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マリアナに堕ちたのは、親友ではなく、私でした。  作者: Ruria
キルマイフレンド編
26/106

帰ってきたらとんでもない事になっていました。

 そして、帰り道の事だった。

 私は念の為、黒いパーカーのフードを深く被ると、彼と共に歩いていた。ちなみにメンコさんは現在、別の任務に行っているらしい。


「やっと、共闘任務が来たね」

「まーなぁ。それに、追われてる気配も無いから、何事も無ければ、普通に帰れるだろ」

「そうだね。一先ずゴエモンさんやグソクさんに報告しなきゃ」

「あぁ。今回の収穫は色々とでかかったからな。それに、カンナちゃんも、見ないうちに立派になったもんだ」

「そう。だね……」


 だけど、軽く嫉妬してしまったのは、気のせいだろうか。時たま、内心モヤがかかった様な気持ちになる事がある。


「おい」

「んえっ!?」

「まーた。何、変な声出してんだよバカ」

「バカって! またそうやって私の事……」

「バカになんてしてねぇよ」

「……」

「それと、俺はあんなガキは、そもそも好みのタイプじゃねぇ」

「なに急に!?」

「だから、その。えっと……」

「……」


 しかし、彼はそれ以降黙ってしまったのだ。

 自分から吹っかけておいて、突然黙るのは流石にやめて欲しい。


「はぁ。わかりましたよ。言いたい時にまとめて言えばいいので」

「……ま。ありがとな」

「う、うん……」


 しかし、なんとも歯切れが悪い会話だ。

 それに、先程、契約書にサインをし終えた時も、彼は隣でお冷を飲みながら、何か考え事をしていた様にも見えた。


「なぁ。タミコ」

「ん?」


 ふと、彼から声をかけられたので、耳を傾けてみる。


「もし、この任務が終わったら、俺が誰にも言っていない、ゴエモンのじーさんにも隠している秘密を一つ、教えてやる」

「ええ!?」


 まだ会って一週間も経ってないのに、何を突然言うんだ?

 驚きのあまり、空いた口が塞がらなくなってしまった。


「かと言っても、この任務、一筋縄では解決できなさそうなんだよな」

「え? それって……」

「あぁ。今回は前回のネカフェみたいに、突撃して一日で終わり。では解決できねぇだろうな。かなりの長期戦になるかもしれねぇって事だ」

「なるほど……」


 確かに冷静に考えると、まず一つ目は依頼主や被害者が未成年だと言うこと。それと、加害者も、もしかしたら、未成年の可能性が高いかもしれない。と言うことだ。


「つまり、龍樹君やミオさんが通っている学校側の出方次第で、結果が変わるかもしれないってこと?」

「その通りだ。オマケに、加害者が未成年の場合は、確実に親が出張ってくるだろうし。しかも、闇掲示板での投稿となると、警察もやってくるだろうな」

「警察……」


 まさかの第三者が、大量にやってくるかもしれないってことか。

 まだ新人である私にとっては、これは一人だと対処出来ない、超大型依頼なのかもしれない。


「だから、ゴエモンさんもあまり、タミコを無理矢理にでも出したくないんだろうな。ベローエに狙われている以上。な」

「そっかぁ……」

「と言うことで、暫くはサーフェスに身を隠す事になるかもしれねぇ。俺は幸い、服装さえ気をつければ、行動範囲は広いから、軽い任務は出来るだろうし」

「うん。そういう事なら分かったよ。私、明日からグソクさんの所でまた、軽い依頼を探してみる事にするね」

「あぁ。助かる」


 そして、話している間に、あの雑居ビルに着いたのだった。

 だけど、私はこの後、ベローエから狙われている以上、暫くは部屋に引きこもっていた方が安心かもしれない。それに、この裏何でも屋に入社してから、初日はネカフェのクリオネ。二日目はツブヤキ。三日目もツブヤキと、外にいる事が多かった気がする。


 なので、私とリルドはゴエモンさんに報告をするために、エレベーターへ乗り込み、事務室へと帰還した。


「ただいまー」

「おぉ。リルド氏! 実はアイツらのことでわかったことがありましてな!」

「なんだ? タミコもいるから、手短に頼むぞ」

「おっ! 実は、タミコ氏にも実は関わることでしてね……」

「え!? 私にも関わること?」

「はい。そうですぞ!」


 帰ってきて早々、グソクさんは意味深な事を言うと、おもむろに自身のデスクにあるパソコンの画面を見せてきたのだ。


「えっと……、え!?」

「おい。どうしたんだ?」

「この書き込み……、まさか!」

「はい。そのまさか。ですぞ」


 すると、書き込みにはこう書かれていたのだ。しかも、昨日付きまとわれた時、お姫様抱っこされている写真と共に。だけど、どうやって真正面の写真を撮ったのだろうか。




――この女は俺のものだ。アイツのものではない。見つけ次第、保護をして欲しい。




「これ、『キルマイフレンド』でしょ!」

「ご名答ですぞ! ワイもまさか、タミコ氏も狙われていたとは思ってなくて、正直に驚いておりますぞ」

「それで、最初から盗聴器を付けられていたってこと!?」


 だけど、それにしても『俺のもの』って何?

 私は物でも無いんだけど。

 呆れ気味にはぁ。とため息をつくが、私の隣では、パソコンを破壊しかねない勢いで、拳を握りしめていた人がいた。


「おいおい。聞き捨てならねぇな。この女は『俺のもの』だと? しかもアイツって、俺のことかよ!」

「ちょちょちょ! 待ってくださいリルド氏! ワイのパソコンなので、破壊だけはしないでくださいよぉ! これ、スペックが凄く良い奴なので、50万近くはするんですぞ!?」

「あぁ。分かっているが、すっげー許せねぇな。見つけ次第、ぶっ飛ばしてやる!」


 彼は怒り気味に息巻くと、事務室の先にあるトレーニングルームへと向かってしまった。


「えっと、グソクさん、大丈夫ですか?」

「あはは。ワイは大丈夫ですぞ。それにしても、誰がこんな投稿をしたのでしょうな」

「さぁ。私も誰かは流石に……。ですが」

「ん?」

「ここに来る前から、私はどうやら、ベローエに狙われていたみたいです。何で狙われたり、尾行されたりと、ここのところ、訳が分からないことだらけですが」

「そりゃぁ、突然保護して欲しいって、殺人依頼用の掲示板に書かれている訳ですから、訳わかんなくなるのも当然ですぞ」

「ですよね……」


 そして、グソクさんに正論を言われ、私は深いため息をついてしまった。色々と疲れたから、暫く引きこもろうかな。だけど、1個だけ何となく分かったことがある。


 それは、龍樹君やミオさんを殺して欲しいと投稿した人と、私を保護して欲しいと投稿した人は、別人だ。ということ。

 だけど、あくまでも『憶測』だ。もしかしたら、敢えて、人称を変えた同一人物という可能性すらある。ネットの世界はそれがあるからややこしいけど。


「グソクさん」

「何ですぞ? タミコ氏」

「この匿名掲示板から、IPアドレスって、割出せたりしますか?」


 ふと、ネットで齧った程度だが、IPアドレスの存在を知っていたので聞いてみることにした。

 確か、IPアドレスというのは、『インターネットで通信するための住所』で、通信相手を指定する際に使えるというのを見た程度だ。

 二進数だとか十進数だとか、詳しいことは全く分からないが、それで割り出せれば……。


「なるほど。少しやってみましょうか?」

「え!? 出来るんですか!?」

「全く。ワイは単なる特定厨では無いですぞ。コツさえ掴めれば、こんなのは朝飯前ですぞ」

「凄っ!」

「ですが、タミコ氏。勘違いしてはなりませんぞ?」

「え!? か、勘違い?」

「IPアドレスが分かれば、発信元を完璧に特定出来る。ていう訳ではありませんぞ」

「そ、そうなの!?」


 思わず聞き返してしまったが、どういう意味だろうか。ネットの事、齧った程度でしか知らなかった、にわかの私には、ただただ驚くしか無かった。


「簡単な話、プロバイダとの契約時に、名前や住所を登録するから、そこから個人を特定することができる。と言うだけですぞ。それに、プロバイダが持っている接続情報は、個人保護により、警察や検事による捜査照会や、裁判所の命令みたいな、余程の事が無い限りは無理。という事ですぞ」

「そんなぁー!」


 つまり、結局は第三者の力を借りなければ特定できないってことか!

 思わず大声を発してしまったが、そこから先は、どうすればいいのだろうか。不安でいっぱいだ。


「まぁ。投稿した人が、同一人物か、別人かの見分ける事ぐらいは、こっちでも出来るので、安心してくださいな。見分けた後は、ワイから報告致しますので。まずは心身ともに、休んでくださいな!」

「あ。ありがとう、ございます」


 だけど、心強い事を言われた私は、少しだけ安堵したので、部屋に戻って休もうと、事務室を後にしたのであった。


「はぁ……」


 それにしても、時間はいつの間にか、午後の三時を回っていた。

 ため息をつきながら、部屋へ向かおうと、トレーニングルームに入ると、一人サンドバッグにパンチを入れまくっている人がいたのだ。


「え!?」


 思わず声が出てしまったが、彼は自身の拳を思いっきりサンドバッグにぶつけまくって、ストレスを発散している。そのせいか、怒りに任せて物が壊れそうな勢いだ。


「よっ! タミコ!」

「ふぁっ! ゴエモンさん!?」


 ふと、背後から声をかけられたので、振り向くと、ゴエモンさんが両腕を組みながら仁王立ちをしていたのだ。


「驚かして悪ぃな。リルドのヤロー、トレーニングルームに入ってから、ずっとあんな調子だ」

「そうだったんですか……」

「一体何があったんだ?」

「それは、グソクさんから、キルマイフレンドに、新たな投稿が入ってきたのですが……」

「あー。なるほどな。俺も今しがた、グソクから連絡が入ったから、お前らが帰ってくるまでの間に、粗方投稿内容を見ていたのさ」

「そうだったんですか!?」

「それにしても、タイミングが気味悪ぃなぁ。なんつーか、こっちの動きを粗方分かっているかの様な、付きまとっている感じがなぁ。それに、写真も真正面で明らかに盗撮だ。どうやって撮ったんだろうな」


 そう言うと、彼は上下ミリタリー柄の作業着の胸ポケットから、愛用の電子タバコを取り出すと、ふぅ。と吹かしたのだ。


「あ。えっと、報告もした方が、よろしいでしょうか?」

「あー。それに関しては、リルドがイライラしながらワシに報告してきたぞ。シイラが昇から潜入調査を頼まれて女装しながら入ったんだって?」

「確かにそんなこと、言っていた様な……」

「ったく、相変わらず行動が行動だよなぁ。あのシイラが潜入調査とは。がはははは!」


 しかし、彼は私の動揺もよそに、淡々と冷静に答えつつ、面白い所は豪快に笑い飛ばしていた。

 だけど、今後の行動はどうすればいいのだろうか。


「それで、私は何をすれば……」


 気になった私は恐る恐る、ゴエモンさんに聞いてみる事にした。


「そうだなぁ。一先ず、タミコは暫くの間、サーフェスでグソクと共に、ベローエの監視行動を続けてくれ」

「監視行動ですか!?」

「あぁ。もしかしたら、カラマリアの方で、新たな動きがあるのかもしれないしな。それに……」

「それに?」

「闇雲に動いて、変にアイツらに勘づかれたら、それこそ厄介だ。ここはカラマリアからの連絡待ちと、闇バイトに加担している、ベローエの信者の掃討が落ち着いたら。になりそうだ」

「そうですか……、えっと。掃討の方はどうなっていますか?」

「掃討の方は相変わらずだな。メンコの体力に気を遣いつつ、ワシも運動がてら、掃討に参加してるからな」

「ええええ!? ゴエモンさんまで、掃討に参加しているんですか!?」

「あぁ。ちなみにマスターも時間が合えば、掃討の方に参加しているぞ」

「そうだったんですか。えっと、その。あは、あははは……」


 しかし、掃討の方は、血気盛んなメンコさんと、トレーニング感覚で参加しているゴエモンさんとマスターのおかげなのか、順調の様だ。


 それと、今回の依頼は確か、投稿の削除と投稿主の特定だっけ。

 投稿主の特定は、今のところ、グソクさんが同一人物かどうか、IPアドレスから特定すると言っていたけど、削除はどうするんだろう。

 多分、特定が先だろうけど、私が出来ることはと言うと、依頼の受注(ベローエが関係しているであろう、闇バイト関連)をしながら掃討していくのがいいのかもしれない。


「まぁ。そういう事だ。くれぐれも危険な行動はしないように。例えば、独断で勝手にここを出ていく。とかな?」

「それは流石に……」


 だけど、圧が強い彼に押されつつ、万が一彼女から、買い物のお誘いが来た時はどうしようかと悩んでいたが、それは流石にないかな。


「えっと、分かりました。暫くグソクさんと共に監視行動を続けることに……、します」

「おぉ。頼んだぞ。けど、カラマリアから連絡があったら、ワシにも一言相談せぇよ。わかったな?」

「は、はい……」


 こうして、私はベローエの動きが落ち着くまでの暫くの間、グソクさんと共に監視行動を続ける事になったのでした。




「疲れたぁー」


 部屋に帰ってきて早々、私は吸い込まれるかのように、ベットに向かってダイブする。


 だけど、ベローエの動きが落ち着くまでの間は、暫く外出禁止かぁ。まるで前に起きた、コロナみたいな感染症を防ぐためのステイホームみたいだ。


「何しようかなぁ……。あ」


 そういえば、リルドの部屋を見たことがなかった私は、どんな風になっているのか、かなり気になってしまった。それに、彼には私の部屋に、二回も無断で入って来ている。という前科付きだ。私だって、二、三回程侵入しても大丈夫だろう。多分。おあいこだ。


「よし。彼がコンビニに買いに出かけたら、決行だっ!」


 そして、私は誰にもバレずに、彼の部屋へ侵入する作戦を、密かに行うことにしたのだった。

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