あと少し早ければ
今行くぞ!!
買い物帰りに橋の上を通ると、下の方から何やら音が聞こえる。
ふと気になり、橋から身を乗り出し、下を見下ろすと、子供が一人溺れながら流されていくではないか。
『大変だ! 助けなくては!!』
と橋の手すりに足をかけるも
『そういえば、今日はお気に入りの服だった』
と躊躇する。
そうしている間にも、子供は水面から頭が消えたり出たりしながら、川下の方へと流されていく。
『服なんか、かまうもんか!』
と再度、飛び込もうとするが、表面的な善意だけでは体がいうことをきかない。
『クソ! 動け! 動いてくれ!!』
そう思いながら、身を乗り出すと、飛び込むつもりもなかったのに、体は川へと落ちていった。
『こうなったら、やけくそだ!』
と子供の方へ泳いでいこうと思った瞬間
「すいませ〜ん! アソコにも溺れている人がいます!」
と声が聞こえる。
ふと河川敷の方を見ると、毛布にくるまれた溺れていた子供の傍から、私の方を指差して叫んでいる女性の姿が見えた。
『俺は! 俺は溺れてなんか!!』
と思っていたが、レスキュー隊らしき人が泳いでくると
「大丈夫ですか!!」
と声をかけられた。
無言で頷くと、河川敷まで浮き輪のようなモノをつけて、引っ張っていかれた。
「いい大人が川に落ちたらダメですよ」
と言われ、溺れていた子供を探したが、もうそこにはおらず
「はい……すみません……でした」
と頭を下げていた。
『どうして俺が謝らないと!!』
そんな思いでいたが、水に濡れ寒くなったので帰る事にした。
『【骨折り損のくたびれもうけ】とはこの事だな……。っていうか、俺の買い物袋は!?』
川下を見ると、どんどん流れていくビニール袋が見えた。
俺はビニール袋が見えなくなるまで、見届けると愕然とその場にうずくまった。
正に【骨折り損のくたびれもうけ】何も得はなく、失ったモノは大きかった。
躊躇うヒマがあるなら、やめとけば……。




