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マリアナに堕ちたのは、親友ではなく、私でした。  作者: Ruria
ドラックルームスープ編(前編)
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上司から聞かされた話は、衝撃的な内容でした。

「なるほどな。そう来たか……」


 ゴエモンさんは、両腕を組みながらも真剣にこちらの話に耳を傾けていたが、複雑そうな表情を浮かべていた。


「俺もにわかに信じ難いのですが、どうやら、俺そっくりの人が、海横に彷徨いているって、ヒガンさんから聞いたので……」

「おー。そうだな。この際言っておくか」

「え? それ、アタシ達が聞いても平気な内容?」

「構わん。今回ばかりは、お互いに情報共有しないと、危ない案件なのでな。隠していたら、取り返しのつかない事になりそうでよ」

「そうなんだ……」


 すると、彼は覚悟を決めたように、胸ポケットから愛用の電子タバコを取り出すと、ふぅー。と吹かし、こう告げたのだ。


「確かに『ナイト』という、お前そっくりの奴がいたのを、見たことがあるな」

「え!?」

「それ、本当ですか!?」

「あぁ。確かに赤髪で翡翠色の瞳をしていた。今のお前みたいにな」

「まじかよ……」


 彼は絶句していたが、ゴエモンさんは続けざまに、こう語り始める。


「あの時のワシはまだ、傭兵をやっていた頃だな」

「傭兵?」


 もしかして、昔は金持ちのボディーガードみたいな事をしていたのかな。

 確かに筋肉の付き様からして、屈強のボディーガード。てイメージがありそうだもの。多分。


「その時によ、現地にいた『ビショップ』というおじさんに頼まれてな」

「『ビショップ』さん。ですか?」

「あぁ。ヴァルテ家の血腥(ちなまぐさ)い掟から双子を引き離すのに、協力して欲しい。と頼まれたんだよな」

「……」

「ワシはその時現役で若かったからさ、子育てなんてやったこと無くてよ。だけど、いざ、頬に傷がある少年と鉢合わせたらよ、見るに耐えかねなくてな……」

「……」

「その時に、ワシはその傷だらけの少年を。ビショップは『ナイト』という少年を引き取ったのだよ」

「……」

「そんな経緯が……」

「もしや、その傷だらけの少年が、『リルド氏』て事ですか!?」

「その通りだ。グソク」

「……」


 彼はというと、一言も発さず、ずっとゴエモンさんの話を、真剣に聞いていた。一言一句、聞き逃さない様に。


「……やはり、そうでしたか」

「おい。その言いぶり、何か知ってる感じだな」

「まぁ。ビショップさんは確か……、俺の叔父です」

『ええ!?』


 すると、彼から更なる情報を、口にし始めたのだ。ビショップさんは、リルドの叔父さんだった!?


 信じられない情報に、私を含めたメンコさんやグソクさんは、思わず固まってしまったのだ。


「叔父さんには、その。色々と、お世話になった部分がありましたので……」

「なーるほどなぁ。だからワシに依頼をした。てことか。あの人は歳をとったリルドみたいな人だったからなぁ」

「えっと、それ、どういう事ですか?」


 思わず話に突っ込んでしまったが、歳をとったリルドとはどういう事だろう。


 多くを語らないけど、根は優しい人だとか。

 1回会ってみたいなぁ。


「ガハハ。ビショップさんはな、ヴァルテ家の掟に唯一反対していた人でもあったからなぁ」

「掟に反対。ですか?」

「あぁ。今でも思うが、人を殺せば殺すほど一人前。だなんて、馬鹿げた掟だよな。そんな事、日本でしたら、すーぐしょっぴかれるのにな」


 そう独り言のように呟くと、彼はふぅー。と電子タバコを吹かしたのだ。


「それってさー、まるで今の鰒川家みたいじゃない? 信者でも反対意見をした者は皆殺し。とかさ」


 すると、私の右隣で聞いていたメンコさんが、嫌そうな顔で彼に聞いていたのだ。


「だろ? メンコもその辺気がついてたかー」

「なーんか、師匠。アタシの事、軽く馬鹿にしてません?」

「いんやー。弟子にしてはよーく頭が回るよーで。がははは!」

「何ですかそれ。褒めてないですよね?」

「いんやー。弟子にしては頭回るし、よくやってるぞー」

「あはは……」


 だけど、こんな微笑ましい師弟関係、羨ましいな。

 でも、まさかここで、リルドが日本に来た理由が聞けるとは。全く思ってなかったけど、確かに鰒川家のやってる事と、ヴァルテ家の掟、ほぼ似ている気が。


「あと、二つ目は鰒川家に関して。です」

「あー。昨日は悪かったな。どうもワシ達周辺を嗅ぎ回ってるのが腹立たしくてな」

「いえいえ。でもなんで急に?」


 確かに気になっていたが、突然監視するかの様に、サーフェス周辺を彷徨く半グレ達といい、『ドラックルームスープ』というサイトといい、今回はやけに『薬』が絡む気がするのだが。


「それに関してですが、ヒガン氏と共に気になる情報を見つけましてな」

「グソクさん。気になっていましたが、どういう……」


 気になった私は更に彼に聞いてみると、悩んだ表情で、こう言ってきたのだ。


「実はですね、ここ最近『越智院長』が務める病院に搬送される患者が急増したのですが、それがほぼ、『溜まり場』にいる人達ばかりなのですよ」

『えええ!?』


 なんの偶然だろうか。溜まり場に関してはメンコさんから聞いたばかりだ。薬物乱用は勿論、夜な夜な大騒ぎしてはしゃいでいる。だなんて話していた気が。

 だけど、あの周辺、他の病院もあるのに、越智さんの所だけ、集中して運ばれるなんて、何なのだろう。妙に引っかかる。


「なので、ヒガン氏は前から、溜まり場の惨状に関しては、かなり危惧していた様ですぞ」

「それは確かに危険視するって……」


 現にその薬物乱用騒ぎに『鰒川家』が絡んでいる。だなんて言ったら、ヒガンさんだって流石に野放しにはしないでしょうに。


「まぁ。その通りには、なりましたがな。ちなみに先程、『ドラックルームスープ』にも動きがありましてな」

「どんな動きでしょうか?」

「実は厄介なことになりましてな……」


 しかし、グソクさんは苦虫を噛んだかのような表情をすると、パソコンの画面を私の方に見せてきたのだ。


「実は向こうの運営が、新規の参加者は『一切受け付けない』て状態にしてきたんですよ」

『ええええええ!?』


 私達は思わず驚いてしまったが、幾ら何でもタイミングが不気味すぎるって。しかも小規模アジトを倒した後のこの対応。なにか怪しい。


「どーすんのよ! その辺、グソクさんのハッキングで何とかならない訳?」

「いやいや。ワイのハッキングでもなかなか入れないほど匿名性が強くてですな。下手したらこっちがウィルスで壊れて動けなくなる状態になるんですぞ」

「あ。それだったら……」


 ふと、私に妙案が浮かんだので、軽く手を挙げると、ダメ元でこう提案することにしたのだ。


「元々、『ドラックルームスープ』のアカウントを持ってる人に『なりすます』というのはどうでしょうか?」

「なりすます。ですと!?」

「そう。『匿名の語り場』には顔を出したことはあるけど、『パキりルーム』や『限界チャレンジ』には、顔を一切出してない人になりすますのです」

「それってまさか……」

「その、まさかです」


 恐らく、中規模のアジトや大規模のアジトも、小規模の時と同様。アジトの入口を開くためには、この『闇サイト』からパスワードを得る必要があるんだよね。


 という事は、突然、新規の受け入れを禁止にしたのって、『これ以上踏み込まれたら困る』とか『部外者である私らを、徹底的に入れない』ためだったりして。


 という事は、『既存で登録されたアカウント』を利用すれば、『パキりルーム』まで、すんなりと入れるかもしれない。し、リモートだったらワンチャン、『なりすまし』でもいける気が……。


「ぶはっ! まさか、タミコちゃん、『龍樹君』になりすますってこと!?」

「そ、その通りです。リモートなので、フードを深く被って顔を隠してなりすませば、平気かと思って……」

「お前、時々シイラみたいに、突拍子の無いことを言い出したりするよな」

「はぁぁ!? あーんな悪逆非道のサイコパスと一緒にしないで欲しいんだけど! しかもなんで私!?」

「悪逆非道って! ほんっとタミコっておもしれーよな! こーんな一緒にいても、飽きねーのも珍しいや。ははは!」


 すると、今まで笑ってなかった彼が、突然笑顔になったのだ。


「は!? え!? どしたのリルド? 急に笑って……」

「え? 笑っちゃいけなかったか?」

「いや。そうじゃないんだけど……」

「ったく。お前ら二人、なんだかんだ言って仲良いよな」

『えっ!?』

「もしかして、ガキん時に会ってたりして。ま。冗談だがな」

「あ。それに関してはその……」

「まぁいい。とりあえず、まずは二人とも、ゆっくり休め。いいな?」

「は、はい……」


 こうしてゴエモンさんに報告をし終えたが、最後まで『現教祖がアビスの構成員』という噂に似た情報を話すことが出来なかったのだ。

 話すとしたら、ゴエモンさんと二人きりになったタイミングで話すのが、1番いいのかも。


 それに、パソコンの時計を見ると、もう朝方の5時頃になっていたのだ。


 早くシャワーを浴びて寝ないと。


「それでは、おやすみなさい……」


 なので、私はみんなに軽く挨拶をすると、寝ぼけ眼でトレーニングルームを経由し、自分の部屋へと直帰した。


 今日は色々と、たくさんの情報を得られた気がしたが、それと同時に、珍しい程の彼からの積極的なアプローチも多かった気が。

 おまけに、お互い両想いだ。と分かってしまったのも大きいけど。


 だけど、シイラさんや真生くんみたいに、お互い「好きだよ」て言い合えたらどれだけ楽だろうか。

 何だかもどかしいけど、それはそれで恥ずかしいのも本当だ。傍から見たらバカップルみたいじゃないか。


「はぁ……」


 色々考えていたら、いつの間にかシャワーを終えていたのだ。

 なので、部屋着に着替えてドライヤーで髪を乾かしつつ、左手でスマートフォンを取り出すと、木製のテーブルに置いてみた。

 そして、髪を乾かし終えると、最初から今まであった事の経緯を、軽くメモアプリにまとめてみる事にした。


――――――――――――――――――――――――――


 今回の案件『ドラックルームスープ』に関して。


・このサイトは初め、『匿名の語り場』で匿名のチャットとして、色々と語らせてから、『パキりルーム』へと招待される仕組みだ。

・オマケに『パキりルーム』には、様々な中毒の人がリモートで語っており、中には『鎮痛剤』やら『睡眠薬』やらを何錠飲んだ? て聞き回ったりしているらしい。

・そして、『限界チャレンジ』はパキりルームである程度、知名度を獲得すると、出てくるみたい。

・ちなみに小規模アジトに入るためのパスワードは、『5025』という不規則なパスワードだった。

・これは匿名の語り場で、雑談混じりに語っていた『250円のエナドリ』と『5本飲んだ』

から拝借された数字だ。

・つまり、この方式で辿ると、何かしらの番号がカギになっていたりするかも。

・だけど、限界チャレンジをやる際は、細心の注意を払わないと、死ぬかもしれない。



 『ドラックルームスープ』の攻略方法


・恐らく攻略の鍵は『龍樹君の飲み癖』を上手く利用することだ。

・それに、リモートなので、幾らでも誤魔化しは効きそうだ。

・パーカーは、リルドの物を借りれば、フード部分が大きいから、すっぽり目の部分を隠せそう。

・あとは、場所バレをしないように、場所は『レンタルルーム カスピ』でやってみるかな。


――――――――――――――――――――――――――


 大まかな流れはこんな感じだろう。

 あと、ヒガンさんからの情報もまとめてみるかな。

 なので、私はベットへ戻ると、更にメモアプリにまとめてみることにした。


――――――――――――――――――――――――――

・一つ目は、605は内部ページのエラーコード。つまり、『龍樹』というエラー要素があることにより、もしかしたら、ドラックルームスープを潰せる可能性が出てきた。ていう事。

・最初、何を言っているのか分からなかったけど、今思うと、あの『既存のアカウント』が突破口になる。という事を指し示していたのかも。


・二つ目は鰒川家と、真生くんの出生にまつわることだったっけ。まさかミオ君と『親族説』が出てくるとは思ってなかった。


・家系図にしたら、恐ろしい事になるけど、つまり、現教祖と信者の間に生まれた子が真生くんで、現教祖の『子』と信者の間に生まれた子がミオ君。てことでいいんだよね。

・ん? 待てよ。まさかの『叔父と甥』の関係って事!? かなりややこしいんだけど!

・おまけに叔父が性別不明とか、恐ろし過ぎて笑えないのだが。まぁ。それもいいか。いや。それでいいのか? 同い年の叔父と甥なんて聞いたことがないんだけど。


・それと、3つ目は、そんなややこしい家系図を作った『現教祖』がアビスの構成員である可能性がある。ということ。

・確かにナル計画と、ベローエの掟が酷似しているのが引っかかっていたんだよね。仮に構成員だったら納得っちゃ納得なんだけど。


――――――――――――――――――――――――――


 ひとまずこんな感じかな。ベットに入りながらだから、深夜テンションに近い形でツッコミも入れてしまったけど。


 そして、私はスマホを充電器に挿すと、そのまま夢の中へと堕ちていった。


 さて。明日は『リモート参加』する準備をしなくては。


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