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始まりの散歩

「青い空」と、人間では言う。だが、ペットたちの目はそんなに多くの色を判別できていない。灰色に白いだまができているようにしか見えない。どんなにペットと一緒に綺麗なものを見ても、ペットは何が綺麗か分からない。灰色の、何が綺麗なのか。

 私は猫だ。犬ではない。

 いつも気まぐれに動いていると思われがちだが、実はそうでもないのだ。私たちはいつでも自分のやりたいことをしたい時に、そしてやりたいようにやっているだけの話。例えば、私は今高い場所を歩いている。何故かなんて、聞かれても困る。歩きたいから歩いている。

 近所の猫が正面から歩いてきた。あぁ、もう少し若ければここから飛び降りた。だが、ここはまだ若い新顔の猫に道を譲ってもらおう。

「あ、猫がお辞儀してる」

 黄色い帽子を被った小さい人間が、こちらを指さして何か言った。だが、いつものことなのでチラリと睨む程度でよしとしよう。

 この、散歩コースと私たちの中で言われている場所は、木が何本も脇に生えいて木陰が多くて夏はとても涼しい。冬は、雪が何故か溶けていることが多いのでとても歩きやすい。たまに生ぬるい時でさえあるのだ。少々不気味だが、死にはしない。

ずんずんと道を進んで行くと、私の住処が見えてきた。緑色の屋根が特徴の大きめの家で、私に食料と水分を与えてくれる住民が二人いる。何故かドアが沢山あって、いつもどこに入いろうかと迷うが、私の名前らしきものが書かれているので大丈夫である。

 私は猫だ。字は読めない。だが、何度もここに戻ってくるので形は覚えた。

 大きなドアの一番下に、私が入れる小さな窓のような物が付いていて、そこを頭で押すと中に入ることができる。いつもそうやって入っている。

 カタンという音と共に、中に足を踏み入れると、ふわふわとしているものが足の裏に当たる。どうやらここの主人は、私の足が汚れていると思っているらしい。前にそんなことを言っていた。

「おかえり。今日は、普通のキャットフードな」

 中に入ると、いきなりそんなことを言われた。「ふつう」と聞こえたときは、パサパサしたものだ。何日に一度この日がやってくる。私は、いつもあのしっとりとした舌触りのものがいいのだが、そんなこと鳴いた所で通じたことなど一度もないのだ。もうとっくの昔に諦めている。

 

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