筋トレ後、ラーメンを食べながら色々とまとめてみたら、情報量が密でした。
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朝の7時頃。私は爆音のアラームと共に起床。ボッサボサの頭をヘアブラシである程度整え、お気に入りの黒ジャージ姿のまま、トレーニングルームへと向かう。今日はここに来て、初めての休暇だ。何をしようか。
まずは運動がてら、トレーニングルームにぶら下がっているサンドバッグにパンチして、一汗かいてくるか。なので、某アニメの百裂パンチみたいに、オラオラと拳を当ててみる。
「うひゃっ!」
すると、当たった反動でサンドバッグが跳ね返って、私の方にぶつかってきたのだ。
「これ、思ったより難しい!」
思わず本音が漏れてしまったが、朝が早かったせいか、誰にも見られなくてホッとした私は再度、パンチを続けてみる事にした。
だけど、体を動かしてみると、心身共に、ストレスが減っていくような感覚がする。ゴエモンさんの言う通り、筋トレはやっぱり、悩みの全部を解決するのだろうか。
ちょっと待って! いやいやいやいや!
何で私まで脳筋になりかけているんだ!
私は私のできる限りの事をしないと!
まずは休暇を楽しむこと。これだ!
なので、私は一旦冷静になると、トレーニングルームにある器具を片っ端からやってみることにした。
「これは、よく見かけるアレだね!」
まずは黒くてかっこよさそうなランニングマシンに目をつけた私は、ベルコンの上に乗り、ピピっ。と目の前にあるボタンを操作する。
「うわっ!」
すると、突然足元が動いたので、咄嗟に両サイドにある手すりに掴まり、体制を整えた。
「あっぶなっ!」
そして、走りながら適度な速度に合わせ、時間とスピードを調整しつつも、トレーニングを行う。
もしかして、これで持久力が少しでも上がれば、逃げる時にも役に立ちそう。
ふと、よく良く考えれば、このトレーニングルーム、色々ありすぎじゃない?
ベンチプレスもあるし、レッグマシンもあれば、アップライトバイクまでもあるし。オマケに懸垂できる鉄棒みたいな大きい器具もあれば、隅にはストレッチやダンベルもできる小ペースまでもあるから正直驚いた。
流石ゴエモンさんっていうか、筋トレという趣味を極めた人の部屋。と言った感じだ。
「あ。もう時間。か」
考え事をしながら走っていたせいか、いつの間にかマシンが止まっていた。
「さて、と」
なので、私は息があがりながらも、ベンチプレスに向かうと、ベンチに仰向けになり、バーベルを持ち上げようした。
「えっ!? 重っ!」
だが、重すぎて瞬時に断念した。よく見たら両サイドの重りが40、40のトータル80キロになっていたのだ。
「流石に80は無理無理!」
でも、リルドはこれを軽々と持てる程の力は、あるんだよね。きっと。だから、私を……。
あ。そういえば。
昨日の夜に思いついた『リルドの部屋侵入作戦』が、頭の中を過ぎったのだ。
「リルド、いるのかな」
なので、恐る恐る、ベンチプレスの近くにあった扉をノックした。多分、ここが彼の部屋なんだろう。ちなみに扉にかけられたプレートには、『リルドの部屋』と書かれていた。
「あの……」
「ふぁっ!?」
「お、驚かせてしまってごめんだよ。タミコ氏」
「ぐ、グソクさん!?」
ふと、背後から聞き慣れた声がしたので振り返ると、何故かグソクさんが申し訳なさそうな顔で私に謝ってきたのだ。
「リルド氏は今、別の任務でお留守中なのだよ」
「そうなんですか……」
「ですが、タミコ氏には一つだけ忠告しておかないとですな」
「えっと……」
忠告とは何だろうか。
内心ビビりながらも、彼が言葉を発するのを待つ。
「リルド氏の部屋に入るには、彼の許可を得ないとダメですぞ。というのも、前に勝手に入ろうとした人がいまして。その結果、その人はリルド氏に見つかり、ボコボコにされて、サーフェスを永久追放になったのですぞ」
「ひえっ……」
「恐らく、彼はワイにも、ゴエモン氏にも隠している、重大な秘密を抱えていると思うんですぞ。だが、ワイも彼の口から、いつか、その隠していた秘密を打ち明けてくれる時が来るのを期待し、今を生きておるのですぞ」
「ってことはつまり……」
彼の言っていることは間違っていなかった。て事かな。確か彼は昨日の帰り際に『この任務が終わったら、誰にも言っていない秘密を一つだけ教える』と言っていた様な。
「そう。彼の信用を損なう事をしたら、本当にタミコ氏の命は、半分無くなると思いますぞ」
「確かにそれは……」
興味本位であっても、勝手に入るのは流石にダメだよね。邪な気持ちに駆られた私にダメ。と注意してくれたグソクさんに、感謝しないと。と言っても、彼に勝手に部屋を入られた事がある私には、なんだか納得がいかないが。
「うーん。でも……」
「まぁ。ひとまずワイの所で、ネットサーフィンをすれば、少しでも気が紛れると思いますぞ。それに、タミコ氏は、他人の部屋に侵入するよりも、大事な事があるのでは?」
「あっ!」
そういえば、グソクさんと共に、ベローエの監視行動をするって言っていたような。
「すみません! 直ぐに向かわなきゃ!」
勢いのまま謝罪した私は、急ぎ足で事務室へ向かおうとした。
「まま。今日はワイと共に監視行動ではなくて、タミコ氏には気ままにネットサーフィンをしてて欲しいのですぞ」
「え?」
しかし、彼は満面な笑みで答えると、アンティーク調の扉の取ってに手をかけ、こう言ったのだ。
「そう。好きなものを検索して構わないので、少しは頭から任務の事を、忘れて下さいな」
「グソクさん……」
「あ。それと、運動後のご飯もあるので、食べますかな? リルド氏が沢山冷食を買ってきて下さったので、ラーメンもありますぞ!」
「ら、ラーメン!?」
驚いたが冷凍のラーメンってあったんだ。ラーメンて言うと、私はよくお湯で簡単に作れるカップ麺とか、飲食店にある本格的なラーメンを口にしていたような。
冷凍のラーメンって、どんなのかが気になった私は彼の部屋よりも、頭がラーメンに移行されていた。
「えっと、今から向かいます!」
「お? そんじゃ、待ってますぞ!」
なので、彼の部屋よりもラーメンが気になった私は、汗を拭きながらトレーニングルームを後にする。
「えっと、えっ!?」
事務室に入ると、仄かに味噌の匂いがした。味噌ラーメンだろうか。
キーボードを丁寧に白い布で覆いつつ、グソクさんがそのテーブルで黒い容器を持ちながら、美味しそうに啜っていた。
「おっ! 来ましたな! タミコ氏!」
「その黒い容器に入っているのは?」
「これが『冷凍ラーメン』ですぞ! ほら! 冷凍庫から好きな味のラーメンを持って、レンジにチンして下さいな!」
「え!? は、ははは、はい!」
しかし、彼の圧倒的な圧に根負けした私は彼に言われるがまま、冷凍庫を開けると、かなりの種類が入っていた。
味噌、醤油、豚骨。オマケにうどんやパスタも入っている。そっか。グソクさんはここで依頼をこなすため、普段から外に出ないのか。
なので、私も味噌ラーメンと書かれた冷凍ラーメンを手に取り、ほんの少し端の部分を開けてレンジでチンをかける。600ワット8分ぐらいで丁度いいだろう。
「それと、ほい。スポーツドリンクですぞ」
「あ。ありがとう、ございます」
すると、彼は冷蔵庫から、500mlのスポーツドリンクを差し出してきたのだ。
「運動後のラーメンって、あまり良くないらしいのですが、スポドリを飲んどけば、一応は平気だと思いますぞ」
「何から何までその、ありがとうございます!」
「ドゥフフ。まぁ、遠慮なさらずに、席に座ってくださいな」
「は、はい!」
そして、彼に促されるがまま、席に着くと、ラーメンができるまでの間、頭の中を色々と整理することにした。
折角の休暇だ。この3日間色々あったから、頭の中整理しないと。
なので、私はパソコンを起動し、メモアイコンをクリックすると、今まで起きた出来事を、箇条書きで分かりやすく、まとめてみることにした。勿論、スポーツドリンクを飲みながら。
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【カラマリアとナル計画】
・カラマリアとは……表は臓器提供センター。裏では秘密裏に、臓器売買組織として、闇サイトを使って販売をしている組織。その元締め(闇ブローカー)がシイラで、元サーフェスの従業員だった人。カラマリアのトップは、越智昇というスーパードクター兼闇医者。ゴエモンさんとは同級生。
・そんなカラマリアは、とある人物を探していた。それは『ナル計画』の首謀者である天海愛華と、『サンプルの人』と呼ばれる人だ。
・サンプルの人の特徴は、血液型が『O型のRHnull型』であること。通称は、黄金の血とも言われている。
・カラマリアはその計画の阻止の為に、サンプルの人を保護する。という秘密裏の任務も行っていた。そのため、シイラは、私を血液型検査にかけたいと言ってきたのだ。
・ちなみに、ナル計画を実行してしまうと、カラマリアの裏ビジネスが、なり行かなくなってしまう。なので、カラマリアは何としても、ナル計画の実行を阻止したいらしい。
・それと、実は政府でも、ナル計画を賛成する声もあり、ナル計画自体が、国家機密である。と言うこと。
・そして、サンプルの人の末路は、人類の血液バンクとして、一生隔離されて、血を搾取され続けられるというらしい。何とも理不尽な計画であり、リルドはそれを潰してやると言い、怒り心頭だった。
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「よし。ここまでは書けたかな」
あとは、昨日の契約の時にあったことを赤裸々に書くだけだ。
これだけでも、膨大な情報量だけど、何で、天海愛華が、計画の首謀者なのだろうか。もしかして、サンプルの人=(イコール)竜宮多美子という話も、現段階では、リルドの憶測に過ぎないが、仮に本当だとしたら……。
「これも全部、憶測でしかないか」
――チーン
「ラーメンできましたぞ。タミコ氏」
「あっ! 本当だ! グソクさんありがとう!」
ふと、考え事をしていたら、いつの間にかラーメンが出来上がっていた。なので、一旦レンジから、熱々の味噌ラーメンを取り出すと、レンジ横にあった一味をかけて、割り箸を取って席に戻る。
「いただきます」
私は両手を合わせてそう言うと、早速啜ってみる事にした。
「んまっ!」
思わず声が出てしまったが、冷凍のラーメンって、こんなにも美味しいのだろうか。ただ、単純にレンチンの仕方が良かっただけなのか。啜れば啜る程、味噌の香りが鼻にくる。
「美味いのですな。それは良かったですぞ!」
その食いっぷりを見ていた彼も、私を褒めつつ、豪快にスープを飲み干していた。
「さて……。と」
私は麺が伸びない程度に食べ進めると、再度パソコンに手を置いて作業をしようとしていた。
――ピコンッ
「ん?」
ふと、隣に置いていた中古のスマホに通知が届いた。誰だろう。
「え? ねね! グソクさん!」
「どうなさいましたか!? タミコ氏!」
「これって……」
念の為、彼と共に見てみると、カラマリアで龍樹君を護衛しているカンナちゃんから、ライムでこう書かれていた。
――今朝、部屋を見てみたら、龍樹君と澪さんが居ないの! どうしよう! タミコさん、助けて!




