表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夏の空の下で僕達は笑う  作者: ヨハン
『彼方』
13/15

答え

もうすぐクライマックスです

「湊……今なんて……?」


「僕も空弥さんのことが好き……そう言いました」


 俺は湊の方へ向き直る、すると湊はぎゅっと俺を抱きしめた。胸に顔を埋めている。


「……湊」


「大好きな人がいなくなろうとしてるのに……止めないはずがないです」


 湊が愛しい。ずっと抱きしめていたい。そう思い始める。

 こんな子を残して、俺は『彼方』へ行けるのか?

 いや、きっと無理だ。湊を残して行くことなんか出来ない。


「もしもどうしても行くというならば……僕も連れて行ってください」


「え……?」


 予想もしない言葉。

 湊は、俺を連れ戻しに来たんじゃなかったのか。


「本当は連れ戻しに来たんですけど……空弥さんがいなくなるよりはこの方がずっといいです」


「湊……お前は……っ……馬鹿……だな」


「……空弥さん?」


 声が震え、言葉にならない。

 やがて俺の視界は潤んでぼやけ始める。


「お前を残すことも……連れて行くことも……出切るはずないだろ……っ」


「……じゃあ……」


「俺は……『彼方』へ行ったりしないっ……湊と……っ……ずっと一緒にいたい!」


「空弥さん……僕も、ずっと一緒にいたいです」


 もう、我慢することは出来なさそうだった。

 胸の奥から一気に感情が溢れ出てくる。

 湊は俺の様子の変化に気がつき、優しい声音で言った。


「空弥さん、我慢しないでください」


 その言葉は、ピンと張った俺の我慢の糸を断ち切った。


「湊っ……うっ……ぁぁぁっ! あぁぁぁぁ!」


 涙がとめどもなく溢れてくる。

 その神秘的な空間に響くのは、俺の泣き声だけだった。

 湊は何も言わず、ずっと俺から離れずにいてくれた。






「……」


 俺達は泉のほとりに並んで泉を眺めていた。

 いつの間にか雨は降り止んでいて空気が先ほどよりもひんやりしている。


「空弥さん……こっち向いてください……ふふっ」


「無理だ……あんなに思いっきり泣いた後だぞ……」


 恥ずかしい、思い出すだけで顔が熱くなる。

 あんなに泣き喚いたのはきっと小さな時以来だろうから。


「そういえば……リコはどうしたんでしょう?」


「……どっかに行ったのか?」


 忘れていた。

 あの神の幼女はどこへ行ったんだ?


「……ここにいる」


「わっ!?」 「わぁっ!」


 いつの間にか俺の隣にちょこんと座っていた。

 思わず声が裏返った驚きの声を上げる。


「急に現れんな……」


「人前でいちゃいちゃしてたのは空弥と湊、わたしは空気を読んだ……」


「それは悪かったな……」


「……ん」


 リコは立ち上がり、俺と湊の前に立つ。

 穢れの無い瞳で俺を見据え、口を開く。


「空弥、聞きたい」


「何をだ?」


「空弥は湊のことを……大事に思ってる?」


「当たり前だ」


「空弥さん……即答なんて恥ずかしいです……」


 湊は頬を赤らめる。今の俺にはその姿がたまらなく可愛いと思えた。

 リコは少しムッとした後、再び同じ声色で続ける。


「……その言葉に嘘は無い……だから、願いが叶う」


「願い……?」


「澪の、願い」


「姉ちゃんの願いは……俺に……」


「あれで終わりじゃない……澪の願いには続きがある」


「続き?」


「空弥に大切な存在が出来て、空弥がその存在を心から大切に出来た時……澪はこの世界へ戻ってくる」


「えっ!?」


 俺は立ち上がった。

 今、リコはなんと言った?

 姉ちゃんが帰って来る……!?


「いつ、いつ帰って来るんだ!?」


「落ち着いて……もうじき……帰って来るはず」


「……本当か?」


「……あ」


 リコが声を上げる。


「二人を導いてくれてありがとう、リコ。それとただいま」


「うん……おかえり」


 大人びた女性の声。凛としていて、それでいて優しい声。

 俺はおもむろに振り向いた。

 そこには、優しそうに微笑む髪の長い女性がいた。

 その顔には確かに見覚えのある面影、あの日からずっと探し続けていた人の面影。


「姉……ちゃん……?」



「大きくなったね、空弥……ただいま」

次回、最終回ですかね?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ