表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人狼は伝説を志して  作者: 蒼春
序章
3/12

2. 人狼と家族



「これから、よろしくお願いします。お義兄さま」


 治療院の前で、迎えに来たルシアンにリアンは頭を下げた。白銀の髪がさらりと流れる。


 ルシアンはうんうんと嬉しそうに頷くと、「今からレスナー家に向かう。持ち物はそれで大丈夫か?」と聞いた。

 リアンの持ち物であるトロリーバッグには、ルシアンから貰ったぬいぐるみと、義手の点検器具、お金と最低限の生活必需品といった物しか入っていなかった。


「大丈夫だと思います。」


 黎明の空のような落ち着いた声でそう言うと、しっかりとした足取りで歩き出した。



     ✡     ✡     ✡



「レスナー家へようこそ、リアン。」


 馬車で治療院のあった丘から街へ降り、街も通り過ぎて、大きな屋敷へ着くと、ルシアンはリアンを振り返ってそう言った。


 レスナー家は代々、ラヴィーア国の陸軍の人材の輩出を担っていた。勿論、ルシアンも例外ではない。

 リアンは蒼色の瞳にルシアンと彼の背後の屋敷を写した。そして何かを堪えるような色を見せたが、一瞬だけだったので、理由はリアンにしか分からない。


 立派な家門を潜り、美しく整えられた庭を抜け、二人は屋敷へ入っていく。

 屋敷の内装はシンプルで洗練されたデザインで、決して豪奢ではないが調度などは最高品質の物だと伺えた。

 リアンはルシアンに客間へ案内された。そこには、ルシアンの父と母らしき人がいた。


「君がリアンか。私はルシアンの父であるヴィードだ。これから、血は繋がっていないとはいえ私たちは家族ということになる。よろしく頼む。」

「リアンさん。私はルシアンの母セレンです。今まではルシアンとは上司と部下、という関係だったと思います。でも、もう私たちは家族です。私たちには、本当の親のように接してくださいね」


 ヴィードはルシアン同様アッシュグリーンの髪に、厳格さと強さを湛えたビターブラウンの瞳をしており、左頬には軍人であったからだろうか裂傷が走っていた。貫禄のある声でリアンに挨拶をする。

 セレンは栗色の髪に橙色の瞳の、いかにも貴婦人といった、柔らかな物腰の女性である。雰囲気は優しいが、軍人の奥方ということもあり、芯のある強さも兼ね備えていた。


「至らぬところもありますが、これからよろしくお願いいたします。お義父さま、お義母さま。」


 リアンは深く頭を下げた。



     ✡     ✡     ✡



 リアンに与えられた部屋は、青色を基調とした広めの部屋だった。ベッドや箪笥などの家具は既に設置されている。ルシアンは「部屋のものや欲しいものがあったらなんでも言ってくれ」と言っていた。


 自分のものを部屋に置き、自分好みに整える。

 ベッドに倒れ込むと、ぼふんと跳ね返った。


 ――――もう、独りじゃないんだ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ