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「ララミーナ?」
「……えっと……生まれてみてのお楽しみ…?」
「はぁ?」
ゲーム内オブジェクトを実体化した上で、何やら強引に入れ込んでいたのはララミーナだ。
行った当人が把握してないなんて事があるのだろうか……?
何とも釈然としなくて、つい突っ込んで聞いてしまう。
「お楽しみって…そんな訳に行かないでしょう?
何が生まれるかによって必要な物は違うし、環境も整えないといけないし…」
世里香自身はペットを飼った事はないが、懐いてくれていた後輩は拾った子猫を大事に育てていて、その話をよく聞いていた。
雨の中で見つけたから名前は『雫』とつけたと言っていた。
痩せ細り、汚れ切ったその子猫は、彼女が発見した時にはとても危険な状態だったらしい。
拾い上げ、自分の衣服が汚れるのも厭わず、翌朝まで待っていられないと、かなり遠方の24時間体制の動物病院に急いだそうだ。
無事獣医にかかる事が出来て、当面の危機は乗り越えたと言っていたが、その後もそれはそれで大変だったと聞いている。
自力でミルクを飲む事も出来なかったようで、スポイトで飲ませたり等、本当に手がかかったようだ。
だけど、それでもその『雫ちゃん』の話をする後輩の表情が、とても優しげだった事はよく覚えている。
目を背けていたのだ。
決して広くはないこの家に、でもずっと一人で、本当は寂しかった。
ララミーナや棚田も何かあれば駆けつけてくれる。
だが、それは世里香が困っていたり緊急な時だけの事で、外に出る事も出来ず、普段はずっと一人ぼっちだったのだ。
そんな生活に、図らずも何か誕生するかもしれない機会が訪れたと知って、世里香は意識していなかったが、ちょっぴりワクワクしてしまったようだ。
心地良い室温にしてあげなきゃ…
部屋は暗い方が落ち着くかな…
食事は何を用意すれば良いのかな…
等々……
大事に育てなきゃ。
この世界で初めての私の家族なんだから。
そんなあれやこれやが一瞬で頭を駆け巡り、とてもではないが呑気にしていられなかった。
「ほら、早く教えてって」
「ぅ…それは……楽しみにしてればいいじゃん…? ね?」
「食事の用意とか寝る場所の用意もあるから、そう言う訳に行かないの!」
むっと口をへの字に曲げて睨み据えれば、ララミーナは観念したかのようにガクリと項垂れた。
「あ~う~……そ、そうね……入れた魔力は元々……あ~もう……」
ララミーナがガシガシと頭を掻いてから、何故か気合を入れる。
「……よし。
えっと…不思議の種って持ってきてもらったでしょ?
あれって所謂『可能性の種』なのよ。
注がれたセリカちゃんの聖力が一定以上になって、少し余力が出来てから出現するものだった。
そうして余った聖力を凝縮したもので、本当にただのお楽しみ要素で組み込んだの。だから何が出るかを想定したモノではなくて、ちょっとした便利道具かもしれないし、そうじゃないかもしれないって……本当にそれだけだったの。
タダのお楽しみ要素だったから確率はとても低くてしてて、こんな早々に出現するなんて想定外も想定外。
だけど、出現しちゃったしね…で、考えたんだけど、私が探し出した魔力の塊を詰め込んだら、『生命』が誕生するかもしれないって考えたのよ…だって『可能性』なんだもん」
一気に言い終えたララミーナが、少々居心地悪そうに肩を竦める。
「なるほどね。
つまり、本来はただのおまけ要素で、カプセルトイみたいなモノだったと言う訳か…ふぅむ、まぁそこまでは理解した。
したけど、魔力の塊が何だって生命誕生に繋がるのよ?」
「ん、それは…魔力ってこの世界、セントマレンシスタの生命が持つ力で、生命以外は持っていない力なのよね。
ただ人間だけが持ってる力と言う訳じゃないし、元々の属性もセリカちゃんの聖力で上書きされてるし、ほんとごめん……予測不可能なの」
「むぅ……」
「とりあえずそんな感じで、今は生命の可能性を付与したと言うか……蓋を開けたら結局は…って可能性の方が高いかも…」
そんな歯切れの悪い返答に決着がついたのは、優に1週間以上経ってからだった。
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