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マリアナに堕ちたのは、親友ではなく、私でした。  作者: Ruria
キルマイフレンド編
31/106

教団の状況が、あまりにも酷い物でした。

「は、ぇええええ!?」


 幹部からのまさかのお願いに、思わず唖然としてしまった。


「ちょっと、どういう事!?」


 盛大にぶっ壊すって何!?

 まさか、施設諸共爆破しろとか、そういう意味!?


「本当に、ぶっ壊して欲しいっすよ! 俺、こー見えて、実はガチで頭にきてるっす! 今のベローエの教祖様が、あまりにも『クソ』過ぎて、先代に顔向けできねーっす!」


 すると、彼は抹茶のドーナツを豪快に頬張りながらも、今のベローエの惨状を伝えてくれたのだ。


「先代って? どういう、人だったの?」


 私はと言うと、恐る恐る聞きながらも、冷蔵庫からこっそりと抹茶プリンを取り出し、プラスチックのスプーンと共にテーブルに置いていた。

 あ。そうそう。ちなみにコンビニで買った期間限定モノは、抹茶味のデザート類と、飲み物は緑茶と、ありとあらゆる物を買って貰いました。物価高な中、現金で支払って下さったフグトラさんには、とても申し訳ないが……。


「実は、おれのじいちゃんっす。先代の頃は、闇バイトとは全くの無縁で、確か、『天寿を全うするまで、穏やかに、永遠(とわ)に生きる』という信念の元で、ベローエは創られたんすよ」

「へぇ……」


 そう聞くと、まるで今のベローエ教団が、公安に狙われるカルト教団みたいで、元はそうではなかった。と言った状況を感じる。


 それに、『自然死』と言っても、元々の意味は『天寿を全うするまで、穏やかに、永遠(とわ)に生きる』かぁ。

 確かに今聞くと、自然死という意味を盛大に履き違えているかのように思えた。それこそ、今のベローエは、信念に対する『冒涜者集団』だと。


「その、ベローエは元々、どんな感じの団体だったの?」

「元々は死ぬまでの間、どのように信ずる者の人生、まぁ、信者の人生なんすが。それを、天寿まで穏やかに全うできるか。という信念を軸に置いていた感じっす」

「ほえー……」


 すると、あのフグトラさんから予想外な答えが来たので、開いた口が塞がらなかった。

 そう言った新興宗教って、てっきり、死んだ後、幸せになるか否か。お祈りしとけばおっけー的な。そんな単純なものだと思っていたから、死ぬ前までの人生と聞いて、今までの私の人生を振り返りそうになった。


 だけど、今までの私って、どんな人だったのだろうか。

 これも、全部思い出したら、天寿を全うするまでのプランが立てられるのだろうか。でも、今の私に出来ることは、少しずつ記憶を思い出していくことかもしれない。


「死後は生まれ変わって善人になるために、様々な活動、まぁ。ボランティアもその一環っす。あとは念仏を唱えたり瞑想をしたりと、メンタル面での軌道修正目的で、信者が募っていった感じっす。だから、難関校を目指す受験生とか、未成年、元犯罪者とかなんかも、メンタル面強化の為に入信した人もいるほどなんすよ」

「そうなんだ……」


 だから、今でも未成年の人達が募りやすいのか。確かにその理由だったら、願掛け目的とか、怒りをコントロールするために入信をする。というのはありなのかもしれない。

 私はそっと抹茶プリンの蓋を開け、軽く一口掬って口に入れると、ほんのりと茶の風味と甘さが、口内を駆け回っていた。


「あと、元々は『採血』や『輸血』『臓器移植』と言った医療行為も、全然しても平気だったんすよ。寧ろ、それらもひっくるめて、『天寿を全う』すれば良い話だった訳で」

「えっ!?」


 まさかの真相に戸惑いが隠せない。

 今のベローエは、それをやったらそれこそ、『冒涜者』認定されるのに。


「だから、アイツも小さい頃、先代からよく可愛がられていたっす。それに、前に事故った時にアイツ、出血多量で危篤状態だったんすが、アイツの両親がアイツの為に『輸血』を施したんすよ」

「そんな事が……」


 すると、彼は突然、『アイツ』という言葉を口にし始めたのだ。

 って事は、それを知った現教祖様が、その子を『冒涜者』と名付けて迫害し始めたって事か。


「もしかして、アイツって……」


 ふと、喫茶店での話を思い出した私は、ポロッと口に出してしまった。


「あー。確か、熊野澪。すね。元ベローエのメンバーで、俺寄りの考え方だったから、今のバカ教祖。まぁ、アイツのじーちゃんなんすが、手術後から、アイツを『冒涜者』として、迫害し始めたんすよ」

「えぇぇ……」


 だけど、あまりにも酷過ぎて、掬っていた抹茶プリンを落としそうになったが、まさか、あのミオさんがそんな目に遭っていたなんて。

 と言っても、掲示板に載っていた写真を見ただけで、実際には会ったことは無いが、彼から惨状を聞いたからには、少しでも力になりたい。


「でも、アイツの両親はそんなバカ教祖から、必死にアイツを守っていたっす。だけど……」

「だけど?」

「一年ほど前に、バカ教祖の手下達に殺されたんすよ。『自然死』という名の事故に見せかけた殺人で」

「それは、酷過ぎるって! って、ひゃぁっ!」


 しかし、怒った勢いでテーブルを叩いたら、その反動で抹茶プリンが倒れそうになったが、何とか受け止める事が出来た。


「あはは。タミコさんったら、怒ってくれるのはすごい嬉しいっすけど、やり過ぎはダメっすよ! あははは!」

「あ。ごめんなさい。つい、カッ。となってしまって……」

「でも、分かるかもしれないっす。それぐらい、今の大バカ教祖には、何かしらの形でお灸を据えないと。て思ってましたんで、めっちゃ丁度いいっす!」

「もしかして、それで今回、あんな形で私に、コンタクトを取ろうとしていたって事?」

「そーいう事っす。その方が俺としても動きやすいっつー利点もあるっす」

「ふーん……」


 そして、ことの真相が分かった私は、再度落ち着いて席に座ると、抹茶プリンを頬張った。


「そういえば、もう一つ、聞きたいことがあるんだけど、いい?」

「何すか? 何でも聞いていいっすよ」


 彼はと言うと、ドーナツを全部頬張った後、冷蔵庫から抹茶プリンを取りだし、プラスチックのスプーンと共にテーブルに置いていた。


「えっと、フグトラさんは、あの投稿に関しては、あれって、本音?」

「き、急に何を言って!? って! うわぁぁ!」


 すると、彼は何かに動揺してしまったのか、プリンの蓋を勢いよく開けてしまい、蓋がフローリングへと落ちてしまったのだ。


 だけどこの慌て具合……。


「だ、大丈夫、ですか!?」

「あはは。俺は平気っす。でも、まぁ。あんな投稿をしてしまったのは、かなり恥ずかしいのですが、その……」

「ん?」

「こんな異性と二人きりで話したりするのは、かなり久しぶりなせいか、その。こうやって一緒にコンビニスイーツを食べまくったり、とかも、めちゃくちゃ緊張してしまったのは、本当っす」

「緊張?」

「は、はい。えっと……、何ていうか、その、勢いよく『アイツは俺のものだ!』と書いてしまったので、相手方にも申し訳ない。なんて思っていたっすが、あれはその……」

「ん?」


 彼は顔を赤らめながらも話すと、照れを隠すかのように、プリンを半分まで、勢いよく頬張りながらも、こう言ってきたのだ。


「指示で書いたのは本当ですが、もう半分はその……、本音も含まれているっす」

「え?」

「これ以上はその……、無しで……、お願い、しますっす……」


 しかし、それ以降、彼は顔を真っ赤にして俯いてしまったのだ。

 でも、フグトラさんって、口調からして、女慣れしているように見えるけど、こんなにもウブだったのか。


「それと、見つけ次第、保護して欲しいって書かれていたけど、保護した後、私をどうするつもりだったの?」


 なので、プリンを食べながらだが、聞いてみることにした。


「ふぁっ!? それもその……、ノーコメントで……、お願いしますっす……」

「え? ちょっとその詳細だけは詳しく知りたいんだけど!?」

「えええっ!? それはえっと、言えないっす!」

「言えないってどういう事!?」

「ガチでこれだけ言ってしまったら、その、相手方がかなり怒ってしまうので、これ以上は無理っす!」

「わ、わかった。それ以上は聞かないでおくね。あと、彼にも言わないでおくから泣かないで!」


 しかし、彼は子供のように泣きそうな顔で懇願していたので、これ以上は聞かないでおくことにした。

 と言っても、これだけでベローエが今後私に何をしようとしていたのか、はっきりとわかった気がする。


「あ、えっと、すみません。隠し事はなしで。とこっちから言っといて、俺は言わないで隠しているの、本当にごめんなさいっす」

「良いんですよ。これで、バカ教祖がこれから何をしようとしているのかも、はっきりと分かってきたので」

「え!? まじっすか!?」

「うん。それと、あの掲示板に投稿されたスレッドって、どーやったら消せるか分かる?」

「あー。『キルマイフレンド』の事っすね。それなら簡単っすよ」

「え?」

「教団にあるパソコンから、管理画面へとページを飛ばして削除すればいいだけっす」

「ええ!?」


 思わぬ回答でしばらくの間、固まってしまった。


「いや、その、そんな簡単な事でいいの? 削除依頼だから、てっきり誰かを通さないといけないって思ってたから……」

「あー。だって、あの掲示板作ったの、俺っす!」

「はぁぁ!?」

「あの掲示板は、バカ教祖からの指示で作られた物っすから、俺がおっけーすれば、おっけーっすよ」

「えええ……」

「ちなみにトップの息子とアイツを殺せと投稿したやつは、俺じゃなくて、末端の信者っすね。多分、アイツと同じ高校の誰だっけな……」


 すると、彼は抹茶プリンを完食後、思い出そうとこめかみを両指でつついていた。

 高校の誰か、という事は、もしかして、学校が絡んでくるのかな。その辺の事情は誰が一番詳しいんだろうか。


「うーん。あ!」


 ふと、カンナちゃんに連絡をとろうと、ポケットを軽く探ってみた。


「どうしたっすか?」

「あ。でも、ごめんなさい……」


 しかし、肝心な時に限って、スマートフォンを事務室に置いてきてしまったのだ。

 うわぁ。やってしまった。これじゃあ連絡をとろうにも……。


 お互い、八方塞がり状態になった時だった。



――ピンポーン



「は、はい!」

「誰っすかね? とりあえず、ドアスコープ覗いてくるっす」

「あ。ありがとう、ございます」


 玄関の扉から勢いよくチャイムが鳴ったのだ。こんな時に誰だ?


「えっ!? ももも、もしかして、くくく、熊野君!?」


 ふと、フグトラさんが驚いた声を出していたので、玄関へと駆け寄ると……


「えええっ!?」


 そこには、一人の高校生が、息を切らしながらも、玄関前へ立っていたのだ。しかも、日に当たっていたせいか、髪色は茶色く反射しており、長さはバッサリ切ったのか切られたのか分からないが、肩にかからないぐらいの長さになっている。だけど、顔つきがまるで女の子みたいで、制服は喫茶店で会った時の龍樹君と同じ格好をしていた。それに、首元には、フグトラさん同様、あの不気味な十字架のネックレスがかけられていた。十字架の中心部分には、熊の顔が掘られた装飾が付いている。


 もしかしてこの人が先程言っていた、『熊野澪』さん?


「すみません。フグトラさん実は彼が……、彼が……」


 だけど、彼は切羽詰まった様な表情で、泣きながらも私達にこう言ってきたのだ。


「龍樹がボクを教団から逃がすために、囚われたんです! どうか、助けてください!」

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