私の家の中
バリバリと口の中で音がする。なんとなく、申し訳程度に付けられた魚の味がした。
今日はいつもより食べることができた。すると、お皿を戻しに来た「マサ」と呼ばれている人間が私の頭を撫でる。何でいちいち撫でてくるのか不思議でしょうがない。ただなんとなく、私に触りたいだけなのだろうか?
皿を持ってどこかに行ったことを確認した私は、太陽の光があっている場所を探して歩く。今日も、また同じ場所にたどり着いた。外の景色が見える、透明な壁のある場所だ。ここは十中八九暖かい。
歩き疲れた私は、ここに寝転がり仮眠をとっている。「マサ」は、私が寝ていても何も文句を言わないし、起こすこともない。だから安心して眠れる。
「おかえり」
「ただいま。今日も悪いな、作らせちゃって」
遠い場所から二人の声がする。そして足音。だんだんと頭が引き戻されている感覚がした。
私は目を覚ます。すると、「タカシ」と呼ばれている人間がいた。さっきの足音は、この人のものだったらしい。私は、寝る前に食べた場所へ向かった。しっかりと、今日も食べ物が置いてある。ただ、いつもはないものば隣に置いてあるのがわかった。これは……?不思議に思い爪で引っ掻いてみる。すると、爪の先がわずかだが削れた。思わず手を離してその物体をまじまじと見つめた。
「タカシはさ、彼女とはどうなの?」
「それが、音信不通。仕事が立て込んで大変みたいだ」
私の耳に届いてくる言葉は、どれも意味のわからない言葉だ。どちらでもいいから、この物体を私にわかるように説明してほしい。
もう一度爪を立てた。今度は、先ほどより力を入れたので、爪がガリッという音を立てて削れた。この音を聞いても、二人は反応しない。つまり、これは爪とぎとゆうことでいいのだろうか?もう一度爪を立てる。またガリッと音が鳴って爪が削れた。なんだかこのこの感覚が気持ちよくなってきた。さっきまであんなに警戒していた物に、今は手を乗せて愉快に爪を研いでいる。私という猫は、とても変わっている。
「あ、使い始めた」
「本当だ。でもよく見つけたね、あんな真っ黄色の爪研ぎ」
「たまたま目に入ったんだよ」
こちらを向いて何かを話している二人を、私はチラッと見た。怒っている雰囲気ではないので、多分これで使い方は間違っていないのだろう。それにしても、この爪に引っかかる感じがなんとも言えないくらい、とても気持ちがいい。ずっとこうしていたいのだが、私の爪はそんなに早く伸びないので、形を整えて終わりにするとしよう。あぁ、なんとも有意義な時間を過ごした。灰色の四角い爪研ぎよ、心から感謝をするとしよう。そして、同じく人間の二人にも感謝しよう。
爪研ぎも終わって、お腹も満たされた私は、もうなにもやる気はない。あとは、外が暗くなるころまで眠るだけだ。段差を上がってすぐの場所に、私の文字が書いてあるふわふわな場所がある。ここで寝ていても何もされたことはないので、多分この場所は私の陣地と考えていいのだろう。この場所は私が眠るのに最適な場所である。おっと、もうこんなに遅くなってしまったようだ。もう眠りに付かなければ、夜間の集合時間に起きることができない。
それでは、また明日。