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未だ輝きを失っていないソレから、二人共視線を外さないまま言葉を交わす。
「ふむ、触っても?」
世里香は、訊ねてくる棚田にコクコクと頷いた。
払い除ける事が出来たのだから、『お触り厳禁』ではないはずだ。
棚田が転がる謎物体をそっと拾い上げる。
一応元々ゲーム内オブジェクトだった物で、不思議の種と言う名称だった事も説明しておく。
「『不思議の種』ですか……ララミーナさんは突拍子もない事をしでかす駄女神なので、真意は測りかねますが……」
困ったように零す棚田は、それでも謎物体をしっかりと観察している。
「これは……ふむ…………となると…
…………いや、そう考えるなら…………
…………………………」
絶賛独り言タイムを邪魔しないように、少し離れて控えていると、棚田が手に持っていた金色卵を世里香に差し出して来た。
「ざっと確認してみましたが、ララミーナさんの神力ではない力が込められていますね。
あと吸収と放出の術式が組み込まれているようです」
「吸収と放出? あ? 術式!? なにそれ」
ますます謎物体の正体がわからず、世里香は首を捻る。
「属性が光……聖力ですね、それに合わせられているので、その物体は香里様の力を吸収したり放出したりする機能がありそうです。
形状的にも『種』…どちらかと言うと『卵』の方が近いですが…。
恐らく香里様が聖力を与えたり色々すれば、何らかの変化が現れるのではないかと予想します」
世里香は返却された卵型物体を、じっと見つめた。
「えっと、じゃあとりあえず持ってればいいのかな……?」
特に何もしてなくても聖力とやらは垂れ流し状態のはずだから、それでどうにかなりそうな気がする。
もしかしたら持ち歩く必要さえないかもしれないが…。
「そうですね。
もっと詳しい事となると、ララミーナさんに聞くしかなさそうですが、ララミーナさんですからねぇ……」
棚田の語尾の含みに、世里香も苦笑せざるを得ない。
「ところで…………」
「?」
急に声音が改まり、世里香はきょとんとした顔を向ける。
棚田は眼鏡を指でクイッと押し上げつつ、正座し直した。
「水道が使用されていないように思い、ララミーナさんに様子を見るように頼んだのは確かに私ですが、どういった経緯でこんな状況に?」
「ぁ…」
棚田の疑問は当然だ。
慌てていたせいもあるが、世里香はララミーナが倒れた理由と、その原因となった謎物体の事しか話していなかった。
「えーっと……あ~、ま~そのぉ………」
当然だが、棚田は誤魔化されてくれない。
洗いざらい吐かされた。
容赦も慈悲もなかった。
おかげで世里香が調子に乗ってやらかした事もバレた。
流石に2回目だ…ララミーナでさえ呆れたような顔をしていたし、これは間違いなく御叱りを受けるだろうと、首を竦めてギュッと目を瞑る。
だが、待てど暮らせど叱責が飛んでこない。
そっと片目を薄く開いてみれば、飛び込んできたのは棚田の苦しげな表情だった。
それだけに留まらず、棚田は頭を下げる。
「私の失態です。
誠に申し訳ございません」
「ちょ、ちょっと待って!
なんで棚田さんが謝るんですか!?」
訳が分からず、世里香の混乱は深まるばかりだ。
「私の説明が悪かったと言う事ですから……」
「本当にやめてくださいって……私の方がお世話になりまくってるし、迷惑だって……」
言葉に出して、余計に突き刺さった。
こちらに転生してからと言うモノ、棚田は宣言通り、最大限の支援をしてくれている。本来の仕事で忙しいはずなのに、質問にはすぐ答えてくれるし、何かあればすっ飛んで来てくれるのだ。
もう感謝感激雨霰なのに、その棚田に謝罪させてしまうなんて…世里香は大いに狼狽えた。
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