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ララミーナが手に持っていた派手派手しいタブレットを、ずずいっと突き出す。
「え? え?」
「不思議の種取ってきて」
アバターが世里香の分身扱いにでもなっているのか、ララミーナでは操作が出来ないと言う事らしい。元々このアプリ自体が世里香に合わせて作られたようなモノだから、当然と言えば当然だ。
言われたまま物置から取ってくる。
「その辺に置いて。
あ、畑にはおかないでね。畑だとそっちの成長ルートに入っちゃうかもしれないからね~」
『そっちってどっちだよ』と一人突っ込みしながらも、指示通りに何もない地面に不思議の種を下ろした。
『下ろしたよ~』と告げれば、タブレットを床に置く様に言われる。
これも指示に従えば、ララミーナがタブレットに手を翳した。
ふわりとその手が発光する。
何やら光の帯みたいなモノで。手とタブレットの画面が繋がった瞬間、画面がポコリと膨らんで歪んだ。
「!!」
想定外の光景に、思わず出かけた声を手で押さえ込んだ世里香に構う事なく、ララミーナは真剣な顔のまま動かない。
膨らみ歪んだ画面は、どんどんとその膨らみを大きくしている。
膨らんで
膨らんで……
……そして弾けた。
いや、その表現も正しくはないだろう。
膨らみ切った風船がパチンと弾けるというより、スルリと脱皮した、一皮剝けた、と言う方が近いかもしれない。
タブレットの画面から数cm浮かんだ状態で、金色の卵のようなモノがあった。
掌で包めるくらいのサイズで、表面がつるりとして見えるせいか、種と言うより卵に思えて仕方ない。
「うん、なかなか上出来じゃない?」
ララミーナの額に、薄っすらと汗が浮いているのが見える。
口調とは裏腹に、大変な作業だったと言う事だろう。
それにしても……ゲーム内オブジェクトをリアルに持ち出して何をする気なのだろう?
「よし、次はこれね」
特に同意を求めるでもなく、独り言じみた呟きを漏らすララミーナを、世里香は首を傾けて眺めた。
彼女が取り出したのは白い玉。
若干青みがかって見えるのは照明のせい?
「これを………」
きゅっと唇を真一文字に引き結び、金色の卵型物体にグイっと押し付けた。
「ング……ググ……」
強引に押し込んでいると言った感じだ。
ゴリ押し感が半端ない。
ララミーナの額に浮かんでいた汗は、大粒の雫となって顎先に流れ落ちていた。
「ちょ……大丈夫なの!?」
こんなに真剣で必死なララミーナを、今まで見た事がない。
大変な事をしているのはわかるのだが、世里香に出来る事は何もなく、心配しておろおろするのが関の山だ。
「出来た!」
汗だくになったララミーナが、輝かんばかりの笑顔で振り返る。
彼女の手の先には、金色の卵型物体が、無駄にキラキラしく輝いていた。
「それ……は?」
世里香も視線を、派手に輝く謎物体に固定したまま、呟くように訊ねると、ララミーナも視線を物体に戻す。
「ふふん♪
聞いて驚いて良いのよ!
これは………ぁ………ぅ…」
言葉尻が途切れ、低く呻いたかと思ったら、ララミーナがどさりと倒れ込んだ。
「ヒェ!? ちょ、ちょっと…ララミーナさん? ララミーナさん!!??」
世里香は狼狽える。
それはそうだろう。『神様の介抱なんてどうすりゃ良いんだ?』状態だ。そんな経験あるはずもないのだから。
倒れ込んだララミーナを前に、一頻りおろおろした後、やっと思い出した。
浮かぶ謎物体がどうなろうと知ったこっちゃない。床に置いていたタブレットを大慌てで取り戻し、画面を連打する。
「た……助けて…棚田さん!!」
アプリKAMINE起動!
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