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マリアナに堕ちたのは、親友ではなく、私でした。  作者: Ruria
ドラッグルームスープ編(後編)
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カラマリアが誕生したきっかけは、単なる『人助け』でした。

「は? それ、本当か?」


 リルドは見たことの無い程の顔面蒼白だったが、彼はコクリと静かに頷くと、『ダカラ、オレモ、協力スル』と一言言い残していた。


 何が何だか分からなかったけど、タミコと言っていた事から、鰒川もまた、私を狙っている。という事を言いたかったのだろう。


 ごめんね。ナイトさん。

 日本人はニュアンスからも何を言っているのか、微かだけど分かるんだ。隠したくて敢えてルーマニア語で伝えていたと思うが。


Salute(サルート) 美々子!」

「ふぇえ!?」


 しかし、彼は先程の真剣な眼差しとは程遠い程のニッコニコ笑顔を、顔が真っ赤になったメンコさんに向けると、こう言っていたのだ。


「ソノ髪色、トテモ似合ウ。面接終ワッタラ、マタ、ココ二来ル」

「あ。ええ!? あ、うん」

「La revedere(ラ・レヴェデレ)!」


 そして、ルーマニア語で言い残すと、彼は軽く手を振ってマスターの元へと行ってしまったのだ。


「アイツ、19年も見ないうちに、人たらしになりやがって」

「あはは……」


 隣にいたリルドは、呆れ気味に溜息をつきながら、レモネードを軽く飲んでいた。


「あわわわ! どうしましょう! 創造神様の顔がぁぁ!」

「はわわわわわ!」

「メンコ様ぁぁ!」


 一方、三姉妹は突然の出来事に、かなり大慌していたのだ。そりゃぁ、面接終わったらまた来るって言われたら、腐の話どころじゃ無くなるか。


「どうしよう……。ねぇ。タミコちゃぁぁん!」


 しかも、彼女は何故か熱がある様な真っ赤な顔で私に助けを求めている。何なんだ、この状況は。


「ぇええええ!? どどど、どうしたんですか!? メンコさん!」

「おいおい。大丈夫かよ……」

「異性に髪色、褒められたの初めてだよ! どうしよう……」

「いやもう、堂々として良いと思いますが……」

「はぁー」


 彼はというと、もう知らねぇ。と言わんばかりの表情で、レモネードをチューチュー飲んでいたのだ。


「それと、スポドリのお礼、もしかしてしてないんじゃ……」

「ぁあああああ! 確かにそうだった! ありがとう! 彼、何なら飲むかな?」

「んー……」


 ふと、リルドの方をじーっと見てから、私はこう答える。


「これ、頼んでみたら良いんじゃ……」

「は? おいおい。何で俺と同じ物にするんだ!?」

「え? 双子だから、その、リルドと好みも同じじゃないかな。て」

「つまり、好みが『ダブる』とでも思ったのか?」

「そういう事」

「まぁー。一理有り得るかもなぁ。けど、全部が同じとは限らねーからな。ドッペルゲンガーじゃねぇし」

「じ、じゃあ、レモネード、頼んでみる!」

「え!? 今からですか?」

「当たり前よ。フグトラが確か、出勤してるから……」


 そう言いかけた時、厨房から緑髪のフグトラさんが、店員姿でひょっこりと現れたのだ。


「おわっ!? 突然呼ばれたので来ましたけど、何があったんすか!?」

「わぁお。凄いタイミングできたね。フグトラさん」

「ほんとそれな。フグトラ。俺と同じものを一つ頼む」

「は、れれ、レモネードを、っすか?」

「あぁ。頼む」

「かか、かしこまりましたっす! 今持ってくるっす!」


 すると、彼は再び厨房へと消えてしまったが、かなり珍しい。リルドがメンコさんの恋路をアシストしているなんて。


 まぁ、確かに『兄弟』だから、大いに絡んでいる。と思うが……。


「さて。ふぅー……」


 しかし、テーブルに突っ伏している彼女の目の前にいるエボシさんが、一つ溜息をつくと、こう話を切り出してきたのだ。


「今回、貴女達が来た目的は、改良版ネクターを無事に回収できたから、その報酬を貰いに来た。でよいか?」

「そうですね。その前に一波乱ありましたが……」

「確かにあれは、妾も予想外だったな。ミクラもギンコも未だ、心停止に近い状態であるからな」

「あは、あはは……」


 確かに周囲を見渡すと、ミクラさんやギンコさんも彼女同様、テーブルに突っ伏した状態で未だに動いていない。


 これが俗に言う『尊死』だろう。


「こういう事は良くあること。ですか?」

「いや。かなり珍しいな。妾も尊すぎて心停止しかけたが、かろうじて、生きておるぞ」

「そ、そうですか……」

「あぁ。それと、ドクター越智にも、感謝せねばな」

「……え? 越智さんに感謝、ですか?」


 ふと、彼女の口から越智さんの名前がポロッと出たので、改めて聞いてみると、アイスコーヒーを一口飲み、こう呟いたのだ。


「あぁ。妾含めた三人は元々、ここまで生きれるか分からないほどの『難病』を抱えておってな」

「……」

「どの病院で治療しても『無理』だと匙を投げられてしまったことがあったのだよ」

「そんな……」


 あんなメンコさんと明るく話している三姉妹に、そんな過去があったとは。


 しかも、難病を抱えていたなんて。

 そうとは全く思わなかった私は、思わず抹茶ラテをこぼしそうになっていたが、今の彼女らを見ても、健康体そのものに見えるのに。


「だけど、こうして三人共、楽しく生きていられたのは、ドクター越智が最難関の手術を三人に施し、全て完治させたからなのだよ」

「え、ええええ!?」

「まじかよ。あの人、本当にスーパードクターだったのか……」

「あぁ。だから、妾含めたカラマリアの人達は、ドクター越智に感謝しておるのだよ。忠誠を誓うほどの。な」

「……」


 なるほど。越智さんの『神がかった治療』によって、三姉妹は今日まで何不自由無く、生きる事ができた。ということか。

 私は静かに抹茶ラテを一口飲むと、気になった事を聞いてみる事にした。


「そういえば、カラマリアって、どんな事がきっかけで作られたのですか?」

「ほぉー。かなり核心ついた事を言ってくるとは。そうだな。妾が知ってる限りの事を話そう」

「ありがとう、ございます」

「構わん。創造神様の乙女チックなところが見れただけでも、妾はご満悦なのでな。ははは!」

「ははは……」


 彼女は満足気に笑いながら軽くアイスコーヒーを飲むと、早速語り始めたのだ。


「そうだな。ドクター越智は、困った人が居たら放っておけない『律儀な方』でな。それが闇組織の人間だろうと関係なく、自分の救える範囲で助けていたのだよ」

「なるほど……」


 そういえば、越智さんところの息子の龍樹君もまた、困ってる人がいたら放っておけない性格だった様な。

 だから、監禁されていたミオ君を助けていた訳だが……。


「そしたら、ドクター越智に忠誠を誓う者が沢山現れてな。中には『神格化』して感謝する者までも現れたのだよ」

「まじか。まるでどっかの宗教団体の教祖みてぇな言われ様だな」

「あはは。本人は単に人を助けた『だけ』なのにな。そして、暗部の人間も助けていたものだから、今度はそいつらを雇う場所も必要になってきてな」

「それがまさか……」

「そう。カラマリアの誕生だ。そして、ドクター越智は、『スーパードクター』と『闇医者』という、『二つの仮面』を被る事により、表裏の世界にいる人間全てを幸せにしようとしているのだよ」

「なるほど……」


 私から見たら、かなりスケールがでかい話に聞こえてくるが、実際にやってのけているのが越智さん。というわけか。

 彼女らの話を聞きながらも、抹茶オレを軽く飲んだ。


「それさ、思ったけどよ……」

「どうしたの? リルド」

「あー。さっき言ったこの状況よ、ベローエからしたら、『神が二人もいらない』て言いそうだよな。て」

「確かに、今回、薬でイカれた奴らを、わざとドクター越智がいる病院に、集中的に搬送させたりしていたのも、それが狙いだ」

「何だそれ……」

「ぇえええ!? ゴホッ! ごほ!」


 まさか、医療崩壊を狙っていた訳!?

 恐ろしすぎるんだけど!


 驚きのあまり、気管に入ってむせてしまったが、何とかグラスを白いコースターがある場所へと戻した。


「恐らくドクター越智を過労死させ、妾の上司が大切にしている『真生くん』を奪おうとしているのだ。上司からしたらそんな魂胆なんて、とっくに見えているがな」

「確かにアイツなら、そこまで見てるかもな。オマケにドクター越智もまた、似たような事を言ってた様な……」

「越智さんの場合は既に『確定』みたいな感じで言ってたものね。『ドラックルームスープ』には、鰒川家が大きく関わってる。って」

「流石ですわね。ドクター越智。あの時点でそこまで、考えていたとは……」

「はぁぁぁ~。心停止していましたわぁ~。エボシお姉さまぁ~」


 そして、彼女がアイスコーヒーを一口飲んだ後、隣にいたミクラさんが、やっと正気を取り戻したかの様に起き上がってきたのだ。


「やっと起きたのね。ミクラ。無事に生還できて良かったわ」

「生還って……」


 色々ツッコミどころが多いのだが、これ以上言うのを疲れた私は気を紛らわすように、抹茶オレを一口、体内へと流し込んだ。


「それにしてもぉ~。今回の事件はぁ、かなり酷い状況ですよねぇ~」

「だな。妾も思うぞ」

「うんうん!」

「……はっ! 心停止しかけてましたが、無事に生還できました! お姉様ぁぁ!」

「おぉ。ギンコも正気を取り戻したようだな」

「ですね。それと……」

「あぁ。これの事だな」


 すると、彼女は自身の膝上に置かれたバックから三種類の薬を取り出し、私に渡してきたのだ。


「これがドクター越智からの……」

「そうだ。くれぐれも『三種類一気飲み』をしないようにな」

「は、はぁ……」


 しかし、彼女は意味ありげに警告をしてきたのだ。

 なんでだろう。そういえば真生くんも『三種類一気に飲まなければ大丈夫だ』とか言ってた様な……。でも引っかかるなぁ。


「……はっ!」

「やっと目が覚めたか。創造神様よ」

「あぁ。ごめんね。色々と起こりすぎて、頭の中でパニクってたよ」

「おいおい。アイツはただ、報告しに来ただけなのに、何だその気絶具合は」


 私の隣にいたリルドはというと、レモネードを飲みながらも、呆れ気味に言葉を漏らしていた。

 でもこの現状、貴方のお兄さんが引き起こした事なのよ。他人事みたいに言っているけど。


「何を言っているんだ。貴様は」

「は、はぁぁ!?」

「君の兄君が、この状況を作ったのだろう。弟である君も責任があるだろう?」

「はぁぁぁ……。そんなの聞いてねぇし! ったく……、あんのバカ野郎!」

「あはは……」


 彼は拗ねながらも文句を言っていたけど、私が言いたかった事を、彼女が熱く代弁してくれたから良いとするか。

 なので、隣で軽く笑いながら、抹茶オレを飲み干した。


「さて、この辺でお開きとするか。ミクラ。ギンコ」

「はぁ~い! エボシお姉様ぁ~」

「はい! お姉様! それでは(ワタクシ)はこれにて!」

「あー。ごめんね今日は。アタシがこんな状態で……」


 そして、三姉妹は席を立つが、その中の一人、ギンコさんが突然、思い立ったかのように、こんな事を言い始めたのだ。


「いいんですよ! それにしても、ナイトさんでしたっけ? メンコ様とお似合いじゃないですか!」

「は、はぁぁぁあ!?」

「そりゃぁ。何もかもスマートに行動していて、軽く褒め言葉を言って華麗に去って行くとか。どこの恋愛漫画の一コマでしょうか!」

「それは確かにぃ。ミクラも思ってたわよぉ~!」

「ふっ。ベノム共々、創造神様の恋路を応援しておるぞ!」

「あー! もう! 三人ともぉぉ!」

「ではまたな!」

「は、はい……」

「お。またなー」


 こうして、波乱を呼んだ三姉妹は軽く手を振ってツブヤキを後にしたが、嵐が過ぎた後の静けさの様で、暫くは呆然としていた。


「さて。先にサーフェスに帰っていいわよ」

「え!? メンコさん!?」

「ちょっと。ね。その、二人だけで話したい事があるから……」

「なるほどな。俺らは『お邪魔虫』てか」

「いや! そういう意味じゃないのよ! なんて言うか……」

「もっと、彼を知りたくなった。って事ですよね?」

「タミコちゃん……」


 まぁ。察してはいたけど、これで私の方も計画の準備は出来たから良いかな。後は決行の夜を待つだけ。


「良いと思います。リルド。サーフェスに戻るよ」

「あぁ。もしかしたら、グソクから何か、新着な情報が入ってるかもしれねぇしな」

「そう。だね。先に行ってますね」

「うん。でも、気をつけてね」

「あぁ。鰒川の連中にはバレねぇ様に動くから安心しろ。タミコはその……、俺が守るから」

「……は?」

「ぶはっ! ちょっとオレンジジュースが変なところに入っちゃったじゃないの!」

「ま。アイツのレモネード分の会計はやっとくから、気にせずに会話しろよな。その、ナイトとな!」

「はいよ。とりま、気をつけて帰ってね!」

「あぁ。タミコ、行くぞ」

「あ。う、うん」


 そして、彼に連れられるがまま、私らもツブヤキを後にしたが、さっきの『俺は守るから』って何よ!

 しれっとナイトさんみたいな事を、口にしてんじゃないよ! 全く……。


「さて……」



――ブーッ。ブーッ



 ふと、私の水玉パーカーのポケットに入ってたスマホから、何故かバイブが鳴ったのだ。


「何だ? 俺もだ」


 彼もまた、パーカーのポケットからバイブが鳴ったので、私達は同時にスマホを起動し、通知を確認する。


「グソクさんからだ」

「しかも、ビデオ通話だ。珍しいな」

「確かに。何があったのだろう……」


 すると、彼からビデオ通話の応答が来たので、素直に応じると、彼が慌てた顔で息を切らしながらこう言っていた。


『あぁあああ! たたた、大変なことになりましたぞ! タミコ氏! リルド氏! メンコ氏!』

「ど、どうしたのですか!? そんなに慌てて……」

『突然のビデオ通話って何事? 人待ってるから、簡潔に話せる?』

「まじか。何があったんだ。グソクさん」

『わわわ、分かりましたぞ! では、簡潔に言いますとな……』


 店内にいた彼女は、かなり冷静な声で話していたが、彼は顔面蒼白な顔で、一言、報告するかのように、言葉を吐いたのだ。


『アオハトのDMに『ぼくを助けて』と通知が入りまして、詳しく聞いたところ、その差出人が『真生くん』だったのですよ!』

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