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ここでララミーナが初めて気づいたと言う様に、眉根を顰めた。
「セリカちゃん?」
「……?」
世里香が名に反応して顔を向けるが、ララミーナの眉間の皺は更に深くなっている。
「もしかして……気付いてない?」
「は? 気付く?」
「ちょ……マジか……。
セリカちゃん、自分の髪色見て?」
「髪色? 前に見たわよ。烏の濡れ羽色…とまでは行かないけど、艶々の黒髪だって」
「だ~か~ら~~、もっかい見て!! 瞳の色も!」
髪色だけならその場でも構わないだろうが、瞳の色の確認まで言われると、流石に鏡を見ないとわからない。
正直面倒くさいなと思いつつも、妙に必死なララミーナに引っ張られ、寝室へ戻った。
あの強風の中、それでも無事だった姿見を覗き込むと………
「………え…」
続く言葉は綺麗さっぱり霧散した。
「う…そ……」
鏡にガバリと掴みかかる。
全く同じ動きをする様子に、映っているのは確かに自分の姿だと納得しない訳にはいかなかった。
―――な…何なの、よ…これ
―――私の黒髪と黒い瞳は何処へ行ったって言うのよ!?
そう、鏡面を境に向かい合っている自分の髪色は金髪で、瞳の色も同じ色……少し茶色がかっているけど、少なくとも黒色じゃない。色のせいか顔まで少し変化した様に思える。
「………なんで……
誰が脱色したのよ!?
ララミーナなの!?」
最早敬称も略だ。
冷静に考えれば瞳の色なんて脱色出来る様なモノではないし、完全な言い掛かりだと分かるのだが、今はそんな所にまで考えが回らない。
「気を失ってる間にしたの?
なんで!?」
「ちょ、お…落ち着いてって」
「落ち着ける訳ないでしょーが!!
私の顔見てわかるでしょ!? 金髪なんて似合う顔じゃないの!!
第一黒髪が好きなの!!
戻してよ!!」
一気に言い切った所で、ぜーはーと肩で息をする。
ララミーナの顔は困り切っていて、それが余計にささくれだった世里香の感情を逆撫でにした。
「……もう、信じらんない…なんで…」
世里香としては金髪そのものも困るが、何より意識のない間に勝手にされた事が本当に嫌だった。
身体の横で握りしめた拳が、ふるふると小さく震えている。
「セリカちゃん…兎に角落ち着いて…」
暫くの沈黙の後、ララミーナが絞り出した言葉がそれだ。
まぁ、少し時間を置いてくれたおかげで、世里香の頭も少し冷えていた。
「……ごめん、一気に言っちゃって…
だけどさ……ララミーナさんの事、私もう信用しちゃってて…だから勝手にこんな事されるのは…」
「だから~、落ち着いて。
ちゃんと説明するから」
「……ぅん…」
ララミーナに促され、姿見の前に座る。
「んと……これまでこっちの世界の事、あんまり話した事なかったのが悪かったかな…。
えっと、以前こっちの世界の人間って、かなり脆弱だったって話したよね?
こっちには魔法とかあって、当然人間もその恩恵を受けてたんだけど、脆弱だったせいで大きな力は持つ事が出来なかったの。
もう大原則みたいなもので、人間は1つの力しか持てなかった。
で、誰から見ても、何の力を持ってるのかが直ぐにわかっちゃうんだよね」
ララミーナの話が、世里香の髪を脱色した事と何の関係があるのかわからない。
思わず言葉が出かかったが、今はまだ聞くに徹した方が良いと思い直して唇を引き結んだ。
「炎の力なら赤い色を。
水の力なら青い色をって感じで、持ってる力の性質が髪や目の色に出ちゃうのよ。
だから、こっち……セントマレンシスタには黒髪や黒い瞳の人間っていないの。黒って色んな力が混ざり合っての色って事だから」
「…え?」
「セリカちゃんは聖力持ちだから、濃淡はあっても概ね纏う色って金色って決まってるのよ。
黒髪黒瞳って召喚された人にしか出ない色って事。
ま、そんな複数の力…強い力を持ってたから、調子に乗ったアホ共が召喚しまくって、結果ドッカーーンって事態になっちゃったんだけどね」
「…どう言う事?
待って……え? じゃあこの脱色した色が本当の色だって言うの?」
「脱色したわけじゃないってば。
けどまぁ、そう。
今の色が本来の色で、こっちにちゃんと転生出来た証みたいなモンかな」
酷い冤罪をかけてしまっていたらしい。
「…その…ごめん」
「いやいや、吃驚したと思うし、気にしないで」
へらりとララミーナが笑う。
「こっちの世界は最初の頃に見て貰ったように、もう完全崩壊手前だし、身体もちゃんとした転生って出来なかったでしょ?
だから元々のガイアルナート…地球側の性質が色濃く残っちゃってたのよね。
まぁ、それは最初から予想出来た事だったから、外には出ずにゲームで聖力使って貰ってたんだけど」
「それって……つまり、どう言う事?」
「ちゃんとこっちの世界に準拠した転生が完了出来るくらいには、世界が安定したって事♪
そうそう、だからもう外に出て貰っても大丈夫だよ」
ニコニコ笑顔のララミーナとは対照的に、世里香の顔色は悪くなる一方だった。
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