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マリアナに堕ちたのは、親友ではなく、私でした。  作者: Ruria
真夏のナイトメア編
104/110

検索してみたら何故か取り込まれそうになりました。



――AM8:00



「……んんっ」


 スマホのアラームが大音量で鳴る。

 もう、朝を迎えてしまったか。

 重たい瞼を擦り、私はむくりとベッドから起き上がる。


「今日は、調べないと……」


 確認として、自身のスマートフォンの通知を見ると、彼からで


『俺、明日退院が決まったから』


 と、一件だけメッセージが送られてきた。

『良かった。迎えは誰が来るの?』


 なので、返信し返すと、数秒でピコン。と通知音が鳴った。


『メンコが来るってよ。オマケにナイトまでも付き添いで来るってさ』

『そっか。何だかんだ言ってさ、あの二人やっぱりデキてるよね!』


 そう返してみると、再度数秒でピコン。と通知音が響いた。


『俺も思ってた』

『やっぱり』


 なので、ここから無言だが、彼とのやり取りが続いていく。


『ま。ナイトがあそこまで、あのゴリラ女の事を好きになるとは、思ってなかったけどな』

『ゴリラ女って……。失礼でしょ』

『あはは。ナイトが聞いたらグーパン飛んできそうだな』

『で、退院したら、〝真夏のナイトメア〟という変なサイトの調査をするみたい』

『あー。何かこっちでも噂になってたな。その真夏のなんとかーって言うやつ』

『それ、本当!?』


 すると、入院先の病院で例のサイトに関する情報が入ってきたのだ。


『あぁ。確か〝一定の条件を満たせば、異世界に渡ることができる〟だっけか?』

『でも、物理的には有り得ない。てグソクさんが言ってたよ』

『物理が無理なら、もしかしたら、〝幽霊〟的な何かが現れて、連れ去られるとか。神隠しに逢うとか、そういう類か?』

『うーん。ていうか、リルドって、幽霊信じる方?』

『まぁ……。ていうのも、ガキん時に叔父から聞いた話があってな。それが、〝ホイア・バチュの森〟ていう、めちゃくちゃ幽霊が出まくる心霊スポットがあるらしいんだ』

『え!?』


 つまり、幽霊が大発生する森がルーマニアにあるって事?


 気になるけど、正直行きたくないな。

 だって、悪霊みたいな霊に取り憑かれそうだと思うと、気軽に行きたいだなんて、言えないのよ。


『そんな、幽霊てんこ盛りみたいな森が存在するの? ルーマニアに?』

『あぁ。ナイトが言うには〝あそこは見える人が立ち寄ったら、呪われるから行かない〟て言ってたんだよな』

『……は? え?』


 ちょっと待って。

 今、〝行かない〟て言った?

 ふと、気になり過ぎて引っかかった言葉があったので、再度彼に聞いてみることにした。


『もしかして、ナイトさんって、〝見える〟の?』

『そういや、廃墟のラブホテル、ソロモンに一緒に入った時あっただろ?』

『うん。確か、ヒガンさんとフグトラさんと一緒に乗り込んだ時よね』

『あぁ。実はその時、ヒジリの野郎の背後にな、女の人と男の人の霊が、背後にべたりと(まと)わりついてこっちを見つめていた。てナイトが教えてくれたんだよな』

「えっ……。ちょ! はぁぁあああ!?」


 驚きのあまり、思わずスマホを床に落としそうになったが、あの51番部屋、かなり曰く付きだったって事でしょ!

 まとわりつきながら見てくるのは怖すぎるって!

 ナイトさん、あれでよく顔色一つ変えずに冷静と、淡々とこなしていたよね。

 正常でいられてるの、逆に怖いんですけど!?


『まぁ、それをお見舞いに来た時に、あの軽口で言ってきたのは、流石の俺もビビったけどな』

『それは驚くって……』


 しかも当の本人はいつもの軽口で『ヒジリノ背中、人ガ沢山、付イテタ。アハハハ!』て片言で言ってた訳でしょ?


 正直、シイラさんより恐ろしくない?

 あなたの双子のお兄さん。


 私は呆れ気味に返信をしながらも、彼から情報を集めていく。

 ま。ナイトさんの軽口は、あくまでも想像上だけどね。彼ならこんな風に言うかもね。て感じで。


『そういえば、依頼を整理していたら、リルドの病室に、看護婦さんが頻繁に出入りしていた。て言うのが届いたんだけど……』

『……は? あー。あれは向こうから、相談がある。みたいな感じで言われたんだ』

『ふーん……』

『はっきり言うが、ナイトメア関連だ。だから、その、別に浮気とかしてねーから!』

『いや。分かってたけど、どういう事?』


 その、浮気どーこーと言うより、ナイトメア関連というのが、一番気になるんだけど。

 返答次第では、ゴスロリの服着た写真は『送らない』という選択で、没になる可能性があるけどね。



――ピコンッ



 どんな風に返信してくるのだろうか。

 恐る恐る見てみると……


『話によると、自分の子供が〝真夏のナイトメア〟というサイトを見た途端、何故か倒れたり、画面に夢中になって何度声をかけても無視されたり、オマケに取り上げようとしたら、襲われた。ていう相談があったんだ』

『なな、何それ!?』


 思ったよりも危険な展開になって驚いてしまったが、そのサイト自体に〝暗示〟みたいのがかけられている。という事かな。


 かなり気になった私は、更に彼から情報を集めていく。


『それで、原因が〝幽霊〟じゃないか。と思ってるわけ?』

『ま。そんな所だな。それを聞いた越智さんも〝科学的に説明できないな〟て言ってたぐらいだしな』

『なるほど……』


 まさかの越智さんも今回の件に関しては〝説明できない〟て事ね。

 つまり、何らかの条件を満たせば、異世界転移ができるが、その代償として、様々な精神疾患を持ってしまう。という訳か。


『で、本題に戻るが、何か分かったら知らせてくれ。こっちでも何かあったら、連絡する』

『あ。ありがとう。私もできる範囲で調べてみるね』

『おぉ。頼んだ』


 そして、私は安堵すると、一旦スマホをお気に入りの黒ジャージのポケットにしまい込んだ。


 それにしても、そのサイトを読んだだけで精神疾患を来たすって。聞いただけでも随分と恐ろしいんだけど。

 下手したら調べている私達も取り込まれる可能性が高い訳でしょ。


 とても恐ろしい案件を持ってきやがったな。と思いつつ、仕方なくパソコンがある自分の席へ着くと、座って真っ黒い画面をぼーっと眺めていた。


「そういえば……」


 読んだだけで異世界転移ができるなんて、本当に可能なのか?

 よくある嘘じゃないか。と思いつつも、かなり気になった私は、何となくパソコンを起動し、検索バナーにこう打ち込んでみる。


【真夏のナイトメア】


 まずは普通に検索してみる事にする。


「ええっと……、あー。これの事かな」


 すると、何件か引っかかったが、その中の一つに、奇妙なブログらしきモノを見つけてしまったのだ。


「えっと……、8月30日。明後日から学校で、とても憂鬱だ。でも、俺はいい現実逃避の仕方を思いついてしまった!」


 以下、こんな文面だ。


―――――――――――――――――――――――


 なので、『俺』が夢を見る事に、ここに書き込んで記録しようと思う。


 俗に言う『夢日記』というやつだ。

 現実逃避をするのに、これが一番良い。


 さて、今朝見た夢は『俺』が異世界へ行って、女神に出会った夢だ。


 これがまたとても美人でさ。

 金髪で蒼色の透き通った瞳をしていて、『俺』、思わず惚れちまったさ。


 で、女神はこう『俺』に言ったのさ。


『異世界』と『現実』、どちらを落としましたか? てな。


 そこで夢は途切れてしまったけど、なんだろうな。


―――――――――――――――――――――――


「……は?」


 なんとも不気味だ。

 しかも、現実逃避がしたいから、ブログみたいに夢日記を書き始めたとは。何とも、はた迷惑な奴よね。書くなら鍵かけて個人でひっそりと書けばいいのに。


 だけど、どちらを落としましたか。て、奇妙よね。

 かなり続きが気になった私は、更に読み進めることにした。


―――――――――――――――――――――――


 8月31日


 明日から学校が始まる。

 嫌だ。いつまでも夏休みとして過ごしたかった『俺』は、再度夢を見ることにした。


 すると、女神に問われる所からスタートしていたので、迷わず『異世界』と答えた。


 そしたら、そこから素晴らしい世界に入り込むことができたんだ。


 澄み切った青空に、広大な草原。

 そして、初めて遭遇する敵がスライムだった事も。『ぼく』は腰に身につけていた剣を手に取り、スライムを薙ぎ倒した。



『イトウさんはレベルアップしました』

『イトウさんはレベルアップしました』

『イトウさんはレベルアップしました』

『イトウさんはレベルアップしました』

『イトウさんはレベルアップしました』

『イトウさんはレベルアップしました』

『イトウさんはレベルアップしました』

『イトウさんはレベルアップしました』



 何故か『ぼく』の耳元から、アナウンスが流れてきたのだが、『ぼく』って、イトウさんなのか?


 いや。『ぼく』の本名は確か、『サトウ』のはずだ。何で『イトウ』なんだ?


 そこで夢は途切れてしまったのだ。


―――――――――――――――――――――――


「えっと……」


 人称がややこしくて難しいけど、上手く整理すると、現実ではサトウさんだけど、異世界ではイトウさんになっていたと。


 そして、8月31日は確か、学校では『夏休み最終日』だったはずよね。地方によっては様々かもしれないけど、大体は31日に終わる事が多いのよ。


 だけど、この人の文章構成が上手いせいか、何故か引き込まれるんだよね。


 なので、更にスクロールしてみることにする。


―――――――――――――――――――――――


 8月32日


 『現実』だと9月1日らしい。でも、『俺』は異世界を選んだから、32日なんだ。


 ふーん。いっそこのまま、留まろうか。『俺』は、夢の中に再び入ったら、いつの間にか草原からリスタートされていた。


 また、スライムを狩って狩って狩りまくっていたけど、レベルアップしていく事にスキルもどんどん増えていったんだ。



『イトウさんは炎魔法を習得しました』

『イトウさんは水魔法を習得しました』

『イトウさんは雷魔法を習得しました』

『イトウさんは土魔法を習得しました』

『イトウさんは光魔法を習得しました』

『イトウさんは闇魔法を習得しました』

『イトウさんは『⬛︎⬛︎⬛︎』を習得しました』



 とね。こんなにあっさりとスキルが手に入れるのであれば、『現実』に帰らなくてもいいんじゃないか?


 と思っていたら、突然学校のチャイムが鳴ってきてさ。そこで夢が強制的に切れちゃったんだ。


 つまり、とうとう『現実』に邪魔が入った。て事だよ。どうしてくれようか。はぁ……。


―――――――――――――――――――――――


「うーん。これ……」


 傍から見たら、単なる『現実逃避したい人』が書いたブログにしか見えないのよ。だけど、最後の『⬛︎⬛︎⬛︎』て何だろう。そこだけエラーがかかっていて読めなかったのよ。


 なので、更に深く読み進めてみることにした。


―――――――――――――――――――――――


 8月33日(現実だと9月⬛︎日)


 やっとこれで『俺』は『異世界』へ浸れる。

 なので、『俺』は『現実』とサヨナラした。

 バイ⬛︎イ。バ⬛︎バイ。

 今書いてる頃には、『俺』はいないでしょう。多分ね。


 つまり、これ以降、書いているのは『俺』ではなくて、『ぼく』です。初めまして。


 『ぼく』はサトウです。

 あれ? イトウだっけ?

 『俺』はイトウで、『ぼく』はサトウだっけ?

 いや。『逆』かな?

 でも、そんな事はどうでもいいんだよ。

 もう『ぼく』は『異世界人』だからさ。だから、改めまして。サトウです。よろしくね。サトウです。よろしくね。


 あ。そうそう。見ているみんなは『現実』と『異世界』、どっちを『落としてきた』のかなななななななな七七?

 

―――――――――――――――――――――――


「……なに、これ」


 突然、混乱し始めたので、急遽シャットダウンをしようと電源ボタンを押そうとするが、画面を閉じることができない。


 ちょっと待って。ここで『ウィルス』が介入してきたってこと!?

 大慌てで席を立とうとしたが、何故か『続きが読みたい』という気持ちが邪魔をしてきた。


 もしかして、これが『現実』か『異世界』かの選択って事?


 なので、私はそのまま席に座って画面を見ようとしたら……


「タミコ氏ぃぃ!」


 すると、グソクさんが何故か、叫びながら大慌てで大きい青い布を持ってきては、パソコンの画面を覆い被せてきたのだ。


「え? グソクさんどうしたの? 突然大声を出して……」

「はぁ……。はぁ……。タミコ氏! かなり危なかったですぞ!」

「えっと、何が?」

「それはですな……!」


 そして、彼の口から、こんな言葉が飛び出てきたのだった。


「危うく、『真夏のナイトメア』に取り込まれる所でしたぞ!」

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