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第1話【邂逅】

「………」

どこだろう。

俺は魔法陣を敷いて、呪文を唱えてしまった。

だから、ルビライトなる所に飛ばされた。

記憶から類推するにそれに間違いない。

だが。まさか、本当に飛ばされるとは…

こーゆー時って、声も出ないもんなんだな。

「アーイッタイドウスレバイインダロウ」

なんとなく、声を出してみたが、何も起こらない。

部屋を見回してみる。

角にクローゼット、ベットの脇にサイドボード、正面に扉。

「クローゼット、調べてみるか」

不安を押し隠すためにあえて声に出して言ってみる。

質素な木製のクローゼットだな。よくファンタジー世界の初期設定するような、そんな扉がついた大き目のやつ。

「おお」

扉をあけて思わず声が出た。

クローゼットの中は、ちょうど半分で仕切られていて、両方に、透明な壁が付いていた。

片方には、黒に裏地が紫色のローブや木製の杖のようなもの、それに本が数冊と、手のひらサイズの透明な薄い直方体が置いてある。

もう片方には、薄手の黒い伸縮性のありそうなアンダーウェアや、やはり黒と白いラインのライダースーツのような服、それに、不思議なフォルムの銃と剣、見慣れた携帯端末がおいてあった。

「片方選べ、初期装備だ、ってことか?どーなってる」

声に出すことで、少しでも状況を整理する。

どっちが強いと思う。

途中で分岐できるのか。

魔法適性は俺にあるのか。

俺らの世界の常識を持ち込めるのか。

様々な考えを巡らせる。

「…よし」



数分後、黒いローブに着替えた俺は部屋を出て、小さな宿舎だったらしいそこから離れ、大通りに来ていた。

地球なら、まあ、魔法の方が強い。…だろう。

胸元に隠した武器らしき杖と、右手の水晶でできたらしい透明な薄い直方体。

これが頼りだ。


俺は着替えた後、すぐに持ち物を調べた。

直方体は、魔力…だと思うが、なんらかのエネルギーで動く情報端末だった。

【Skill List】と書かれた部分をタップすると、使える魔法が表記されていた。

驚くことに、魔道書らしき本の魔法陣を見て、説明書きを読んだら、リストに追加された。

使えるかどうかは別として、知っている魔法、ということなのだろう。

その他にも【status】という部分に装備品や年齢、名前や、よくわからないグラフも表記されていたので、おそらくこれが、この世界の魔法文明なのだと思われた。

とりあえず【Skill List】から【Receipt】という呪文をタップすると、杖とその動きが図示されたので、その通りに反復すること数十回。

超初等級魔法であるであろう【収納】魔法が発動し、青い光と共に魔道書が端末に吸い込まれた。

おそらく、【Release】魔法、即ち、【解放】魔法で出せる仕組みになっているはずだ。

続いて端末をいじくり回すこと2時間、【Language】から【太陽系第3惑星地球アジア日本日本語】に辿りつき、言語をやっと、日本語に触れ合えた。

凡人なりに努力しといてよかった。基本的な英単語も出来なかったらここで詰んでたな、なんて思ってみたり。



それから、【地図】を開いて、首都テラ・テラスの繁華街、スカイタウンへとやって来て、今に至る。

「にしても、これは思ったよりキツイな」

心が折れ無いように、声に出して呟く。

中学までは上手くいっていた。高校の中間テストで、その慢心が、あの結果だった。今思えば、あの時の俺が天狗だっただけなのかもしれない。

けど、俺はー逃げてしまった。

架空の世界に憧れを抱き、凡人の括りに自分を入れることで、安心してしまった、諦めてしまった。

異世界なら…魔法なら…なんで、思ってみたものの、いざ、現実になればなんてことはない、全く変わらない。

英単語やっててよかったなんて、まったく、どの口が言うのか。

今の食料すら調達できない無能さは、やはり凡人のそれだった。

ーいや。また、【凡人】にすがっているのか。



異世界に来て6時間。

流石に疲れて、道端の石のベンチに座り込んで地図を眺める。

拡大やら地図記号やらがないかと、いじくりまわしながら、ため息をつく。

食糧、通貨、基本言語、そもそも人間なのか。

知らねばならぬ事を思いつく頭に感謝し、解決する方法を思いつかない頭に失望する。

そう、ここ1年間いつも、いつもそうだった。

「おーい、そこの坊や!お困り?」

そういえば、高校になってから死に物狂いって言葉に見合う努力をしただろうか。

「ん?無視なのかい?」

俺は、いったいどうー

「halo-halo?聞こえてるのー?」

「おわっ?!」

考え込んでいたから気づかなかった。

目の前にいるのは、高級感のあるシルクの黒いローブ、裏地は明るい青。胸元に金色のバッチがついてる。女性だ。ローブを押し上げる豊満な胸と美しい脚がミニスカートから覗いてる。

「そのローブ。召喚者でしょ?ケッコー多いのよねえ、迷っちゃう子」

快活そうな大きな瞳と、ピンクのサラサラなミディアムロングの髪の毛が可愛らしい人だった。

「まあ、良いわ。あなた、名前は?」

「え、あの、えっと。名前?」

「そうよ、名前よ。あんたの」

どうした俺、ディスカッションは得意分野だろ!

噛むな落ち着け見っともない。

さっきまでウジウジ悩んでいたのが嘘の様に叱咤する。

見栄っ張り?なんとでも言え。

「俺の名前は、神谷明かみやあかる

「あかる?変な名前。私は、銀河間連合軍治安掃討部隊第1師団所属。第3銀河管轄区特別警備部隊2等宙尉。間宮=レビィ=カンナよ。カンナで良いわ」

「すまん、カンナ以外の情報を掴めなかった」

「長ったらしいからね。通称IAFアフなんだけど、まあ、宇宙を守る軍人で、2等宙尉っていうまぁまぁなエリートって認識で良いわ」

「そうか」

「うん。で、今からあんたを本部に連れてくわ」

「本部に?それはそのIAFの、か?」

「そうよ!あんた、異世界から来たんでしょう?なら、それなりの力あるってことだわ」

力、か。

自虐的な観念にまたも取り憑かれそうになる。

こっちに来てから頻度が上がった気がする。

「召喚魔法の難易度は高いわ。惑星によっては魔力供給が極端に少なくて、成功率1%未満、なんてこともあるのよ」

俺の表情を不安ととったのか、カンナがフォローする様に言う。

「へえ。それで、ここはどこなの?」

「聞いてなかったの?!…第3銀河にあるルビライト恒星系第4惑星。固有名アクアランスよ」

「ルビライト…」

間違いない。ついさっき、いやついさっきであってほしいが、昏睡状態が数時間以内ならついさっき、チョークとカエルの血で描いた魔法陣の上で唱えた言葉だ。

「あんたこそ、どっから来たの?」

「ん、と、太陽系の地球って星なんだけど」

「地球?!あの地球から来たの?」

「あ、あぁ。そんな驚くことか?」

「環境汚染濃度が危険域まで上がりかけてる星よ。そして魔力の供給レベルはⅠ…最低級よ」

そういう彼女の目は、祖国を喪う運命の少年を悼み、そして、どう転移したのかと驚く、疑惑の色に揺れていた。


それからカンナは箒なんて跨るのは任務の時だけで良いわ!と何故かプリプリ怒りながら公用車らしき黒いセダンに乗り込んだ。

車のサイドに金色の五芒星を模ったIAFのマークが入っていたそれの後部座席に座ると、カンナは黒いローブの男性運転手に何か告げ、スッと発車した。

スカイタウンのメインストリートを駆け抜け、透明で七色に明滅する不思議な空中通路へと進路をとる。

「地球だと、こーゆーのないでしょ?」

「あぁ、不思議な道だな」

「これ、地脈と結びつけた半永久固定式魔法むずかしいまほうで出来た道だからね」

「地脈?陰陽道かなんかから派生したのか?」

「逆よ。魔法から陰陽道が出来たの」

「へえ」

音もなく滑るこの科学技術の結晶くるま高位魔法ふしぎなみちの上を走る。ほんとに共生してるんだ。

「見えたわ。あれがIAF本部。人類最強の拠点よ」



To be continue‼︎

さっそく第1話でございます。

どうでございましたでしょうか?


まずは@kaz07251にDMをして下さった皆様、なろうHPより感想をくれた方、その他応援してくださる皆様にお礼申し上げます。



さて、第1話では快活そうな少女カンナとの出会いで終わりました。

題名の割に短い…。

魔法と科学の選択肢、その2つの融和、そして人類最強の拠点…。

少しドラマチックに描けていたら嬉しいです。



第2話ではIAFアフのこと、武器のこと、魔法と科学のことについて触れていきたいと思います。

実はあかるは…なんて展開かも?

是非、引き続きご愛読ください

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