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マリアナに堕ちたのは、親友ではなく、私でした。  作者: Ruria
キルマイフレンド編
23/23

契約の話をしてきたのに、何故か恋バナになっていました。

「何かさ、妙だよね」

「あぁ。今回ばかりは、俺も同じだ」

「何か、ここまで被ると、誰かが意図的に依頼を出しているとしか思えないっていうか……」

「あぁ。カンナや龍樹君も、変だとは思わないか?」


 そして、リルドは反対側にいる二人にそう問いかけると、近くにあったメニューを開き始めた。今度は何を頼むつもりだろう。後で考えておこう。


「確かに言われてみれば……」

「だけど僕自身、サーフェスへの依頼でしか出していないです。なので、まさか、カンナさんの所にも、同じ依頼が来ていたとは思っていなくて……」

「いんや。思っていない。じゃなくて、誰かが、カラマリアも巻き込もうと、わざと『コピペ』して送っているんだと思う」

「え? それってつまり……」

「誰かが、龍樹君のアカウントを乗っ取って、カラマリアに送っているか。はたまた、偽アカウントを作成してカラマリアに送っている。あともう一つは、誰かが、龍樹君のスマートフォンを借りるか盗むかして、直接カラマリアへ送っている。ってことだ。サーフェスでは基本、アオハトにある専用アカウントのDMでしか、依頼を受け付けてないからな」

『ええっ!?』


 右手で指折り数えながら教える彼以外の三人は、あまりにも多い可能性に思わず驚いてしまったが、確かに有り得る話だ。

 このスマートフォン一台だけでも、様々な可能性を見出せる事が可能だけど、よくよく考えれば、かなり恐ろしい道具だ。

 でも、用途さえきちんと守れば、強い味方にもなれるから、現代の諸刃の剣って感じにもなるのかな。


「そんな事があったなんて。アカウントは結構厳重にしていたつもりだったので、乗っ取りは平気だと思っていたのですが……」

「ちなみにパスワードは何だ?」

「えっと、好きな人の誕生日と名前をバラバラにしています」

「え!? 好きな人いたの!?」

「あ。カンナさんにも言っていた気がするのですが……」

「まさか、あの子!? そーいえば、ボロボロになって家に帰ってきた時に、ものすごぉ~く可愛い子を抱えてたよね!?」

「えぇ。そうですが……」

「ちょっと待って!? あの子って確か……」


 彼女がそう言いかけた時、妙に変な視線を感じた。どこから見ているんだろう。気になった私はさっ。と周囲を見渡すと、マスターがこちらを凝視しながらカウンターの近くで待っていたのだ。


「えっと、その前に、軽く何か、注文しませんか? さっきから、マスターの視線が……」

『あっ……』

「ご注文は、お決まりになりましたか?」


 すると、今度は向こう側から私達がいる席まで来てくださったのだ。


「えっと、私は前回と同じで……」

「俺も前回と同じ『おすすめメニュー』で」

「僕は甘いのはあまり好きではないので、この昼食セットをお願いします」

「うーん。わたしはどうしようかな。この『ブルーベリー増し増しパンケーキ』でいいかな」

「注文は以上でよろしいでしょうか?」

『は、はい!』

「では失礼致します」


 そして、注文を終えると、マスターはさっさとカウンターの奥へと戻ってしまった。

 それと、シイラ兄妹はベリー物が好きなのかな。昨日お兄さんが来た時は、苺増し増しパフェを頼んでいたような。


「前回と同じって事は、前もここに来ていたんですね!」


 すると、依頼者の龍樹君がブラウン色の瞳を輝かせ、爽やかな笑みで私達に質問をしてきたのだ。ホント、黒髪短髪で、凛々しくてかっこいい顔つきだな、この人。フードを下ろしたリルドと一緒に歩いても、違和感が無さそうって言うか。犬に例えたら、リルドはハスキーで、龍樹君は甲斐犬って感じだ。


「まぁ。そーだな。二人は初めてか?」

「そうですね。この一件が落ち着いたら、僕とあの子と二人きりで行きたい程、素敵な雰囲気で。とても気に入りました」

「ヒュー! ヒュー! まだ告ってないのに、もうデートの場所まで決めちゃうなんて!」

「うっ! うるせぇよ! そういうのは二人きりの時にしろよ!」

「は~い」


 だけど、さっきから話に出ている『あの子』って、どんな子なんだろう。もしかして、龍樹君がボロボロになりながらも、抱えて帰ってきたっていう、同級生の子?


「えっと、その、さっきから『あの子』と言っていたけど、誰なんですか?」

「あー。ミオさんの事だね」

「ミオさん?」

「ちょっ!? カンナさん! それは言ってはダメって!」


 図星だったせいか、彼は勢いよくテーブルを叩きながら席を立ったが、顔はみるみる、苺のように真っ赤になっていた。


「いやいや。この二人はお兄ちゃんが前居た組織の人間よ?」

「つまり、タミコさんやリルドさんは、父さんと同じ、『裏の人間』って事ですか?」

「うん。『サーフェス』という少数精鋭の裏組織だよ。大丈夫?」

「あ。そうだった。大丈夫」


 しかし、隣にいた彼女のおかげで、彼は冷静を取り戻したようだ。


「えっとその、すみません。少し取り乱してしまいました。あまりにも普通の人間っぽかったので、裏組織の人とは思えなかったっていうか……」


 そして、採れたての苺の様に顔を真っ赤にしながらも、大人しく席に座っていた。

 だけど、私達黒パーカーコンビが『普通の人間』っぽいかぁ。

 でもちょっと待てよ。これが普通の人間なら裏組織の人間って一体どんな感じよ! まさか、倫理観がバグっているシイラさんみたいな人がゴロゴロいるとか!?


 今度は私が軽く冷静さを失っていた。早く抹茶パフェ来い!


「普通の人間って言われるの俺、初めてだが、おもしれーなぁお前。流石トップの……、と言いたいが、そろそろ本題に戻ろうか」

「あ。そうですね。脱線してしまってすみません」

「でも、その、ミオさんっていう人が、ベローエが狙っている人って言うことだよね?」

『そういえば……』


 ふと、思った事を口にしてしまったせいか、私以外の三人は何故か、納得気味に口を揃えていた。


「だから、脱線したんじゃなくて、まさか、ミオさん、『冒涜者』だったり……」

「冒涜者……」

「確か、『冒涜者』は、ベローエに加入しているのに、『輸血』や『臓器移植』を行った人の事だったよね」

「そーいや、シイラがそんな事言ってたな」

「うん。それで、組織からは、忌み嫌われる。だった気が……」

「お兄ちゃん、そんな事まで知っていたんだ」

「なるほど……」


 だけど、カンナさん達も初めて知ったらしく、驚いた表情をしていた。


「タミコ。今回はえらく、頭の回転が早えーな」

「そ、そう?」

「あぁ。それだったらベローエが執拗に追っかけてくる理由がつくんだよ。アイツら、信仰から曲がったヤツを排除すんのに必死だからさ」

「だからあの時……」


 しかし、龍樹君は何を思ったのか、呟きながら俯いてしまった。視線はテーブルに向けたままだ。


「もしかして、龍樹君、ミオさんの事、何か……」

「お待たせ致しました」

『ふぁっ!?』


 私がそう言いかけた時、またタイミング悪く、マスターがパフェと朝食セットを持ちながら席の近くまで来たのだ。


「こちら、サンドイッチとカフェオレの昼食セットです。アレルギー等は大丈夫でしょうか?」

「あ。アレルギーは無いので、大丈夫です」

「それと、こちらは宇治抹茶パフェです」

「ありがとうございます!」

「うっまそぉー!」

「これ、お気に入りなんだ」

「そーなんだ! じゃー、わたしも今度頼んでみよっかなぁ~」


 だけど、やっとの事でお気に入りのパフェがきたので、私と彼女で目を輝かせていた。


「何だか美味しそう。実は僕、たまごサンドが好きなので、正直に言って嬉しいっていうか……」


 一方彼は、まじまじとたまごサンドの美しい断面に見惚れつつ、軽く頬張っている。


「それに、いつか、あの子の手作りサンドイッチを食べれたら……。なんていう変な妄想までしてしまう事がありまして……」

「龍樹君。それ、重症だな。恋の病っていう」

「重症、でしょうか。これでも冷静を装っていたつもりだったのですが……」


 そして、彼とリルドは唐突に、何故か妄想と恋の病について、語り始めていた。えっと、この二人、こんなにも乙女なとこがあるのか。


「でもさぁ~、リルドの兄ちゃんだって、人の事言えなくない? 恋の病の重症患者っていうか……」

「あぁ!?」


 しかし、隣で割り込むかのように入ってきた彼女に驚きを隠せなかった様で、今度はまだ注文が来ない者同士で会話が始まっていた。


「だって、隣のタミコさんとの距離がやたら近いし、何かにつけてタミコタミコって呼んでるし、オマケにお兄ちゃんに対しても嫉妬していたとか。昨日、お兄ちゃんから色々と聞いたよ」

「んなっ!?」

「確かにそう言われてみれば! 僕もリルドさんみたいに、好きな人に対して積極的にアタックしたら、あの子も元気になれますかね?」

「いやいや。あのね、それは人によりけりだから、あんまり積極的過ぎてもウザがられるだけだよ?」

「言えてる! ていうか、何女子会並にトークしてんのよ! 一旦ミオさんの話は中断で!」

「ええええ! タミコさん、自分から脱線しといてそれはないよぉ~! まだ二人の恋バナトーク聞きたいのに!」

「もう……」


 でも、それは契約が終わってからでいいのに。

 だけど、収集せずに、脱線したままにしていた私にも悪いと感じ、気まずさのあまりに思わずため息をついていた。


「お話の所すみません。お待たせ致しました」


 しかし、美味しそうな匂いが漂ってきたので、匂いの元を辿ると、マスターがナポリタンとパンケーキを、トレーに乗せて持ってきたのだ。

 今度はタイミング良く料理が届いたので、内心ホッ、とした。この時ばかりは助かったよ。マスター。


「それって!」

「今日のオススメメニュー。『ナポリタン』です」

「うわぁ! 美味そぉー!」

「いただきます」

「そして、こちらは『ブルーベリー増し増しパンケーキ』です」

「おおお! こっちも美味そう!」

「わぁぁーい! 早速食べよっと!」

「では、ごゆっくりどうぞ」


 そして、マスターが居なくなった所で食事を再開したのだった。

 隣に座っているリルドの皿からは、トマトケチャップ特有の酸味がある香りが湯気として漂ってくる。それと、私の斜め前に座っている彼女のお皿からは、ブルーベリーの爽やかな匂いと、パンケーキの甘い香りが、鼻に刺激していく。


「うん。相変わらずここのパフェ、美味しいなぁ」


 だけど、この宇治抹茶パフェが私の中ではダントツに好きだ。

 あ。そうだ。肉まんの時みたいに、もう一度食べたら、過去の事を思い出せるだろうか。と、試しに食べ進めてみたが、思い出せないままでいた。


「えっと、タミコさん?」

「……ん?」

「あ。いや。その、何か悩んでいるような顔、していたので、昨日、何かあったのかと思って……」

「あ! 昨日は全然。大丈夫だよ」


 昨日は確か、シイラさんに『血液型検査をかけて欲しい』て言ってきたんだよね。もしかしたら、私は重要な何かを握ってるだとかそんな節を言っていた気が。


「いや。わたし、お兄ちゃんが、タミコさんに対して、失礼な事を言っていないか、心配で……」

「え!?」

「おいおい。そんな事気にしなくてもへーきだ。アイツのことだ。また『血が欲しい』とか突拍子に言って迷惑をかけてないか心配したんだろ?」

「当たりです。全く……」


 しかし、彼女はパンケーキを頬張りながら、こう愚痴り気味に話し始めたのだ。


「何から何まで『血液型検査をかけて欲しい』とか、血が欲しいとか臓器が欲しいとか、色んな人に言ってるので、あんたは吸血鬼かよ。て突っ込みたくなる程ですよ。はぁ……」

「こりゃぁ。大変だな」

「そうだね。リルド。だけど、何でそこまでシイラさんは、臓器やら、血に拘るんだろう」

「さぁーなぁ。前世、血が大好きな殺人鬼だったんじゃねーの? って俺は内心思っていたがな」

「それにしても、一体どんな目的で?」

「わたしも気になって聞いてみたけど、はぐらかされて、正直ムカついてるんですよ。今のお兄ちゃん、なんか変だ。て」


 だけど、身内のカンナさんまで、あんなに呆れ気味に怒っているのは、妙だ。一体、シイラさん、何を考えているんだろう。


「えっと、実はシイラさん、別の任務に行く前に、こんな事を言っていた気がしたんです」

「え?」


 すると、彼女の隣で聞いていた龍樹君が、神妙な面持ちでカフェオレを飲みながら、私達にこう言ってきたのだ。


「そういえば、僕みたいな未成年って、かなりレアな値が付けられるから、今回の任務は、『かなり儲けられそうだ』と」

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