表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マリアナに堕ちたのは、親友ではなく、私でした。  作者: Ruria
ドラックルームスープ編(アジト襲撃)
67/106

今回の極秘任務は、無茶ゲーでした。

「ええっと。騙せるか? とは?」


 私は思わずゴエモンさんに聞き返してしまった。

 敵味方全員を『欺く』て、どういう意味だろう。


「実は今回の敵が、かなり厄介な奴らでな」

「まぁ。何となく分かりますが……」

「それが、デッドプールの方に頼んでも、『ヴァルテ家』の動きが、イマイチ掴めなくてな」

「そんな……」


 つまり、『ナイト』さんが現れるのは、神出鬼没。という事?

 それも困るんだけど、何で私が全員を騙さなければならない訳? 理由が全く分からなかったので、再度彼を凝視する。


「だから、ワシは暗殺一家を相手にするのは、ものすごく嫌なんだよなぁ」

「え!? そうなんですか!?」

「そりゃぁ、そうだ。そもそも暗殺を生業にしている時点で、身内にすら、自分自身の居場所は『口外禁止』だしな」

「それもまた……」


 大変な環境に置かれていたんだ。

 ナイトさん、もしかしてずっと、一人で戦っていたり。


「そこで、だ」

「はい……」

「お前、リルドと、ものすごく仲良いだろ?」

「いや。仲良いっていうか……」

「お? もしかして、恋人か?」

「あー! もう! ゴエモンさんまで!」

「ガハハハハハハ! だってお前、最初の時よりも、彼と親密になってたじゃねーか」

「それはそうですけど。最近になって、メンコさんやグソクさんにも、そーやって茶化されたんですよ!」

「まぁ。お熱い仲の様で、何よりじゃねーか。おっと。話が脱線してしまったな」


 すると、彼はにんまりと笑いながらも再び、愛用の電子タバコを取り出すと、ふぅ。と一服し、こう告げてきたのだ。


「何で味方までも騙さねぇといけねぇのかと言うとな、実は今回の件で、シイラが『かなり危ない動き』をしているみたいでな」

「え!? シイラさんが?」

「あぁ。あの時の二の舞にならなければ良いのだが、どうも嫌な予感がするんだよな」

「……、まさか!」


 ふと、ゴエモンさんから以前聞いた『シイラがサーフェスをクビになった理由』が頭の中で思い出してしまった。


 確か、シイラさんがサーフェスの掟を破って標的を殺害し、見せしめとして、遺体を『ハムスタキロ』に投稿。それが拡散され、事務所の移転を余儀なくされた。という話だった気が。


 ちょっと待って。ひょっとすると、またシイラさんが、掟を破って……、人を殺すってこと?


「そうだ。その、『まさか』だ」

「えぇ……」


 だけど、カラマリアの掟って何だろう。

 聞いたことが無いけど、私のイメージだと『ドクター越智の管理下の元、様々な治療をしながら活動をしている』感じなのよね。


 だから、ベローエやサーフェスみたいな『掟』や『決まり事』は作ってないとは思うけど……。


「まぁ。厳密に言えば『ドクター越智』の制止を振り切って、単独で向かう可能性が大いにある。という事だな」

「それって……」


 かなり危険な状況って事では。

 つまり、彼は上の命令関係なく、鰒川家の人達諸共『星にする気』なんだ。


 でも、その背景には『守りたいもの』があるから、ダメだ。とは強く言えない。私には、彼を止める権利は無いのだから。


「と、いう訳だが、この任務、やってくれるか?」

「それで、敵味方を『全員騙す』という事なのですね。でも何でリルドもメンコさんも騙さないといけないのですか?」

「それに関してはリルドは最近、タミコにベッタリし過ぎだ。だから少しお灸を据えなければな。と思ってよ」

「お灸って……」


 確かに今回の件で、最近リルドは保護者みたいに、やけに心配してくるし、何かとあれば常に一緒にいる気がする。下手したら部屋の中にまで、入ってくるんじゃないかと思うほどだ。


「それと、メンコは脳筋だから良いとして……」

「えぇ!?」


 毎度思うけどゴエモンさん、メンコさんへの対応が、かなり雑な気がするのだけど、良いのだろうか。まぁ。師弟関係があるから別にいっか。いや。これでいいのか? 


「ま。さっき言ったのは冗談だ。だけど、シイラが危ない動きをしているのは事実だと言うことは分かってくれよな」

「はい。それで、『全員を騙せ』と」

「あぁ。ワシもシイラに関しては、かなり気がかりだったのでな。サーフェスから離れたからと言って、決して見捨てた訳ではない」

「……」

「アイツが離れてから、越智とも前以上に、親密に連絡を取り合うようになっていたからな」

「そう、なんですね」

「そして、ワシが聞いた時には、いつの間にか守りたいものが出来ていた。それが奪われようとしていたなら、尚更怒りで満ち溢れてしまうだろうな。その気持ちが物凄く、痛いほど分かる」

「……」

「ワシもビショップの野郎と一緒に、『あの双子』を助けるために、命を張っていたからな。まさか19年経ってから、こう、動きが出てくるとは予想もしなかったがな」

「その双子が、『ナイト』と『ルーク』という事なのですね」

「あぁ。あいつも本名を聞いた途端、驚いただろうな」


 ゴエモンさんもまた、リルドを助けるために、命懸けの事も沢山やってきたのだろう。

 正に人生を賭けた。と言っても過言ではない。


「あ。それと、ゴエモンさん」

「なんだ?」

「実はヒガンさんから、こんな話を聞きました。同席していたメンコさんやリルドも驚いていたのですが……」

「お? あのヒガンからか。それは聞きたいな。何だ?」


 なので、私はふぅ。と深呼吸をすると、意を決して言うことにした。


「実は、ベローエの現教祖が、『アビスの構成員』ではないか。との噂です」

「……! おい。冗談だろ。それは本当か!? おっと!」


 すると、ゴエモンさんはかなり驚いた顔で危うく電子タバコを落としそうになっていたのだ。


「えぇ。しかも、『元信者』からの情報らしいので……」

「って事は、天海愛華の手がかりを持っている可能性が1番高いのが『現教祖』ていう事だよな?」

「そうですね。それと……」

「それと、何だ?」

「今、私達が追っている『ナル計画』の内容と『ベローエの掟』、かなり似ていると思うのは気のせいでしょうか」

「……」


 今まで思っていたことを一つ一つ、確認をとるかの様に話すのは、とてつもない程の緊張感だ。


 希少血液の『量産』を目論む『ナル計画』と、教祖の血を引く子を『確実に産み出す』ベローエの『人身御供』と『宦官モドキ』の掟。


 どれも気味が悪い程に『似ている』のよ。


「改めて考えるとそうだよなぁ。確かに『儀式の日には、女性は教祖と子作り』という所が気色悪さを醸し出しているがな」

「そうですね。しかも、孫であるミオ君の口から聞いた時は、恐ろしい程に鳥肌が立ちましたもの」

「そりゃぁ、『ベローエ』自体が、ワシ達の想像の斜め上を行きやがってるからな。常軌を逸した組織なのには変わらん」

「……」


 本当に考えれば考えるほど、不気味で嫌な宗教団体だ。


 いや待って。まさか『掟』をベースにして生み出したのが『ナル計画』って事は流石に……、無いよね?


「……はぁぁぁ」


 思わず大きなため息を漏らしてしまったが、今回の件といい、予想外な事に巻き込まれてばかりで嫌気がさす。


 それに、『ベローエ』といい『アビス』といい、私を狙う人達が、未だに尽きないのもね。


「おい。ものすっげぇデカイため息吐いてどーしたんだ?」

「えっと、私を狙う人達が多くて困るなぁ。て」

「はっ。敵さんからも、かなりモテやがって。困ったもんだなぁ」

「ほんと……」


 狙うなら不正ばっかり働く、悪徳政治家を狙えば日本は安泰になるのに。なんで毎回私なのよ。


 もしかして、希少の血を持っている『サンプルの人』だから?

 それにしても、まるで新種を発見した様な騒ぎになるのは、やめて欲しいんだけど。せめて血で騒ぐのは、シイラさんだけにして。


「お前、相当疲れてんな。ほれ」

「えっ!?」


 すると、ゴエモンさんは自身のミリタリー柄の作業着のポケットから、『カロリーチャージ』を取り出し、私に渡してきたのだ。


 四角くて黄色い箱を開けてみると、見た目が棒状のクッキーが入っていた。

 なので、試しに一口齧ると、口の中の水分が一気に奪われてしまったが、とても美味しい。


「これって……」

「携帯栄養食だ。これで英気を養って、明日の中規模アジトへ向かう準備をしろ」

「ありがとうございます!」

「時間は夜の8時頃だ。リルドやメンコ達にも伝えておくから今日は寝ろ」

「……は、はい!」

「また、なにか進展があったら、遠慮なくワシに言ってくれ」

「分かりました! では、おやすみなさい」


 こうして、私とゴエモンさんとの依頼と約束をきっちり果たすため、シークレットルームを後にしたのだった。


 それにしても、『全員騙す』というのは、かなり難しい気がするんだけど。


 フグトラさんは単純そうだから何とかいけるけど、勘が鋭いリルドやシイラさん、メンコさんまでも騙さないといけないなんて。


 信じれるのは『自分だけ』という極限状態の中で、どうやって敵味方を欺こうか。


 部屋に戻ると早速、スマートフォンを起動し、メモアプリに色々と書き込んでデータに鍵をかけた。これで万が一見られても、大丈夫。


 そして、真っ先に服を脱いでシャワー室へと駆け込んだ。


「あー。最高!」


 やっぱり、全部を解放したあとのシャワーは気持ちいいな。

 そういえば、3ヶ月前に来た際は、完全に茶髪だったけど、今では焦げ茶色にまで髪色が落ちてしまっている。


 近々染めなきゃ。だけど、この大きな任務が終わってからにしよう。


 そして、シャワーを終えると、ドライヤーで髪を乾かし、海へダイブするかの様にベットへ飛び込むと、そのまま意識を手放した。







 また、夢だ。

 今度は目を覚ますと、一面、コンクリートでできた床と壁。それ以外は何も無い。まるで監禁部屋みたいな所に、私はいた。

 実は私以外、異国の人もいて、4、5人はいたと思う。


「何ここ……」


 まるで、サーフェス入社前に見た動画『人体オークション』の一部に入り込んだ様な感覚だ。


 そういえば、何で私はオークションの『商品』として、参加していたのだろう。


 あの時は自分自身が『天海愛華』として、動画を見ていた。


 だから仮面を被った謎の人と、喧嘩をしていたけど、よく考えたらあの動画に映っていたの、私だったよね。


 結局は、天海愛華なんて、何処にも映っていなかった。じゃあ。どこに行った?


「……」


 クラブハウスでの出来事もあったけど、あれ以来、私は彼女に会っていない。


 という事は、あの『オークション』で誰よりも値が高く付けられていたのは……、多美子という、『私』だった。てこと?


 あぁ。そういう事か。

 両手に持ったプレートを見ると、確かに他の人よりも、値段が高い。


 恐らく、天井に取り付けられた監視カメラ越しで、金持ち連中がどの子が良いのか、値を踏むかのように、選別しているのだろう。


 だけど、何で事の今まで、生きてこれたのか。未だに不思議ではあるけど、何故か思い出せない。






「……はっ!」


 胸がドクンと跳ね、気味が悪い変な夢を、また見てしまった。

 手汗がベッタリと纏わりつくように、手の平に滲んでいて、背中も汗ばんでいる。


 暑いというのもあったけど、本当はかなり(うな)されていたんだ。私。


 現実かどうかを確認するために、時計を見ると、朝方の8時頃となっていた。


 はぁ。眠たい。

 だけど、今が現実で本当に良かった。

 それと、中規模アジトに行くための準備をしないと。


 まずはボサボサになった髪を、緑色のヘアブラシで梳かすと、髪に艶ができた気がした。

 確か、メンコさんから『これ、めっちゃいいのよ! 使ってみて!』と圧に押されて貰ったんだよね。


 あとはスマホに通知が入ってないかのチェック。と。


「……ん?」


 すると、ライムに一通の通知が入っていたが、何故か嫌な予感しかしない。


「……は? ヒガンさん!?」


 震える人差し指で、恐る恐る通知を見ると、こう書かれていたのだ。


『タミコ様。無事にご生還、おめでとうございます。事の詳細は、フグトラから全部お聞き致しました』


「あのね……」


 まるで某RPGの台詞みたいに言うの、やめて欲しいんだけど。


 無事にご生還って何!?

 もし仮に死んでしまったら、どうするつもりだったのだろうか。

 恐らく、教会の神父さんから泣き顔で『あぁ。タミコよ。死んでしまうとはなにごとだ』とでも言われそうだ。


「えっと……。ありがとうございます。お陰様で生きていますが、何かありましたか? と」


 なので、私は寝ぼけ眼で返信すると、秒で返事が返ってきたのだ。


『実はですね。本日の夜、中規模アジトでの襲撃作戦、私とフグトラも参加することになりまして。あ。ツブヤキの方は、ミオ様とマスターに店番を任せますので、大丈夫です』


「あ。そうなの……」


 だけど、ミオ君も大変だよね。

 こんな癖強な元幹部達に振り回されて、胃がやられないといいけど。



――ピコンッ。



「はやっ!」


 すると、女子高生並の速度で返信が速く来る事に驚いていたが、ヒガンさん、文を打つの、早くないか?


 恐らく、フリック入力でサササッて、指を軽やかに滑らせて打ち込んでいるのかな。


『それにしても、パキりルームや限界チャレンジの民度が、海外のスラム街並に酷くなっていたとは、驚きが隠せませんでした。オマケに錠剤版ゾンビタバコも所持していたとは』

「……」


 そして、間隔入れずにバイブが震えると、こう文章が記されていた。


『まぁ。これで『ドラックルームスープ』というサイトが、如何に危険で潰さなければならないのか、よく分かりました』

「え? ちょっと待って。文打つの、早くない?」


 思わず声が出てしまったが、再度続けて連投してきたのだ。


『それに、錠剤版ゾンビタバコに関してですが、シイラさんから説明があった通り、かなり厄介なアイテムでして……』

「はぁ……」

『闇の大型フリマサイト『ナイル』で運が良ければ、高値で取引される程の『レアモノ』なのですよ』

「ええっ!?」


 何。その危ない通販サイト。

 初めて聞いた名で驚いてしまったが、もしかしたら、利用者の中に『カラマリア』の人がしれっと居そうな気がするんだけど。


 だから、あの冷静なシイラさんが驚いていた訳だけど、まさか、密かに利用している?


『ですが、ナイルに関しては、今回の削除対象には該当しておりませんので、ご安心を……』

「は、はぁ……」


 それなら良かったけど、仮に『このサイトも削除しといてねー』て丸投げされたらどうしようかと思ったよ。もう。


 でも、大型のフリマサイトにも売っているとなると、鰒川家のシノギ、かなり幅広いんじゃないかなぁ。

 下手したら『ナイル』にも介入している可能性があるよ。これ。


『で、もう一つ言わないといけないことがありましてな……』

「はぁ……」


 そして、間隔開けずに来た返信には、こう記されていたのだ。


『実は中規模のアジト近辺の溜まり場で、『リルドさんにそっくりな人物』が現れた。という情報を得ましてね』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ