引っ越ししたい……
ふと思いついた2時間クオリティの作品なので軽く読んでください。
いろいろ設定がぶっ飛んでいるので突っ込まない様に(笑)
突然ですが、引っ越ししたいです。
この土地から離れたいんです!
でも、できないんですよね~
どんなに引っ越しの手続きしてもすぐに破棄されちゃうんだよ。
親や兄姉は簡単に引っ越せるのに……
なんで私だけできないの~!?
はっ!……これが噂に聞く『強制力』なのか!?
ってゲームや二次元の世界じゃあるまいしそんなことないか……
はぁ……
どうすればここから(この地域から)抜け出せるのかしら……
はやく平穏な生活を送りたい
******
「あの地域から引っ越したい……」
教室に机に突っ伏し愚痴る私に仲の良い友人たちは曖昧な笑みを浮かべポンポンと頭を叩く。
「あの一画から抜け出したい……毎日毎日…砂糖を大量に口から吐くような甘ったるい出来事を見せつけられるあの環境から抜け出したい……今日は隣の家の蒼井先輩と太川満留(ヒロインちゃんその1)が玄関先で抱き合ってたから家から出るに出られなかったよ(家から出ようとしたらヒロインちゃんその1に睨まれた)……裏口から出ようと思ったら裏斜め向かいの白金君が大沢緑(ヒロインちゃんその2)と恋人繋ぎで手をつないで登校しているところ見ちゃったし(しかもヒロインちゃんその2と視線がばっちり合ってしまってこれまた睨まれた)、彼等が通り過ぎるの待って自転車を引っ張り出していたら3軒隣の黒岩先生の所に天野照美(ヒロインちゃんその3)が来てイチャコラしていた(そしてヒロインちゃんその3にも睨まれた)……今日こそは早く家を出て回避しようと準備していたのに……なんで私が家を出る時間にいちゃついているんだよ~!あいつらのイチャイチャ行動が終わるまで家から出られないなんて……おかげで毎朝遅刻ギリギリで風紀には目を付けられるし……最悪……」
一気に愚痴った私の話を聞いていた友人たちから笑顔が消えた。
「なにやってるんじゃー!あいつらは!!!!」
教室内どころか廊下全体に友人たちの怒声が響いた(らしい)。
「ど、どうしたの?みんな」
可愛らしい顔が般若顔になっている友人たちにオロオロする私。
「泉美が気にすることありませんわ。私達、ちょっと用事が出来ましたので朝のSHLと1時限目は欠席しますわ。担任にもちゃーんと伝えておきますので」
「え?聖奈ちゃん?」
「泉美は心配しないで教室で待っていてね?」
「しおりちゃん?」
「じゃあ、行ってくるね」
「優香ちゃんまで!?」
私の静止を聞かずに友人’Sは教室を出て行った。
後に残されたのはぽかーんと彼女達を見送る私とクラスメートだった。
友人たちが戻って来たのは4時間目の終わりだった。
どこに行っていたのか聞いてもニッコリ微笑んで躱された。
うーん、まあいいか。
必要になったら話してくれる子達だからね。
お昼休みはいつもは学食だけど今日はお弁当を作ってきたと言ったら友人たちに拉致られるように裏庭に連れて行かれた。
この学校の裏庭って結構広いローズガーデンなんだよね。
季節ごとに入れ替えているのか年中咲き乱れている。
美術部員たちが写生している姿を放課後によく見かけたりする。
フラワーアレンジ部は理事長と交渉して時々薔薇を分けて貰っているという話も聞いたことある。
そして憩いの場として結構裏庭は人気スポットだったりする。
ちなみに中庭には大きな桜の大木が数本植えてあり、その木陰でくつろいでいる人も多い。
「んー、いつ食べても泉美のお弁当はおいしいですわね」
「うんうん、お嫁さんに欲しい~」
「あれ?これ味付け変えた?いつもと味付けが違う…私好みの味付けだ~」
友人たちは私のお弁当をおいしそうに食べてくれるからこうやって時々食べてもらう。
まあその理由が賞味期限間近の食材の処分の為なんだけどね(これは友人達には内緒だけどばれている可能性大)
ワイワイ楽しんでいた私たちだが、ある一組のカップルが現れたことで楽園が北極に変わってしまった。
主に友人たちからの冷気がすごい……
聖奈ちゃんたち以外の場所からの冷気もすごいな~
どれだけ嫌われているカップルだよ……
裏庭に姿を現したのは我が家のお隣さんである蒼井翔先輩とその彼女の太川満留。
蒼井先輩は違うと全力で否定しているが……あんなにベッタベタにくっついていては説得力がない。
太川満留は私達と同学年だが、どうも私たちを見下している部分がある。
私はさほど気にならないのだが、大企業令嬢である聖奈ちゃんや、古い歴史を持つ名家の優香ちゃんは我慢ならないらしい。
しおりちゃんも太川満留の事を嫌っている。
入学式の時に彼女に突き飛ばされて後頭部を掲示板の柱にぶつけて気を失って入学式に参加できなかったことを未だに根に持っているらしい。
「ねえ、デザートにチーズケーキ作ってきたから家庭科室で食べない?」
寒くなる裏庭から抜け出したい私が提案するとあっさり聖奈ちゃん達から冷気が消えた。
「え?チーズケーキ!?」
「食べる食べる!」
「泉美のチーズケーキは絶品だもんね!ホールで食べたい!!!」
「家庭科の美代先生にチーズケーキ2つを献上して冷蔵庫使わせてもらったんだ。保冷剤だけだと心配だったからね」
弁当箱を片付けて蒼井先輩達の横を通りぬけて校舎に向かう私達。
「あなたが柊泉美?」
突然のことに私たちは『無視をする』というスキルを発動できなかった。
「そうですけど……なにか?」
不機嫌さを隠さずに振り返ると太川満留が表面上は笑顔を浮かべているがわかる人にはわかる様に私を睨んできた。
「あなたね。翔君に付きまとっている幼馴染って」
「はぁ!?」
「翔君は私と付き合っているの。いくら幼馴染でも少しくらいは遠慮してくれない?」
妙な言いがかりを吹っかけられました。
蒼井先輩とは中学に入学した頃から距離を置いているんだけど……
中学に入学した時に上級生のお姉様方に釘を刺されたので必要以上には近づかなかった。
逆にそれが蒼井先輩が余計に私に構う結果になったけど、蒼井先輩と親しいお兄様方が空気を読んで蒼井先輩を私から遠ざけてくれたのでお姉様方に絡まれることなく無事に中学を卒業することが出来たんだよね。
蒼井先輩は中学に入って身長が急激に伸びてから急にモテ始めた。
街でモデルにスカウトされることも度々あったらしい。
まあ、女性と見間違うほどの美貌、常に学年TOP10に入る頭脳をもち、テニス部のエース。
常に彼の周りには彼に憧れる女性が蔓延っていた。
ちらりと蒼井先輩の方を見るとぶんぶんと顔を真っ青にさせて首を横に振っている。
「付きまとう…ねえ。入学した頃から挨拶以外したことないし、学校内で会話したこともない。家が隣と言っても小学校を卒業してからは行き来していないのよね。……朝から近所迷惑になるとわかっていながら蒼井先輩の家に突撃し他人の出勤・通学の邪魔したり、休み時間ごとに先輩のクラスメートの方達の迷惑を顧みずに教室に押しかけたり、放課後も部活動の応援と言いながら活動の邪魔をしている太川さんよりも蒼井先輩に接している時間が少ない私に『付きまとうな』と言われるのは納得いかないわね」
ふぅと大げさにため息をつく。
そろそろ私もコイツらの周囲を顧みないイチャつきに我慢の限界なのよね(別に僻みじゃないわよ)
蒼井先輩と太川さんが何かするたびになぜか私にしわ寄せが来るのよ。
無関係だと主張してもね。
私のため息に友人たちが一歩後ずさり、静観することを決めたようだ。
「ねえ、太川さん。あなた、蒼井先輩だけじゃなくて紅丘先輩や水崎君、緑澤先生とも『親しくお付き合い』しているそうね」
「え?」
にっこり微笑むと太川さんがお顔を真っ青にさせていた。
「知らないと思った?この学校の生徒はみんな知っているわよ。あなたが複数の男に媚を売っているって……朝から晩まで男を追いかけているって」
私は持っていた鞄から1冊のファイルを取り出す。
「ここにね、あなたが転入してきてからの経歴がこと細かく書かれている書類があるの」
「!?」
「週一でレポートが送られてくるの。私には関係ないと言って受け取りを拒否しても毎週毎週……おかげで知りたくもない情報を得る羽目になってしまったわ」
ファイルの表紙を捲ると細かな文字と写真がA4サイズの紙にぎっしりと納まっている。
ぺらぺらと紙を捲る私に太川さんがファイルを奪おうと距離を詰めてきた。
「ああ、ちなみにコレ。複製品だから奪って破棄しようとしても無駄よ。本物はある場所に隠してあるし、私以外にも持っている人いるから」
紅丘先輩の元恋人とか、水崎君の初恋の人とか、緑澤先生の元婚約者もこのファイル持っているのよね。
彼女達とは時々お休みの日に集まって遊んでいたりする。
「あなたが蒼井先輩とベタベタするのは別に構わないわ。私を巻き込まないでくれればね」
ファイルを鞄にしまい、私はしおりちゃんたちを促して校舎に向かった。
これで毎朝のいちゃつき行動を自粛してくれるとは露程も思っていないが、私的にはちょっとすっきりしたので良しとしよう。
「さあ、家庭科室でチーズケーキ食べよ」
にっこりと笑う私にしおりちゃん達も笑みを浮かべて早歩きでその場を離れた。
その後、裏庭で何やら太川さんが騒いでいたらしいが私には関係ないはずだ。
ちなみにその後、あと2回同じようなことを繰り返すことになるとは……
私はこの時は夢にも思っていなかった。
たまたま近所に住んでいて、たまたま彼らの幼馴染だったがためになぜ私がヒロイン'sの目の敵にならなきゃならないんだ!
ああ、引っ越ししたい!
彼等から遠く離れたい……
そして、私も恋がしたい!!!
***
柊泉美は知らなかった。
彼女が住んでいる世界がある作家が作り出した作品(『ゲーム』『少女漫画』など)の混合世界であることを…
彼女の近所に住む彼らが攻略対象と呼ばれる存在であることを。
そして、彼女自身がそれぞれのヒロインたちの『ライバルキャラ』であることを……
それ故に、彼らの住む地から離れることが出来ないということを……
人物紹介&裏設定
主人公
・柊 泉美 ひいらぎ いずみ
物語の主人公
彼女の家の周りはなぜか美形だらけ
引っ越ししたいがなぜかいつも誰かに邪魔され引っ越しできない
両親は海外に転勤
年の離れた兄は隣の県の学校の教師
年の離れた姉は大学卒業後結婚し一児の母親として隣の街に暮らしている(もと商社勤務)
本人は地味な顔をしていると思っているがかなりの美少女
ただ視力が悪いので黒縁眼鏡をかけているのであまり知られていない
ご近所様
・蒼井 翔 あおい かける
泉美の1歳年上の幼馴染
家は柊家の右隣
ゲーム『TrueEyes』の攻略対象者
容姿端麗・成績優秀・スポーツ万能のパーフェクト人間
唯一の弱点が芸術関係(音楽・美術ともに壊滅的)と泉美
泉美の事は妹のようだと思っていたがヒロイン(太川満留)と出会ってから異性として見るようになる。
泉美と話そうとするとヒロインに邪魔されてイライラしている
・白金 卓巳 しろがね たくみ
泉美と同じ年(ただし学校は違う。男子校に通っている)
家は柊家の裏斜め向かい
少女漫画『おさなともだち』のヒーロー
小学校時代に引っ越してきて最初に友達になったのが泉美
泉美とは男女の垣根を越えた友人だと思っていたが最近は妙に気になってしょうがない
・黒岩 保 くろいわ たもつ
泉美の兄(勇海・いさみ)の同級生兼親友
泉美の学校の国語教師(おもに古典)
家は柊家の3軒隣
乙女CD(シチュエーションドラマCD)『陰のある人シリーズ』のひとり
小さい頃から泉美を可愛がっていたが泉美が中学に入った頃から避けられ現在も落ち込み中
落ち込み中の所をヒロインに付け込まれ攻略され途中
泉美命名:ヒロインちゃん’s
・太川 満留
ゲーム『TrueEyes』のヒロイン
泉美とは同じ年だが別クラス
美少女ではあるが周りと話が合わないのでクラス内で浮いている存在
一部では電波娘と呼ばれている
成績は中の上(波が激しい)
・大沢 緑
少女漫画『おさなともだち』のヒロイン
泉美と同じ学校・同学年別クラス
通学途中、別の学校に通う白金卓巳に一目惚れ
猛アタックの末、『おともだち』からスタートさせた子
・天野 照美
街中で偶然聞こえてきた黒岩保の声に一目惚れならぬ一聴き惚れをして家の権力を使って存在を割り出した子
天野グループの社長令嬢
電車で2駅隣の有名お嬢様学校に通っている。
黒岩の傍にいたいからという理由で近所に引っ越してきたが1週間後に実家に連れ戻される。
彼女がいた1週間はご近所では『魔の1週間』とされ誰もその時の事を語らない。
泉美の友人達(この世界の創造主の分身的存在)
・村崎 しおり
泉美の小学校時代からの友人
泉美の事が大好き
泉美に近づきたければ私を倒せと常日頃言っているらしい
・小金 優香
泉美の中学時代からの友人
中1の料理実習の時の泉美の料理に惚れこんで時々料理を教わっている
白金の母方の従妹
実は古い歴史を持つ名家のお嬢様
・新名 聖奈
泉美たちとは高校入学式の時に出会う
メガネを忘れクラス表を見てもぼやけて見えなくて困っていた所を泉美に声を掛けられたのが切っ掛け
泉美の「聖奈ちゃんはコンタクトの方がいいよ!あ、でも時々眼鏡というギャップもいいね」
の一言でコンタクトデビュー(笑)
天野照美とは小中学校時代の同級生
何気にお嬢様
別視点とか連裁版を書く予定なし