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マリアナに堕ちたのは、親友ではなく、私でした。  作者: Ruria
ドラックルームスープ編(前編)
58/106

夜のドライブは、楽しいものでした。

 私達は、夜のツブヤキから出ると、メンコさんの車が止まっている駐車場へと向かった。


 今回の報告は、私なりに、かなり情報を得たと思う。

 『ヴァルテ家』や『鰒川家』、そして、ベローエの背後にうろつく『アビス』の存在。


 それともう一つは、『ドラックルームスープ』というサイトの突破方法。龍樹君の変な飲み方がヒントになる。と、ヒガンさんが言ってたなぁ。


 それと、『匿名の語り場』には、アジトを開けるパスワードがある。と言ってたなぁ。しかも5250をバラバラにした数字。と。


 あとは、私の方で聞きたいことは、後で直接ライムで聞くとして……。


「それにしても、今夜はなかなか情報の収穫が凄かったよねー。料理どころじゃなかったと思う」

「確かにそれは有り得るな。若干、スープカレーの味が薄れてな」

「まぁ。そりゃぁ、驚くよね……。私も驚いてるもの」

「にしても、ゴエモンさんにどー報告しよ。あまりにも情報が濃密過ぎて、どこからどこまで話せばいいのか……」

「それなぁー」


 メンコさんやリルドはというと、あまりにも濃密な情報に、どう報告しようか、悩んでいたみたい。まぁ。私も正直悩んでいるが。


 駐車場に着くと、夜露の匂いが漂っていて、彼女の黒い車のボディには、街灯が鈍く反射していた。


 私はドアノブに手をかける直前、リルドがふっと小さく息を吐いたのが聞こえていたのだ。それはそうか。まさかの『双子の片割れ』が居た。なんて聞いたら驚くよね。そりゃぁ。


 それと、車の後部座席に乗り込んでも、緊迫した空気は流れていた。

 そのせいか、私達の胃の奥には、さっきの食べたもの以上に、情報が重たくのしかかっていたのも本当だ。


「さて、何から報告する? 順番決めないと色々やばいって……」

「うーん……」


 ふと、運転席に座っているメンコさんから、エンジンをかけながら、そんな話を持ちかけられたが、どこから話せばいいのやら。

 ブルルと軽いエンジン音が前で鳴ると、夜の街灯が窓ガラスに反射し、私達の影がゆらりと揺れていた。


「ひとまずよ、サーフェスに戻ってから考えよーぜ」

「賛成」

「そーねー。りょーかい!」


 だけど、窓に映るネオン街の景色を見る彼の一声で、サーフェスに帰ってから。という事になったが、今日は色々と疲れたなぁ。ここまで考えを放棄したくなったの、初めてかも。


「にしてもよ、カラマリアもデットプールも、俺らに頼りすぎじゃねーか?」

「あー。言われてみれば……」

「デットプールはツブヤキでバイトしながらやってんのは知ってるけどよ。カラマリアに至っては、あんのクソシイラ達、何やってんだが……」

「まぁまぁ、リルド。落ち着いて」

「んー……」


 彼はと言うと、ツブヤキに行く前のビデオ通話の件もあり、内心苛立っているみたい。


 それと、確かに今回、シイラさんがあんまり出しゃばってないのも珍しい気がする。いつもなら自由気ままに振舞っては、場をかき乱しているけど。今回に至っては『真生くんのケア』優先でいる感じがするんだよね。恐らく……。


「もしかして、シイラさん、ものすごい殺意が湧いているけど、真生くんがいるから、あれでも『抑えている』かもしれない」

「どーゆう事だ? タミコ」

「だってシイラさん、いつも、あーんなベロッベロに酔っ払う程、お酒飲むかなぁ」

「うーん。そーいやあいつ、飲んでも強いからケロッとしてることの方が多いんだよな。確かに今日、あそこまで酔い潰れて真生くん。にベッタリ甘えてるのは珍しいっていうか……」

「それって、よっぽど、鰒川家のことに対しては、怒り心頭なんだろうねー。なーんかわかるわぁ」


 きっと、お酒の力を使って『力と衝動』を抑えて、甘えで誤魔化しているんだろう。『苺カクテル』を注文していた。ということはそうだ。


「多分ね。『苺』を摂取している。ということは、彼は明らかに『殺意』を押し殺しているんだよね。本当は一族諸共、殺したい。という思いを、酒の力を借りて潰すようにしているっていうか」

「そう来たか。相変わらずすげーな。タミコは頭の回転早くて」

「なーるほどねー。流石、サーフェス謀略家!」

「ちょっとメンコさん! それは無しだってば!」

「あはは! とりま、少しだけ気分転換にさ、遠回りすっか」

「お? 直で帰んなくていいのか?」

「うん。なーんかドライブしたい気分!」

「分かりましたよ」

「私も少し、頭の整理がしたかったので、丁度良かったです」


 なので、私達は軽く、夜のドライブを楽しむことにしたのだ。


「わぁー。綺麗……」


 ふと、海横から少し離れた時、窓を見ると、バイパスに乗ったのだろうか。

 ビルの群れには派手な明かりがつき、夜空には見えないけど、星が幾つか光っている。


「……」

「……え!?」


 彼はと言うと、左側でずっと窓の景色を見つめていたのに、何故か不意に右手で、私の左手を繋いできたのだ。


 ちょっと待って。突然過ぎて一瞬思考が止まりかけたが、単に手を繋いでいるだけだ。大丈夫。


 私は運転席にいるメンコさんにバレないよう、常にキョロキョロと周囲を見渡しながら、彼の手を握り返した。


「……!」


 彼は驚いてこっちを見ていたが、驚いてるのは私の方だっていうの。全く。


 なので、車に揺られながらも、メンコさんにバレないように、手を握っていたら……


「……!?」


 今度は指を絡めるように、恋人繋ぎをしてきたのだ。


 あーもう! やり返してきた!

 私は一瞬、声がでかかったせいか、急いで空いた右手で口元を押さえたけど、隣の彼はというと、何故かニヤニヤと不敵な笑みを浮かべている。


 こんにゃろ! 後で覚えてろ!

 なので私も彼を見ながら、軽く握り返したけど、彼は未だに余裕の表情だ。何だかムカつくなぁ。


 なので、何処で反抗しようと、機会を伺っていた時だった。



――ブーッ。ブーッ



 何故か私のスマートフォンが鳴り出したので、空いた右手で器用に起動させると、ライムにこんな通知が入ってきたのだ。



『さっき、ヒガンさんと話している時、妙に距離が近かったから、かなりモヤッたのは本当だ。それと、この際だから言っておく』



「……え?」


 相手は隣にいるリルドからで、彼は器用に左手でフリックしながら、何かを打ち込んでは送っていたのだ。



――ブーッ。ブーッ



 今度は何?

 私は恐る恐る通知を開くと……。



『俺はこう見えて、かなり嫉妬深い。だから、メンコ以外、あんま異性の近くにいないでくれ』



「……!?」


 確かに嫉妬深いのは分かっていたけど、なんでこのタイミングで送ってきた!?


 思わず通知を凝視してしまったが、不意に彼に握られた左手に違和感を感じた私は、咄嗟に彼がいる方へ振り向いてしまった。


「……はぁ!?」


 すると、彼が何故か、私の方へ視線を向け、微笑みながら手の甲に軽く、口付けをしてきたのだ。


 え。ちょっと待って。

 動揺を隠せなくなった私は、目をまん丸くなって固まってしまったのだ。


 だけど、目の前ではメンコさんが、真剣に運転をしている。

 あー。どうしようか。この状況。


 なので、私も空いてる右手で何とか反論しようと、座席にスマホを置きながら、器用に打ち込んでは、彼に向けてこう送ったのだ。



『それは初めっから、分かってたよ。じゃあ、私もこの際言っておこうか。実はね私……』



 と。


 ふぅ。これで良し。

 こういうのは、最後に『含みを持たせる』事が大事なのよね。


 そして、私は彼にバレぬ様に近づき、恋人繋ぎで握った手を自身の口元へと寄せると、軽く口付けをし返したのだ。


「……んなっ!?」


 彼は案の定、顔を真っ赤にして驚いていたが、私はふふ。と微笑みながら、彼の手の甲にこう、指でなぞらったのだ。



『リルドのこと、すきなの』



 そう。これが、私からの、更なる仕返し……、も兼ねた、告白だ。ここまですれば流石に嫉妬心が爆発することは無くなるだろう。きっと。


「……は、え!?」


 そのせいか、彼はついに、変な声を発してしまったのだ。


「ちょっと後ろの二人ぃ~」

『ふぁっ!?』

「なーに人の車の中でイチャコラしてる訳? いっその事、ラブホ街で下ろそっか?」

「はぁぁぁ!? ちょっと待てメンコ! 何でそーなる!?」

「いや! それだけはやめ……!」


 と言いかけた時だった。



――ブーッ。ブーッ。ブーッ。



「え? 通知?」


 ふと、何故か私のスマホから、通知が届いたのだが、一体何なのだろうか。


「えっと……。ぅええ!? ゴエモンさん!」

「はぁ!? なんでこんな夜遅くに?」

「ちょっと出てみて!? タミコちゃん!」

「は、はい!」


 しかも、相手はゴエモンさんからの着信と来た。何があったのだろうか。

 私は敢えて、みんなが聞こえるよう、スピーカーに設定し、電話に出ることにした。


「もしもし……」

『おー。タミコか。そこにリルドもメンコもいるだろ?』

「いますが、一体何が……」

『実はな……』


 すると、電話口から逼迫したような声でこう言ってきたのだ。


『サーフェスの拠点周辺に、変な半グレ連中が彷徨いているらしくてな。今ここで帰ったら、ここの場所がバレる確率が高くて困っていた所だったのさ』

「え!? 半グレ連中?」

「それって、ベローエか?」

『実は外の防犯カメラからグソクがハッキングして外の様子を見てもらってるのだが、どーやら『別の組織の連中』らしくてな』

「なるほど……」


 もしかして、『鰒川家』なのかな。私はごくりと唾を飲み込みながら、こう聞いてみたのだ。


「まさか、『鰒川家』の人とかは?」

「なるほどねー。確か『鰒川組』ていう半グレを取り締まる組織がいたんじゃなかったっけ?」


 すると、メンコさんが運転しながらも、別の組織の存在の話をし始めたのだ。


「は!? てことはあのガキ、ヤクザ連中のとこの子ってことか?」

「いや。なんて言うか、真生くんとは関係ないけど、鰒川組の他に、半グレ連中を取り締まる組織があるみたい。だけど、かなり細かいからよくは分からないのよねー」

「へぇ……」


 つまり、鰒川家もまた、『一枚岩では無い』てことか。深層ウェブサイトみたいに、何十層も組織を構築していって、利益を得る。ていう魂胆だったり。


『まぁ。外に出ているついでだ。そこら近辺にアイツらのアジトがあったはずだ。場所はデットプールが一つだけ、小規模なアジトを見つけた。と言っていたのでな』

「つまり、三人でアジトへ乗り込んで一個潰してこい。と」

『ご名答。お前ら三人なら小規模ぐれー、朝飯前だろ』

「いやいや。私は……」

『それとタミコ』

「はい」

『護身用のアイテムは、欠かさずに持ってるな?』

「はい。スタンガンとこの、ペンですよね?」


 そう。最近は護身用として、小型のスタンガンとタクティカルスティックを所持している。いつもはジャージのポケットに忍ばせているから、万が一危ない目に遇った時、前のキルマイ騒動の時のように、身を守ることが可能だ。


 それと、更に危なくなったら、一番初めに、リルドから貰った、あの『ナイフ』もジャージ下のポケットの中に折り畳まれている。


『ならいい。いってこい』

「はい」

『ということで。だ。お前ら三人、生きて帰ってこいよ。わかったか?』

「はい!」

「わかったよ。ゴエモンさん」

「りょーかい。それと、ゴエモンさん?」

『なんだメンコ。用があるならさっさと言ってくれ』

「分かったー。そーいえば、越智さんがそっちに何十万か課金として送るって言ってたみたいだけど、ちゃんと届いてますぅ?」

『え? は、はぁ!? そんな事言ってたのか! あんの野郎! あ。わりぃ。後で確認する。では!』



――ガチャッ



 すると、何故か彼は慌てた声で通話を切ってしまったのだ。

 そういえば、越智さんが言ってたなぁ。『ゴエモンには、課金と称して、何十万か渋沢さんを振り込んでおく』て。

 あの慌てっぷり。恐らく『知らなかった』のだろうな。あはは。


「さて、場所はどこって言ってる?」

「あ。トークに位置情報付きで送られてました!」


 すると、トーク画面には『海横工業地帯』と書かれた地図が送られてきたのだ。


「なるほど。ここからそう遠くないかも」

「ほんとですか!?」

「うん。だけど、今回は『小規模のアジトを一つ潰す』からね。みんな、気を引き締めて行くよ!」

「はい!」

「りょーかい。俺も準備完了だ」


 なので、私達は小規模のアジトを潰すため、車を走らせたのだった。

 さて。私も腹ごしらえとして、昼の時に食べ損ねたベーコンレタスのサンドイッチ、食べよっと。

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