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マリアナに堕ちたのは、親友ではなく、私でした。  作者: Ruria
真夏のナイトメア編
109/110

現実世界は思ったよりも、深刻になっていました。

「こう、しん!?」


 思わず声を発してしまったが、内容が気になってしまった私は、彼女にこう返信したのだ。



『内容は、どんな風になったのかは分かる? サラッと見た感じでいいよ』



 これで、彼女が深読みしなければ大丈夫だと思うけど、なんでこのタイミングで、更新されたんだろう。


 まさか、ミオ君のクラスメイトが既に……。



――ブーッ。ブーッ。



 即座に返事が来たので、改めて見返すと……。



『更新された分だけ、コピペしておきました。深読みはしていないので大丈夫ですが、その後、お兄ちゃんに止められました』




「あー……」


 なるほど。だけど、シイラさんが止めに入る程、彼女もまた、危ない事になっていたんだ。


 なら、益々早く、本格的に調査を始めないと。


 なので、私は真っ先に目の前にある焼肉弁当を人数分、カゴの中に突っ込むと、レジで会計を済まし、とっとと店を後にした。


 で、歩きながらも送られてきた文章を確認すると、話はこんな展開になっていたのだ。



―――――――――――――――――――――――


 8月35日(もう現在の時刻は分からない)


 現実は考えたくないことだらけの、残酷な世界だ。通知ですら、ストレスの塊で見たくないから消してやるんだ。リセット。リセット。


 でも、ぼくはもう、戻らなくて良くなったから、永遠に夏休みのままだ。永遠に夏休み。永遠に夏休み。


 それと、今日は魔法使いが、仲間に加わったんだ。そいつはとても優秀で、いとも簡単に全属性の魔法を使いこなしてしまったんだ!


 天才すぎてぼく、驚いちゃったよ!

 それと、彼と話してみると、ぼくと同じ理由だった事が分かったんだ。

 彼もまた『現実に疲れちゃったから、少しひと休憩入れたいと思って』てね。


 やっぱり現実にいたら、ロクな事ないよね。いらない人間関係とか考え事とか、付きまとってきてさ、無駄に疲れちゃうから、分かるよ。


 わかるよ。その気持ち。

 ぼくも変な言いがかりを付けられて、理不尽に虐められて、とてもとても苦しかったから。


 だから、ぼくは『現実』にさよならをした。

 家も親が変な宗教に入っちゃって、ぼくのことを放ったらかしにした罰でもあるんだ。

 ぼくが居なくなったことを悲しめばいい。永遠にさ。


 あ。それとさ、ぼくと永遠にずっと、楽しもうよ。永遠にスライムやらモンスターを狩って素材を売ったりさ。共に異世界ライフを楽しもうよ!


 そういえば、彼はこう言っていたんだ。『まるでコデックス・セラ何とかの世界みたいで、奇抜な植物が生えているし、合成のしがいがありそう!』てね。


 この世界観、いいね! て褒めてくれるの、嬉しいな。嬉しいな。


 そうだ。今度は武闘家を仲間にしよう。

 真夏の夜の大冒険、只今進行中……。


―――――――――――――――――――――――


「これ……」


 今度の更新は、あまりにも『現実』も混じっている様にも感じてしまったせいか、直ぐさまに閉じてしまった。だけど一人で見るには、流石に危険すぎるって。


 しかも最後の『武闘家を仲間にしよう』ていうのも引っかかるのよ。まさか、メンコさんやリルド達が狙われている? 


 それに、何だろう。今度のブログはやたらと『リアル』な感じがしたのよね。

 親が変な宗教に入っちゃって。とか、ぼくのことを放ったらかしにした罰。とか、


 まるで『ネグレクト』を受けた子みたいで、被害者でもないのに、何故かとても悲しみを感じてしまう。


 それに今回、更新されたブログの内容、やたらと『永遠』を使っているんだよね。

 しまいには居なくなったことを悲しめばいい。永遠にさ。とか、呪いの言葉みたいで怖すぎるんですけど。


 あと、一番に引っかかるのが、『魔法使い』が誰か。てことよね。

 そういえば、ミオ君から連絡が来ない。てカンナちゃんは言ってたのよね。


 いやまさか。だけど仮に本当だとしたら……。

 でも、断定は出来ない。全てはサーフェスに戻ってからにしよう。


 静かに自分に言い聞かせると、足早にサーフェスがある雑居ビルへと向かう。


「……誰もいないね」


 周囲を確認してからエレベーターの閉ボタンを押し、付近にあるカードリーダーに会員証を翳して。


 慣れた手つきでやりこなすと、無事にサーフェスへと戻ったのだった。ちなみに片手には、人数分の焼肉弁当が入ったコンビニ袋を手に持ったままだ。うぅ。重たい。


「ただいまぁ……」

「おぉ! タミコ氏ぃ! 戻りましたか!」

「うん。みんなの夕飯分も買ってきたけど、何かあったの?」

「そうですな! あれからかなり進展がありましてな! それと、焼肉弁当、ゴチですぞ!」

「食べて食べて。ゴエモンさんとメンコさん、リルドの分もあるけど、みんなはどこに?」

「それなら二人はトレーニングルームにいましたぞ。リルド氏は退院して早々、ここに戻った途端に即座に筋トレしてて精が出ますな! 」

「あはは……」


 こっちはこっちで、相変わらず平和そうで良かった。

 さて、弁当置いたら彼の所に行かなきゃ……。


「じゃあ、行ってくる」

「お? 早速彼氏の所に行くんですな! いいですぞ! デュフフフ!」

「いやいや。彼氏って……」


 だけど、グソクさんはニヤニヤしながらも、こっちを見ては相変わらず茶化してくるので、私は呆れ気味に答えつつ、事務室の奥にある扉からトレーニングルームに向かうことにした。


「……あっ」

「おっ! タミコちゃんおっかえりー!」


 すると、ランニングマシンに乗りながらも気さくに声をかけてきたメンコさんがいたのだ。

 格好もトレーニング仕様なせいか、オレンジ色の半袖Tシャツに青い短パンという、軽い姿になっていたし。


「メンコさん!? それに……」

「……タミコか。おかえり」

「リルド……、ただ、いま」


 彼は丁度筋トレを終えていたのか、スポドリを飲みながらも軽いストレッチをしていたのだ。

 彼もまた黒い半袖短パンという、ラフな格好だ。


「あの……、退院して早々、体動かして平気なの?」

「あぁ。越智さんやじーさんも『一旦、画面から離れて体を動かすのはいい事だ』とか言ってたからな」

「あはは……」


 私は思わず空笑いが出てしまったが、まさかの二人から『体を動かせ』て言われていたのは驚いた。でも、無理だけはしないでよね。


「あ。二人とも、焼肉弁当を買ってきたから、後で事務室に来て」

「おっ? ありがとぉぉー! 焼肉弁当だって!?」

「肉!? 肉か!」


 すると、焼肉という単語を聞いて、彼は思わずスポドリをテーブルに置いたまま、事務室へ行こうとしていたのだ。


 行動そのものがまるで、ご飯と呼ばれて喜ぶ犬みたいなんだけど……。


「ええっと、リルド……」

「あー。入院中は、めっちゃ栄養バランスが考えられた食事だったけど、俺的には盛りに盛った肉が食いたかったんだ」

「それで……、なるほど」

「だから、タミコ。ありがとな」

「あ。あぁ……」


 しかし、彼は満面な笑みでお礼を言うと、そそくさとトレーニングルームを後にしたけど、私は呆気にとられたままだ。


 どんだけ肉が食べたかったわけ?

 でも、元気になれたなら、それはそれでいっか。


「あーあー。すっごい分かりやすいよねー。スポドリそこら辺に置いたまんま、速攻肉のところに行ったよ彼」

「あはは……」

「ほんっと、その辺ナイトとそっくりって言うか……」

「流石双子。て感じですね。遠くに離れててもシンクロすることもあるんだ……」

「そーそー! でも、元気になってよかったよね。アタシも内心心配してたし」

「ですね。私もです」

「さて。食べよっか!」

「はいっ!」


 呆れを通り越してもう笑うしか無かった私達は、共に事務室へ戻る事にした。


「さて、たーべよっ、て……」

「ちょっと。何!? この状況!」


 すると、事務室には何故か、焼肉弁当を豪快に頬張るリルドと、何故か居なかったはずのゴエモンさんが、二人揃って食べていたのだ。


「タミコ氏、リルド氏とゴエモン氏が豪快に食ってますぞ」

「そうみたいですね。ええっと……」


 半分呆れつつ、私とメンコさんはそれぞれ焼肉弁当を持つと、席に座って食べることにした。

 それにしても、こうやって並ぶと、二人はまるで親子みたいで妙に微笑ましく感じるのよ。


「おっ! タミコか! 焼肉弁当、ありがとな!」

「あの、ゴエモンさん……」

「ん。うめぇーなこりゃ! 実は久々に肉が食いたくなってきてな。ちょうど良かったぞ!」

「それなら良かったのですが……、その、えっと」


 だけど、ゴエモンさんの勢いが相変わらず強めなせいか、たじろぎながらも、こう言う事にした。


「さっき帰ってきた時はいなかったのに、どこに行ってたんですか?」

「んあ? あー。さっき、外で越智と電話してたんだよな」

「そうでしたか……、って、越智さんと!?」

「あー。そうだ。退院予定日より、早めにリルドをこっちに寄越したのも、本格的に『真夏のナイトメア』の調査をして欲しいみたいでな」

「と言うことは、こちらが思った以上に、かなり深刻な事になっているのですな」

「その通りだ。こうして5人揃って夕飯食ってるのも、『ブログの事』を考えないようにするためだったりな」

「なるほど。それで……」


 狭い事務室で5人、こうやって囲ってご飯を食べてる訳か。

 でも、ごめんなさい。私、あれからカンナちゃん経由だけど、ブログの更新、見てしまったの。

 その内容を思い出しながらも、私は密かに焼肉弁当を食べていたが、投稿主はもしかすると、こんな団欒を望んでいたり……。


「実は、私からも……」

「もしかして、あれから進展あった?」

「メンコさん……」

「進展あったってどういう事だ。もしかして、俺抜きで何かコソコソしてたのか?」

「ちょっとリルド! まさか、タミコちゃんと一緒じゃなかったからって、嫉妬してる訳?」

「ちげーって! くそっ。ごちそーさま!」


 彼はそういうと、そそくさに事務室から出ようとしていた。


「おーおー。ちょっと待て。リルド」

「んあ? 何だ? ゴエモンさん」


 しかし、ゴエモンさんは彼を呼び止めると、私に視線を向けてこう聞いてきたのだ。


「その、タミコ」

「はい」

「進展の内容、とても気になるからよ。ワシらにも詳しく、聞かせてくれねぇか?」

「はい。実は、ブログがあれから『更新』されました」

「ええっ!? また更新された訳!?」

「はい。カンナちゃんから見せてもらった更新分の他に、新たに更新された分がありまして……」

「あー。あの『現実逃避』のブログか?」

「え? もしかして、内容見たの?」

「入院先で軽く。な。でもその内容で1個だけ気になることがあってさ」

「それ、私も言おうと思ってたんだけど、どうする? 先言う?」

「えっ? いや。でも、タミコの新たに更新されたというのも気になるんだよな」

「ええっと……」


 結局、誰が先に言う? という展開になってしまったが、冷静に濃い甘だれが付いたカルビを頬張りながらもこう言ってみる事にした。


「じゃあ、先に私から」

「おー。頼んだ」

「えっと、更新されたブログの内容はこんな感じでした。『コデックスという村に着いて、クエストをこなしていたけど。1人だとクエストを受けるのが大変だから、魔法使い、武闘家、勇者を募集中』てとこかな」

「それはアタシも見た内容ね」

「で、その次に更新された内容が……」


 そして、私は甘だれまみれのカルビ肉を頬張りつつ、再度報告する事にした。


「『今日は、魔法使いが仲間になったんだ。彼もまた現実に疲れちゃったから、少しひと休憩入れたいと思って』て言ってたらしい」

「ふーん。魔法使いが仲間になった。なぁ……」

「でも、ほぼ現実味が強い文章でした。実はカンナちゃんがコピペして送ってくれたのがあるので、見てみますか?」

「えぇ。是非、みんなにも見せて。一斉なら取り込まれずに済むと思うから」

「メンコさん! えっとその、ありがとう、ございます。確か……あ。これです」


 なので、私は今いる4人に、恐る恐る先程の文を見せることにした。


「うひゃぁ……。思った以上に深刻な事になってますな」

「そうだよね。いきなり現実は残酷だ。て言ってきたと思えば今度は『永遠に異世界ライフを満喫しよう』みたいな事を言ってるし。何なのこれ」

「しかも今度は『武闘家』を探してるみたいで……」

「なるほどですな。実はそれに関して、進展があったというのがありましてな。ゴエモン氏。例の件、言っても大丈夫ですかな?」

「構わんぞ」

「ということで、真夏のナイトメアに関して、幾つか分かったことが出てきたのが今回の進展でしてな」


 彼はそう言うと、焼肉弁当を軽く頬張りつつも、説明する準備をしようとしていた。


「へぇ。じゃー、ぱーっと簡潔に教えてよー。ぱぱぁーってさー!」

「あのですな。メンコ氏。物事というのは慎重になるべきでして……」

「アタシさ、毎度毎度くどくどと説明が長ったらしいの、やなのよ! 聞く側としては勿体ぶらずにぱっとぱぱっと話して欲しいの。分かる?」

「はぁー。言いたいことは分かりますが、少し待ってて下さいな。ワイ、まだ食べてる最中でそこまで急かされたら、喉詰まりますぞ」

「あはは……」


 だけど、こんな風に冗談を交えながらやり取りできるのは、面と向かって話してるから出来る事なのよね。


 あんなブログの中にいたら、役割を振られて一生こんな事が出来ないと思うと、少しだけゾッ。としてきた。


「ったく。メンコは何に対してもせかせかしすぎだ。少しは待つことも覚えろ」

「えー。待ってたら時間が勿体ないじゃーん。今この瞬間でも、助けを求めてる人がいるかもだし」

「かと言ってな、せかせかしすぎたら、何れ身を滅ぼすぞ」

「はぁー。とりま、気をつけまーす」

「そうですね。ゴエモンさんの言う通りです」

「タミコちゃん!?」


 なので、私も最後のカルビ肉を食べて咀嚼すると、こう話を切り出す事にした。


「身を滅ぼしたら、『彼氏』が一番悲しむので……」

「あ!? ぁあああー! 何でみんなの前でそれ言うかなぁ!? タミコちゃーーん!」

「え? 事実を言っただけです」

「……はぁ。タミコは思った事、言い過ぎだ」

「そう言うリルドは、言わなさ過ぎ。あんまり抱え込みすぎると、また自滅するよ」

「うるせぇ。次からはきちんと言うから、もうそこまでにしろ」

「うん。分かった。ていうか、もう食べ終わったの? 早すぎない?」

「んあ? あー。久々の肉のせいか、美味かったからな。いつの間にか消えちまった」

「消えたって……」


 でも、早く食べちゃうほど、美味しかったんだね。安堵しつつも、私も焼肉弁当を完食したけど、またこうやってみんなと囲って食べたいな。


 昔の私だと、こんな事ができるなんて、想像できなかったもの。


「やれやれ。4人とも大丈夫ですかな?」

「あー。ごめんね。グソクさん」

「わりぃ。ちゃんと話聞く」

「大丈夫だよー。早く聞きたぁぁい」

「おー。言っていいぞ」

「では、進展というのはですな……。病院で20名ほど、運ばれましてな。しかも全員『未成年』で、龍樹君達が通ってる生徒だったのですぞ」

「えええっ!?」

「ちょっと待って。もしかして、学校に来なくなったっていうのは……」

「あぁ。確実にあのブログのせいだろうな。現に越智の野郎がこっちに依頼を寄越してくる程だ。かなり深刻になってるだろうよ」

「それに、俺も退院する際に見たけど、運ばれた患者ら全員『片手にスマホ』を強く握りしめた状態で運ばれていたからな」

「何それ……」


 すると、グソクさんの口から、とんでもない言葉が出てきたけど、スマホ片手に持ちながら運ばれてる状態は流石に異常だって。


 つまり、現実ではログアウト。異世界ではログイン状態って事よね。怖すぎるって。


「それにですな……」


 そして、焼肉弁当を食べ終えたグソクさんが、真剣な眼差しで私達を見ると、こう告げてきたのだ。


「あのブログは何故か、閲覧者が『未成年』しか影響が出ない様になっていましてな。ワイの様な大人が見ても、取り込まれないみたいですぞ」

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