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 ドアがゆっくりと、だけど大きく開かれる。

 そこに見えたのは黒と赤紫だろうか…時折色調を変えるせいで断言するのは難しいが、そんな色が渦巻く空間だった。

 そう、水槽に黒と赤紫…他の色でも良いけど、その色のインクの雫を落とした時の感じ…と言えば伝わるだろうか?

 見ているとエレベーターに乗った時のような、独特の浮遊感に襲われる。


 ふらりとよろけそうになるのを踏ん張って耐えるが、その様子に気付いた棚田が慌てて振り返り支えてくれた。


「こ……これが…セントマレンシス…タ?」


 絞り出すように呟いた世里香に、ララミーナが外を見据えたまま頷く。


「うん…。

 だけど見てよ…流石セリカちゃんね。

 セリカちゃんのおかげで喪失が緩やかになってる…」


 ララミーナの視線を辿れば地面に行き当たった。


 1.5m四方くらいの小さな地面。その端っこはポロポロと崩れた後、まるで砂時計の砂のように零れて、不穏なマーブル模様の空間に消えていく。

 サラサラ……サラサラサラ……。


「緩やかって……」


 止まらない喪失に、それでも緩やかになったと穏やかに笑うララミーナの表情に胸が締め付けられる。


 ―――だけど……これを救うって?


「……無理………無理だよ、こんな……」


 崩れ、喪失していく小さな大地……大地だなんて…なんて皮肉な言葉だろう。

 そこに辛うじて引っかかる様に立っている小さな若木。根は半分以上マーブル模様の空間にゆらゆらと浮かんでいて、とても不安定に見えた。


「これまではもっと…もっとすごい勢いで地面が消えて行ってた。

 でも、セリカちゃんが来てくれたおかげで、本当にゆっくりになってる。

 …ありがとね」


 お礼を言われるような事なんて、まだ何一つしていないのにと、つい真っすぐ向けられるララミーナの視線を、笑顔を受け止められなくて顔を下に背けた。

 視線を下げたままの世里香の耳に、ドアが閉められた音が届く。


「ま、あんな世界だからね、目にもよくないし、それで窓も再現しないでもらったのよ。ごめん……そうだ、地球の青空とか填め込んでもらっとこうか?」

「え?ぁ……ううん、このままで良いよ」


 その後荷物の受け取り口に案内して貰い、各部屋も見せて貰った。


 ―――うん…窓はないし外には出られないけど、自分の部屋…自分の家だ


 そこまで酷い汚部屋ではないが、推し活の残滓がそこかしこにあり、それを他人(神様だけど)に見られると言う、ちょっぴり居心地の悪い内覧となった。


 とりあえずその日はそこでお開きとなった。

 身体がいくら生物と異なる誕生の仕方をしたとは言え、世里香はこの世界…崩壊したセントマレンシスタに辛うじて残った大地に、今日誕生したばかりだ。

 ララミーナと棚田の気遣いで、今日はもう休む事にする。


 言われるまで気づかなかったが、確かにこびり付いたような疲労感があった。もしかすると聖力とか言うモノを、この世界に吸収されているせいかもしれないが、寝れば治ると言うのだから、その言を信じて従うのみだ。

 食事も特に必要のない身体らしいが、とっても問題ないのは確認してあるので、棚田が置いて帰ったパンを後で食べる事にする。


(それにしても転生そのものはあっけなかったな…。

 でもこれだと転生って言うより転移って感じ…とは言え身体は全く違うモノになったし、やっぱり転生なんだろうな。

 それにしてもぬいぐるみだったから、どうなるのかと思ったけど、ちゃんと人の手だわ。

 あ、鏡見てみよ。

 いやぁ、これで顔も香里 世梨香のままだったら……いや、別に困らないか。

 美人でもなかったけど見られない顔ではなかった…はず。まぁ慣れ親しんだ顔だしね。だけど顔も前のままならやっぱり転移って事になるのでは?)


 等と脳内会議をしつつ、鏡を求めて寝室にしている部屋へと入って行った。





ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。

リアル時間が少々慌ただしく、隙を見計らっての創作、投稿となる為、不定期且つ、まったりになる可能性が高いですし、何の予告もなく更新が止まったりする事もあるかと思いますが、どうぞ宜しくお願い致します。


こちらももし宜しければブックマーク、評価、いいねや感想等、頂けましたら幸いです。とっても励みになります!


もう誤字脱字他諸々のミス、設定掌ぐる~が酷い作者で、本当に申し訳ございません。見つければちまちま修正加筆したりしてますが、その辺りは生暖かく許してやって頂ければ幸いです<(_ _)>

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