閑話 狼と詩人
シビュラには、劇場などの『観る表現』のものだけでなく、本屋や美術館も街を歩く者が圧倒される程多く立ち並んでいる。その数々の書店の客の一人として、珍しい銀髪の青年が一冊の本を手に取っていた。
詩集だろうか、赤煉瓦のような色をした表紙に翠色の刺繍で「こもれびの詩 オリオ」と詩集の題名とその作者の名が綴られていた。
リアンは、あのケツァールに似た男を思い浮かべる。あの何にも縛られない思考は、きっと閉じ込められたら消えてしまう。彼はことばという空で生きるのが一番だ。
頁をぱらりと捲る。
『点描
とん、と紙に色をのせる。
この碧は、ぼくの喜びの色。
群青は幸福。怒りは茜。劣等感は砂色。
痛みは不言色。そうだ、言いたかったのに飲み込んだ言葉
は、不言色だったな。
ぼくも貴方も、この一瞬、息をして色をつくっている。
ぼくが居て貴方も居る。
それだけで今日も世界は色褪せて、色づいていく
ほっ、と空に色を吐く。
この紅掛空は、ぼくの淋しさの色。
秘色は嘘。貴方への想いは榛色。明日の朝日は思色。
未来は彼は誰色。いつも、夜が街を飲み込んだとしても、
彼は誰色が染めていく。
ぼくも貴方も、この一瞬、色をつくって息をしている。
ぼくが居て貴方もいる。
それだけで明日も世界は色づいて、色褪せていく』
ぱたりと本を閉じると棚には戻さず、リアンは会計の方へ向かった。
本屋を出て空を見上げた時、心が碧に染まった気がした。
詩は書いたことないのでド素人です。ご了承ください。
色も、「この色はたぶんこの感情だー」って自分で感じたままに表現したのであまり深い意味はないです。
毎度毎度、更新遅くて本っ当にすみません。マジで頑張ります。m(_ _;)m




