表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マリアナに堕ちたのは、親友ではなく、私でした。  作者: Ruria
ドラックルームスープ編(リモート潜入)
62/106

寝ぼけ眼での準備は、何かと大変でした。


「ふぁぁぁ……」


 深い眠りについていた私はふと、時計を見ると、既に昼の2時頃になっていたのだ。


 うわぁ。結構寝たかも。

 だけど、昼夜逆転するのが怖いなぁ。どうしよう。


「うーん……」


 ふと、新規停止にしてきた『匿名の語り場』の存在が気になったのだが、『パキりルーム』てどんなのだろう。中毒気味になった龍樹君でさえも、参加するのを躊躇(ためら)った程だ。


 想像以上にイカレた奴らが、ゴロゴロといるのだろう。考えるだけでも恐ろしい。


「さーて……」


 だけど、ここで怯えていても解決しない。

 なので、私は(おもむろ)に、枕元に置かれた黒い中古のスマートフォンを手に持つと、ライムを起動した。そして、ある人のトーク画面に、こう打ち込んだのだ。



『やっほ。リルド。もし手が空いていたら、エナドリを10本ほど買って来て欲しいの。緑と紫の二種類ね。それと、黒い半袖のパーカー、借りたいんだけど、良いかな?』



 さて。次はヒガンさんにこう頼んでみるかな。



『おはようございます。夜に『ある作戦』を決行します。主に中規模アジトへ入るための準備です』

『なので、レンタルルーム『カスピ』に予約の部屋を入れるよう、フグトラさんにお願いして貰ってもよろしいでしょうか? 私自身、フグトラさんのライムID、知らないので……』



 突然連投して驚いてしまうかな。でも、ヒガンさんなら『悪い様には』しないでしょう。

 あの人『貢ぎ癖』が酷いだけで、他は有益な情報を持っている『情報屋』の一面が強いので。


「はぁー……」


 だけど、次に送る相手には、何故か躊躇していた。いや。『同居人 真生くん』の方はいいのよ。問題はその同居人を管理する『管理者 シイラ』が問題なだけで。


 あの人、真生くんの事、物凄く『溺愛』しているけど、やり方が毎度恐ろしいのよね。

 公私混同のバカップルみたいに、人がいても居なくてもお構い無しに平気でイチャつくし、下手したら前のキルマイ騒動の時の再来。みたいな事をやってきそうで……。


 もしかしたら、『パキりルーム』に居そうな溜まり場の連中と同じく、『危ない』事をしそうで、任務どころじゃなくなりそう。


 現にビデオ通話の時でも、あんな調子だったし、思い出すだけでも頭が痛い。

 いっその事、彼らだけ別室で借りてもらうよう、お願いしとけば良かったかも。


 でも、別室だと出入りしなきゃだから手間がかかるし、逆に相手側から疑われそう。

 それに、年齢もあるせいか、夜に真生くんだけ連れてくる事は無理か。オマケにメンコさんが手に入れてきた箱も、重箱みたいに大きいから、どんなのが入っているのか、かなり気になるし。うーん……。


 暫く悩みに悩みまくったが、意を決してこう打ち込んでみることにした。



『おはようございます。シイラさん。お昼の最中にすみません。実は今夜、『ある事』を決行するので、そちらにいる真生くんと、龍樹君のスマートフォンをお借りしてもよろしいでしょうか?』

『あ。真生くんの方は昨日、小規模のアジトを制圧した際に『黒い箱』が見つかったので、それを先に開けて欲しいのです』



 連投だけどいいや。

 ふぅ……。これで大分、気持ちが楽になったかも。あとは、準備しなきゃ。


 なので、上は緑色のTシャツで、下は黒い短パン姿だった部屋着から、普段着(黒いジャージ上下)に着替えると、部屋から出ることにした。

 ちなみに中のTシャツはメンコさんからのプレゼントで、何故か赤くて黒いバラが書かれたプリント付きのがあったから、それを着てみる事にしたんだ。


 だけど、何だかリルドの顔がチラついてしまうし、母斑の薔薇マークの事も思い出してしまう。

 

 はぁ……。何やってんだろ。私。

 寝ぼけているせいか、変な連想ばかりしていたけど、まずは近くにあるドラッグストアに寄ってみるかな。

 半目のまま、お気に入りの黒ジャージでサーフェスから出ると、外は快晴だった。

 太陽は真上より少し傾いていたせいか、思わず目をつぶってしまったが、眩しい。


「暑っつ……」


 思わず声が漏れてしまったが、気温は何度だろう。

 おもむろにスマートフォンを開いて天気アプリを起動させると、『37度』と記載されていた。

 うわぁ。服装選び、ミスったかも。

 日中の上下黒ジャージは流石に暑い。でも、日差しでシミになるのも嫌いだから、これはこれでいっか。


 私は熱中症に気をつけながらも、真夏で照りつけられたアスファルトの歩道を歩いて、ドラッグストアへと向かう。


「おっ。着いた!」


 無事に着いた私は、店の名前が書かれたマットを踏みながら店の入口へ向かうと、スーッと自動ドアが開いた。


「あ。可愛い……」


 ふと、目の前にある化粧品コーナーをチラッと見てしまったが、男の人って、どんなメイクが好きなのだろう。うーん。


 途中、棚の裏側を覗き込みながら、私はお菓子コーナーにあった小袋のラムネを、かごに入れてみる。


 まぁ、飲まなくても演出として散らすだけで良さそう。如何にも『パキってます』みたいな。


 それと、ネクターの箱が目に入れば、思わず指先で滑らせ、成分表を確認していた。


 試しに買ってみようかな。

 いや。別に薬物乱用をしたい訳ではないんだよね。ハナから試すつもりはないの。ただ、見せ物として、用意しておくだけ。


 どこかのバカップルみたいに『ドーピング薬』を入れてハイになって遊んだり、イチャついたりはしないよ流石に。うん。


 冷房の効いた空気と薬の匂いが、店内を巡回している中、更に歩くと、見慣れた男性が、エナドリコーナーの前で悩んでいたのだ。


「あ。リルド」

「よぉ。眠れたか?」

「うん。お陰様で」

「あのさ……」

「え?」


 ふと、彼が指をさした棚を見ると、様々な種類のエナドリが沢山並んでいた。

 緑と言っても違うメーカーのが書かれていたり、『デットブル』と書かれた物もあって、これは悩みそう。


「お前からライムで、エナドリを買ってこい。て言われたから来たけどよ、どれを買えばいいんだ?」

「えっと確か、250円のエナドリのはず」

「あー。250円ってこれか?」

 

 すると、彼は『モンストゥル』と書かれた緑色のロング缶を、私に差し出してきたのだ。

 黒と緑の禍々しい斑模様のデザインといい、彼の部屋にあったエナドリ缶と全く同じ物。


「あ! これこれ! これの紫もある?」

「紫……。あ。グレープ味と書かれているな。何本買えばいいんだ?」

「うーん。1日の摂取量が1缶から2缶だから、10本ぐらいかな」

「それとよ、その『飲んだ後』の缶を集めて演出に使うのはどうだ?」

「それいいね! 採用!」

「ちょっと待て。ガチでやる気なのか……」

「当たり前でしょ。まぁ。万が一、消化出来なかったら『中身を捨てれば』いい話だし。あとは中身を移すために使える『じょうご』かな」

「おっけ。探してくるわ」

「ありがとう」


 こうして準備は着々と進んでいった。上手くいくのか分からないし、かなり不安だけど、みんながいる。だからきっと、大丈夫。


 あとはエナドリの味と同じ『メロンサイダー』と『グレープサイダー』も買って、と。


「これでいいか?」

「うん。ありがとう」

「つーか、中身まで『別物』にするなんて、相当手が込んでいるな。楽しみにしてるぞ」

「えー。そんな、期待しなくてもいいのに」

「ふっ」


 しかし、彼は鼻で軽く笑うと、何故か私の頭を軽く撫でてはこう言ってきたのだ。


「でも、無理だけはすんな。いいな?」

「ちょっと待って。ここ最近、かなり距離が近い気がするんだけど……」

「え? あぁー。昨日の任務といい、色々とありすぎたからなぁ」

「そ、そう……」


 何故か、はぐらかされたのは気のせいだろうか。

 私はこれ以上言うのをやめると、レジ前のカウンターに、買う物を溜め込んだカゴを置いたが、かなり重い。

 そして、ジャージのポケットから財布を取り出して、会計しようとしていた。


「あ。俺払うからいい」

「え!?」


 だけど、何故か彼が慣れた手つきで『ペムペム』を起動させると、スマホに表示されたバーコードを店員に見せていたのだ。


 えっと、昨日からずっとリルドが支払ってるのは何でだろうか。


 漢気を見せたいため?

 それとも、『好きな子の前ではカッコつけたい』とか?


 よく分からないまま、会計を終え、買ったものをビニール袋に突っ込んで店を後にすると、外の暑さは先程より和らいでいた。


「あー、暑い……」

「同感だ。俺も暑いのは苦手だ」

「そうなの!?」

「あー。特に今年の暑さは異常すぎるだろ。37度とか平然と超えるしよー」

「アイス、ついでに買っとく?」

「お。そーすっか。丁度近くにコンビニあるし」

「やった! 次の会計は私に払わせて!」

「は? 何でよ」

「え? だって、昨日もリルドが支払ってたじゃん。だから、大変そーだと思って……」

「……」


 すると、彼は突然黙り込んだかと思うと、「しーっ」と合図をし、ある場所に視線を送らせていた。


 視線の先には、向こう側から複数の男女が歩いてきたのだが、全員、何故か正気を失っていたのだ。昼間なのに、ゾンビの集団みたいに、異様で気味が悪い。


 それに、スマホが付いた自撮り棒を持って振り回しては、舌を出してあっかんべーしたりと、そこだけ狂気な空間が漂っていた。


「何あれ……」


 思わず小声で呟いてしまったが、まさか、『パキりルーム』にいる人達なのだろうか。

 私が見ているのを全く認知していないせいか、集団は


『あひゃー! 今日はめっちゃパキれてきんもちぃぃー!』

『ねー! わったしもぉぉー!』

『ふわふわしててなーんかテンションあがるぅぅ! いえぇえええーい!』


 と、奇声をあげながらも、一心不乱に騒いでいた。


 うわぁ。関わりたくない。

 なので、私は自身の視界を、彼の方へ向けて、集団から目を背ける事にした。

 ついでにはぐれないように、彼の逞しい右腕に強く抱きついて、くっつくように歩けば、リア充風にも見えるだろう。


「おまっ!? 何してんだよ!?」

「しーっ」


 彼はかなり驚いていたが、すかさず静かに。の合図を出してしまった。


「タミコ。てめぇ……」

「あ。ごめん、ね。少しだけ……」

「仕方ねぇ。通り過ぎるまでの間。な」

「うん。ありがとう」


 そして、通り過ぎるのを確認したところで、私は彼から軽く離れ、ほっ。と一息ついたのだ。


「……」


 だけど、彼の顔は何故か真っ赤に染っていた。


「それにしても、アイツら異常だな。俺らが通り過ぎても、こっちの存在はガン無視で、自分達の世界を構築しやがって」

「うん」


 確かにシイラさんや真生くんとの『バカップル』みたいなイチャコラとはまた違う。

 あのイカれた様子だと、間違いなく『薬漬け』で生まれたものだ。思うだけでも背筋がゾッとしてくる。


「私、あぁなりたくないな」

「万が一なった場合は、俺が叩いてでも正気に戻すから安心しろ」

「ふっ。リルドらしいね。ありがとう」

「別にお礼を言われるほどじゃ……。おい。着いたぞ」

「あっ……。ってあれ?」


 すると、コンビニ前には、終始ニヤニヤしながら私達を見ている、見慣れたオレンジ髪の女性が待ち伏せしていたのだ。

 しかも、かっこよく、両腕を組んで、壁に寄りかかりながら。だけど、片手には茶色くて大きな紙袋がぶら下がっていたのだ。


「メンコさん!?」

「やっほー! お熱いところごめんねぇ~」

「ったく。何なんだよテメェ。さっきから人の事からかいやがって」

「いや! あれはその、そういう意味でくっついたんじゃ……」

「あの『ラリった』連中見てびっくりしたんでしょ?」

「え!? メンコさんも、見てたんですか?」

「うん。アイツらの行く先は恐らく、『溜まり場』だね」

「溜まり場……」

「そう。アタシはそれ関連の別任務に向かうことになってたけど、ゴエモンさんに一通り報告したところ『状況は深刻化』しているらしい」

「ってことはもしかして……」

「うん。龍樹君が入院している病院に『溜まり場の連中』が毎日のように運ばれているみたいで、医療は逼迫した状況みたいね」

「うわぁ……」


 越智さん、大丈夫なのだろうか。

 そんな毎日のように『薬物中毒』になった患者が運ばれてくるなんて。やっぱり異常だ。


「てことで、例の物、ここに入れといたから」

「あ。わざわざありがとう、ございます」

「いいってことよ。あと、三姉妹にも先程会ってきてさ、テスターの報告したら『これもよろしくぅ~! 実は新薬なのぉ~』ていう調子で、ミクラが変な薬を渡してきたんだよね」

「え!?」

「まぁー、開けてみたら分かると思うけど、アタシは見てないからね~」

「ちょっと待って!?」

「そんじゃ! あ。リモートでの潜入、頑張ってね~」

「は、ええ!?」


 そして、彼女は意味深な言葉を残すと、手をヒラヒラと振ってコンビニを後にしたのだ。


「なんでアイツ、今日やるって知ってんだ?」

「さぁ……」


 それより、アイスを買わなきゃ。

 なので、コンビニへ入ると、アイスやかき氷の種類がたくさんあったので、それぞれ好みに合わせて買い込むことにした。


 例えば、シイラさんや真生くんなら『イチゴ味』とか。フグトラさんは『抹茶味』、私も抹茶といきたかったけど、暑いし、たまには違う味でも食べようかな。


「あ。これいいかも」


 たまたま目に付いたブルーハワイ味のかき氷を見つけた私は、思わず手に取ると、リルドもまた、同じものを手に取っていたのだ。


「え!? どしたの急に」

「気になったから買うだけだ。別に一緒のものにしたいとかそんなのは……」

「ふーん……」


 何故か妙に戸惑っていたが、ま。いっか。

 なので、私はレジに向かって、財布からある程度支払うと、大荷物を抱えながらレンタルルームへと向かうことにした。


「あっ! タミコさんに、リルドさん!」

「おー。フグトラじゃねーか」

「もしかして、お仕事終わった?」


 すると、カスピの前でこちらに向かって手を振るフグトラさんが、こちらに声をかけてきたのだ。

 服装は黄色い半袖パーカーで、下は黒いカーゴパンツだけど、中の白いTシャツには『アイラブ抹茶』と深緑色の字で書かれていたのだ。


「そーっすね。俺は仕事終わって、ヒガンさんから部屋を借りるよう頼まれたんで、それやってたとこっす。にしても、お二人にお会いすんの、何日ぶりっすかね?」

「まぁ。ざっと、2日ぶりってとこかな」

「ふぁっ!? まだ2日しか経ってないっすか!?」

「そーだよ……」


 だけど、相変わらずのハイテンションで接してきたので、困惑しながらも答えていた。


「ていうか、お前は相変わらずだな」

「まぁ。事情は粗方、ヒガンさんから聞いてるっす。溜まり場周辺が、かなりイカれた状況になっている。と」

「そうだね……」


 確かに、先程通り過ぎた人達のあの、狂った有り様は、これ以上見ていたくないな。

 目の焦点もズレまくっていて、手が震えていながらも尚、薬を摂取するのをやめないなんて。


「あ。かき氷溶けちゃうから、先にレンタルルームに入っちゃう?」

「お。賛成だな。先にかき氷食っちまおっと」

「ちなみにフグトラさんの分も買ってきたからね」

「おっ! タミコさん、ありがとうございますっす!」


 そして、私達3人は『リモート参加』の準備をするため、レンタルルームへと入るのだった。

 だけど、メンコさんが言っていた、紙袋に入っている『新薬』って何だろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ