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マリアナに堕ちたのは、親友ではなく、私でした。  作者: Ruria
キルマイフレンド編
33/106

教団に入ると、早速一波乱がありました。

「何、それ……」


 私は恐ろしすぎて、思わず身震えてしまったが、現教祖って、確か、ミオさんのおじいちゃんだっけ?

 いやいやいやいや! 爺さん教祖と子作りなんて、どんな気色悪いハーレム展開だよ!

 それに、男の場合は性機能が奪われるって?

 だからフグトラさんやミオさんみたいな中性的な顔つきの人ばかりいたとか?

 でも、まさか去勢が行われていたとは知らなかった私は、その場で固まってしまった。


「あ。安心してください。その、ボクやフグトラさんは、その儀式に一回も参加したことが無いので、去勢はされていません」

「そ、そうなの!?」

「当たり前っすよ。去勢なんて、どこの犬猫なんすか。俺らは動物じゃないっす!」

「そうです。ボクも好きな人との子供が欲しいので、性機能が奪われたらもう……」

「なるほど……」


 ふと、儀式に参加してないと聞いた私はホッ。と安心した。

 確か、中国でも大昔、皇帝以外の子供を産まないために、後宮に属する者は『宦官』という、去勢された人たちで身辺を固めていたと言われていたが、まさかなぁ。現代でも、宦官モドキの人らがいたとは。


 私は戸惑いながらも、抹茶プリンを完食した。


「でも、そこに龍樹君がいるってことは、かなり危険よね」

「そーっすよ! 早く行くっす!」

「うん。あ。でも、ミオさんはここにいて」

「え? ですがここ、レンタルルームですよね? 料金がかかるんじゃ……」

「大丈夫っす。これで迎えが来るまでの間、凌げるので存分に使ってくださいっす!」


 すると、フグトラさんは大盤振る舞いするかのように、黒い長財布から渋沢が書かれた札を3枚、困惑する彼に渡したのだ。


「そそ、そんなに!? 確かここ、一時間2000円辺りだった気が……」

「この渋沢さん一枚で、5時間は持つっす。その間テレビを見るなり、冷蔵庫や冷凍庫に入ってる食べ物とか、好きに食って良いし、寝てても良いっす!」

「そんな……」

「ま。そういう事だから、大丈夫っす! その間に龍樹君を連れ戻してくるから。待ってて下さいっす!」

「それと、カンナちゃんに連絡入れるのを忘れないでね。かなり心配していたから。それと、後は、龍樹君やリルド、カンナちゃんが来た時以外は、決して扉を開けない事。大丈夫?」

「は、はい……、分かりました。それでは、お願い致します。でも気をつけて!」

「それじゃあ、行ってきます」


 そして、私とフグトラさんは、龍樹君を連れ戻す為に、ミオさんをレンタルルームに残し、教団へと向かうのだった。






 私と彼はレンタルルームを出発し、歩いて教団へと向かおうとしていた。


「そういえば、教団の本拠地ってどこなの?」

「本拠地っすか? うーん。いきなりそこを攻めるのは流石に難しいっすね」

「え? どゆこと?」

「ここよりかなーり離れた所にあるし、俺もそんな行ってないんすよ」

「え? 幹部なのに?」

「うぐぁっ!」


 しかし、この時の私も何故かミオさんと同じ気持ちになってしまっていた。

 なんで幹部なのに、フグトラさんは、こんなにも『ポンコツ』なのか?

 だけど、このポンコツ具合もまさか、演技。とかではないだろうか。慎重に対応しないと。


「つーか、俺はあーいう不気味な場所には、ハナから行きたくないんすよ! ユーレイ部員万歳! ふぅー! いえーい!」

「あ。そう……」


 だけど、彼はテンション高めに両手を上げて踊ったり騒いだり叫んだり……。そのノリはまるで、女装してはしゃいでいたシイラさんみたいだ。


「まぁ。手始めに攻めるなら、この近辺を牛耳っている支部を潰すのが一番っすね!」

「ほぉー」


 すると、分団は近くにあると教えてくれたのだ。って、まさか、そんな近くに教団の施設があったなんて。ストーカーされている身からしたら、かなり怖すぎるんですけど。


「まぁ、本拠地だと、信者が沢山いるので、まずは、『ベローエ 海横支部』に向かいましょうか」

「りょーかい」


 だけど、この辺りは、戦略ゲームでもよく見かけるパターンみたい。手始めに近くにある拠点から潰し、人が居なくなった所で本拠地を叩く。何だか理にかなった戦法だ。


「それと、支部と言っても、少し中規模なので、信者はそこそこ多いっす」

「そうなんだ!」

「まぁ、俺は演技をするので、タミコさん、上手い具合に、俺に合わせて貰えれば、めっちゃ嬉しいっす!」

「はぁ。演技?」

「そうです。上手く演じれば、支部長ぐらいなら、軽く騙せると思うっす!」

「え。けど私、めっちゃ下手くそだったらどーするの!?」

「ま。その辺は任せてくださいっす!」

「もぅ……」


 だけど、演じてくれと急に言われても。あの時、妹として演じたのは、メンコさんと共に栗尾根さんに交渉して以降だ。

 私は夕暮れの道路を歩きながら、ため息混じりに言うと、彼の太陽みたいな眩しい笑顔に根負けした。


 あ。そういえば、リルドとシイラさんも今、別任務で海横支部にいるんだっけ。でもやばいなぁ。この状況で、あの二人に出くわしたら。


 まぁ、私は平気だけど、フグトラさんの命が幾つあっても足りない気が……。


「どうしたっすか? タミコさん」

「あ。えっと、フグトラさん」

「ん? どーしたっすか?」


 ふと、思い詰めた様な顔をしていたみたいで、彼は心配そうに顔を覗き込んでいた。


「フグトラさんって、別組織の事、どこまで知ってますか?」

「うーん。実は俺、タミコさんが話してくれた組織以外は、全く知らないっすよ?」

「え!?」


 という事は、アビスの事は全く知らないって事か。あの深淵組織と同じ、敵組織のはずなのに知らないとは。どんだけポンコツなんだコイツは。


 私は呆れ気味にはぁ。とため息をつくと、次の質問をしてみる事にした。


「じゃあ、こういった組織の中で、一番有名な人は誰ですか?」

「ほー。有名な人かぁ。あー。でも、一番戦いたくない人ならいるっすよ!」

「そうなの!?」

「はい。その人、通り名ではなんて言われているかご存知っすか?」

「通り名!?」


 まさか、こういった組織の中でも『通り名』なんて存在するんだ。

 私はまだ無名なんだが、もし、このまま裏の人間として過ごしていくなら、何れ『通り名』なんて付いてしまうのかな。付けられるとしたら、どんな風につけられてしまうのだろうか。


「確か、一人目は『暗殺の赤鮫(せきこう)』と言われてたっすね」

「ああ、『暗殺の赤鮫』!?」

「そいつの姿を見た者はいなく、標的は何故か、血だらけの状態に放置して去っていく。って言われているっす」

「へ、へぇ……」

「暗殺と言っても、簡単にサクッと殺さないのが怖いっすよね。だけど、誰も姿を見たことが無くて、どうやって攻撃してるんだろうなぁ。て毎度思ってるっす」

「何、その伝説の殺し屋的な通り名は……」


 ていうか、もうこれ、完全にリルドの事じゃないか。

 誰も姿を見たことが無いっていうのは、彼は気配を消して攻撃する『不意打ち』が得意だから姿を見れてないだけだと思うが。

 私は心臓をバクバクさせながらも彼の話に耳を傾けてみる。


「それに、俺は背後から奇襲する様な攻撃は、めちゃくちゃ苦手なんすよ。対処の仕方がムズすぎて!」

「そうなの!?」

「そーっすよ! だって、背後から気配無しで攻撃されたら、幾ら武装していても咄嗟に対応出来ないっすよ! その赤鮫に対応できるのなんて、背後に目ん玉が付いてる化け物ぐらいっす!」

「化け物……! ははっ! あはははは!」


 しかし、私はリルドの姿を思い出してしまい、思わず腹を抱えて笑ってしまったのだ。


「ほんっと笑っちゃいますよね! あと、別のベクトルで会いたくない人はいるっす」

「え? 誰? かなり気になるんだけど!」

「確か、その人は『白亜の標本屋』なんて言われてたっす」

「白亜の標本屋?」


 また聞き慣れない通り名が出てきたのに驚いて聞き返したが、その時の彼はかなり青ざめていた。


「なんて言うか、その標本屋、噂によると、めちゃくちゃサイコパスなんすよ」

「ええ!?」

「高額なお金で取引してくれる代わりに、標的は贓物や血など、ありとあらゆる物を吸い取って集めては、何処かに売っていると言われているっす!」

「えぇ……」

「しかも、噂によると、その白亜の標本屋が、笑いながら標的を拷問している動画があるのですが、それが閲覧注意の動画になっていることがザラにあるっすよ」

「閲覧注意って……」


 これは確信は無いけど、恐らく『シイラ』さんの事かもしれない。それにしてもこの通り名って、誰が考えたんだろうか。幾らなんでもネーミングセンスが良すぎだろ。


「ちなみにその二人は、特に危ない人って言われているの?」

「そうっすね。俺も人生の中では、一番関わりたくない人間なのは確かっす」

「そう、なんだ……」


 あのフグトラさんですら、怖すぎて会いたくないって、どんなイメージが付けられているのやら。

 私からしたら、シイラさんやリルドは、物騒な所はあるが、あんまり怖くないと感じるし、リルドに至っては、常にずっと私の隣か背後、そして前方にも張り付いているイメージの方が……。


「さて、着きました。ここっすね」

「え? ちょっと待って? ふつーの会館じゃない!?」

「そうっす。見た目は立派な会館ですが、これでも『支部』なのは確かっす」

「はえぇ……」


 目の前には、三階建てで大きくて立派な建物がそびえ立っていた。

 白を基調とした外壁で窓が多く、パッと見ると、市民ホールのような、広くて大きい施設だ。てか、これで分団だとすると、どんだけ信者から金を巻き上げているのだろうか。何とも悍ましい建物だ。

 この大きな建物の中に龍樹君がいると思うと、早く助けたい気持ちもあるが、どうやって探せばいいのだろうか。広すぎて迷子になりそうだ。


「とりま、俺の後ろから、離れないでくださいっす。一歩はぐれたら、確実に迷子になりますので」

「は、はい……」


 なので、笑顔で話す彼の言う通りに、背後をくっつきながら会館の中へと入ってみる。


「お? フグトラさん!」

「おー。マフじゃねーか。どーした?」

「実は伝えないといけない事がありまして……」


 すると、私より少し高めで茶髪の青年が、神妙な面持ちで声をかけてきたのだ。首元にはあの不気味な十字架だけど、ミオさんやフグトラさんが身につけている物とは全く違う。真ん中には熊の顔が付いた装飾は着いているのだけど、ミオさんのより、リアル感があって、厳つい感じがするから、本物っぽかった。


 ってことは、もしかして、ミオさんが身につけているのって……。


 それと、信者だけどかなり気になったのは、その子もまた、龍樹君と同じ制服を着ている事だ。


「あー。今は先客がいるから、後にしてくんないっすか?」

「了解です。えっと、その人は?」

「は、初めまして!」


 私は軽く挨拶をしてみたが、彼は一瞬、上から下へ私を見た後、不思議そうな顔でフグトラさんを見て、こう言ってきたのだ。


「あ、えっと、フグトラさん? もしかして、『供養』に捧げる方ですか?」

「そーそー! だから、今からこの子と一緒に、教祖様のところに行かなきゃなんだ。だから、ごめんねっ!」

「あ。すみません。お急ぎでしたか。では、是非、そちらの方も、教祖様から沢山の功徳を得て下さいね」

「はいよー」

「……」


 私は静かに見ていたが、えっと、何この軽いノリの会話は。

 しかも、あの茶髪の青年、ブラウン色の瞳には、フグトラさんみたいな生気がある光が全く無かったのだ。まるで死んだ魚のような目で、私の事をじーっと見ていた様な……。

 もしかして、既に『タミコ』と勘づかれているのかな。でも、無事に教団の内部には侵入できたし、手始めに龍樹君を探さなきゃ。


「まだ、離れたら危ないっすよ」

「え?」


 すると、彼は私の耳元で、こう伝えてきたのだ。


「教祖様のところに行くとさっきは言ったけど、あれ、ウソっす」

「そうだったの?」

「そんな危ないとこに連れていくわけ、ないじゃないっすか。それに……」

「それに?」

「今回の目標は、俺が管理している掲示板の投稿を削除するためと、龍樹君の奪還ですので、その両方をこなすためには、今が一番のチャンスなんすよ」

「ええ!?」

「そう。儀式がある4月5日は、『信者以外』の人たちが唯一出入りできる日なんす。だから今回、この日のために、俺とミオさんは、念密に計画を練っていたって事っす」

「もしかしてつまり……、教祖に対する、復讐ってこと?」

「大当たりっす」

「……」


 まさか、こんな壮大な計画を、あの二人が密かに立てていたと思うと、言葉が出なかった。


「と言っても、これはまだ序盤っす」

「え? 序盤なの!?」

「何れは『組織の完全消滅』が目的っす。なので、早く行くっすよ!」

「は!? はいぃ!」


 私は戸惑いながらも、密かに復讐に燃える彼について行くと、両サイドには立派な扉が幾つかあり、それぞれ『第〇礼拝堂』とプレートが付けられていた。


 ていうか、どんだけ長いんだ。この廊下と階段は。まるでコンサートホールのロビーを探索している気分になる。

 しかも、今歩いている所は、立派なレッドカーペットの上で、歩いても歩いても、下の床は不気味な赤色が長く伸びていて、かなり気色悪い。

 それに、両サイドに飾られている壺や絵も、悪趣味な物ばかりで、これも信者から巻き上げた金で購入した物だと思うと、おぞましくて早くここから出たい気分だ。


「さて。ここっすね」

「これって……」


 2階まで階段を上り、沢山の曲がり角を曲がっていきながら、彼の後をついて行くと、『資料室』と書かれたプレートが付いた扉の前へと着いた。

 それと、ドアノブの近くに付いている、四角い鉄板みたいなプレートが気になるが……。


「ちと待っててっす」

「う、うん」


 すると、彼は首元にぶら下げた十字架のネックレスを外し、IDカードみたく、その鉄板に十字架をかざすと……。



――ガチャッ



 と、ロックを解除する音が聞こえてきたのだ。

 どうやら、ベローエが付けているネックレスは、サーフェスで言う、社員証みたいな役割らしく、専用の認証板にかざすだけで開けられるみたい。


「実は資料室自体、幹部や教祖直属の血筋の者しか入れないんすよ」

「え? そうなの?」

「はい。もし、末端の信者が持っていたとしたら、幹部の誰かから拝借した。若しくは直属の血筋の者から盗んだ。ということになるっす」

「えぇ……」

「まぁ。末端の中にも、もしかしたら『教祖の血を引いた子供』がいるかもですが、教祖は認知しないやばい人なので、それは無いに等しいっす」

「それって……」


 今日の儀式で、教祖に体を捧げた信者(女性)の子供も含まれるって事かな。そう考えるとかなり恐ろしいのだが。

 そういえば、フグトラさんの両親も確か、信者だったっけ。いや。まさかなぁ……。


 一先ず、ここまでまとめると、ミオさんのおじいちゃんが教祖だとすると、ミオさんは直属の血筋の者になる。

 つまり、この時点で別の誰かが入ってくるとなると、『ミオさんからネックレスを取り上げて、偽物とすり替えた』人が来るってことか。


 という事は、やっぱりあのミオさんが身につけていた十字架のペンダントは、偽物だったのか。どうも熊の顔はあったが、はっきりとしてなかったって言うか、オーダーメイドにしては粗悪品っぽいな。て思っていたのは事実だ。


 もしかして、あの掲示板に書き込んだ人と偽物とすり替えた人は同一人物なのだろうか。いや。まだそれは早急かな。うーん。


「さて。これがあの、掲示板を作ったパソコンっす」

「へぇ……」


 すると、フグトラさんは慣れた手つきでデスクトップ型パソコンを起動させると、早速近くにあるマウスに手を乗せ、掲示板を探し始めたのだ。


「確か、これっすね」

「これが……」


 幾つかクリックしていくと、一つの掲示板へとたどり着いた。



――どうか、私の邪魔をする友人を殺して下さい。



――どうか、裏切り者を殺して下さい。



「これ、キルマイフレンド……」


 いつ見ても異様だ。色のせいかもしれないが、黄色のバナーと黒の文字のコントランスが禍々しくて如何にも『裏サイト』の掲示板と言った感じだ。


「そうっすね。ちなみにこの依頼を出した人は確か……」


 ふと、彼が管理ページから投稿した人を炙ろうとした時だった。



――ガチャッ



「えっ!?」


 何故か扉が開き、茶髪の男子高校生が部屋に入ってきたのだ。よく見たらこの少年、先程会った、目が死んでいる男子高校生だ。確か、マフ。だっけ。


「すみません。何しているんですか? そこで……」

「……」


 私は念の為、フグトラさんの背後を守るかの様に立つと、黒ジャージの両手にポケットを突っ込み、相手に悟られない様にスタンガンを出す準備をした。

 本当はゴエモンさんから『護身用』と言われていたけど、一応、フグトラさんを『守る』んだから、使い方的には、合ってるよね?


「はぁ……。無視って酷すぎますよね。フグトラさん」

「……」

「どんだけ集中しているのやら……。でもいいや」


 しかし、彼は紺のブレザーのポケットからナイフを取り出すと、私の目の前でナイフを突き出し、開口一番にこう言い放ったのだ。


「すみません。そこ、どいてもらえませんか?」

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