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マリアナに堕ちたのは、親友ではなく、私でした。  作者: Ruria
キルマイフレンド編
32/106

教団の二世達は、思ったよりもまともな方達でした。

「は、え? 龍樹って……、まさか!?」

「もしかして、貴方が、熊野澪……、さん?」


 私とフグトラさんは、お互い困惑しながらも、泣きじゃくる彼に問いかけた。


「そう、です。その、龍樹は、ボクの、親友……、じゃなくて、その……」


 しかし、彼はここに来るまでの間、必死に走っていたせいか、呼吸がかなり荒かった。


「とりあえず、中に入って。そこでちゃんとお話聞くから。ね」

「あ、ありがとう、ございます……」


 なので、私は咄嗟に彼を支えながら部屋の中に招き入れることにした。


「タミコさん、その……!」

「えっと、フグトラさんは何か冷蔵庫から飲み物を!」

「あっ! はいぃ!」

「ミオさんは、ここに座って!」

「は、は、は、は……」

「今ちょっと過呼吸気味になってるから、ゆっくり深呼吸していいからね」

「は、はい……」


 そして、私はフグトラさんに指示を出すと、彼をソファの上に座らせ、乱れた呼吸を整えさせた。

 だけど、龍樹君と同じ制服からして、まさか、澪さんが男の子だったのには、少しだけ衝撃を受けた。


 だからあの時、シイラさんは『少年』と言っていたのか。


「ミオさん。良かったらこれ、口に合うか分かんないけど……」

「あぁ! えっと、その、ありがとうございます!」


 すると、私が先程コンビニで買ってきた麦茶を手にし、息を整えている最中の彼に渡したのだ。

 それにしても。礼儀正しいし、仕草が私より女の子じゃないか。飲む時だって、ペットボトル容器でも、両手で抑えて飲んでいる。


 手の甲を見るに、体つきは若干男の子っぽいけど、顔だけ見たら、女の子のように可愛いらしい中性的な美貌だ。

 これは確かに、龍樹君でも惚れちゃうだろうなぁ。そのせいか、異性である私が嫉妬してしまいそうになるのは、かなりわかる気がする。


「それにしても、熊野君、教団で何が起きているんだ!?」


 しかし、フグトラさんは慌てた顔で彼に聞いていたが、突然、ここにアポなしで来たということは、かなり緊急事態なのだろう。

 ひとまず、私は冷静に彼の話を聞くことにした。


「えっと、ふぅ……」


 彼は息を整えた後、怯えた様な声色で、ある事を語り始めた。


「実は今日その、ベローエでは、集団である儀式を、行うのです」

「儀式?」

「ちょっとまて。今日は何月何日だ!?」

「え? 4月確か……、あ。5日!」

「5日?」

「はい。その儀式では、教祖様に貢物をするのですが、その貢物は物ではなくて、『人』なんです」

「え? 人ぉ!?」


 私は驚いてしまったが、フグトラさんとミオさんはコクリと頷くと、再度話し始めた。


「確かにそーだったな。信者一人につき、一人を生贄として、クソ教祖に捧げることで、更なる幸せを得る。だったか。現教祖になってから、色々と改変し始めたんだよな」

「フグトラさん。その通りです。ボクが小さい頃はそんな、人身御供(ひとみごくう)みたいな事は無いって、両親から聞いてましたから……」

「なるほど」


 つまり、今の教祖になってから、ベローエは闇バイト的な事を色々とし始めたってことか。


「もしかしてそれで……」

「はい。ボクは『冒涜者』なので、あの時、教祖様を信仰する熱心な信者達に、生贄として捧げられそうになっていたんです。それで、教団に監禁されていたのですが、そこから助けたのが……」

「龍樹君だったってこと?」

「そうです。龍樹がボクを抱えて、少しの間、彼の家で匿ってもらっていたのです。しかし……」

「しかし……」

「今朝辺りに、信者の人達に囚われてしまったんですが、また龍樹が……」

「そういうことだったんだ」

「はぁ……」


 だから今朝、カンナちゃんが部屋に行ったら居なくなってしまった。という訳か。

 でも、これで二つ考えていた事が一つに絞れた気がした。


「もしかして、今朝、窓を開けた人は……」

「ボク達と同じ学校に通う、クラスメイトです。今朝、ドンドン。と音がしたので、窓を開けようとしたら、向こうからピッキングみたく、鍵だけを巧妙に開けてきたのです」

「ぴぴぴ、ピッキングぅ!?」

「やっぱり……」


 フグトラさんはかなりびっくりしていたが、何となく納得してしまった。

 だって、あの時カンナちゃんから伝えた事に、さりげなくヒントがあったからだ。


『流石に窓は換気をする時以外は……。それと、窓ガラスは綺麗なままです』と。あと、普段、龍樹君もミオさんも、窓を開けない人だ。と。


「タミコさん、もしかして、分かっていたっすか?」

「全部は分かんないけど、あくまでも憶測ね。実は今朝方、カンナちゃんから、連絡が入ってたんだ。それで、ミオさんと龍樹君がいなくなったって」

「そうだったんですか……。カンナさん、ごめんなさい」

「いやいや。謝ることは無いよ。ただ、心配していただけだし」

「でも……」

「とりあえず、ちょっとごめんね」


 そして、私はミオさんを見つけたので、パーカーの左のポケットから、あのシール型GPSを取り出し、シートから剥がすと、そっと彼の首筋に貼ってみた。


「えっと、これって……」

「君の安全を保証できる、『お守り』だよ」

「えっ!? このピッ〇エレ〇バンみたいな物が!?」

「あはは。まぁ、フグトラさんに貼っちゃうと、色々と厄介になるから、貼らないでおくけど……」


 彼はグソクさん開発のアイテムを見て、真っ赤な目をまん丸くしていたけど、確かに驚くよね。


「はぁ。羨ましいっす。俺もその……、この辺凝ってるので、首筋に……」

「フグトラさん! ワガママはダメですよ! しかもこれは『お守り』なので、肩こり用じゃないです。タミコさんの話ちゃんと聞いていたんですか? 困り果ててるじゃないですか!」

「ふぁっ!? ごご、ごめんなさいぃぃ!」


 だけど、何故か彼は黄色いパーカーを脱ごうとしていたので、矢継ぎ早にミオさんに怒られていたが、この光景、どっかで見たことがある。

 そうだ。喫茶店ツブヤキにいた時もこんな、似たような光景があったな。確か、カンナちゃんに怒られているシイラさんだ。

 ふと、昨日あった出来事を思い出してしまい、軽く笑ってしまった。


「あはは。私は平気だよ。その、龍樹君やカンナちゃんから依頼を受けて、今に至るんだけど、その、私も丁度、聞きたいことがあったんだよね」

「そうだったんですか。偶然ですね。実はボクも龍樹からタミコさんのこと、色々と聞いていたので、『表側の人間ではない』事も知っています」

「ん!? ちょっと待って!? タミコさんって、『表側の人間』じゃないの!?」

「え? フグトラさん、ボクが来るよりもずっと居たのに知らなかったんですか?」

「あー。私が最初に彼に会った時、敵か味方か分からなかったから、言わなかっただけなんだ」


 確かに初めて会った時は、その、不気味な十字架をぶら下げた高身長の人だったから、敵だったら厄介だと思って言わなかったんだよね。

 その、『サーフェスの従業員』だと言う事を。


「ありゃりゃ。つまり、タミコさんから『信用されてなかった』て事ですね。フグトラさん、ご愁傷さまです」

「ちょっとミオさん!? それは流石に言い過ぎじゃ……」

「ふっ! あは、あはははは!」


 しかし、ミオさんが笑顔で、しかも毒舌混じりで話していた事に、思わず吹き出して笑ってしまった。


『えっ!?』


 それと、思いっきり笑ってしまったせいか、二人は驚いてポカンと口を開けている。


「ごめんごめん! 実は昨日、さっきみたいに全く似たような光景があったから、つい……」

「へー。どこの組織も、ポンコツな成人済みと年下のコンビって存在するんですねー」

「ポンコツってもう……」

「だって、フグトラさんはすーぐフラフラとどっか出かけたり、幹部会をサボったりするじゃないですか」

「うっ。それはそーいう集まりは昔っから、堅苦しくて苦手なんすよ!」

「はぁ……。すみません。タミコさん。ボクの相方がこんな自由人で……」

「あはは。でもあの時は確か、兄妹だった気が」

「もしかして、シイラ兄妹ですか?」

「あ。知ってたの!?」

「はい。龍樹からも聞いております。面白い兄妹がいる。て」

「あはは。面白い兄妹ねぇ……」


 確かに面白い兄妹ではあるけど、兄のシイラさんに関しては、まぁ、色々と倫理観がバグってる人だから、あまり言わない方がいいかな。

 なので、私はテーブルに置いた抹茶プリンをスプーンと共に、ミオさんが座るソファへと持っていき、話の続きに耳を傾ける。


「へぇー。俺もその面白兄妹に会ってみたいっすね! けど、その前に俺ら、やる事やらなきゃ……、すね。ミオさん」

「そう、だね。フグトラさん」


 彼はそう言うと、ペットボトルに入った緑茶を飲み干し、こう語り始めたのだ。


「実はフグトラさんは、幼い頃から一緒にいた、ボクの護衛みたいな人なんだ。ボクに関しては二世っていうか、両親が元教団の人でしたが、ボクを守る為に抜けたので、少し前までは平凡な高校生だったのです」

「平凡、かぁ……」

「しかし、両親が居なくなった途端、じいちゃんに無理矢理入信させられたんですよ」

「そうだったんだ……」

「その時にフグトラさんには、影で色々と手を回してくれたりしていたので、龍樹にも会えたんですが、まさかこんな事になるなんて……」

「ミオさん、落ち込まないで下さいっす。あのクソ教祖には、何かしら制裁しないと気が済まないっす。それに……」

「それに?」


 すると、フグトラさんはテーブルに置いたプリンを掻き込むように食べ終えると、こう話をきりだしてきたのだ。


「あの人身御供には、もう一つ、裏があるんす」

「裏?」

「はい。まさか、タミコさんが『表側の人間』ではないと聞いたので驚いたは驚いたんすが、これは言おうと思っていたっす」

「まぁ。確かに私は、『サーフェス』の従業員だからね。一応……」

「さささ、サーフェス!?」


 だけど、カミングアウトをした途端、フグトラさんはまた驚いて空のプリン容器を落としていたが、なんでそんなに驚いているのだろうか。

 もしかして、『サーフェス』って他の組織から見たら、思ったよりも危ない組織なのだろうか。


「どうしたの? フグトラさん」

「ややや……、まさか、あの、グレーな事はなんでもやる、やばすぎ裏何でも屋までもベローエの事に関して嗅ぎ回っていたなんて……」

「え? フグトラさん、どんだけ知らなかったんですか?」

「いやいや。ミオさんは逆にどんだけ知ってるんですか!?」

「はぁ。フグトラさん、『幹部』なのに、他の組織の事が疎いとか、情けないよね。まっさか、ベローエがどんだけ他の組織から恨みを買われているのか、知らなかったの?」

「うっ。それは……」

「まぁ。ボクはその、彼の自由気まま、マイペースさには毎度助けられているのでまぁ。良いけどね」


 だけど、ミオさんは笑顔だけど、冷静に、淡々と話しながら、驚く彼を制止していたが、どこまでベローエの事、知っているんだろう。

 それに、フグトラさんは幹部なのに知らないことまで話しているのには、心底驚いてしまった。


「あ。ごめんなさい。その裏っていうのはですね……」


 そして、彼はペットボトルの容器を両手で潰すと、顔色一つも変えず、こう言い出したのだ。


「女の場合は、教祖と子作り。男の場合は教祖に性機能を奪われる。て事ですよ」

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