表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【彼女の計画_外伝】 影たちと外側の物語 「彼らもまた、見ていた。」  作者: Taku


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/3

第1章 Eの章 Eの記録 第1話「見ていただけの少女」

※本作は『彼女の計画』シリーズで登場する非常階段メモの真相です。

 本編を読まれた方は「あのメモの真相」が、初めての方は「一人の女性の成長物語」としてお楽しみいただけます。

 全3話で完結します。第1話からお読みください。


あの「非常階段のメモ」は、誰が、なぜ置いたのか――

本編では描かれなかった、ある「普通の社員」の物語が始まります。

【プロローグ】


彼女は一枚のメモを机の上に置いた。


「非常階段、見えてましたよ」


それだけだった。差出人名はない。ただ、その一言だけ。


誰にでもできる行動だった。でも、彼女にとっては違った。


これは、彼女の人生で初めての「誰かに向けた行動」だった。


---


【1. 見ていただけの少女】


中学二年生の夏。


Eには親友がいた。小学校から一緒で、いつも隣にいた。でも、ある日その親友が、クラスの数人から無視されるようになった。


理由は知らない。知ろうともしなかった。


廊下で親友が一人で立っているのを見た。目が合った。助けて、と言っているように見えた。


でも、Eは目をそらした。


教室では、いじめている側の輪の中にいたわけではない。ただ、自分の席で俯いていた。何も言わなかった。先生にも言わなかった。親友にも「大丈夫?」とすら言えなかった。


夏休み明け、親友は転校した。


最後の日、親友はEに何も言わなかった。ただ、一度だけ振り返って、Eを見た。その目が何を言っていたのか、今でもわからない。


でも、Eは覚えている。その時も、自分はただ「見ていただけ」だった。


---


【2. 輪の外側】


大学三年生の秋。


ゼミ対抗のプレゼンテーションコンクールがあった。Eは裏方として必死に働いた。資料作成、会場準備、当日の運営。誰よりも早起きし、誰よりも遅くまで残った。


「Eさんがいてくれて助かる」

「本当にまじめだね」


先輩や同級生はそう言ってくれた。でも、それだけだった。


本番当日、プレゼンターとして壇上に立ったのは、別のゼミ生たちだった。彼らはEが作った資料を使い、Eが準備したデータを映し出し、賞を獲った。


打ち上げの席、彼らは輪になって騒いでいた。Eはその輪の少し外側で、缶ビールを手に、ただ見ていた。


「Eさんも来なよ」


誰かが手を振った。輪の中に入れてくれた。でも、会話は賞を獲った喜びで盛り上がっていて、Eが入る隙間はなかった。


「ほんとは私なのに」


心のどこかでそう思った。でも、口に出せなかった。


その夜、一人で帰りながら、Eは思った。自分はいつもこうだ。頑張っているのに、認められない。輪の中に入れない。


でも、それも自分のせいだとも思った。声を上げなかったから。手を挙げなかったから。


---


【3. 面談の記憶】


大学四年生の就職活動。


Eは何人かの社会人にOB訪問をした。その中の一人に、瞳という女性がいた。同じ大学の出身で、今はEが志望する業界で働いているという。


Eはその時のことを鮮明に覚えている。瞳は優しい口調で、話を聞いてくれた。仕事のやりがい、大変なこと、学生のうちにやっておいたほうがいいこと。Eが緊張してうまく質問できなくても、待ってくれた。相槌を打ちながら、うなずきながら。


「真面目にコツコツやれるのは、すごい強みだよ」


その言葉が、就活で何度も励みになった。


面談が終わった後、Eはお礼のメールを送った。瞳からは「頑張ってください」と短い返信が来た。


その後、Eは何社かから内定をもらい、最終的に瞳が働く会社に入社した。直接のきっかけは別だったが、心のどこかで瞳の存在があったのは確かだ。


入社後、Eは瞳に直接お礼を言いたいと思っていた。でも、部署が違い、なかなか会う機会がなかった。


それでも、廊下ですれ違うたびに、心の中で「ありがとうございます」と唱えていた。


---

第1話をお読みいただき、ありがとうございました。


中学時代、Eは親友を助けられなかった。

「見ていただけ」の自分を、彼女はずっと引きずっています。


でも、この先、彼女は少しずつ変わっていく――

そのきっかけとなるのが、あの「非常階段」での出来事です。


次回・第2話「面談の記憶/すれ違い」

――彼女には、忘れられない恩人がいた。


本編も連載中です。

シリーズ全体の物語と併せてお楽しみください。


X(旧Twitter)でも更新情報を発信しています。

@KEI67266073 フォローしていただければ幸いです。


次話も明日朝7時更新です。よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ