第2話
エドワードとアーサーの親子の話しです。
「え…。違うのか?」
エドワードが息子と侍従の顔を見合わせました。
「父君、何をお考えでしたか?」
冷ややかな声でアーサーが尋ねます。
その様子は王妃ソフィーを怒らせたときにそっくりでした。
「…。」
たらりと冷や汗をかいて、エドワードはまずいと表情で侍従の方を見ます。
「侍従、父君の代わりに説明してもらおうか?」
微笑んでアーサーは侍従にやさしく尋ねます。
その様子も母譲りのようで侍従は何か嫌な予感がしました。
「侍従、答えぬか?」
少し機嫌の悪そうな声でアーサーが侍従に迫ります。
「は…。それがその…。恐れながら申し上げます。」
侍従はあっさりと吐いてしまいました。
「侍従、おまえ裏切るのか?」
エドワードが恨みがましい様子で言います。
「も、申し訳ございません、陛下。まだ命が惜しいもので、お許し下さい。」
侍従が情けない声で答えます。
「それより父君、僕が隣国の王女とそんなことになるとお思いで?」
アーサーがズイッとエドワードに向けて足を進めて来ました。
「い、いや…。侍従がアーサーが隣国から戻ってきてから様子がおかしいっていうから、そうじゃないかなと思ったんだけど違うのか?」
ポリポリと頭をかきながらエドワードが居心地が悪そうに言います。
「そんなはずじゃないでしょう、父君じゃあるまいし。」
ぷいとアーサーはそう言うと椅子に座りました。
「おい、アーサー。じゃあなんだって、最近様子がおかしいんだ?母君も心配してるぞ。」
エドワードもさすがに息子の態度に憤慨して言い募ります。
「だって…。」
不満そうにアーサーがつぶやきます。
「だってじゃ分からないだろう。何があったんだ、アーサー?」
エドワードが心配そうに尋ねます。
「…父君が話したって仕方ないからですよ。」
聞こえるか聞こえないかぐらいかの声でぶつぶつと答えます。
「え…!なんだって?」
エドワードが怪訝そうに聞き返します。
アーサーは不満そうな顔をして下を向いてしまいました。
エドワードにそっと侍従が近づいて、
「陛下、王太子さまはお話しになりたくないようですよ。父君に話しても仕方ないと仰せでございます。」
「何だと!それはどういうことだ?」
不機嫌そうにエドワードが答えます。
「陛下、私じゃありませんよ。王太子さまがそう仰せなんですよ。」
侍従がぶんぶんと首を振って言い募ります。
「そういえばそうだな。」
エドワードは侍従に軽くそういい捨てると、アーサーに近づいて行き、
「アーサー、いったいどういうことなんだ?父に話せないことなのか?」
「だって、話したって仕方ないじゃない。」
恨みがましい目つきでアーサーが答えます。
「話すぐらいしたらどうだ?それでは何の解決にもならないぞ。」
ため息をついて、エドワードがさとすように話しかけます。
「…隣国でフェンシングをしたんです。」
「フェンシング?ああ、確か隣国の王弟殿下はフェンシングの達人だとか。」
「そうなんです、父君。隣国の王弟殿下はフェンシングの達人で、国際大会にも出てるから、とてもお強いんです。楽しかった~。」
アーサーは目を輝かせて言います。
「もしかして、アーサーはフェンシングをやりたいのか?」
「はい…。」
上目遣いにアーサーはしぶしぶ答えます。
「は…!それならすればいいじゃないか?」
エドワードは呆れたように答えます。
それを聞いたアーサーは思わずムッとして、テーブルをバンと叩いて、
「簡単に言わないで下さい、父君!私は王太子なのですよ。そのようなことは出来るはずはないでしょう。」
「何言ってるんだ?フェンシングぐらいで問題があるはずがなかろう。」
やれやれという表情でエドワードが答えます。
「問題です!だいだい誰のせいだと思っているんですか?」
アーサーがエドワードを睨みつけて言います。
「ど、どうしたんだアーサー?おかしいぞ。」
エドワードは戸惑ったように答えます。
「陛下、王太子さまのお気持ちをお察し下さい。」
なんとも言えない表情で侍従が言います。
「侍従、いま二人で話しをしているんだ。邪魔をするでない。」
エドワードがめずらしく真剣な表情で言います。
「申し訳ございません、陛下。差し出がましいことを申しました。」
侍従はその場の空気を察したのか、思わず縮こまりました。
「さて、アーサーいや王太子。そなたの話しを聞こう。何でも申してみよ。」
エドワードはアーサーへ視線を戻し、真剣な表情で尋ねます。
その真剣な表情にアーサーは何かを感じたのか、少し緊張した面持ちで話しはじめました。
「僕はこの国の王太子として相応しくなろうと今まで努力してまいりました。それゆえ、フェンシングは楽しいスポーツですがそれにうつつを抜かすわけには参りません、陛下。」
「それは分かるが、まだ国王になったわけではない。まだ若いのだから、楽しみにすればよいではないか?」
「いいえ、陛下。僕は皆に完璧な王太子を求められております。だから、フェンシングが出来ないのです。」
苦渋に満ちた表情でアーサーが答えます。
「アーサー、気持ちは分かるがそのようなことでは国王になる前に疲れ果ててしまうぞ。」
心配そうにエドワードが諭します。
「今まで何も申さなかったが、国王というものは完璧である必要はない。いかに臣下を上手に使っていくかそのことの方が重要である。僕はそのようにしてきた。」
「陛下いや父君…。」
アーサーは、はっとした表情でエドワードの方を見ます。
「陛下はちょっと使い過ぎですけどね。」
侍従がその場の空気をなごますように言います。
「くくっ…。侍従、いやに申すではないか。」
笑いをこみあげきれずにアーサーが苦笑いをして言います。
「黙れ、侍従。いま、真剣な話しをしているんだ。」
エドワードは仕方なさそうに侍従に注意をします。
「はっ、失礼をいたしました。」
「だからな、完璧な王太子など必要ないのだ。そなたはそなたらしくすればよい。いざとなればアルフォンソもいる。」
そう言って、エドワードはポンとアーサーの肩をたたきました。
読んでいただいてありがとうございます。
もうしばらく続きますので、お付き合いいただければうれしいです。




