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何時もの布団に昨夜はさっさと潜り込み、そのまま睡眠と言う名の海に気持ちよくダイブした。
おかげで…なのかどうかわからないが、今朝の目覚めはすこぶる良好である。
生前は、あまりの忙しさに平日は万年床と化していた布団も、毎日押し入れにいれようと、勢いよく立ち上がった。
若返りって素晴らしい。
いや、正確ではない……転生しているのだから、どちらかと言えば成長促進してしまって……? いや、それも正しくないような……何しろベースは女神ララミーナお手製の豚(本人ならぬ本神は猫と言い張っていたが)のぬいぐるみだったのだ。
まぁ理由はどうでも良い。
感覚的にはつい昨日まで『香里 世梨香』だったので、若返った気分になってしまう、と言うだけの事だ。
しかし、存外頭一つ分縮んでしまった事は響いているようだ。押し入れの上の段に入れるのにも、少々苦労する。
もう万年床でいいや…。
窓はないので昭和臭漂う吊り下げ照明の紐を引いて点灯する。
そこで何気なく照明を見つめる。
―――そう言えば電気代ってどうなんてるんだろう?
ふと浮かんだ疑問だが、これは早々に聞いた方が良い案件だ。
朝食の準備をする前に聞いておこうと、メタリックでゲーミングなカラーのタブレットを取り出した。
KAMINEのアイコンをタップすれば、下の方に入力欄が表示される。
しかし画面そのものは白一色で見易いのだが、味気ない事この上ない。壁紙等を設定できれば良いのだが、これは後で設定を見てみようと考え、まずはララミーナへ質問を送る。
【昨日聞きそびれたけど、電気代とか水道代ってどうなってるの?】
ピン♪
(はや……)
【おっはよー!
今日からよろしくねーー!
えっと、家の維持費みたいなもの?
それだったら棚田君ならわかるんじゃないかな
ごめん、役に立てなくて】
【ううん、ありがと
棚田さんの方へ聞いてみるよ
それじゃ】
【うん
あ、何か疑問とか出来たら直ぐ聞いてくれて大丈夫だからねー! またね!】
気を取り直して棚田へ送信。
こちらは忙しいのか、直ぐに返信は来ない。
仕方ないのでキッチンへ向かい冷蔵庫を開いた。
棚にはラップをかけた生姜焼きが、手つかずのまま入っていた。
他にも色々と残っている。
それらを見ていて、改めて自分は死んだのだなと自覚した。
『香里 世梨香』という日本人女性は、もう何処にも存在しないのだ。
「……………ッ」
目から水が……いや、涙が…。
死の前後、もしかしたら誰か駆けつけてくれていたのかもしれないが、自分では最早確認する事も出来ず、一人ひっそりと息を引き取ったと言う感覚しかない。
だから……
自分くらい、自分の為に泣いたって良いじゃないかと思う。
―――お疲れ様、世里香
―――誰に言われずとも、私が言ってあげよう……よく頑張ったね
―――自分を労って見送ってあげたって、きっと罰なんて当たらない
一頻り冷蔵庫の前に座り込んで泣いていると、タブレットからピン♪と軽快な音がした。
見れば棚田からの返信だ。
【お待たせしました
その辺りはララミーナさんに説明しておくようにと、説明文のセットを渡してお願いしておいたんですが、聞いてませんか?】
―――え?
【ララミーナさんに先に聞いたんですけど、わからないから棚田さんに聞いてくれって言われました】
暫く沈黙が続く。
これは棚田さん、お怒りなのかもしれない……まぁ、知らん~け~ど~♪
恐らくだが、説明文を渡したと言っているから、その説明文が分厚かったか、文字が小さかったとかかもしれない。
ほら、分厚い取説とか、びっしり書き込まれた約款とか読む気にならないというアレだ。
もし本当にそうだったなら、気持ちは嫌になる程わかってしまう世里香だった。
(うん、そうよね。
取説って本棚とかの隅に置いておくだけのモノ!
なんかエラーとか出た時に慌てて開くモノ!)
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もう誤字脱字他諸々のミス、設定掌ぐる~が酷い作者で、本当に申し訳ございません。見つければちまちま修正加筆したりしてますが、その辺りは生暖かく許してやって頂ければ幸いです<(_ _)>




