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マリアナに堕ちたのは、親友ではなく、私でした。  作者: Ruria
真夏のナイトメア編
105/110

依頼人が、まさかの■■■でした。

「えっと、取り込まれそうになったって、どういう事?」


 単に私は調べ物をしていただけなのに。

 まさか、無意識に『読み進めてしまった』て事?

 頭の中で混乱する中、彼に質問を投げかけていた。


「そうですぞ! 事務室に入ろうとしたら、タミコ氏が猫背になりながらも、画面をじーーっと見つめていたので、慌てて強制終了させたのですぞ!」

「ええっ!? まだものの8分しか経ってないのに……」

「その『8分』が今回の『命取り』なんですぞ!」

「いや。意味が全くわからないんだけど、本当にどういう事?」


 だけど、全く理解が追いつかなかった私は、更に彼に聞くことにした。


「そうですなぁ。事細かく言うと、このブログ自体、『奇書』みたいなものでしてな」

「はぁ。奇書……」


 全然よく分からないけど、『読んだら死ぬ』とか『呪われる』とか、『狂う』とか。そういった類なのかな。

 呆然と彼の話を聞いていたけど、何処か上の空の様にも感じていた。


「まぁ、ひとまず、冷静になるのが一番ですぞ! ほら! 昨日買ってきたので、良かったら飲んでくださいな!」

「あっ。は、はい! ありがとう、ございます……」


 しかし、彼が冷蔵庫からペットボトルに入った抹茶オレを取り出し、私に渡してきたのだ。


 だけど、渡されるまでの間、異世界か現実か、曖昧気味だったのは否定できない。未だに視界がグラつく感覚がするのよね。


「というのも、実はワイ、あれから密かに調べていたのですぞ。まぁ、ああいう奇書や禁書類は読む時『深読み』するのではなく、『浅く軽く』読めば、大丈夫だったりするものでしてな!」

「はぁー……」

「しかし、このブログ形式にする事によって、人の目に留まりやすくなって、尚且つ『深読みしやすくなって』いるのも問題ですな」

「確かに、集中したら読み進めてしまうよね……」


 まるで小説投稿サイトを閲覧するかの如く、好みの話と展開が出てくると、無我夢中で下までスクロールして、時間を貪ってしまう。


 そんな感覚に似ていたのだ。


「それと、その奇書みたいなブログを読んでて、何か感じたことはありますかな?』

「感じたことですか? ええっと、それに関しては、同じ言葉が何度も羅列していた感じと、『人称』がバラバラだったのが、とても気がかりでした」


 あとは、私から見たら、文章構成は上手い方だと思うけど、中には『理解できない』と言ってブラバする人もいるかもしれない。

 それほど『癖がある』ブログだったのは本当だ。でも、これを書いた人は、どんな人だったのだろう。


「ふむふむ。人称がバラバラ。同じ言葉が羅列……。なるほどですな」

「やっぱり、何か……、あるんですか?」


 両腕を組んで考え事をしている彼に、恐る恐る聞いてみたが、「デュフフフ」と例の不敵な笑いをすると、こう言い始めたのだ。


「タミコ氏。間違いなく、『真夏のナイトメア』は奇書を『模した』ブログですな。短直に言えば、『現代版の奇書』と言った所でして」

「現代版の、奇書?」

「ですな。ところで、タミコ氏は本を読んだこと、ありますかな?」

「うーん。小中高と、図書室行って読んだりはしてたけど、今は読まなくなっちゃったからね」

「なるほど。そういう人ほど、読むと余計に没入感に襲われやすいのですぞ」

「あー。そう言われてみれば……」


 確かにあの時、ブログを見た感覚は『久しぶりに良作に出会えた』様な衝動に駆られた気がしたのよね。


 本当に危なかったんだ。私。


「それに、今はみんな、スマホ一台あるだけで、電子書籍たる読み物が、手に取るように読めるいい時代になりましたな!」

「確かに……」


 いい時代にはなったけど、その分『炎上』やら『誹謗中傷』等の闇が多くなったのも、本当の事だ。


 彼の話を真剣に聞きながらも、私は少しずつ、現実を取り戻していく。


「実はワイ、そういった(たぐい)の物を密かに読み漁っていましてな」

「えっ!? まま、まさか……」


 メンコさんは作者だとしたら、グソクさんは『読者』ていう事!?

 もしかして、サーフェスの従業員の皆さんは、『活字』が好きなのかな。後でゴエモンさんに聞いてみよっと。


 だけど、リルドが小説みたいなのを読んでいるところ、見たことないんだよね。


 ていうか、アイツ、本とか読むの?


「特にこの、『なろう系』のような話も好きでしてな。成り上がりやらざまぁ系やら、沢山の展開が書かれた小説に出会える投稿サイトを作った人は、ワイ的には正に神だと思っておりますぞ! デュフフフフフ!」

「そう、かもしれませんね……」


 それこそ、正に『創造神』という事ね。

 あぁ。メンコさんの事じゃないよ。

 ガチの『創造神』ね。うん。


 私は冷静を取り戻す様に、抹茶オレを飲んで体内へと取り込んでいく。


「たっだいまぁ~。て、あれ? タミコちゃんどうしたの? それに、この青い布……」


 すると、タイミング悪く、メンコさんが帰ってきたが、何故か私の目の前にある、覆われた青い布を取ろうとしていたのだ。


「おおっと! メンコ氏! それは捲ってはなりませんぞ!」

「ええっ!? どーして? 何か爆弾でも仕掛けられている訳?」

「それは無いですが、見たら『正気で帰って来れなくなる』ブログですぞ!?」

「なーにそれ? 逆に気になるんだけど! ちょっと見せて!」

『ぁああああ!』


 しかし、彼女はグソクさんの制御を振り切るかのように、青い布を捲ってしまったのだ。


「ふーん。何だこれ。変なブログぅー」


 だけど、彼女は文字を追う前に一瞬だけ、画面を見ると、再び青い布を被せ、こう言い放ったのだ。


「なーんか、『人称』が全部ズレてて読みにくいし、同じ言葉も繰り返しているし、全体的に『作者の趣味全開で書きました』みたいなブログよね、他人に読ませる気、ほぼゼロだもん。これ」

「ほえー……」

「オマケに内容もまた、よく見かける異世界に飛んでチートの能力を得る展開に似ているし。オリジナリティがないって言うか……」

「うぇぇえ……」


 だけど、メンコさんが、あまりにも真面目過ぎる回答をしてきたものなので、近くにいた私やグソクさんは唖然としてしまったのだ。


「めめ、メンコ氏……。まさか……」

「あ、あー! あはは。恥ずかしいなぁ! まさかこんな感じで、読者目線で作品を評価するなんて思ってなかったからさぁー」


 そう言うと彼女は「近くのコンビニで買ってきたから、二人とも食べなぁー」て言って、買ってきたものをドン。とテーブルに置いてきたのだ。


 中身は肉まんやらブリドーやら、ありとあらゆる物が沢山買われていたが、リルドいないのに全部は食べきれないよ。もう……。

 

「でも、あの変なブログ、タミコちゃんみたいに『深読みしてしまうタイプ』の人ならハマりやすいのかもね~。あとは『今どきの高校生』とか」

「それもまた危ないですな。高校生の立場で考えると、今は夏休みに入る直前ですぞ」

「そういえば……」


 改めてスマホで日付を確認すると、7月15日。

 スープ事変があったのが7月9日だから、あれから一週間近く経っているのか。


 そういえば、あれから全く会ってないけど、カンナちゃん、元気にしてるかな。

 なので、シイラさんにライムを送ろうとした矢先……


「よっ。お前ら」

『ゴエモンさん!?』

「ちぃっと、めんどくせぇ依頼が入ったけど、行けるか?」


 何故かゴエモンさんがアンティーク調の扉からひょっこりと顔を出すと、私達に依頼を出してきたのだ。


「大丈夫ですが、その、めんどくせぇ依頼って……」

「それがだな。『真夏のナイトメア』というブログの管理人を探して欲しいって言うのが入ってな」

『ぅええええ!?』


 私達三人は思わず驚いてしまったが、今、正に取り込まれそうになった人間がここにいるんだけど!?


 しかも、今度は『管理人の特定』ですか。

 とてつもなく厄介な依頼な気がするんだけど。


「しかも、依頼主はあの『越智』の野郎だ。何を考えてんだか……」

「ふぁっ!? はぁぁぁああ!?」


 私は二度驚いてしまったけど、あの越智さんが?

 幽霊とか都市伝説系とは無縁そうな、あのカラマリアのトップの、越智さんが?


 人違いじゃないかと思ったけど、こんなオカルトチックな依頼まで出してくるのは斜め上過ぎるって。


「ほぉー。ゴエモン氏。その件で気になる事を発見したのですが、報告しても良いのですかな?」

「おぉ。なんだ? かなり気になるが……」

「このブログ、どう見ても『人が書いた様には思えない』んですぞ」

「え? そのIP何とかで割り当てられないの?」

「いやいや。メンコ氏。それができるのは『別人か同一人物』かの違いだけで、『人間か知的生命体』かの違いまでは分かりませんぞ!」

「ふーん……」

「でも、『人が書いた様には思えない』って……」


 何だか不気味な気がするんだけど。

 私はコンビニの袋に入った肉まんを取り出し、もぐもぐと頬張っていたが、知的生命体かぁ。


 いやまさか、『AI』が書き込んだ訳では無いよね?


 様々な疑問が脳裏を浮かんだけど、一応報告しとかないと。


「えっと、ゴエモンさん」

「お? タミコどうした?」

「実は先程、例のブログを読んでいたら、何者かに『選択を迫られた』気がしたんです」

「なな、何ですと!?」

「ん? どういう事だ?」

「……」


 グソクさんやゴエモンさんは聞き返していたが、メンコさんは両腕を組んで暫く黙り込んでいた。


「はい。実は離席をしようと、電源ボタンを押したのですが、いつの間にか押しても消えなくなってしまって。そしたら、『続きを読まないと』て思ってしまって、いつの間にか前のめりになって……、はっ!」

「どうした? タミコ」

「実は……」


 なので、先程リルドが言っていた


『自分の子供が〝真夏のナイトメア〟というサイトを見た途端、何故か倒れたり、画面に夢中になって何度声をかけても無視されたり、オマケに取り上げようとしたら、襲われた』


 と言っていた事を思い出した私は、それも兼ねて報告することにした。


「そんな事が病院で。はぁ……」


 すると、メンコさんはため息をつきながらも、こう説明し始めたのだ。


「恐らく、それを読むと、続きがどうしても気になってしまってね。『フロー状態』が生まれるのよ。依存とはまた少し違うけど」

「でも、いきなり倒れる事とか、あるんですか?」

「見た瞬間でしょ? うーん。もしかしたら『没頭しすぎ』で目眩がして倒れたとか。色々と科学的な根拠はありそうだけど……」

「うーん……」


 それにしても、『真夏のナイトメア』を見ただけで、こんなにも症状がバラバラなのも珍しいのよね。


 一人は突然倒れ、もう一人は画面に釘付けになり、更にもう一人は取り上げようとしたら襲われた。とか。


「ワシも流石に分かんねぇなぁ。こういうのは、逆に越智に聞いた方がわかりやすいと思うんだが……、その越智がこっちに依頼投げて来る程だ。余程めんどくせぇ案件だろうな」

「それは同意見ですな。実はワイ、特定作業を何時間もした後、急に立ち上がるとその場でふらつく事があるのですぞ!」

「そーいえば、アタシもそういうの、よくある! だけど、取り上げられたから人を襲う。までは行かないのよね」

「あぁ。私も言われてみれば。スマホの画面に釘付けになっている時とか……」


 でも、私の場合は大体、誰かから通知やニュースサイトを見ている事が多いけど、先程のナイトメアみたいな『見て』没頭する。というのは無いのよね。だから、余計に『異質』に感じてしまうんだけど。


「とりあえず、今の所は様子を見ながら、調べていくしか無さそうだな。本格的な調査は、アイツが退院してからだ」

「まぁ。そうだねー。彼も早く自分の彼女に会いたいだろうし!」

「ええっ!?」

「そうですな。それまでの間は、画面から離れて息抜き。もありですぞ! タミコ氏!」

「ええっとぉ……」

「という事で、本日のサーフェスの任務は一旦終了だ! 各自、『全ての画面は見ず』に今日一日を過ごせ。いいな?」

「了解ですぞ!」

「はーい!」

「そんなぁぁ!」


 もしかして、今日は仕事、終わりって事!?

 で、本格的な調査は明日から彼と合流次第だって!?


「ぁぁぁ……。明日休もうと思ってたのにぃぃぃ」


 まさか、明日の休みがナイトメアというクソ依頼のせいで削られるとは思ってなかった私は、パソコンが置かれたデスクに突っ伏して酷く落胆してしまった。


「おーい。この案件が終わり次第、休みは次の依頼までに付けてやるから、安心しろ。仕事はそう簡単に逃げねぇしな!」

「あ。いや。そういう訳じゃ……」

「今のうちに目ぇ、休めとけ。いざ、ていう時にぶっ倒れたら、元も子もねぇからな」

「ゴエモンさん……」

「だから、安心して過ごせ。いいな?」

「あ。はい……」


 私は不貞腐れながらもゴエモンさんに促され、渋々了承すると、気分転換に外に出ることにした。


 ひとまず、『画面』を見ないで過ごしてみるか。目ぇ休ませとけ。とまで言ってるぐらいだし。


 なので、慣れた手つきで雑居ビルを出ると、近くにあるエイトレイブンへ立ち寄ることにしてみた。


 しかも、天気は快晴。午前中なのに日差しが眩しく、出ただけでもう暑い。流石7月。


「何か、新商品、置いてないかな」


 それに、最近の私はよく、ここに来ることが増えた気がする。暑さにやられているせいか、自炊をしたい。という、意欲が湧かないのよね。


 いい加減、料理、学ばなきゃ……。あっ!


 そういえば、かなり前になるけど、マスターがリルドに作っていた『あの料理』のレシピ。この機会だから教えてもらおうかな。


 えっと、確か、『オムライスビーフシチュー』と、『ナポリタン』だったよね。


 まずは飲み物を買ってから、歩いてツブヤキに……。ん?


「あっ! タミコさんだっ!」

「……え!?」


 ふと、背後から肩をトントンと叩かれたので、振り向いてみると、私服姿のカンナちゃんが笑顔で声をかけてきてくれたのだ。


 でも私、髪色だけ大きく変わったのに、よく分かったよね。何でだ?


「お久しぶりですっ! わたしの事、覚えてますか?」


 カンナちゃんの髪型は黒髪のうる艶ロングヘアーになっており、いつものポニーテールじゃないのが、逆に新鮮味を感じた。


 だけど、久しぶりに見ても、やっぱり可愛いなぁ。

 まるでラブコメに出てくるヒロインの様な可愛らしさだよね。学校でも相当モテるんじゃ……。


「そりゃぁ! 覚えてるって! しかも、会ったのつい最近じゃん!」

「あははは! 確かにそうでしたね! えっと、あれから『例の彼』とは、上手く行ってますか?」

「例の彼って……。まぁ。一応『付き合ってる』ので……」

「おわぁぁあ! 良いなぁ! お兄ちゃんから色々と聞いていたから『まさか!』とは思ってたけど、本当に付き合ってたなんて!」

「えええっと……」


 ちょっと待って。

 何でシイラさん、そこまで知っている訳?

 だってあの『中規模アジト』にいた時はあの人居なかったよね? 何で!?


「でも、この事はシイラさん、知らないはずなんだけど……」

「あっ! そうだったんですか!? でも私、お兄ちゃんからこう聞きました。『実はね、『ツブヤキ』に行った際、ヒガンさんがこっそりと教えてくれたんだよね~。リルド様とタミコ様、付き合ってますよ~』て」

「はぁーん。な・る・ほ・ど・ね。はぁ……」


 あの銀髪貢ぎ魔人め。影で余計な事をベラベラと喋っていたのか。後でミオ君に会ったらチクっとこ。と


 まさかの情報がカンナちゃんの耳にも渡っていたので、軽くため息をついた後、会話を続ける事にした。


「あの。その。ごめんなさい。気に触れてしまったなら……」

「いや。事実だから大丈夫よ。でも今、『彼』は入院中なんだよね。明日には退院するけど」

「それで……。でも、明日退院と聞いてホッ。としてます」

「そっか」

「それに……、お兄ちゃん、タミコさんと『彼』に感謝してました。『真生を助けてくれてありがとう』て。あと『僕を止めてくれて、ありがとう』と」

「……」


 だけど、この時のカンナちゃん、何故か寂しそうな顔つきをしていたのよね。

 まるで、『お兄ちゃんには幸せになって欲しい』って、願っているかのようで……。


「それと、その……、あの時はその、生死をさ迷っていた龍樹の事を助けてくれて、ありがとうございました!」

「あー……」


 しかも、ご丁寧にお礼までしてくるとは。

 本当にこの子が、あのシイラさんの妹なのだろうか。会う度に疑うのだが、見た目がほぼ、シイラさんに似ているから、事実なのよね。


 私服姿なんて、初めて見たから驚いたけど、カジュアルな白い半袖パーカーに青いジーンズ、白いスニーカーとは。格好もまた、お兄ちゃん寄りなのよ。


「あれ? でも学校は? 今日って確か、『平日』だった様な……」

「実は最近、学校で奇妙なブログが出回ってまして、その関係で急遽、学校がお休みになっちゃったんです」

「えっ!? それって……」


 すると、彼女がこんな事を口にし始めたのだ。


「しかも、それを見た生徒が、何人か学校に来なくなっちゃって。今はテスト期間中なのに、変ですよね。こんな事、初めてなので……」

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