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『ザ・ファンタジーフィールズ』 第六章 RUINOUS-WORLD  作者: メル・ホワイト・プリンス・ヴェリール
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第三節「ヴァニラ・フィ-ルズ」

      挿絵(By みてみん)




 ”VANILLAヴァニラ-FIELDSフィールズ”。それは”白き愛の女神”エタニティの王国世界。



 神代の時代。


 古の神々は、それぞれに新世界を創造しました。


 女神エタニティは、柘榴の森として残されていた”KHAOSカオス”の中から神霊たちを引き連れ天地を創造します。



 サルマスと共に時を創り、時は空間を広げて光や感覚を芽生えさせ


 アルソナと共に大地を創り、大地は山や森、野原を育み、友が生まれて花や風となり


 次に


 ユリゼンと共に川や海を創り、海は水平線を掲げ、理性と秩序を生み出し


 最後に


 ルヴァと共に愛を満たし、”VANILLAヴァニラ-FIELDSフィールズ”を覆いました。




 そして


 咲き乱れる白い花が絨毯のように敷き詰められた広大な野に、ひとつの木の苗木を植えます。


 木は瞬く間に成長し、天にも届きそうな大木となります。


 その白い葉を茂らせる太い枝々には、幾つもの家や宮殿、城が立ち並び、都”VANILLAヴァニラ-TREEツリー”となりました。




 ”VANILLAヴァニラ-TREEツリー”には、天地創造の後に天使となった神霊のサルマス、アルソナ、ユリゼン、ルヴァが。


 また、女神と共に新天地を目指した民である妖精ヴェリールらが。


 中でも何度も転生を繰り返し、天使のような白い羽を持った古いヴェリールたちが住んでいました。




 彼らは死ぬと、その魂は北にある”ポホラの山”へと帰ります。


 そこにある柘榴ざくろの森”リンツ・コート”に吸い込まれて消え、再び白き花”VANILLAヴァニラ”の蕾に宿り生まれ変わります。




 花開き、その中からふわふわと舞い出た綿のようなヴェリールの幼生は


 ”VANILLAヴァニラ-FIELDSフィールズ”のあちらこちらへと散らばり


 ある者は透き通る羽を持った妖精となり


 ある者は生きとし生けるものに精霊となって宿り


 またある者は姿を人に変えて暮らし始めます。




 ヴェリ-ルたちは、都”VANILLAヴァニラ-TREEツリー”の周りに街や村を創り、山や野、海辺にも出て暮らし始めました。


 それらは全て”VANILLAヴァニラ-TREEツリー”の根で繋がり、記憶や愛など全てを共有する事が出来ました。




◆・.。*†*。.・◆




 暫くして、明るく柔らかな光に温もりを覚えながら灰色狼は目を覚まします。


 未だ夢うつつではありましたが、その視線の先には白く美しい衣服に身を包み、テラスで佇む少女の姿がありました。


 朧げではありましたが、その遠くを見つめる姿が、幾分大人びても見えましたが、間違いなく雪の荒野に生き倒れた少女に違いありませんでした。



 ふかふかの白く毛足の長い絨毯。白い壁は穏やかな眩さに包まれ、家具などの調度品も白を基調に揃えられていました。


 その窓辺の外にあるテラスで、風に揺れる白いカーテンに見え隠れしながら、少女は外の風景を眺めていました。


 どうやら女神の約束通り、自分たちは都”VANILLAヴァニラ-TREEツリー”の宮殿”WHITEホワイト-GARDENガーデン”にいるようでした。




 ふと、正気を取り戻す狼。



--- そう言えば赤子は? ---



 そう、少女と一緒にいた赤子の事を思い出し、彼は伏したまま部屋を見回します。


 すると赤子の姿を見つけられずにいる狼に、誰かが親しげに話しかけます。



「気がついた? 大丈夫?」



 その声の主を探すよう、四肢を伸ばして起き上がる狼。



「ほら、ここだよ、ここ……」



 そう言って微笑みに変わる声の方向へ頭を持ち上げると、そこには翼をはためかせ宙を舞う妖精の姿がありました。



「おはよう、分からない? 僕だよ、僕……」



 真っ白で天使のように柔らかな翼。


 艶めき白く長い髪。


 そして、その小さな腰には細い剣を携えています。


 その騎士さながらの格好をした妖精。それは、この女神の世界”VANILLAヴァニラ-FIELDSフィールズ”に住む妖精ヴェリールに生まれ変わった赤子の姿でした。




 要点を得ないでいる狼に彼は言います。



「しょうがないな。ま、でも仕方ないか。おはよう”フローズン”」


「フローズン?」



 その名を聞いて狼は、不思議な事に気付きます。



 ”フローズン”。確かにそれは自分の名前でした。


 ただ、彼にはそれ以前、”ハティ”という名前で呼ばれていた記憶がありました。


 しかし、いったい何時から”フローズン”と呼ばれるようになったのか?


 その記憶はありませんでした。



「フローズン、そう”フローズン・スコル”。それが君の名前だろ? 僕の名前は”ホワイト・ベリー”。そう言えば僕が誰かも分かるだろ?」


「あの時の、赤子……」


「やっと分かってくれたみたいだね。あの時はありがとう。君が助けてくれたおかげで、僕はこうして生きている……」



 そう、彼らには白き女神が新たな名前を与えていました。


 そして、女神に新たな名前を与えられたもうひとり、テラスにいた”ヴァニス”が、二人の会話に気がついて部屋の中へと戻ってきます。



「おはよう、フローズン」


「おはよう……」



 この後、フローズンはヴァニス達に雪の荒野での話や、白き女神との約束の話をするのでした。


 そして、ヴァニスは彼に、灰色狼ではなく白狼になってる事や、肩の焼印や顔の痣は消え、それぞれが首飾りになった事を話しました。




 そして、ホワイト・ベリーが言います。



「で、多分これが”野原の書”。でも、本を開いても……」



 すると、部屋の暖炉の横に置いてある古い猫足テーブルから声が聞こえてきます。




 その声の主。


 それはテーブルの上に置かれていた銀の鏡。あの雪の荒野で女神の掌から現れた妖精アイス・キュロスでした。


 彼女はホワイト・ベリー同様、天使の翼を持つ妖精に姿を変えると、ヴァニス達の輪に加わり言葉を続けます。



「そうよ、それが”VANILLAヴァニラ-FIELDSフィールズ”で起こった出来事が記されている”野原の書”。この世界に住む妖精のヴェリールたちが、ずうっと昔から見たり聞いたりしたものが綴られている歴史書……」



 再度、ホワイト・ベリーが問い直します。



「でも、本を開いてみたんだけど、どのページも真っ白なんだ……」


「それは、この世界”VANILLAヴァニラ-FIELDSフィールズ”が不完全なせいなの。でも、直に元に戻るわ。そう、あなた達が”野原の書”に物語を取り戻すの……」


「僕たちが、物語を……?」




◆・.。*†*。.・◆




 あれから、毎日のようにホワイト・ベリーは”野原の書”を開きました。


 しかし、今日も開いた書の紙片は白く、転寝うたたねをしていた時の事。


 部屋のテラスから緩やかに吹き込む春風が、物語のページをめくります……。




◆・.。*†*。.・◆




 長き戦によって燃え尽き、壊れてしまった白き女神の世界‘VANILLA-FIELDS’。


 その枯れた世界をあるべき姿に取り戻し、安住の地と安らかな時を手に入れる為、こうして彼らの新しい物語は始まります。




 そうして、やがて彼らは



----- 天使の羽の魔法使いたち -----



 そう呼ばれるようになるのでした。






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