久しぶりの再会に、話の花を咲かせてました。
「ええっ!? ちょっと待って!? あ。ごめん……」
思わず大声で叫んでしまったせいか、私達が今いる場所が『エイトレイブン』という、コンビニの店内にいる。という事をすっかり忘れていた。
そのせいか、近くにいたお客さんが、一斉に私達に視線を向けてきたのだ。
うわぁ。どうしよう。とてつもなく恥ずかしいんだけど!
「わたしもこんな所で……。すみません!」
「いやいやいや! 謝らなくていいよ! それより、ここで買ってからツブヤキに寄らない?」
「あ! そうですね。もしかしたら、熊野君があそこで働いてるし! 何か知ってるかも。それと、今はマスターの所に同居してる。って彼から直接聞きました!」
「あー……、そうなの!?」
「はい。凄いですよね。彼。それで勉強もそこそこできるから羨ましいっていうか……」
「そっかぁ……」
そういえば、ミオ君、学業に専念しながらもツブヤキでアルバイト、しているんだよね。
偉いなぁ。両親が居なくなってから、自分の足で生きようと、一日一日を頑張っているんだから。私も見習わなくちゃ。
でも、テスト期間中に出回った『ブログ』で、高校が休校レベルに追い込まれた? 何で?
その辺がかなり奇妙だけど、店内で話すことでも無いか。
「とりあえず、外に出よっか」
「そうですね。はい」
なので、適当にお会計を済ませた私達は、コンビニを出て、ツブヤキに向けて歩き始めたのだ。
ちなみに買った飲み物は、私はいつもの抹茶オレ。カンナちゃんは、飲むブルーベリーヨーグルトだ。選択が何とも可愛らしい。
「そういえば、カンナちゃんは誰と暮らしてるの?」
「わたしですか? えーっと、お兄ちゃんが住んでいるマンション内ですね。どこの階とは言えませんが……」
「……は?」
空いた口が塞がらず、飲む手を一瞬止めてしまったが、ちょっと待って。女子高生でタワマンに一人暮らし……。だと!?
「えっと、その、家賃は誰が?」
私は気になってしまって興味本位で聞いてしまったが、家賃だけでも月数十万はかかると思うのよ。どうやって?
「あ! そこはお兄ちゃんが払ったり、昇おじさんに免除して貰ってます! 流石にわたし一人じゃ払えませんもの!」
「あー、そうなのね。って、昇おじさん?」
「えっと、簡単に言うと、龍樹のお父さんですね」
「へぇー……。それで」
やっぱり、その辺はちゃんとしてるのね。
でも、オートロック付きのタワマンなら、誘拐される心配は無いから、安心、かな?
だけど、この前の真生くんみたく、シイラさんの誕生日が近いから、プレゼントを買いたくてこっそり抜け出す事をしなければ。の話だけど。
「うん。それに、昇おじさんは、わたしやお兄ちゃんの事もひっくるめて、色々と助けてくれたりしていたから……」
「なるほど……」
そういえば私、カンナちゃん自身のこと、よく知らないのかもしれない。
しかも、ミオ君や龍樹君とは普通に遊んでるから、どうも傍からは『男嫌い』には見えないのよね。普通の女子高生。みたいな。
私は手に持っていた、コンビニカップタイプの抹茶オレをストローで軽く飲みながらも話を聞いていた。
うん。仄かな茶葉の風味が口の中いっぱいに広がって美味いなぁ。後でフグトラさんに勧めとこっと。
「ところで、タミコさん」
「ん? どうしたの?」
「その、例のブログの件で、依頼をする事って可能でしょうか?」
「んー。内容にもよるけど、何でそれが休校レベルにまで行ってしまったのかは、とても気がかりなのよ」
「やっぱりそこ、思いますよね。昇おじさんに相談しても『科学的に証明できない』て言っていた程なので……」
「科学的に……、んんん!?」
ふと、同じ事をリルドから聞いたばかりなのを思い出した私は、思わず首を横に傾げてしまったのだ。
「どう、しました?」
「あ。えーっと……」
だけど、彼女に『真夏のナイトメア』の事を言うべきかどうか、悩んでいたのも本当だ。
変に彼女に言って落ち込ませてもダメ。
その休校に追い込まれるブログが、あの異世界に渡れるという、『真夏のナイトメア』なのかどうかもまだ、確証が掴めない。
それに、グソクさんが言っていた『あのブログは人が書いたものじゃない』というのも、かなり引っかかるのよ。全部が引っかかる。
はぁー……。ゴエモンさんは『今日一日画面を見ずに過ごせ』と言ってきたけど、気になり過ぎて無理だって。
「大丈夫だよ。その。何でもない」
「ふーん……」
なので、私は苦し紛れに抹茶ラテを飲みながら、そう彼女に答えた。
彼女は飲むブルーベリーヨーグルトを軽く口にしながら、相槌を打っていたが、これで大丈夫だろうか。
頭の中で言いたいことを我慢しながら歩いていたら、いつの間にか、喫茶店ツブヤキの前に着いてしまったのだ。
「じゃ、入ろっか」
「そうですね。でも、タミコさんとこうやって、ガールズトークが出来るなんて! 嬉しいなぁ~!」
――カランカラン
ふと、店の入口で天真爛漫ではしゃぐ彼女を見ると、やっぱりシイラさんの妹だな。て思ってしまう。
前にレンタルルームで真生くんとイチャコラしてた時も、確か玄関前だった気が……。
兄妹揃って、建物の入口ではしゃぐ血筋でもあるのだろうか。
「いらっしゃいませ。おぉ。タミコさん」
「マスター。今日は2名で」
受付カウンターの方に、マスターがいたので、常連風に声をかけてみることにした。
「かしこまりました。実はメンコさんが此方にいらっしゃいまして……」
「えっ!? メンコさんが?」
「うわぁぁ! 本当ですか!?」
「えぇ。一度、通していいか、彼女に聞いてみますね」
「あ。はい……」
すると、メンコさんが既にいるとの話を聞いたので、マスターからの返事を待つことにした。
「わぁぁぁ! 嬉しい! どうしよう! 今日一日学校休んで良かったかも!」
「いやいや。でも『平日』だからね。今日だけ」
「ぅん! でも、『話した』という思い出は一生残るからねっ! 憧れのメンコさんに会えるの、嬉しいなぁ~!」
「そっか……」
そういえばかなり前に、シイラさん、こう
言ってたよね。
『実はカンナ、メンコさんに憧れて、護身術やらの武闘系を習い始めた。と言う程の熱烈なファンなんだよね。彼女みたいに正義感あって、その力を正義のために使える様な、かっこいい女性になりたい!』って。
そっか。この子もまた、高校生だけど、『カラマリア』に属してる子でもあるんだ。なら……。
「タミコさん」
「はいっ!」
「彼女から『是非ともこっちにおいで』と言っておりましたので、お二人共、ご案内致します」
「は、はい!」
「わぁぁあ! 嬉しいっ!」
考え事をしていたら、マスターが声をかけてくれたので、彼の後をついて行くことにした。
「やっほー! タミコちゃん! って、ん??」
「あっ。メンコさん、また会いましたね」
「ええっと……」
「確かにそうだけど……、その可愛い子は誰?」
すると、彼女は例の特等席に座って、見たことの無い飲み物を優雅に飲みながら、私に聞いてきたのだ。
平日の昼間のせいか、彼女が飲んでいる飲み物は、レモンサワーの様にも見えるけど、香りはマスカット。何だか不思議な匂いがしていた。
店内には余り人はいなく、席には私とカンナちゃん、メンコさんだけ。
「あっ。あの。お兄ちゃんが前にお世話になりまして……、えと、初めまして。ですか? あれっ!? どうしよう! タミコさぁ~ん!」
彼女はかなり緊張していたせいか、何故か隣の私に助けを求めてきたのだ。
「かか、カンナちゃん!? 大丈夫よ!? えっと、メンコさん、改めて自己紹介しますと、この子はカンナちゃんて言いまして、『シイラさん』の妹です!」
「なるほど、あのシイラの……、えっ!? うそぉ!?」
すると、メンコさんは飲む手を止めながら聞いていたが、かなり驚いた表情をしている。
それはそうだよね。
だって、あの倫理観がバグったお兄さんから、こんな常識ありそうで、美人な妹が現れるなんて、全く想像がつかないって。
「えっと、本当です。ほら。顔見れば分かるでしょ?」
「あの……、そんなにジロジロ見られるとその……」
「……はっ! ごっめんねっ! 確かに似てるわね。特に目元が! うん!」
「そ、そんなにお兄ちゃんに、似てますかね? かなり照れちゃいます。あはは……」
「かっわいいわね! ささ。タミコちゃんも、カンナちゃんも、向かい側の席に座ってよ!」
「あ、ありがとう、ございます!」
「では……、あ。マスター」
そして、彼女に笑顔で促されるがまま、私とカンナちゃんは向かい側の空いてる席に座ると、先ずはマスターを呼んでみることにした。
「はい、何でしょう」
「私はいつもので。カンナちゃんは何にする?」
「えっと、わたしはこの『ブルーベリージュース』で」
「かしこまりました。では、お持ち致しますので、少々お待ち下さい」
「……」
そう言って彼はその場から立ち去ると、私達の間には、何故か沈黙が流れてしまった。
「……」
メンコさんはというと、こちらの反応を伺うかの様に、不思議な飲み物をストローで軽く飲んで待っている。
「……」
カンナちゃんは憧れの人を前にしているせいか、かなり顔を真っ赤にし、俯いていたのだ。
「えっと、タミコちゃん」
「あー……、はい」
「早速本題に入ろうかと思うけど、大丈夫?」
「もしかして……、『アレ』の事ですか?」
「うん。カンナちゃん。だっけ?」
「……ふぁぁあ! はいっ! えっと、『アレ』とは?」
隣にいる彼女はと言うと、突然呼ばれたため、変に声が裏返っては首を傾げるという、不思議な行動をしていた。
「そうだね。実は今、サーフェスでは、『アレ』の調査をしようとしている所でね。本格的な調査の前に、ある程度の『情報』が欲しいわけよ」
「情報、ですか?」
「うん。その『アレ』ていうのが、『真夏のナイトメア』ていう夢日記みたいなブログ名なんだけど……」
「真夏の……、ええっ!?」
しかし、それを口にした途端、彼女は突然、驚きながらも両手で口を塞いでいたのだ。
「ちょっと待って!? まさか、例のブログって……」
「はい。『真夏のナイトメア』で間違いないです!」
『えええええっ!?』
やっぱり。と思っていたけど、予想以上に深刻な事になっているのを聞いた私達は、思わず声を揃えてしまった。
「ちょっと、ゴエモンさんが言ってる事よりも、かなり酷い事になっているじゃないの!」
「はい。しかも、そのブログを見たわたしのクラスメイトの半分以上が、学校に来なくなってしまったんです」
「これは……、とても危ない事になったわね。だから越智さんがこっちに依頼を寄越してくるわけね」
「えっ!? あの、昇おじさんが、サーフェスに依頼を出したんですか!?」
「そうなんだよ。私も信じられない。て思っているんだけど……」
そう。あのオカルト系に無縁そうな、あの越智さんから『異世界に行けるブログ』の管理人を探せ。という依頼をこっちに寄越しているんだもの。正気じゃないって。
「まぁ。それはそうかもしれないわね。んで、カンナちゃん。だっけ?」
「は、はい! えっと、メンコ、さん……」
「メンコでいいよ。遠慮なく言って」
「はい。その、例のブログなんですけど……」
すると、カンナちゃんは恐る恐る、スマートフォンを開くと、ある画像を見せてくれたのだ。
そこにはこう書かれていた。
―――――――――――――――――――――――――
8月34日(9月■日)
そして、異世界を謳歌して旅をしていたら、ぼくはとある村に着いた。
その村の名前は『コデックス』で、20人ほどの人が、自給自足の生活をしながら過ごしていたんだ。
そこの村人からのクエストを受けながら、ぼくは異世界生活を満喫していたけど、現実より楽しいな!
満喫満喫。異世界生活は楽しいな。満喫満喫。異世界生活は楽しいな。
だけど、仲間がいた方がもっと楽しそうだ!
一人じゃクエストを受けるのも大変だし、なんせ、ソロだけだと、今は良くても、後々、限界が来るからさ。
なので、今から仲間を募集しちゃおうかな。
魔法使い。武道家。勇者。募集中!
だから、その間にぼくが『勇者』として、進めておかないとね。勇者として。勇者として。勇者として……。
――――――――――――――――――――――――――
「……というブログが、今朝、更新されたんです」
「……ていうか、それを見て、カンナちゃんは無事だったの!? あ。無事だからここにいるもんね」
「そうだよー。って、タミコちゃんこそ、大丈夫? 話ついてこれてる?」
「あ。うん。何とか。メンコさん。ごめんなさい」
だけど、先程のブログが更新されていたなんて、知らなくて頭で処理が追いつかなくなっていた。
だって、投稿主は『異世界』を選んだ訳だから、ブログの更新だなんて、『できない』はずだ。なのにどうして『更新』が出来ている?
益々謎が深まっていくばかりだ。
「あはは。でも、村の名前がコデックスで、村人は20人。どういう意味だろう」
「20人って……、学校に来なくなってしまったクラスメイトの数と一致しているんですけど……」
「……それ、本当に!?」
「はい……。それに、熊野君とはクラスが違うのですが、今朝から連絡が取れなくて、心配なのです」
「それは、確かに心配ね」
「はい。運が良ければ、ここでアルバイトをしているって聞いたので、会えると思って、ここに来たのです」
「そういう事。メンコさん」
「大丈夫? タミコちゃん。実は彼女、今朝方そのブログを見て、まだ混乱している状態なのよ」
「えっ!? タミコさん大丈夫ですか!?」
「うん。グソクさんという仲間が、たまたま私の近くに居たから、その人に遮断されて、何とか正気を保ててる状態なの」
「それは、大変でしたね」
「でも、龍樹君は大丈夫なの? アタシ的には彼、こういうのが好きそうなイメージがあるけど」
「うーん。龍樹は確かにこういう話は、好きは好きだけど、意外とお堅い所があるんだ。文面がちゃんとしてない本や、展開が変なモノは基本『読まない』人だし」
「へぇー……」
「それに、彼は……」
「お待たせしました。こちらは抹茶ラテです」
「あ。はい」
すると、彼女がいいかけた時、マスターがタイミング悪く、飲み物を持ってきたのだ。
「こちらはブルーベリージュースです。ごゆっくり」
「あっ! ちょっと待ってください! マスターさん!」
「ん? おや? よく見たらカンナさんではありませんか。いつもミオと一緒に遊んでくれて、ありがとうございます」
「あ。いえいえ。その、彼は大丈夫ですか?」
「大丈夫、とは?」
彼は不思議そうに首を横に傾げていたが、そっか。マスターもミオ君から何か聞いてないかな。
だから、画面が見れない今、直接聞くのはありかもしれない。カンナちゃんナイス!
そう思いながら私とメンコさんは、彼らに視線を向け、こう相談してみたのだ。
「あー。実はマスター。今朝から連絡がつかないみたいで、彼女、困っているんだ。アタシからも何とか情報が欲しい所なんだけど……」
「私からもお願いです。『真夏のナイトメア』について、どこまで情報が回っているのか、教えて下さい!」
「そうでしたか。そういう経緯が。あ。そういえば、彼ならこんな事を言ってましたね」
「なんて?」
すると、彼はボソッと恐ろしい事を口にし始めたのだ。
「実は最近、『とあるブログ』を読んだ後、学校内で回すのが流行っているらしく、ミオのクラスメイトも何人か学校に来なくなってしまった。と、聞いたことがありますね」




