆らうな、とか言ってなかったか?俺は今すでに将官なんだが」
おちょくるためにそういうと、顔を真っ赤にして上目遣いに見上げてくる。
俺より10センチは低い目線からなので、睨むというより上目遣いだ。
「むううううう。まあいい!!続けるわよ」
コホンと口に手を当てて勿体ぶると口を開いた。
「それから進入した5人の魔法使いは化学世界に自らの所在を明かし、化学世界の技術を一足飛びに100年は進めたと言われてるわ。今でこそ科学で魔法と対抗できてるけど、それはIAFで魔法を近くで見てるからね。あの頃の科学は、魔法に対抗する手段がなかった。科学世界はその後、2000年もの長い間、魔法世界の傀儡国家となったわ。事実上の、だけどね」
「まあ…魔法に逆らえないなら、そうなるよな」
元の世界の母国と、某経済大国を思い出しつつ相槌を打つ。
「まあ、ね。だけど、今から27年前、それが終わったの。銀河外生命体ヴェノムの襲来によって」
「ヴェノム?」
「黒いドロドロとした身体を持つ低知能保有生命体よ。通常の刀剣類やなんかは効かなくて厄介なの」
「へえ、想像する限りキモいな」
「うん、キモいわ」
「キモいな」
「キモい」
キモいキモい言い合ってホログラムに映されたヴェノムをみると、確かにキモい。
ドロドロとした人型で目はない。ただ、凶悪そうな口が耳当たりまで開いている。
「このヴェノムの襲来に焦った魔法文明は科学世界と魔法世界を無理矢理統合したの。結果、この銀河に新しい惑星アクアランスが誕生した。物理法則の限界を超えた結果、惑星が誕生したの」
「え、今までは違う惑星だったのか?」
「ええ、隣の惑星にいたわ」
「気がついたら新しい惑星にいたのか?」
「そ。大変だったわ、街を作り直すの。全国民でやるんだもの」
「そ、そうか。壮大すぎて人間たる俺には想像もできん」
「なにそれ、私達も人間よ。…でも、再建が済んだ今から3年前、全世界にIAFを創立し戦力を整えたの。そして、その戦力の半分を占める魔法戦力の結集であり最後の砦、最高戦力部隊が特殊魔法作戦部隊よ」
またも、黒ローブの隊員の絵に変わる。
「この部隊はね特殊攻撃隊大規模攻撃術隊、特殊救難隊、秘密諜報隊、医療後方支援隊の5つの部隊で構成されてるわ。これは最高司令官直属の部隊で、最高司令官と最高司令部の指示に従って出撃する」
そういうと、それぞれのチームのエンブレムが映し出された。
それらの中心にローマ数字の6であるⅥと五芒星を掛け合わせたモチーフのエンブレムが現れた。
「そして、あんたは新設されるパレットⅥ(シックス)。大規模魔法戦術部隊に配属よ。遊撃性、戦局を変える大規模破壊魔法に期待する、ですって」
「そうか。…なあ、聞いてもいいか」
「うん、なに?」
「光魔法ってなんだ?火とか出すのは火炎魔法だから人を傷つけても問題無いんじゃ無いのか?」
実に地球人的な質問をしてみる。
「ややこしいんだけどね。光魔法っていうとは、魔法の媒体が何なのかを表してるのよ。光魔法は善の気持ちが生み出す目に見え無い力場から力を得るの。だから、人を傷つける魔法に転用し難い。火を焚くことは容易くても、火炎を生み出すことは難しいのよ。だから、女神の慈悲、だなんて言う人も居て、太陽神になぞらえて光魔法なんて呼ぶこともある。その光魔法の使い道、具体的な術式を、火炎魔法とか氷結魔法とかって言うの。あんたが期待されてるのが、怨念や憎悪の気持ちが生み出す光と対になる力場、闇魔法。こっちの方が、人を癒すことは出来ないけど、多くを壊せる。太陽系第3惑星…貴方の言う地球は、魔法の力場がほとんどない。数少ない魔法は怨霊として亡霊として顕現してる。それは地球人が闇魔法を持っているからよ。そして貴方の適性は高い。この星に来たことで魔法を使用することは容易いはずだわ」
「確かに…ややこしいな」
「ええ、それとね」
言葉を切るとまたもホログラムに杖を一振りして、人の絵を映し出した。
「体内魔力と環境魔力ってのがあるの。貴方は地球人だから体内魔力は闇魔法の力よ。けど、体内魔力の保有量は一定よ。人によって違うけど使えば使うだけ枯渇する。だから杖や魔道書を媒体に草木や海原、人々の喜びで補充される環境魔力を加工して魔法にする。それはあなたが使っても威力の弱い光魔法。良いわね?」
「あ、ああ。わかった」
「じゃ、早速、いきましょ」
「どこへ?」
「決まってるじゃない。特殊部隊本部によ」