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前世、仕事でお馴染みの角形や長形ではなく、洋形封筒。
何の変哲もない真っ白なそれには、一見わかりにくいが、同じく真っ白な封蝋が施されていたようだ。
既に開封されているので、ある意味残骸ではあるが…。
「封筒……手紙?」
脈絡がなさ過ぎて、きょとんと首を傾げれば、ララミーナが中から手紙と言うより、2つ折りになったカードを取り出して手渡して来た。
目を落とせば訳のわからない何かが並んでいる。
カードだし、封筒に入ってたし……多分文字なんだろうと思うのだが、さっぱり読めない。
日本語以外わからないと忘れているのか、ララミーナはにこにことしていた。まぁこの世界の文字を知ろうにも、既に生命どころか世界が消滅寸前だったので、本の一冊、メモの一枚ですら残っておらず、ララミーナもこれまで日本語で対応してくれていた。
尤も、最初の頃は置手紙なんかでも文章を書いていたのは棚田の方で、ララミーナは落書きする程度だったのだが、世里香の知らない裏側では頑張って勉強してくれていたのだろう。
いつの間にかララミーナは日本語で文章が書けるようになっていた。
なので今は異世界であると言うのに、日本語で喋り、日本語で綴ると言う、摩訶不思議状態となっている。
とは言え、この世界の元々の神であるララミーナが受け入れているから良いのだろう。
何しろ随分と以前の話になったが、ゲーム内で蒔く種が少なく、棚田が持ち込もうかと言う話になった時等『救われるなら地球側の侵食くらい大した問題ではない』とか何とか言ってた気がする。
それはさておき、読めないままの文字…と言うより記号にしか思えないソレを眺めていても仕方ない。
ララミーナに解読して貰わないと…と、口を開きかけたその時、意味不明の記号列がぐにゃりと回転する様に歪んだ。
『え』と短く言葉を発するのが精一杯で固まっていると、歪みがゆっくりと戻って、記号列が読める文字――日本語に置き換わっていた。
「おおおおお」
「ど、どうした?? セリカちゃん?」
思わず漏れた感嘆の叫びに、ララミーナが慌てるが、簡単に説明すると苦笑しつつ頷いてくれる。
「ごめんごめん、ちょっと切り替わるのに時間が掛かっちゃうのよね。
説明不足で、ホントごめん」
相変わらずの抜け具合に、安心するようなガックリと疲れるような、よくわからない感覚になったが、何にせよ神様のシステムって凄い。
だって自動翻訳機能付きと言う事に他ならないのだから、凄いと言わざるを得ないだろう?
辞書を片手に頑張らずとも、条件を入力せずとも、勝手に読める文字に変換してくれるなんて、夢の機能だし、こんなカードに組み込めるなんてとんでもない技術だ。
まぁ、技術か魔法か、その区別は世里香にはつかない訳だが……。
内容を確認するために目線を落として……身動ぎ出来なくなった。
カード右上には日付だろうか、数字が並んでいるが、そんな事はどうでも良い。
少し下って中央に『辞令』と言う文字列が目に入ってくる。
その下にずらずらと並ぶ、少し小さな文字だが、その意味を理解する事を頭が拒否していた。
真っ白になって何も考えられない。
目を見開いた状態でフリーズしてしまった世里香に、ララミーナも気づいたらしく、心配そうに顔を覗き込んできた。
「セリカちゃん?
どうかした?
あ……まさかご飯の邪魔しちゃったから、お腹空き過ぎで気分悪くなったとか??」
ララミーナの声音に少々の焦りが混じる。
それにやっと目を動かすと、まるで壊れかけのロボットの様に、ぎこちなく顔を上げた。
「…………」
「大丈夫?」
「………
……………………これ…どういう……事…?」
「どう…って……。
え? その辞令書がどうかしたの?」
「どう言う事?
ララミーナ……この世界じゃない所へ行くの?」
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もう誤字脱字他諸々のミス、設定掌ぐる~が酷い作者で、本当に申し訳ございません。見つければちまちま修正加筆したりしてますが、その辺りは生暖かく許してやって頂ければ幸いです<(_ _)>
 




