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第1章 Eの章 Eの真実 第1話 【Eという人間】
Eは、自分のことを「何もできない人間」だと思っていた。
〈中学の時〉
親友がいじめられているのを見た。
廊下で目が合った。助けて、と言っているように見えた。
でも、Eは目をそらした。
(もしかしたら、私の思い違いかもしれない。あれは遊びの延長かもしれない。いじめだと決めつけて、余計なことを言えない……)
何も言えなかった。何もできなかった。
〈大学の時〉
ゼミのプレゼンで裏方として必死に働いた。
でも、壇上に立ったのは別のメンバーだった。賞を獲ったのも彼らだった。
打ち上げの輪の外で、Eはただ見ていた。
(私が作った資料なのに……でも、それを言ったら、卑屈に思われるかもしれない。自分からアピールするのは、なんか違う……)
何も言えなかった。何もできなかった。
〈就活の時〉
瞳に会った。初めて「優しさ」に触れた気がした。
面談の最後、瞳は言った。
「一期一会ですからね。いつかどこかで会いましょう。」
その言葉が、どれだけ励みになったか。
入社後、瞳に挨拶しても返ってこなかった時、どれだけ落ち込んだか。
(嫌われたのかな……でも、気のせいかもしれない。確かめるすべもない……)
何も言えなかった。何もできなかった。




