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意識がゆっくりと浮上する。
目を開けばぼんやりとした視界が、徐々にクリアになって行く。
「大丈夫!?」
どこか現実感がなく、呆けたまま首を巡らせれば、ララミーナの心配そうな顔が見えた。
「あれ? ララ、ミ……ナ…さ、ん?」
何故ララミーナがここに居るのかわからない。
「……な、んで?」
「棚田君から連絡が来てね」
「棚田さん?」
「うん、セリカちゃんに何かあったかもしれないって」
「………は?」
少しずつ働き始めた頭に『?マーク』が乱舞する。
世里香が動いていないと把握していたらしき事実に、思わずドン引く。
「ちょ…ちょ、っと……それって……ど、ドドド、どーゆー事よ!?」
世里香がドン引いて焦る気持ちが、今一つ理解出来ないのか、ララミーナは首を傾けた。
「どう言うって……見守り?」
―――わたしゃ田舎の老婆かッ!!??
―――そりゃまぁ、一人暮らしではあるけれどもッ!!
いや、話はそれ以前だろう。
前世には確かに見守りシステムとかカメラとかもあった。ポットを規定時間使っていない場合に巡回が来るとか何とか、そんな話もあった気がする。
しかし、それはあくまで本人、もしくは身内の了承があって成り立っていたはずだ。
それなのに……無断でセンサーなりカメラなりが仕込まれていると言う事だろうか?
思わずぐるりと顔を巡らせる。
―――確かにこの部屋と言うか家は、棚田さんが複製してくれたわよ
―――先頃も光熱費軽減の為に改造もしてくれたわよ
―――だからって、私が知らない間にそう言うのを仕込まれるのは困る!
勿論生前には『神様が見守っててくれる』『何時だって守ってくれる』なんて言葉はありふれてたし、自分も使った事がある。
なんたって日本には『八百万の神様』がおわすのだ。
もう、それこそ至る所に!!
しかし感覚的なそう言うモノと、物理的な見守り…というか監視では話が違うと思うのだ。
「セリカちゃん?」
唐突に室内を見回したかと思うと、俯いたまま何やらぶつぶつと呟き始めた世里香の様子に、ララミーナが思わずと言った感じで声を掛ける。
すると世里香が弾けた。
「それは違うと思うの!
だって私はそんな話聞いてない! 聞いてないんだから了承なんてしてるはずない!!
なのに監視されてたなんてありえないッ!!
さっさと外して! 外すように言ってよぉぉおおお……センサーかカメラか知らないけど、神様とは言え男性に……た、棚田さんに見られてたなんて!!
いくら私がぼんやりで、どんくさくて、存在感が薄いと言っても、私にだって恥と言う概念くらい備わってるの!
ないわぁ…ないわあああ!!
私のプラシバシーは?
人権侵害よ!! それ以前に恥ずかしいじゃない!!」
弾けた勢いのまま一気に言い尽くした世里香は、ぜーはーと肩で息をしている。
そんな世里香を前に、きょとりとしたまま固まっていたララミーナだったが、暫くして『あぁ……』と、何処か緩んだ笑みを口元に刻んだ。
「や~ね~♪
セリカちゃんたら早とちりしすぎ♪」
「………え?」
ララミーナの呑気な声に、世里香が訝しそうに顔を上げた。
「別に盗撮とか盗聴なんてしてないと思うわよ。
でもほら、此処の光熱費とか支援課で担当してるっぽいのよね。だから棚田君だってセリカちゃんのポイント状況、何となくでも把握してたでしょ?
で、水道を使ってないみたいだから、何かあったかもしれないって言って来たの。
ほら、水だけは軽減手段がないみたいだったでしょ? だからダイレクトに確認出来るんじゃない?
ま、種明かしはそんな感じだけど」
「………ぁ」
穴があったら入りたい心境を実感してしまう。
もう、切実に何処かに隠れてしまいたいと、世里香は顔を真っ赤にして俯いた。そんな見当違い勘違いで騒いでしまった世里香の、ただただ恥ずかしいと言う赤面に、何を思ったのか、ララミーナがへにゃりと笑みを深めた。
「もう、セリカちゃんたら、か~わいい♪
でもぉ、そっかそっか~~♪
良いと思うわよ? 私は応援しちゃうわ♪」
今度は世里香の方が首を傾ける番となった。
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