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世里香の声が弱々しく震える。
それに気付いていないのか、ララミーナは二パッと嬉しそうに笑った。
「何時までも下っ端のペーペー駄女神じゃないって事♪
次の世界のスタメンよ! スタメン!」
「………そっか…うん、おめでと……」
心底嬉しそうなララミーナの様子に、世里香は自分の感情にそっと蓋をする。
ちょっと情けない顔になるのは許して欲しいと願いながら、ぎこちない笑みを浮かべて後頭部を掻きむしった。
「凄いじゃん。
神様にも配置換えなんてあるんだね。
でもこれって所謂出世って事になるの?」
「事にって、酷くない?
出世も出世! 大出世よ!!」
ふんすと鼻息も荒く、グッと拳を握るララミーナに、世里香の複雑な感情はバレなかったようで、その事にはホッと胸を撫で下ろす。
なんだかんだで、ララミーナのおかげで寂しさは紛れていた。
なんだかんだで、かなりお世話になった。
だから――笑って…一緒に喜んで、そんでもって笑顔でさよならしないといけないと頭ではわかっている。
そこに駄々を捏ねる程、子供ではない。
だか、寂しくて悲しいのも事実で、棚田だけじゃなく、とうとうララミーナとも会えなくなるのだと思うと、気を抜くと目頭が熱くなってしまう。
「んじゃ今日は宴会しなきゃだね」
上がりそうになる嗚咽を押し留め、笑顔を無理やり作ってそう言うと、ララミーナがパッと顔を輝かせた。
「マジ!?
きゃぁぁぁ♪
えっとえっと、地球の食べ物頼んでもいい!?」
無邪気にはしゃぐ姿に、世里香も頷く。
「いいよ。
待って、タブレット出すから」
最近は『農場物語』を起動する事も滅多になくなり、専ら外に作ったリアル家庭菜園で植物を育てている。
そうすることで世里香の聖力は、直接植物と大地に注ぎ込まれるのだ。最早ゲームを介する必要はなく、暇潰しに開く程度になっている。
そんな訳で、タブレットの出番はかなり少なくなっていた。
―――KAMISA・MART
―――Godgle
その2つくらいだろうか、タップする頻度がそれなりにあるのは…。
Sekaicraftという某マイ〇ラのパクリアプリは、偶に生じた崖等の危険個所の整地でお世話になる事があるが、KAMINEというLI〇EのパクリアプリやKAMINET・TANATAというアプリはほぼ起動する事がなくなっている。
KAMINEの方はララミーナが適宜突撃して来ていたので、態々連絡を取る必要もなかったし………棚田は……どうしても…出来なかった。
怖くて……冷たくあしらわれたら泣いてしまいそうで…逃げたのだ。
逃げて逃げて……そして切っ掛けさえもう見つけられなくなって、そのままになってしまった。
「セリカちゃん?」
いけない、つい物思いに耽ってしまった。
「何でもない。
んじゃ好きなの頼んで良いよ。
もうポイントなんて腐る程あるからね」
『わーい』と本当に子どもの様に両手を上げて喜ぶララミーナに、世里香の顔も綻ぶ。
そう、実はゲーム『農場物語』でなくとも、リアル家庭菜園諸々で何故かポイントが貯まり続けているのだ。
それに気づいた時は、思わず棚田に連絡するチャンスだと思ったのだが、自分の気持ちに気付いてしまった後だったので、思わず尻込みしてしまった。
でもまぁ、良くも悪くもそれが自分だ。
それに神様相手に惚れた腫れた等と何を血迷ってるんだと、冷静に突っ込みを入れる自分も居たりするし、きっと今が正解なのだと思うようにしている。
まさかララミーナまで居なくなってしまうとは思っていなかったが……。
だが、有難い事に一人ぼっちになる訳ではない。
今はシトアもジェダも居る。
生命が生まれるかもと、期待だけは満載だった黄金卵はよくわからない樹木と言う不発に終わったが、まぁ元より生命が生まれる可能性は……と濁されていたのだから気にする必要もない。
「よしッ!
今日はお酒も沢山買っちゃおう!」
「えぇ!!??
い、いいの…?」
「うん!」
「やったあーーーー!!
日本酒大好き♪
どれにしよっかなぁ……」
真剣にタブレットの画面を覗き込むララミーナに苦笑しながら、今日は目一杯自分も飲んで食べて、しっかり楽しもうと思った世里香だった。
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