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マリアナに堕ちたのは、親友ではなく、私でした。  作者: Ruria
キルマイフレンド編
29/106

今回の作戦のせいで、突然上司が脅してきました。

 つい口走ってしまったが、彼はニンマリと笑うと、こう答えてきたのだ。


「ご名答。このタイミングに乗じて、アイツらには『敢えて』調子に乗らせ、その背後から、ベローエをぶっ叩こうかと計画中だ」

「ええぇ……」


 まさか、私が狙われているのを逆手にとって、『敢えて』利用するとは。

 本当にこのおじさ……。あ。ゴエモンさんは判断が早いっていうか。


「まぁ、自然死が目的だと言いながら、裏では真逆な事をしている変な団体の横暴を、これ以上野放しにしたら、ヤベーからな」

「それは……」


 確かにそうだが、囮と潜入の他に何か作戦を考えているのだろうか。気になって前よりも更に耳を傾けることにした。


「だから、組織が雑草みたいに成長する前に、俺らや警察といった、第三者が除草剤を撒いて枯らさねーとな! ガハハハ!」

「ゴエモン氏ぃ! まっさかベローエを雑草モドキに例えるとは! よく考えましたぞ!」

「だろ! アイツら、まるで雑草みたいでしつこいしな!」

「はは。あはは……」


 だけど、肝心の作戦は言っていなかったが、彼の例えは的確だと思っていた。

 それに、私やリルドに付きまとってきた、あの不気味な十字架を付けた連中だって、ベローエのメンバーだったみたいだし。あのまま放置していたらと思うと、少し鳥肌が立つ。かな。



――ピコンッ



 すると、今度は前よりも、遅めに通知が来たのだ。私は咄嗟に手に取り、通知画面を見ると、カンナちゃんからだ。



――実はあれから、龍樹君の部屋を満遍なく探してみたら、変な三角のやつ? コンセントかな。穴が3つ付いていたやつを見つけたんです。かなり新しめだったのですが、これってまさか……。



 しかも、今度は画像付きで送られてきたのだ。


「これって……」

「ふむふむ。拝見しても宜しくて?」

「はい!」


 なので、グソクさんと共に確認をしてみることにした。


「間違いなく、盗聴器。ですな」

「え? これだけで分かるんですか!?」

「何となく分かりますぞ。しかも、三穴コンセントタイプとは。もしかして、タミコ氏が前にいた部屋の時にもこいつ、付いてましたかな?」

「うーん。あの時は白い電源アダプターだったけど、これも確かに似ている。はい。リルドはこれに気がついて、外にぶん投げていました」

「なるほど。幸い、まだ抜いてない状態ですので、抜く際はハンカチなどで取って、ジップロックとかにでも入れて、保存しといた方が良さそうですな」

「へぇ……」

「そしたら、スムーズに警察さんに渡すことが出来ますのでね。ついでにカンナちゃんからも通報かけておくと良いかもですぞ」

「なるほど!」


 なので、私は彼のアドバイス通りに、こう打ち返す事にした。



――さっき、機械に詳しい人が教えてくれた事だけど。まず、近くにある布やハンカチで、コンセントを抜いてフリーザーバッグにでも入れといて。無かったら新品の小袋でもいい。コンビニの袋だと不特定多数の指紋が付くから、あまり良くないらしい。それが終わったら、家から外に出て、少し距離が離れた所から、警察に電話して。それと、撮った写真は警察に見せるまでの間、とっといて。私らよりも、カンナちゃんの方が、警察も信用するかもしれないから。



「これで、大丈夫かな?」

「流石。誘導が上手いですぞ! タミコ氏!」

「うーん。カンナちゃん、未成年だから、警察も信用すると思ってね」

「確かに、大人の話よりも、未成年の少女の話の方が、彼らからの信用性は高いですな。それに、行方不明になった友人の部屋に、盗聴器が仕掛けられていたんです! となったら、益々事件だと疑いますからな」

「だけど、逆にカンナちゃんが疑われるって事は無いかなぁ。例えば元カノ疑惑がかけられたり。とか」

「コンセントを素手で触ってない限りは、大丈夫でしょうな。あとは彼女が上手く説明出来るかどうか。それにかかってると思いますぞ」

「……」


 でも、私は何だか不安だ。変な事にならないと良いけども。


「まぁ。安心せぇ。カンナちゃんって事は、あのシイラの妹だろ? 警察とて、あいつの嘘を見破るのは難しいと思うぞ。というか、嘘っていうよりも、お互いの信頼関係が強い。と言った方が良いかもしれねぇな。」

「どういう、意味ですか?」


 しかし、ゴエモンさんは私らの話に入ってくると、服の胸ポケットから愛用の電子タバコを取り出し、吹かしながらこう答え始めたのだ。


「ふっ。そのまんまの意味だ。前にツブヤキで会ってたなら、あの二人の関係性、何となくわかると思うぞ。あの問題児のシイラが唯一、頭が上がらない女。それが肉親であり、妹でもあるカンナだ。カラマリアの中でも、一番のコミュ強だしな」

「そういえば……」


 ツブヤキにいた時、確かにあの二人のパワーバランスが、逆だった様な。

 カラマリアのトップの昇さんが、自身の息子の護衛を任せるほど信頼されているって事は、カンナちゃんもなかなか凄い子って事よね。

 あまりにも普通な感じだったから、私も正直驚いているって言うか、なんて言うか。


「あぁ。それと、あの兄妹は小さい頃から、両親の件とかで、何度も警察にお世話になることがあったみたいでな。もしかしたら、警察の中にはあの兄妹を小さい頃から知っている。ていう顔見知りな人もいるんじゃねーのかな」

「そそ、そうだったんですか!?」

「まぁーな。俺も詳しい事は、さっぱりだがな」


 まさか、カンナちゃんも現場慣れをしていると思ってなかった私は、思わず相槌を打っていた。にしても、あの兄妹、演技するの上手すぎでしょ。いっその事、カラマリア抜けて劇団にでも入るべきだと思うのだが……。


「それはさておき。タミコ」

「はい」

「カンナちゃんの事を気にかけるのはいいが、今回の囮任務には、命の危険が伴う事を、絶対に忘れるんじゃねーぞ」

「……」


 思わず唾を飲み込んだが、今回のゴエモンさんはいつもの雰囲気とは全く違う。普段のおちゃらけた感じとは程遠く、真顔で私を睨む様に、愛用の電子タバコを口の端に移して吹かしている。


「一歩でも判断を間違えたら、ガチで命が泡となって散るぞ。これが心臓だと例えるとな。こーんな感じで、パァーっとな」

「ひぃ……」


 そして、彼はドスの効いた声で私に脅しをかけると、左手で右手を指差し、右手をグーからパーへと手振りをしたのだ。

 だけど、これで如何に、今回の任務が危険だということが、肌身全体に染みて分かってくる。

 それに、私は潜入や囮は初心者で、ど素人のせいか、この時点で生殺与奪の権は、彼の手に握られている気がした。それも、ちり紙の様に、いつでも捻り潰して捨てられる様に、だ。


 もしかしてこれが、知らぬうちに闇バイトに加担してしまった人の気持ち、なのだろうか。


「まっ。軽く脅しをかけたが、危険な任務には変わりはないからな。その辺覚悟をするように。わかったか?」

「は、はい……」


 そして、私は恐る恐る、ジャージの上着を脱ぐと、渡されたシール型のGPSを、コリが酷い肩に貼り付けた。うん。これでリルドに見られても変に勘づかないだろう。多分。


 それと、黒い名刺入れみたいのに入っているせいか、他にも用途が使えそうな気がした私は、チャックが付いているジャージのポケットに入れた。例えば、行方不明になった人を見つけたら、さりげなく貼り付けたり。


 だけど、まさか、入社して4日程で、こんな重要な、囮みたいな事をするなんて、全く想像つかなかった。でも、どんな形であれ、みんなの力になれれば私は……。


「それでは、えっと、このまま買い物に行く感じで、歩いていれば良いのでしょうか?」

「まぁ。『独断で出て行っている』訳では無いからな。とりま、『グソクさんに買い物を頼まれた』て感じで、タミコには近くのコンビニ周辺まで歩いてもらおうか」

「は、はい!」

「そんで、教団の中に着いたら、先ずは行方不明になっている二人の少年達の捜索を頼むな」

「はい」

「それと、ワシが渡した護身用のは持っておるか?」

「あっ! 今から取りに行ってきます!」

「常に身につけておけよな。それが自分の身を守る武器でもあるからな」

「わかり、ました」


 しかし、部屋に置き忘れていた護身用の道具を取りに、ジャージの上着を着ると、事務室を後にした。


 えっと、タクティカルスティックと、小型のスタンガンは右ポケットにしまって、名刺入れに入っているシール型のGPSは、左ポケットに。会員証は中の黒いTシャツで隠す形で、首にかけて。と。

 私はしまう場所を確認しながら、それらを両ポケットにしまったが、思ったよりも軽くて驚いた。普通に歩いていても違和感が無い。


「さてと……」


 私は深呼吸をすると、事務室へと向かい、彼らにこう挨拶をした。


「行ってきます。ゴエモンさん。グソクさん」

「おお! タミコ氏。行ってらっしゃいですぞ!」

「いつも、ありがとうございます」

「初めてで緊張してると思いますが、とりま、安心して下さいな。タミコ氏は、決して、一人ではありませんぞ」

「グソクさん……」

「そーだ。ちゃんと『生きて』帰って来いよ。分かったか?」

「は、はい!」


 上司と先輩にエールを貰った私は事務室を後にし、真向かいにあるエレベーターへ向かう。


「これで、良いかな」


 そして、首元にかけた白いストラップを辿りながら、黒いTシャツの中に隠した会員証を取り出すと、ピッ。と翳した。

 昨日、一昨日、ツブヤキに行く時は、リルドが積極的にやってくれていたから、自分一人でやるのは、これが初めてだ。



――ピッ!



 すると、すんなりと通ったので、私は再び黒いTシャツの中にしまうと、ジャージのチャックを上まで上げ、地上へ着くのを待った。



――チーン


 地上へと付いた私は、周囲を見渡し、歩いて5分ほどの距離にある、8が付いたコンビニ エイトレブンへと向かうことにした。

 エイトレブン。そういえばよく、リルドがここに買い物に行っては何かしら大量に買っていたなぁ。袋に八の文字が沢山書かれていて、コンビニ袋なのにオシャレだったのを思い出した私は、店内へ入ると、色々と見て回ることにした。


「ほぇぇー」


 だけど、こうやって一人で店の中へ入ったのは、久しぶりかもしれない。陳列棚には、見たことの無い商品がずらりと並んでいたり、見慣れたサラダスパゲティや肉まんがあったりしていた。勿論、先程食べていた味噌味の冷凍ラーメンも。


「すごーっ。何にしよう……」


 ふと、豊富で魅力的な商品ばかりに目が行ってしまった私は、たまたま見つけた抹茶味のコーヒーを手に取ろうとした。


『あっ……』


 すると、何故かフードを深く被った黄色いパーカーの人と、手が触れてしまったのだ。しかも、手と体つきから見るに、高身長の男性っぽい。


「えっと、どうぞ」

「いやいやいや。貴女が先でしたので、俺の事はお気になさらず……」


 戸惑いながらも手を離すと、何故か彼は遠慮がちに言い、私から少しだけ距離をとっていた。


「は、は……。え?」


 だけど、改めて黄色いパーカーの人の首元を見ると、あの銀色の十字架が、不気味に怪しく輝いていたのだ。

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