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「………」
にこやかに話していたララミーナだが、ウンともスンとも言わない世里香に気付き、ゆっくりと口を閉ざした。
そのまま、怪訝な表情で顔を覗き込んでくる。
「セリカちゃん?」
若干蒼褪めたようにも見えて、慌ててララミーナが寝かせようとしてきた。
「ちょ、セリカちゃん…まだ寝てた方が良いよ、顔色悪すぎ。
私は適当に帰るから、安心して寝ちゃって」
「………っ」
「ん? 何?」
「そんなのって……ない…どうしよう」
半泣きの世里香が、ララミーナの方へ顔を向けた。
「こっちに完全転生って……もうサポートなくなる?
もう………あぁ、どうしよ」
なるほどと合点がいったようにララミーナが破顔する。
きっと世里香は棚田に会えなくなる事を危惧しているのだろう。
しかし、あちらの支援の期限等、ララミーナは一度も聞いていないが、仮にそうなったとしても、支援課の神々が世界間の行き来不可になるはずがない。
確かに棚田はその顔が決定打で、支援課に異動になったと言うのは聞いていたが、実は支援課の神々はなかなかにエリート集団なのだ。
まず基本的に完成した他の世界に気軽に立ち入る事等、神と言えど難しいのが普通だ。
招くとしても世界を隔てる壁に穴を開けないといけないので、その準備だけでかなり時間がかかるし、それだけでなく招かれる側にも事前準備が必要となる。
世界渡りと言うのは、かなり高度な術で、少なくともララミーナには不可能だ。
しかし支援課の者はそんな準備を必要としない。
招かずとも入って来るし、世界間に風穴を開けたりもしない。その上、思い立ったが吉日といわんばかりに、気分次第でふらりと世界渡りを行うのだ。
正直、神としての格も力量も、下っ端女神になりたてのララミーナ等、棚田の足元にも及ばない。
それでもあんな砕けた口調や態度を許してくれる棚田を始めとした支援課の面々は、神オブ神と言って良いとララミーナは思っている。
それにコレが一番重要だ。支援課所属の神の一人に、他世界の嫁が居ると言う話も聞いた事がある。つまり世里香と棚田の前に障害はない。
「大丈夫よ。
そうなっても会えると思うし……あぁ、でも、もしかしてまだ何も言ってない?
もしそうなら、早めに気持ちは話した方が良いと思うわ。
棚田君は気軽な身だと思うけど、確認はしといた方が良いしね」
「……うん…」
「「ネット見れなくなるのは辛いから、早めに聞いてみるわ!」
「セリカちゃんには甘いから、絶対脈ありだと思う!」」
言葉が被り、思わず世里香とララミーナは顔を見合わせる。
「…そっち?」
「いや、脈って何?」
見合わせたまま、互いに疎通が出来ていないことを悟った。
「えっと…何と言うか、棚田君見て卒倒したんだよね?
好みの顔だったって事じゃないの!?
いや、それに結構自宅デートしてたよね?」
「は?
いや、顔見て卒倒……は、まぁ、そうかもだけど、好み以前にあんな美麗な顔は直視するもんじゃないでしょ?
あぁ言うのは液晶越しで十分なんだけど…。
って、自宅デートって何?
デートなんてした事ないんデスガ?」
シンクロ率100%で同時に溜息を吐く。
「私の盛大な勘違いだったって事?
でもでも、良い雰囲気だったじゃない!」
「良い雰囲気なんてなかったと思うけどなぁ。
だって聖力込め過ぎ案件ばっかりだったし?
後は仕事と言うか、契約確認って感じの話しかしてないんだけど…ほら、ネットやアプリの事とか、ポイント云々に害獣対策だよ?
何処をどうすりゃ勘違い出来ンのよ?」
ララミーナがガクリと項垂れる。
「そんなぁ……
超恥ずかしい奴じゃないのさ、私ってば……はぁ。
そのさ、全く…欠片も気にならない? 棚田君の事」
ずいとにじり寄ってきたララミーナから、同じ距離だけにじり下がる。
「何でそんなにお勧めしてくるのよ。
別に身内とかそう言うんじゃないんでしょ?…って、ある意味神様と言う身内になる?」
「棚田君、真面目だし、美形だし、お買い得だと思うよ?」
「そんなにお勧めなら、ララミーナが立候補したら良いでしょうが!
美男美女でお似合いだよ?」
「あ~私は無理」
にこやかに姿勢を戻してララミーナが座り直す。
「私はもっとマッチョな人が好みなのよねぇ♪
こう、筋肉モリモリって言うか~。
笑うと歯が輝くような爽やかマッチョ! 何処かに落ちてないかしら…」
「何処の広告だよ……はぁ」
「ねぇ、やっぱり嫌? 全く好みじゃない?」
「あのさぁ、そう言う話じゃなくない?
棚田さんは神様なんだから、好みとかそう言う話以前で、ただの人間でしかない私が釣り合う訳ないじゃん……聖女とかではあるらしいけど、信者も何も居ないボッチ聖女に何の価値があるって言うのよ?
それに私ってばバツ1だし……。
見合いするまで年齢=彼氏なし歴な人だったし、挙句浮気されてポイっされた人だし……最後は病気で……あぁ! 泣けてくるから思い出させないでよ!」
おいおいと泣き始めた世里香の横で、ララミーナが悩まし気に額を押さえていた。
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