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「以上が説明となります。
何かご質問がありましたら、どうぞ」
淡々とそう言われるが、世里香はこういう時、自分の要領の悪さを実感する。咄嗟に質問が頭に浮かばず、後からあれは? これは? と出てくるタイプなので、恐縮しながら正直に話すと、棚田はあっさりと…。
「問題ありません。では何かありましたらその都度で」
「あ、ありがとうございます。そうします…」
てっきり用件は済んだとばかりに棚田は帰るのかと思ったのだが、彼は椅子に座ったまま動かない。ついでにララミーナはさっきより更に体勢が崩れて、今は玄関の上がり框を枕に気持ち良さそうに眠っている。
「…………」
「………」
「……あの、棚田さん?」
「はい、何でございましょう?」
沈黙が苦にならないのだろうか……全く普段と変わる事のない態度に、反対に世里香の方が苦笑いになる。
「えっと…お忙しいんですよね?
帰らなくて良いんです?」
世里香が幾分申し訳なさそうに訊ねると、何故か棚田は片側の口端を微かに吊り上げ、フッと笑った。
(あ…この人、笑えたんだ)
思わず出た感想がそれだった。
「事情を説明し、支援課の他の神々には許可を得てきています。
本日は1日出張と言う事で、他の仕事は回って来ませんからお気遣いなく」
眼鏡の位置を修正しながらキリッと言う棚田に、世里香は苦笑いが引き攣るのを感じた。いや、それ以前に神様の世界に支援課なんてあるんだ……としみじみ、どうでも良い事を考えていた。
「ですので、今日は香里様には、まずゲームをして頂きます。
それで使用感他、不具合等がありましたら都度お知らせください。
後、ララミーナさんのミスですが、結果として香里様が不利益を被るのは我が支援課としても見過ごせません。
今日1日、香里様に張り付き、家の仕様等、改善出来そうな部分がないか、再度確認しようと思っております」
想像の斜め上の言葉が出てきた事に、引き攣った笑みが、更に引き攣るのを感じる。
改善可能箇所を焙り出すと言うのはありがたい申し出だ。どんどんやってほしい……うん…。
……しかしだしかし…
『張り付く』と言うのは如何な物だろうか……いや観察したりする必要があるのは重々承知するに吝かではないが、一応こちらは女性で、棚田は男性だ。神様に性別があるのかどうかは知らないが。
兎にも角にも密室に男女が……って、ララミーナの存在を忘れていた。
まぁあの駄女神でも居るなら、まぁ良いかと了承する。
―――では、改めて……『農場物語』起動!
再び流れ始めたオープニングに意識が遠退きかけたが、2度目だからだろうか、タップで飛ばす事が出来た。安堵の溜息が洩れる。
すんなりゲーム画面が表示された。
中央部分にはゲーム内の自キャラ…あ、アバターカスタマイズはなかった。恐らくだが世里香自身と結びついて表示されているのだろう。でだ、その自キャラが今後活動する事になるであろう土地が表示されているのだが……。
「ちっさ! 畑、小さすぎない!?」
初見のインパクトと言うのもあるだろうが、広大な土地に対して、種や苗を植えられる箇所が1つしかないのだ。
(こんなの……一瞬で終わっちゃうじゃん……)
ちなみに3D表示ではなく、視点は俯瞰且つ固定で、上下左右に動かす事は出来るが、回転は不可能だった。
視点の制限はそんな感じだが、自キャラの動きは歩かせる分には今のところ問題はない。まぁ開始早々キャラの動きに支障があるとかはなく、一安心である。
画面上部(北と言うか12時方向だな)には家と物置他が描画されていて、物置の方にキャラを動かしてアクセスすれば、現在使用可能な道具類が表示される。
(いや、ここは物置じゃなく鞄にしてくれないと……っと、愚痴は後回しにしてまずはやってみよう)
1つしかない畑の雑草を刈るべく鎌を選択。
一振りで終わる………。
だが、その一振りで所持金が増えた。
どうやら所持金として表示されている数字が、ポイントと紐づいているようだ。
(ゲーム起動前は859だった。
あ~昨日は結局倒れて寝込んだけど、照明とかは使ってたから…それでポイントが少しとは言え減ってるんだな。まぁ駄女神が忘れず照明他消してくれてたのが大きいか……ま、その点『だけ』は評価してやってもいい、うん。
で、今は879……鎌の一振りで20ポイントも増えたって事?
あ~確かにこれは、実作品を出荷するよりはるかに効率が良い…かもしれない)
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もう誤字脱字他諸々のミス、設定掌ぐる~が酷い作者で、本当に申し訳ございません。見つければちまちま修正加筆したりしてますが、その辺りは生暖かく許してやって頂ければ幸いです<(_ _)>




