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―――あれ…今何時だろ……
のそりと身を起こしかけてハッと顔を上げる。
―――うわちゃぁ…やらかした……人様の顔を見て卒倒するとか、失礼にも程があるっしょ、私……
そう、どう考えても最低な態度だとしか思えないが、それでもなお弁解を許して貰えるなら……。
あんな超絶美形はその辺に存在しちゃダメだ。
人外レベル……って、元より神様と言う人外だけれども! あのレベルは液晶越しにしか存在しちゃいけない。
歩く災害レベルだ。
等々と自己弁護を試みるが、どれも弁護にはならず、自己嫌悪に陥るばかりである。
兎に角まずは謝らないと、と周囲を見渡すが、色々と吹っ飛んでいる寝室には自分しかいないようだ。
カチャンと微かな音がキッチンの方から聞こえる。
よっこいせと立ち上がり、キッチンへ移動すれば、昏倒していたはずのララミーナが、テーブルでマグカップを傾けていた。
「あ、起きた。
セリカちゃん大丈夫?」
呑気に声を掛けてくるララミーナに、声には出さないが内心で八つ当たりする。
―――もとはと言えば、あーたが倒れちゃったから棚田さん呼ぶ羽目になったんだから、全部ララミーナさんのせい!
と、言葉にしない八つ当たりが、とんでもなく言い掛かりである事は自覚しているので、代わりのように『はぁ』と溜息を漏らした。
「大丈夫……。
その……棚田さんは?」
「棚田君?
なんか仕事みたいで戻ってったけど、何か用事? 呼べば来るんじゃない?」
あっけらかんと言うララミーナの対面の椅子に、ぐったりと座って頭を抱えた。
「あ~ううん、いい……じゃなくて、悪い事しちゃったからさ…」
「悪い事?」
マグカップの中身はココアのようだ。
ココアなんて置いてなかったと思うのだが、まぁいい。まずはララミーナの問いに答えよう。
「あ~うん……その……」
『顔を見て卒倒した』文言にすればそれだけなのだが、何て酷い言い草だろうと自分でも思う。しかし言葉を濁しても仕方ない。相手は仮にも神様だ。例えだらしなくてポンコツな駄女神だと言っても、神様である以上嘘は通用しないだろう。
「えっと……何か風が吹いて、棚田さんの眼鏡がすっ飛んじゃったのよね…それで顔を直視しちゃって……」
最後が言い難いと尻切れトンボになった言葉だが、それでも予想がついたのか、ララミーナは『ああ~~!!』と声を上げた。
「なるほどね~、理解したわ。
なんでセリカちゃんが倒れてるのかわかんなかったし、棚田君にもよくわからなかったみたいでさ、心配してたんだけど。
よ~~~っくわかった。
あれでしょ?
美形すぎてって奴」
「う……」
ララミーナがけらけらと笑う。
「あれ、迷惑防止条例に引っ掛けてもいいレベルだよね♪」
―――いや、まず『迷惑防止条例』なんて言葉知ってたんかい
「ま、気の毒ではあるよね。
あの顔のせいで棚田君てば、管理課から支援課に異動になっちゃったくらいだし」
「え?」
まさかな事実判明である。
「嘘じゃないって。
棚田君、元は管理神として人間との窓口になってたんだけど、あの顔でしょ?
相手の巫女さんとかに色々と告げる前に卒倒されちゃったりとか多々あったらしくて、仕事になんなかったみたい。んでもって支援課に異動になったんだって」
何て事だ。
これは世里香が棚田の傷に塩を塗り込んだ事に他ならない。
思い至って世里香は頭を抱えてテーブルに突っ伏した。
「それだけじゃなく、あの顔のせいで他の女神達からもかなり言い寄られたりもしたみたい。
だから支援課って言う裏方に移動出来て良かったとは言ってたわね。
……って、セリカちゃ~ん?」
テーブルに突っ伏したままの世里香に、ララミーナが気づいて声を掛けてくる。
「……………」
「お~い、セリカ~、セリカちゃ~~ん」
「………どうしよ…」
「え?」
「どうしよ……私、棚田さんの傷に塩どころか唐辛子擦り込んじゃったかも…」
「それは大丈夫だと思うけど…」
何故大丈夫だと思えるのかわからず、世里香は落ち込んでいく自分を止められない。
「まぁ、こう言うのは外野がいくら言ってもねぇ♪」
ククっとララミーナがにやけた笑いを漏らすが、それは突っ伏している世里香には見えていない。
「ま、その件は二人でゆ~っくりじ~っくりどうにかしてよ。
それより!!
それよりよ!!
これで本当に転生出来たね。
あ、名前どうする? そのままでも問題ないけど」
『本当の転生』?
どう言う事だってばよ?
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もう誤字脱字他諸々のミス、設定掌ぐる~が酷い作者で、本当に申し訳ございません。見つければちまちま修正加筆したりしてますが、その辺りは生暖かく許してやって頂ければ幸いです<(_ _)>




