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装った:単に盛る、注ぐと言うだけでなく、体裁を整えると言うか盛り付けると言うか……その為、この文字が当てられるそうです。
詳しくはググってみてね!
名を呼びつつ探せば、少し離れたところからスルスルと近づいてくる薄緑色に気付く。
ホッとしながら屈んで一撫ですると、ジェダは嬉しそうにフルフルと揺れた。
そうして家に戻れば、せっせと触腕を伸ばし皿を運ぶシトアの姿が目に入る。
「シトア、ご飯の準備してくれてたんだ。
ありがとね」
にこっと微笑んで言うと、照れたようにシトアが小さく揺らぐ。
そんな微笑ましい光景の奥、万年床が敷かれた寝室の襖の隙間から覗くのは、眩いばかりの金色だ。
はっきり言って目によろしくない。
ララミーナがゲーム内オブジェクトを核にして魔力を押し込めた卵もどきは、あれからすくすくと大きくなった。
大きくなると共に、一段と光量を増す一方となった卵もどきは、温める必要はないと言われていたのを良い事に、寝室である和室に押し込められたまま、1週間も経った頃には、寝るスペースもない程に巨大化していた。
現在世里香の寝床は、推し部屋の方に移動を余儀なくされている。
スペース的にも無理があったし、何より、24時間年中無休状態でキンキンキラキラの眩しさなのだ。
最早寝室……いや、元寝室で就寝すると言う選択肢はなかった。
寝室を埋め尽くす程大きく、そして輝きを増した卵もどきは、その後順調に孵化…と言って良いのだろうか…まぁ殻は無事に割れた。
そして中から現れたのは、金色に輝く1本の幼木。
何処まで言っても金色なのにも辟易すると言うのは、一旦置いておこう。
生命が生まれる可能性もあると言われていたので、てっきり動物系の何かを想像していたのだが、まさかの植物だった…斜め上にも程がある。
そして生まれた幼木は、世里香が抱き上げるよりも早く、寝室の畳に根を広げていた。
それは万年床を退ける暇もない程に一瞬の出来事で、金色の幼木は、一見万年床に鎮座しているように見える状態だ。
それからも順調に成長を続け、今は寝室だった部屋一杯に枝と葉を広げ、蕾が既についている。とは言え蕾は何故か一向に開く気配を見せず、ずっと蕾のまま停滞していた。
そんな状態なので、静観するしかない。
つい襖から漏れ出る金色に思念を飛ばしてしまったが、まずはご飯の準備だ。
手を洗い、鍋をそのままテーブルに運ぶ。
シトアと2人……(単位に異議申し立てが出るかもしれないが、まぁそこは目を瞑って頂ければ…)だった時は以前のテーブルでも問題なかったが、3人になってからは流石に手狭になり、キッチンに置いたテーブルセットも4人用に買い替えた。
真っ白なテーブルと、同じく真っ白な椅子が4脚。
思った以上に乙女チックなデザインだったが、世里香が気に入っているから良いのだ。
鍋の蓋を横に置けば、ふわりと湯気が上り立つ。
今日はシチューだ。
ルーを使ったお手軽系だが、バターを追加投入しているので、味は申し分ない。
シトアとジェダの前にもシチューを装った皿を置く。
彼らはテーブルに乗ったままだが、世里香は椅子に座った。
両手を合わせて『いただきます』と言葉にすれば、シトアとジェダも触腕を伸ばして合わせて、縦に揺れた。
頭を下げる動作を真似ているのだろう。
本当に微笑ましくてかわいい。
しかも、彼等はちゃんとスプーンを使うのだ。
最初は世里香の真似をしていただけだと思うのだが、凄いと褒めると、必死に練習し始めた。
前世、世里香は子供に恵まれる事はなかったが、もし子供が居たらこんなんだったのかなと、つい口元が綻ぶ。
尤も、想像するだけでも苦労の方が多そうだと考えてしまうのは、前世で見た既婚女性達が、目の下に熊さんを盛大に飼育して、げっそり窶れていた姿を見ているからかもしれない。
一方通行の会話を楽しみつつ、シチューに舌鼓を打っていると、ドアがノックされる音に気付く。
この家に訪れる者等、ララミーナしかいないし、鍵をかけたりもしてないのだが、律儀にノックしてくれるのだ。
「はーい、開いてるよ~」
「こんにちは~」
相変わらずJKルックが似合っているのだが、どうにもアンバランスに見えて仕方ない美女、ララミーナが入ってきた。
「ん~良い匂い! シチュー?」
開口一番其れか…と苦笑が洩れるが、食事は人数が増えても問題ないシチューだ。
椅子から立ち上がり、皿を棚から出しつつ訊ねる。
「食べる?」
「食べる食べる♪」
満面に喜色を載せるララミーナに、世里香も顔が綻ぶ。
「それにしても久しぶりじゃない?
忙しかった?」
減ったとは言え、1、2週間に1度くらいは突撃して来ていたのに、そう言えば此処暫くは見かけなかったなと、ふと思い返す。
ララミーナは手を洗って来たのか、拭きながら椅子を引いている所だ。
「そうなの!
これ見てよ!!」
『ジャーーン♪』と言いながら、ララミーナが取り出したのは1通の封筒だった。
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もう誤字脱字他諸々のミス、設定掌ぐる~が酷い作者で、本当に申し訳ございません。見つければちまちま修正加筆したりしてますが、その辺りは生暖かく許してやって頂ければ幸いです<(_ _)>
 




