表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/108

久しぶりに再会したら、何故か味覚が分からなくなりました。

「えっとこれ……」


 私は過去最大に悩んでいた。

 これは返信するべきか否か。

 あ。そういえば、この抹茶パフェ、カンナちゃんが私への報酬とのことで、先に払っていたなぁ。


 うん。何とか理性を保てたので、改めて文章を見たら……、は? 喫茶店の前ぇ!?


「どーしました? って、タミコさん!?」

「なーんか、今、喫茶店の前にいるって……」

「えっと、確かにいるのですよね……。ほら、そこに」

「はい?」


 ふと、フグトラさんが指を指した先には、白い長袖Tシャツと黒カーゴパンツを着た、黒髪で、短髪ショートボブの男性がいた。

 見た目はホストに居そうな程の美麗な感じだが、隣は……。ぅええ!?


「えっと……」

「やぁ! タミコちゃん! お久しぶりだねぇ~」

「……お久しぶり。です」


 その人は、白いフリフリが付いたイチゴ柄のワンピースに、黒いパンプスと、ロリータ風の格好をしている。茶髪で女の子らしいボブショートに、白いヘアヘッドを着けた人がご丁寧に挨拶をしてきたのだ。

 見た目がまんま女の子なんだけど、シイラさん、別人連れてきた?


「えっと。どちら様、ですか?」


 思わず他人ヅラをしてしまったが、こんな人いたっけ?

 でも、二人とも首元には『イチゴのペンダント』を付けているし。うーん……。


 私は思考回路が破裂しかけながらも、何とか動線代わりにあんこと抹茶アイスを頬張って、正気を取り戻そうとする。


『いやいやいや!』

「僕だよ~! シイラ!」

「ぼくです。えっと、お久しぶりです。『真生(まお)』です」

『は……、えぇぇぇええええ!?』


 すると、まさかの人物に、近くにいたフグトラさんも驚いてメニュー表を落としていた。


 いやいやいやいや。三ヶ月空いただけでこんなに変わるものなのか!?

 しかも何!? 初めて真生くんに会った時はこんなロリロリな格好してなかったでしょ!?

 ナイフ向けて襲ってきた時、君、男子高校生の制服着てたよね!?


 ていうか、まさか。

 シイラさん……、『調教』した!?


「そりゃぁ~驚いちゃうねぇ。あははは!」

「ごめんなさい! その……、こんなにびっくりされるとは……、思ってなくって!」

「ていうか、シイラさんもイケメンなのはズルいって……」

「ほんっと。俺、初めてっすよ。シイラさんが女装以外の格好してるの」

「え!? そぅ?」

「えへへ。驚かせちゃって、その、ごめんなさい!」

「いいんだよ~。真生があんまりにも可愛いから、みんなビックリしちゃっただけだしね~」

「ほんとぉ!?」

「そうだよ~。さぁ。座ろっか!」

「うん! ぼく、何食べようかなぁ~!」


 しかも。当の本人達はケロッとした表情でイチャつきながら席に座ってるし。

 何なんだろう。そこの席だけ、白と赤色の薔薇が咲き乱れているような。


 うん。きっと見間違いだ。他人のフリをして、静かにパフェを食べよう。

 私は半分溶けてしまった抹茶アイスを、真ん中のフレークと均一に混ぜながら、頬張って思考を戻していた。


「えっと、シイラさん?」

「あー。ごめんねぇ~。何で真生がこーんな感じになったのか、知りたい感じでしょ?」

「知りたいって言うか……」


 ごめん。シイラさん。今思考回路が追いつかなくて、なんて言えばいいか状態なんだよね。うん。

 私は一度、ふぅ。と深呼吸をし、理性を取り戻した。


「真生。あの騒動後の話、タミコちゃんにしても大丈夫?」

「えっと、大丈夫、ですよ。フグトラさんも、聞きたければ……」

「いやいや。俺は盗み聞きは嫌なので厨房に戻るっすよ~。ちなみにお二人は何にします?」

「そうだねー。僕はいつもの。いちご増し増しパフェで!」

「うわっ! 美味しそ~! ぼくも同じのでいい?」

「いいよ~。一緒に食べよっか」

「やったぁー! シイラだいすきっ!」

「了解しましたぁ~! では俺はこれで失礼するっす!」

「……」


 さて。抹茶パフェ、食べよっと。

 私はフグトラさんが厨房に戻った後、再度、思考回路を修復するかのように、フレーク混じりの抹茶アイスを三口ほど頬張った。


「あ。ごめんごめん。じゃあ、話すね~」

「あ。うん」

「実はあれから、拘留所という所にいたんですが……」

「……」

「あの時のぼくはまだ、龍樹に未練があったみたいで……」

「……」

「なので、ぼく、そこで無意識に爪や髪の毛を、食べていたみたいなんです」

「えっ……」

「しかも、カミソリ持って。切って……。それを束にして、食べていたみたいで……」

「そんな……」

「そう。あの食感。覚えて、います。たくさんの糸を束ねて、それを食べている様な。そんな感覚でした」

「……」


 それって、かなり精神的に追い詰められていたんじゃ。

 やっぱりキツく言い過ぎちゃったかな。

 ごめんね。真生くん。


「だから、ドクター越智が真生の姿を見て、即座に保釈を決めたみたいなんだよね。あのままにしていたら自殺しちゃうんじゃ。て思ったらしくてねー」

「そういう背景が……」


 すると、すかさずシイラさんがフォローを入れるかのように言っていた。

 なので、この三ヶ月、シイラさんも色々あって大変だったから、早くに連絡取れなかったんだなぁ。


 だけど、元気そうで、良かった。


「そしたらさ~、やっと落ち着いて、今は通院して、ちゃんとお薬を飲みながら過ごしてるもんね」

「うん。今は『吹っ切れて』たのしくやってるから、大丈夫! あとね……」

「うん……」


 すると、彼(見た目はロリータファッションだが)が私の方を見て、こう言ってきたのだ。


「タミコさん、あの時、ぼくに『吹っ切れるきっかけ』を作ってくれて、ありがとう!」

「えっ!?」


 まさか感謝されるとは思ってなかった私は、思わず涙腺が、零れそうになっていた。

 だけど、抹茶パフェの味が、何故か少しだけ塩味になっていて、あれ? 可笑しいなぁ。


「あれが無かったらね、今でも髪の毛とか、爪とか、食べてたと……、思う」

「そっかぁ……」

「でも、真生は偉いよ。ちゃんと自分の口から、思った事をきちんと言えるからね」

「シイラ……」

「よしよし。焦らずに、自分なりにやってこう。大丈夫だよ~」

「うん。だいすき! ちゅーしていい?」

「ちゅーはダーメ。するならお家に帰ってからね!」

「はーい!」


 うん。良かった。子供のように甘えて、ワガママ言ったりちゃんと、『自分』を出せるようになってきている。


 何だろうなぁ。本当に色々とあったけど、この一言『ありがとう』だけで、もうお腹いっぱいだ。


 だけど、ふと、疑問に思った事があるんだけど、シイラさん、どうやって、血を飲みたい衝動を抑えているんだろう。


 聞いてみようか、悩みに悩んでいたが、思考を整理するために一度、抹茶パフェのフレークをパクッと一口頬張った。


「どうしたの~? タミコちゃん。何か僕に聞きたいことがある様な顔だね~」

「ぅえええ!? 何でいっつもシイラさんは私の言いたいことが分かるんですか!?」


 しかし、目の前にいる彼に見抜かれてしまった私は、慌ててわらび餅を頬張った。が、周りに付いてるきな粉に水分を取られ、むせそうになっていた。


「あはは! シイラはね、人の気持ちが手に取るように、分かるみたいなんだぁ~」

「それ……、超能力か何かの一種かな?」


 一瞬戸惑ったが、彼はいつものケラケラとした表情で、真生の頭をなでなでし、真生は真生で、犬みたいにニッコニコ笑っていた。


「超能力とかじゃなくてぇ~。んーっと、シイラはよく、『人の目の動きを見て』判断してるんだ~」

「へぇー……」


 だけど、あそこまで当てられるものなの?

 一周回って怖いんですけど。

 ケロッと言う彼の話に耳を傾きながらも、静かにパフェの下層部を頬張った。


「あはは。多分、タミコちゃんは今、こう思ってるんじゃないかな?」

「……」

「僕が、どうやって、『衝動』を抑えているのか」

「えっ!?」


 私は一瞬、下層部から掬っていた抹茶ゼリーを落としかけてしまった。

 何なんだこの人。待って待って。色々と怖すぎる。リルド以上に危ない人かもしれない。


「驚かすつもりはまったく無かったんだけどねぇ~」

「はぁ……」

「お待たせいたしましたぁ~。イチゴ増し増しパフェ2つっす!」


 すると、フグトラさんが、絶妙なタイミングでイチゴ増し増しパフェを持ってきてくれたのだ。

 なので、私は再度、一呼吸を置いたが、人の目の動きを見て判断って、どうやってやっているんだろう。よく、目は口ほどに物を言うって言うが……。


「わぁーーい! 食べよっ!」

「おー! ありがとねぇ~」


 二人はかなりの笑顔でパフェを頬張ったり、楽しそうにやっていたが、何だろう。三周程回っても怖いよ。この地雷カップル。


「あー。話の続きだけど~、実は今この時点でも、衝動を抑えてるんだよ~」

「え? 今この時点で、ですか!?」

「そうだよ~。これ!」

「イチゴ?」


 すると、真生くんは笑顔で頷くと、真っ赤な苺に指をさして、こう言ってきたのだ。


「これを食べる事でね~、シイラは、血を飲みたい。ていう衝動をね、抑えることが出来るんだよぉ~!」

「そうなの!?」

「ありゃりゃ~。まさか真生にバレちゃってたかぁ」

「えへへ。家でも冷蔵庫にね、イチゴがたくさん入ってたりしてるんだよ~」

「そう、なんだ……」


 だけど、真生くんにまさか見透かされていたとは思ってなかったみたいで、シイラは乾いた声で『あはは……』と笑っていた。


「だからかぁ~。たまーに一パック、丸ごと無くなってたりしてたことがあったからなぁ~!」

「あぁぁっ! ごご、ごめんなさい! ぼく、イチゴ、夢中で食べちゃって……」

「まぁいいよ~。帰りにトマトジュースも込みで買ってこよっか!」

「うん!」

「ん? トマトジュースって。何に使うんですか?」


 ふと、私は気になって彼に聞いてみることにした。


「トマトジュースは僕にとっては、『擬似血液』の扱いなんだ」

「はぁ……、『擬似血液』……」

「だから、イチゴだけでも抑えられない時は、それを飲んで、衝動をコントロールしたり、してるんだよね~」

「なるほど……」


 つまり、シイラさんは『物』で衝動を抑えている状態なんだ。

 リルドは物ではなくて、敢えて『力』を出して加減を調整しているけど、本当に似て非なる関係だよね。


「それと、リルドの血を飲むのは、僕が『死ぬ』時って決めてるんだ~」

「えっ!?」

「それ、ぼくも初耳だよ! どういう事!?」


 私と真生が驚く傍ら、彼は呑気にイチゴを頬張ると、こう話を切り出したのだ。


「彼の血、あまりにも『危険』だからね~」

「え? 危険?」

「そう。昔かな。僕さ、彼の血をうっかり1口舐めた時があってさ、その時に突然倒れちゃった事があったんだ」

「何それ……」


 まるで山に生えている野草を食べたが、それが毒草でした。的な言い回し。

 だけど、リルドの血が『危険』てどういう……。


「怖ぁ……。シイラもそうなる事、あるんだ……」

「そうだね~。だから、彼の血は『吸えない』んだよね。僕」

「はぁ……」


 それで、あの時に舐めた私の血は『イチゴ味』だと?

 もう訳わかんないけど、それが彼なんだ。と諦めた私は、ようやっと和パフェを完食したのだ。


 だけど、物で衝動をコントロールするのは、シイラさんらしいって言うか。リルドも、『力で抑える』以外の方法でコントロール出来るようになるのかな。


「さて、あと、言いたいことはあるかな? リルド、まだ来ないけども……」

「そういえば……」


 後から来るとか言ってたのに、まだ来ない。

 何してるんだろう。


「でも、リルドさんだっけぇ? あの人、かっこいいよねぇ~」

「ん? 真生!?」

「うぇ!? 急にどうしたの!?」


 私とシイラさんが驚きつつ、真生くんはイチゴのクリームを食べながらも突然、こう言ってきたのだ。


「あ! シイラもかっこいいよぉ~。けど、リルドさんは『人形』みたいだなぁ。て」

「人形?」

「うん。あんな髪色と目の色が『自然体』てさ、滅多にいないと思うんだぁ~」

「あぁ。確かに……」

「なるほど。そういう事かぁ~」


 そう言われてみれば、彼の見た目は、うちら日本人とは、かなりかけ離れているもんなぁ。

 どっちかと言うと、西洋寄りの顔で、フグトラさんが「あの人が、暗殺の……」て顔赤らめていたぐらいだしなぁ。


「そういえばぁ、前に闇バイトで、ベローエにいた時にねぇ、こんな噂を聞いたことが、あるんだァ~」

「ん? どんな噂なの?」

「えっとぉ~」


 彼は再度、パフェに乗っていたバニラクリームを掬って食べると、こう、切り出してきたのだ。


「滅んだはずの『ヴァルテ家』に、生き残りが居た。て」

「……」


 今、なんて?

 滅んだはずのヴァルテ家って何?

 何かの都市伝説だろうか。私は向かい側にいる彼の反応を伺いながらも、静観していた。何か、嫌な予感がする。


「……真生」

「ん? どしたのシイラぁ?」

「それ、本当に『ベローエ』内部で言ってたのか?」

「そうだねぇ。ぼくも耳にしたぐらいだから、詳しいことは分かんないけどねぇ~。うん。うまぁーい!」


 そう呑気に言って真生くんはイチゴパフェを美味しそうに堪能していたが、ベローエ内部でそんな話が出ていたとは。

 フグトラさんですら知らなかった『末端の者にしか分からない』秘密かなにかだろうか。再度静かに耳を傾けてみる。


「ヴァルテ家って、ものすごぉーく、こわぁーい暗殺一家の事なんだよぉ」

「えええっ!? そうなの! どうしよう! ぼく殺されるんじゃ……」

「まぁまぁ。ヴァルテ家は滅んだはずだよ。だから、大丈夫だよぉ~」

「そっかぁ。良かったぁ~」

「へぇ。そうなの?」


 だけとこの話、どっかで聞いたことがある様な。

 あ。そうだ。ゴエモンさんが『リルドがとある暗殺一家の生まれで』て言っていたけど、まさか『ヴァルテ家』の事では無いよね?


 私はお冷を飲みながら静かに話を聞いた。


「そうだね。海外を拠点にしていた『暗殺一家』で、小さい頃から英才教育として、殺人を行っていたらしいよ~」

「それが、なんでベローエ内部で?」

「そこまでは分かんないけど、もしかして、その『ヴァルテ家』の生き残りが関わってるんじゃないかなぁ。て思うんだ」

「……」

「まぁ。詳しい事は知らないし、あくまで『都市伝説程度』だと思えば良いさ」

「うん。でも……」


 これが仮にリルドだとしたら、リルドの命が危ないんじゃ……。



――カラン。カラン



「いらっしゃいませ! って、リルドさん!?」

「おぉー。たまたま近くに居たから寄っただけだ」

「えっ!?」


 すると、先程の重たい空気を裂くように、黒い半袖Tシャツに、黒カーゴパンツを履いた、赤髪の男性 リルドが私の元へ来ると、こう言ってきたのだ。


「タミコ。迎えに来た。帰るぞ」

「あっ……、じ、じゃあ、またね! 二人とも!」

「タミコさん、まったね~!」

「そーだね。リルドも、また機会があれば、話そうね~」

「あ。はい!」

「お。またなー。シイラ」


 そして、パフェを堪能している二人を置いて、私達は喫茶店を後にしたのだった。

 ちなみに何故かこの時、彼は左手を掴んで離さなかったが、突然何だろうか。


「えっと、突然どうしたの?」

「お前、まさか、『忘れた』のか?」

「忘れたっ……て、あぁ!」


 そういえば、あの任務が完了したら、ゴエモンさんにも言ってない秘密を一つ教えるって言っていた様な。

 色々ありすぎたせいが、すっかり忘れていたとは言えない。


「いや! 覚えてるよもちろん! 秘密を教えるって言ったんだよね?」

「当たりだ。今なら詮索してくる奴らもいない。任務で出払ってて、グソクさんも不在だ」

「ってことは……」


 まさか、二人きりになるってこと!?

 予想外な展開に戸惑いながらも、私とリルドは、サーフェスに向かって歩いていったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ