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くるりと世界が反転した気が……したかもしれない。
棚田の声に、そっと閉じた目を開いた。
既に室内らしく、見慣れた部屋の風景が視界に写り込む。
次いで視線を落とせば、しっかりぬいぐるみに入り込めていたようだ。
ララミーナの手先の器用さに依存したのだから仕方ないが、丸い筒のような手をじっと見つめた。
この手でゲーム出来るんだろうかと、真剣に考え込む。正直日常生活さえ困難を極めそうだ。
「えっと…これで転生完…」
問い終る前に、視界を真っ白な光が埋め尽くす。
「!!!」
咄嗟に閉じた瞼裏から、強い光が徐々に弱まって行くのを感じる。
恐る恐る片目をそっと開ければ、視界を埋めた光は綺麗に消えていて、まるで何もなかったかのようだ。
「お~案外上手くいくもんだね!」
「はぁ、ホッとしましたよ。
あの御姿では、香里様がお気の毒でしたから」
二人の視線を辿り、再び自分を見下ろして気がついた。
指が……これまでと変わらない手が見える。
「うおおっ!?」
「じゃあタブレット出して」
特に感慨のなさそうな声に、世里香はハタと気付いたように自分の両手を凝視した。
持っていたはずのタブレットがない。
キョロキョロと周囲を見回すが、あんなゲーミングカラー、見落としようがないだろうと思うのに、何処にも見当たらなかった。
「マジで?……何処かに落とした?」
震える声で、この世の終わりかのように呟いた世里香に、淡々とした棚田の声が耳に入る。
「内蔵されただけですよ。
こう意識を集中すれば……まぁ慣れれば特に意識せずとも出し入れ可能になるかと思いますが」
半信半疑ではあるが、他に考えがある訳でもないので、言われた通りに意識を集中してみる。
―――ゲーミングカラーのタブレット…
―――本音を言えばもう少し落ち着いた色が良かった…
―――ハッ! いやいや、今はあれがないと困るんだから…えっと、ゲーミングゲーミング……
フッと手の中に現れた派手なゲーミングカラーに、ホッと胸を撫で下ろした。
そんな世里香を余所に、まず棚田がメタリック且つゲーミングカラーなタブレットを取り上げた。
「…ぇ?」
きょとんとする世里香を置いてけ堀に、何やらタブレットで作業(?)をする棚田…。
しばらく沈黙が続き……。
「こちらはこれで…」
「じゃあ次は私ね」
件のタブレットは棚田から直接ララミーナに手渡される。
こちらも暫くの沈黙の後……。
「よし! これで…多分バグはないはず」
「あったら困りますよ。
完成品しかダウンロードしないで下さい」
「大丈夫だって!
何かあっても、そんな大きな事故は起こらないわよ」
―――激しく不安なんだが……
ララミーナが差し出して来たタブレットを、何とも微妙な顔で受け取る。
画面を見れば、これまで見たことのないアイコンが幾つか増えていた。
―――KAMISA・MART(か…かみさ・まー……神様な商店!?)
―――KAMINET・TANATA(……神ネットた……何のパクリだよ…)
―――KAMINE(かみ……ハイハイ、LI〇Eのパクリね)
―――農場物語(いやぁ、ここまでくると笑いしか出ませんわ)
―――Sekaicraft(……整地、頑張るか……)
ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。
リアル時間が少々慌ただしく、隙を見計らっての創作、投稿となる為、不定期且つ、まったりになる可能性が高いですし、何の予告もなく更新が止まったりする事もあるかと思いますが、どうぞ宜しくお願い致します。
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もう誤字脱字他諸々のミス、設定掌ぐる~が酷い作者で、本当に申し訳ございません。見つければちまちま修正加筆したりしてますが、その辺りは生暖かく許してやって頂ければ幸いです<(_ _)>




