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マリアナに堕ちたのは、親友ではなく、私でした。  作者: Ruria
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私の秘密は、まさかの繋がりがありました。


「えっ!? 言ってはいけない秘密が……、3つ!?」


 私は驚きのあまり、空いた口が塞がらなかった。

 普通は1つだけ。と言った展開なのだろうけど、まさか、口封じすべき秘密が3つあるなんて。


「まず1つ目だが、君は見てはいけないものを見てしまった。『人体オークション』と言うやつだな」

「それ!」


 確かにあの時は、謎のフードを被った謎の人に脅され、覗かれ、特定されたりと散々な目に遭ったのを覚えている。

 そして、その時に出逢ったのが、リルドさんだ。

 最初は私を殺そうとして来たけど、何故か手に持っていた手斧とかを、その場に捨てていたんだっけ。


「あぁ。あれは人身売買専門の闇サイトだ。主にダークウェブに潜んでいる事が多いのだが、君はもしかして、意図的に『Tor』を介して閲覧したのかな?」

「そう、です……。実はその前に彼女が、それを使って検索していたのを見ていたので、やり方は少し覚えていたんです。だから、何か手がかりがないかと思って、真似て検索をしました」


 確かに私は、玉ねぎ型の検索エンジンを使って、あのサイトを見つけたんだっけ。

 ふと、来る前の事を思い出し、軽く頷きながら、真正面で、腕を組んで座っているゴエモンさんの顔を見た。


「成程。そして、そこに君が探したかった人物がいたんじゃろ? 『竜宮多美子』が」

「そうですね。まさか、自分自身を探していたとは思えなかったのですが……」


 そう。あのマイナンバーカードを見た時、確実に『天海愛華』は私だと思っていた。なのに、何故かリルドに『違う』と指摘されて、ずっと、なんで? て疑問に抱いていたのは本当だ。


「あぁ。まぁ。『人体オークション』に関しては、グソクがアオハトと呼ばれるSNSの個別メッセージで、そこの主催者らしき人物から依頼を受けたらしいんだ。それで、リルドに頼んで行って貰ったんだ。間接的にオークション内部をめちゃくちゃにした『天海愛華』を半殺しにするためにな」

「アオハト!?」


 アオハト(通称・aohato)とは、150文字以内なら、自由に書き込める呟き系のSNSの事だ。

 そんな、毎日の様に利用していたサイトで、こんなアングラな依頼が飛んでいたとは……。


「だけど、本当は、その依頼事態が偽物(フェイク)だった。そして、不運にも、記憶が曖昧な状態で、事件に巻き込まれた『竜宮多美子』を身代わりにして、『天海愛華』は逃走した。と言うのが、事の真相だな。ったく。してやられたぞ。はぁ」


 彼はそう言って一服、青い電子タバコを吹かすと、「あぁ。すまない。害がないノンタール、ノンニコチンだけど、(けむた)いのが嫌なら言っても構わないからな」と申し訳なさそうに言ってきたのだ。

 でも、煙は気にしない方なので、お構いなく吸ってくれればいいのに。


「だけど。まさか。そんな……」


 しかし、あまりにも衝撃が大き過ぎて、言葉を失ってしまったのは本当だ。

 つまり、『竜宮多美子』というのが、私の本当の名前で、自分が事の今まで名乗ってきた『天海愛華』は、未だに逃走中で、行方不明の親友だと言う事だった。


「本当に半殺しにする予定だったのは、君ではなく、未だに逃走中の『天海愛華』だという事だ」

「……」

「それと、2つ目は、君が初めて接触した『ナゾの人』の事だ。あいつは『サーフェス』が一番追いかけていた標的なのでな」

「標的って……。まさか!」


 しかも、あの煽ってきたナゾの人を、この組織はひたすらに追いかけていた。と言うのも驚いてしまったが。


「その、まさか。だ。その煽ったヤツは『アビス』と呼ばれる深淵の集団のうちの一人だろう。しかし、アイツらは何故か、調べ尽くしても未だに正体すらも、分からないからな。証拠を一切残さずに、粛々と標的を制裁しては、あらゆる物を利用して逃走する。なんて言われているんだ」

「そんな人達がいるなんて……」


 正にネットの闇。とでも言うべきだろうか。調べ尽くしても正体すら分からないなんて、かなり怖すぎる。

 でも、それと同時に、疑問に残る事がもう一つあった。


 じゃあ、何で、『アビス』は、私の『身分を証明する物』だけを盗って行ったのだろう。ますます訳が分からない。

 余程有名な人ではない限り、こんな24歳無職の女の身分証なんて、興味すら湧かないはずなのに。


「だから、ワシ達『サーフェス』は、人体オークションの様な、非道なサイトを創った『アビス』を潰そうと、こうして毎日、己の研鑽をしている。そのため、ハッカーであるグソクが日々、ネットの海の底まで目を光らせて、特定しては、あの二人をそれぞれの現場に向かわせたりしているんだ。ま。あの若造共はかなり鍛えてあるからな。ちょっとそこらのチンピラ集団は、軽くねじ伏せられる程の戦力を持っている」

「えぇ……」


 まさか、リルドさんやメンコさんが、そこまで強いとは思ってなかった私は、改めて思う。


 喧嘩、売らなくて良かった。と。

 あの時、間違って煽っていたものなら、もうこの場所には座って居なかったのだから。


「まぁ。アイツらがいる限り、サーフェスウェブの方にまで、闇が侵食し続けていく事だろう。そのまま放っておいてたら、次々と犯罪者や、死亡者が増えていく。それはつまり、君みたいな『被害者』が益々増えていってしまう事にも繋がるのだ」

「そんな……」

「そういう事で、ここは『人生の殺し屋』なんて言われているんだ。命を取らない代わりに、相手の人生を殺して、依頼者の人生が幸福になるように手伝う。だから、こちらがグレーな手段を使ったとしても、依頼者が良き人生を歩めれば、これほどに良い事は無いのだよ」

「相手の人生を……、殺す」


 初めて聞いたワードに、思わず復唱してしまったが、ここに来る前にリルドが言っていたことを思い出した。

 彼が殺し屋ではない。て言っていたのは、そういう意味だったのか。


「それと、最後は……。うむ。今の多美子ちゃんにはまだ、言わないでおくとしようか」

「えっ!? それって、どういう事ですか!?」

「その前に、ここの面接をまず、きちんと受けてから。ていう事だな」

「はっ! そういえば、そうでした!」


 私は、我に返って、背筋をピンと伸ばしていた。


「がははは! まーさか、採用された気でいたんじゃないだろうな!」

「それは流石に無いです! ですが……」

「どーしても、その続きが知りたい様だな」

「そう、ですね」

「でも、この3つ目だけは、どう足掻こうが、簡単には教えられないな。だが、今から行う、簡単なテストに合格したら、採用してやろう」

「えええっ!?」


 まさかの言葉に驚きを隠せなかったが、これで私は、晴れて無職から、裏何でも屋の従業員になる。というのか。犯罪スレスレな組織なせいか、あまり嬉しくない気はするが、ずっとニートしてるよりかは、少しはましか。うん。


 私は、裏社会の闇に落とされたのだが、果たして、ちゃんとした身分証を手に入れて、生きていけるのだろうか。いや。3つ目の秘密を知るためには、まず、テストに合格しなければ。


「そして、依頼を少しずつこなしていくんだ。最初のうちは、リルドと一緒に行動して、何か学んでいくといい。3つ目の秘密は、それらの力を自分で身につけながら、1人前の従業員となった時に話すとしよう。それで、いいかい?」

「は、はい!」


 そして、気持ちが入り乱れる中、ゴエモンさん独断の、入社テストが行われる事になったのだった。

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